白鳥則郎(東北大学)
論文誌は研究成果を発表する最高の場であり、当初、論文誌と欧文誌からなっていた。論文誌への投稿は増加しているが、欧文誌への投稿数は減少の傾向にあった。そのため欧文誌の発行費用の問題から1993年より欧文誌を論文誌に統合し、1本化することとなり現在に至っている。
1994年から1995年の間、論文誌は投稿の増加により印刷費用等がかさみ、財政面の建て直しを図る必要に迫られた。1994年の別刷料金の改訂、1995年の電算写植からLaTeX出版への移行、1995年の論文誌講読料の改定等、一連の改革を行った。これにより、論文誌の収支状況は大きく改善された。投稿者のLaTeX利用率は現在では8割を超えるまでになっている。
1994年には既発表論文の対象範囲を変更した。それ以前は大学の紀要、国際会議等を含むほとんどすべての出版物に掲載されたものは、既発表と見なされたが、これにより、本学会の主催、共催を問わず、学術雑誌以外の出版物に掲載された論文は既発表と見なさないこととした。
1990年代の中頃から、インターネットが爆発的に普及したのに伴い、1996年より論文アブストラクトのWWW掲載を開始した。また、1997年より論文の査読状況をWWWに公開し、サービスの向上をはかり好評を得ている。同年には、査読期間を短縮するためメタレビューア制度を導入した。第3査読と最終査読をなくし、メタレビューアに大きな権限と責任を持たせている。これにより、実際に査読期間が短縮され好評を博している。インターネットの社会への浸透、効率至上主義の見直しなどにより、当学会においても論文を評価する価値観が多様化した。このような状況の変化に対応するため、論文誌編集委員会では、古典的な論文評価法に加えて新しい評価基準の導入を検討するとともに、当委員会の外にも積極的に働きかけた。具体的には、1997年に新たに「研究会推薦論文制度」と「ゲストエディタ制度」を導入した。
前者では、各研究会において発表された論文の中で、研究会が優秀な論文と認定した論文を研究会推薦論文と呼び、研究会による論文誌への掲載の推薦ができるようになった。後者は論文誌編集委員以外の方がゲストエディタとなり、論文誌特集号の企画・編集を独自に行う制度である。また、従来の基準では測りきれない論文を評価するため、1998年に査読基準の新規性と有用性に対する新しい判断基準を導入し、さらに加点方式による査読法を採用した。
これらの一連の改革の効果が、投稿数の増加や査読期間の短縮というかたちで1998年頃から現れてきた。具体的には、同年の投稿数、採択数がともに前年比3割を超える増加となった。
一方、研究会でも独自に活性化に取り組み、当論文誌とすみわけしながら98年から新しく「研究会論文誌」を発行するに至った。多くの関係者の努力により、「情報処理学会論文誌
プログラミング」、「情報処理学会論文誌 数理モデル化と応用」、「情報処理学会論文誌
データベース」と、すでに3種類の研究会論文誌が発行され軌道に乗り、さらに、新しい論文誌の発行も計画されている。
主な経緯
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1993年
| 欧文誌を休刊し、論文誌に統合
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1994年
| テクニカルノート、全国大会・研究発表会・シンポジウム・国際会議で発表したものは、既発表とは見なさない。
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1995年
| 活版印刷から電算写植印刷、さらにLaTeX出版に切り替え
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1995年
| 論文誌購読料を改定
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1996年
| アブストラクトをWWW掲載、著者ホームページリンクの開始
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1997年
| 編集委員のメタレビューア兼務、第3査読者の廃止、査読状況のWWW掲載、ゲストエディタ制度の新設
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1998年
| 加点方式と新しい判断基準を採用
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1997年〜1998年
| 研究会論文誌発行への協力
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