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最終更新日:2004.5.20

平成15年度業績賞の表彰

 

 本会では,平成13年度から,産業界における顕著な業績を顕彰するため「業績賞」を設けております.

 本賞は,情報技術に関する新しい発明,新しい機器や方式の開発・改良,あるいは事業化プロジェクトの推進において,顕著な業績をあげ,産業分野への貢献が明確になったものを選定し,その貢献者に贈呈するものです.

 本年度の受賞者は,「業績賞候補者推薦用紙」により推薦された候補のうちから,表彰規程および業績賞候補選定手続きに基づき,松田副会長を委員長とする選定委員会において厳正な審査を行い,第495回理事会(平成16年3月)の承認を得て,下記の3件の業績の貢献者14名に決定されました.

 受賞者には,本会表彰規程により,5月20日に開催された第47回通常総会において,受賞者に表彰状および賞牌が授与されました.


 

◆「大規模並列ベクトル計算機・地球シミュレータの開発」

[推薦理由]
 地球シミュレータは2002年に完成,高速高集積半導体技術,高性能プロセッサ・ ネットワーク等のハードウェア技術およびそれを生かすソフトウェア技術により, 現在においても一桁速い実効速度を達成し,汎用のスーパーコンピュータとして, 世界最高性能を誇っている.このことにより従来不可能であった大規模・高精度 シミュレーションを可能にした.
高度に最適化された応用ソフトウェアとあいまって,地球温暖化などの環境変動予測はもとより,ナノテクノロジー,航空宇宙,エネルギーなど多様な理工学問題へのシミュレーション応用が進行しており,これらの領域の技術革新ひいては産業発展に関して多大な成果が期待される.

 

佐藤哲也

佐藤 哲也 君(正会員)

 1963年京都大学大学院工学研究科電子工学科終了.1967年博士課程中退.工学博士.専門分野はプラズマ物理学,シミュレーション・サイエンス.京都大学理学部助手,東京大学理学部助教授,広島大学教授にてコンピュータ・シミュレーション,特に宇宙空間プラズマや核融合プラズマ研究に従事.核融合科学研究所教授,理論・シミュレーションセンター長,副所長を経て,2002年4月,海洋科学技術センター(現 海洋研究開発機構)地球シミュレータセンター長就任.核融合科学研究所名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授.日本物理学会,応用数理学会,地球電磁気・地球惑星圏学会などに所属.仁科記念賞(1986年),COMPUTERWORLD HONORS 21st CENTURY ACHIEVEMENT AWARDS(2003),東京クリエーション大賞技術賞(2004)などを受賞

 

北脇重宗

北脇 重宗 君

 1968年3月京都大学大学院工学研究科修士課程(数理工学専攻)修了,同年4月日本電気(株)入社,以後2001年までコンパイラ及び関連ソフトウェア開発・管理に従事.1998年8月から2001年7月まで,日本原子力研究所外来研究員として地球シミュレータ研究開発センターに所属し地球シミュレータ言語処理ソフトウェアに関する研究・開発,アプリケーションプログラムの地球シミュレータ向けチューニングに従事.2001年8月から海洋科学技術センター(現 海洋研究開発機構)・地球シミュレータセンター・グループリーダとして地球シミュレータアプリケーション開発,運用・利用支援業務に従事.

横川三津男

横川 三津夫 君(正会員)

 1984年筑波大学修士課程理工学研究科修了.同年日本原子力研究所入所.原子力分野における高速数値シミュレーションの技術開発に従事.1994−1995年コーネル大学コーネル理論センター客員研究員.1997年地球シミュレータ研究開発センターにてハードウェア開発に参画.2002年産業技術総合研究所グリッド研究センター.SC2002ゴードン・ベル賞(最高性能賞,言語賞,特別賞)受賞.工博.

 

平野哲

平野 哲 君(正会員)

 1970年早稲田大学大学院理工学研究科電気工学専攻修了,同年日本電気鞄社,大学,研究機関,中央官庁の大型コンピュータ,ネットワークシステムのSEとして従事,1987年官庁システム事業部システム部長,企画,営業を経て2001年NECネットワークス主席技師長,2002年4月より海洋科学技術センター(現 海洋研究開発機構)地球シミュレータセンター長特別補佐,地球シミュレータシステム管理・運用に従事,日本電気椛゙職,文部科学省地球環境科学技術委員会国際戦略WG委員,他に厚生労働省,外務省など専門委員,福岡大学非常勤講師,情報処理学会,日本物理学会

松本寛

松本 寛 君

 1968年3月,京都大学工学部電子工学科卒業.同年4月,日本電気(株)入社. 以来,大型メインフレーム,主として中央処理装置のハードウェア開発・設計に従事し,1983年より継続してNECスーパーコンピュータSXシリーズのハードウェア開発・設計を担当.1997年より地球シミュレータのハードウェア設計に従事.現在,第一コンピュータ事業本部・コンピュータ事業部・主席技師長としてHPC技術を担当.

 

   

 

◆「第3世代移動通信網に適用するモバイルインターネットプロトコルの研究開発と標準化」

[推薦理由]
 受賞者らが考案した無線ネットワーク環境に適したTCPプロファイルは,2.5世代,第3世代の高速移動通信ネットワークでは,従来のTCPに比較して1.5〜2倍程度の性能を引き出すとともに,WAP1プロトコルと比較しても同等以上の十分な性能を達成できることをシミュレーションおよび評価実験で実証した.受賞者らは,このTCPを含むインターネットに基づくプロトコルスィートを2.5世代,第3世代の高速移動通信ネットワークに適した次世代WAPとしてWAPフォーラムに提案した結果,広く受け入れられ,WAP2.0として2002年1月に公開された.更に,得られた知見をインターネットコミュニティに還元し,適用範囲を拡大するために,WAP2.0と同等の内容をインターネットドラフトとしてIETFに提案した結果,RFC3481/BCP71として2003年2月に公開された.また,第3世代移動通信網サービスの中でも実用に供されており,受賞者達の研究は情報産業の発展に多大な貢献をしている.

 

高橋修

高橋 修 君(正会員)

 1975年北海道大学大学院工学研究科修士課程終了.同年電電公社(現NTT)横須賀電気通信研究所入所.コンピュータネットワークアーキテクチャの研究開発,OSI国際標準化に従事.1999年NTTドコモマルチメディア研究所に異動.モバイルインターネットの研究開発に従事.2004年より公立はこだて未来大学システム情報科学部教授.2000年情報処理学会標準化貢献賞受賞.博士(工学).

 

稲村 浩

稲村  浩 君(正会員)

 平成2年慶應大学大学院理工学研究科修士課程修了.同年日本電信電話(株)入社.分散トランザクションシステム,分散ファイルシステムの研究開発に従事.平成6年から7年にてカーネギーメロン大学計算機科学科にて訪問研究員.平成10年よりNTTドコモ.モバイル環境におけるトランスポートプロトコルに関する研究開発に従事.電子通信情報学会, ACM会員.

石川憲一

石川 憲洋 君(正会員)

 1978年京都大学工学部情報工学科卒業.1980年同大大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.同年,日本電信電話公社(現NTT)入社.1999年よりNTTドコモ.現在,ネットワークマネジメント開発部担当部長.ATM,インターネットプロトコル,マルチメディア通信,モバイルインターネットなどの研究開発と標準化に従事.博士(情報学).電子情報通信学会会員

藤野信次

藤野 信次 君(正会員)

 1986年大阪府立大学大学院工学研究科修了.同年(株)富士通研究所入社.マイクロ波無線,移動通信システムの研究開発に従事.1995年よりエージェントのモバイル応用,ワイヤレスTCPの標準化等,モバイル・コンピューティングに関する研究開発に従事.MBL研究会幹事.

原政博

原 政博 君(正会員)

 1997年富士通(株)入社.現富士通研究所所属.当初は,携帯電話関係の開発に従事.その後,ネットワークシステムの研究に従事.標準化活動に参加.

   

 

◆「カーナビゲーション向け超大語彙・耐騒音音声認識技術の実用化」

[推薦理由]
 受賞者らはメモリや演算量が限られているカーナビにおいて,騒音環境下で県名から番地
までの連続発声認識を実現し,業界で初めて日本全国の住所3000万件と施設8万件から一回の発声でピンポイント検索できる音声認識技術を実用化しました.この技術によってハンドルを握ったままで一言でカーナビ制御ができる画期的音声インターフェイスを実現,普及させ,ドライバーの安全性向上に貢献しています.また,同君らは過去にも業界初の電話系大語彙音声認識装置を実現するなど継続して音声認識技術の実用化に多大な貢献を行っており,期待は高いが実用で使われる場面の少なかった音声認識の評価を向上させてきた功績は大きい.

岩崎知弘

岩崎 知弘 君(正会員)

1984年名古屋大学大学院電子工学修士課程修了. 同年 三菱電機(株)入社. 以来,音声認識処理の研究開発に従事.音声認識LS
I,特定話者音声認識装置,電話系大語彙音声認識応答システムMELAVISなどを実用化.現在,同社情報技術総合研究所・音声応用システムチームリーダ,日本音響学会会員.

成田知宏

成田 知宏 君(正会員)

 1995年東京工業大学制御工学科卒業.1997年同大学大学院知能システム科学専攻修士課程了.同年 三菱電機(株)入社. 以来,
音声認識の研究開発に従事.IEICE,日本音響学会各会員.

 

花沢利行

花沢 利行 君(正会員)

 1985年都立大・理・物理卒.同年三菱電機(株)入社.1987年〜1990年AT
R自動翻訳電話研究所.現在,三菱電機・情報技術総合研究所勤務.入社以来,音声認識技術の研究開発に従事.日本音響学会会員.

中島邦男

中島 邦男 君(正会員)

1970年名古屋工業大学大学院工学研究科修士課程修了. 同年 三菱電機(株)入社. 以来,データ通信,音声情報処理の研究開発に従事.秘話移動無線(官公庁標準化),電話系大語彙音声認識応答システムMELAVIS(日刊工業新聞社・第38回十大新製品賞 )など業界初の実用化を果す.同社情報技術総合研究所・音声言語部長,インタフェース
部門長を経て,2004年より横浜国立大学 ・産学連携推進本部に所属.IEICE,日本音響学会各会員.