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最終更新日:2007年9月27日

「情報処理技術者試験新試験制度の手引(案)」−新試験制度審議委員会中間報告書−への提言

 

 このたび 情報処理学会 ITプロフェッショナル委員会では、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)情報処理技術者試験センターに対し、以下の通り提言を提出いたしましたのでご報告いたします。

参考)「情報処理技術者試験 新試験制度の手引(案)」の公表及びご意見の募集について

ITプロフェッショナル委員会


デジタル署名アイコン「情報処理技術者試験新試験制度の手引(案)」−新試験制度審議委員会中間報告書−への提言(デジタル署名付PDF)

独立行政法人情報処理推進機構 情報処理技術者試験センター
「新試験制度の手引 ご意見募集係」            御中

「情報処理技術者試験新試験制度の手引(案)」
−新試験制度審議委員会中間報告書−
への提言

2007年9月27日
(社)情報処理学会
ITプロフェッショナル委員会

 

  (社)情報処理学会では、アカデミックソサエティとしての活動に加え、プロフェッショナルソサエティの活動として、ITプロフェッショナルの育成と社会的地位向上を支援するため、「ITプロフェッショナル委員会」(委員長:旭寛治)を設置し、検討を進めております。本委員会は、2007年9月に公表された「情報処理技術者試験新試験制度の手引(案)」(以下、「新試験制度の手引き」と呼ぶ)について、以下の提言を致します。

1. 試験制度の全体像についての総括的提言

「新試験制度の手引」の個別の項目に対する以下の提言を総括すると、「新試験制度の手引」は試験の制度設計と試験の内容の両面で本質的な問題があると思われます。このような制度と内容では、IT人材育成、情報産業の育成、ならびに、試験の実施上、好ましくない影響があると危惧されますので、全体的な見直しを提言します。

2. 個別の内容に関する提言

 2.1 試験の体系に不整合があり、内容の見直しを提言します

 p.9(2)Aによると、「システムアーキテクト試験は、情報システムと組込みシステムのシステム方式設計を行うシステムアーキテクトと、情報システムのアプリケーションの設計・開発を行うテクニカルスペシャリストに対応した試験」となっています。このため試験の体系が情報システムと組込みシステムとでバランスを欠き、分かり難いものになっており、全般的な見直しが必要であると思われます。
 即ち図4では、開発プロセスの上流工程である「システム方式設計」は、情報システムの場合も組込みシステムの場合もシステムアーキテクトの主たる活動領域となっていますが、下流工程の「ソフトウェア方式設計」や「システム開発・導入」は、情報システムの場合はシステムアーキテクトの主たる活動領域、組込みシステムの場合は組込みシステムプロフェッショナルの主たる活動領域となっています.3章以降に記された試験内容も上記の考え方に基づいたものとなっています。
 次のような方法により、情報システムと組込みシステムとで体系を統一するべきであると思われます。
  (1) 情報システムの場合もシステムアーキテクトの活動領域は上流工程のみとし、下流工程を活動領域とする「情報システムプロフェッショナル」を設ける。
 または、
  (2) システムアーキテクトは情報システムの上流から下流までを活動領域とし、組込みシステムプロフェッショナルは組込みシステムの上流から下流までを活動領域とする。
 または、
 (3) システムアーキテクトの活動領域に組込みシステムの下流工程も含め、組込みシステムプロフェッショナルという人材類型は設けない。

 2.2 試験区分と出題分野に不整合や欠落があり、内容の見直しを提言します

 「システムアーキテクト」は「情報システム」を対象としていることから、p.16で「情報システムの構成を設計する」と定義されており、ハードウェアを含む「システム方式設計」を担当するように定義されていますが、表14の出題分野には「コンピュータシステム」がありません。一般に「情報システム」と呼ぶには、ハードウェアとソフトウェアの両方を含み、このような内容では、試験として問題があると思われます。
 また、一方で、専門分野としてある「組込みシステムプロフェッショナル」の試験においては、技術要素がありません。表15の共通キャリア・スキルフレームワークの技術要素の中分類に組込みシステムに対応する項目を入れるべきであると思われます.例えば、組込みソフトウェアの開発で広く適用されている、「状態遷移によるモデル化」、「リアルタイム設計」などが欠けており、逆に、ここで示されている「カーネルの設計」はOSの開発者を育成する内容であり、組込みソフトウェア設計には不要と思われます.標準カリキュラムJ07に基づき、表15全体を見直す必要があると思われます。

 2.3 サービスマネジメントの意義を明確にするよう提言します

 ITサービスマネージャ試験が要請するサービスマネジメントの内容は、有効な試験が設定でき、評価できる知識体系が確立しているか不明です。 p.32 のサービスマネジメントの出題の考え方を見ますと「ITサービスマネジメントの意義、目的、考え方」と書いてあり、「サービスマネジメント」の意味も不明です.サービスマネジメントの意義を明確にする必要があると思われます。

 2.4 ストラテジ系の知識体系を明確にするよう提言します

 p.31のストラテジ系の出題の考え方では、「経営戦略マネジメント」の項で、「SWOT分析、ポートフォリオマネジメント、顧客満足度」の他に、CRM, SCMなどを加え、「基礎的な用語の理解」を問うとなっています。この内容で、「経営戦略マネジメント」の「高度な知識・技術」と見なすことは問題であると思われます。ストラテジ系の試験内容の意義を明確にするようお願いします。

3 「新試験制度の手引」の記述を明確にするよう提言します

 「新試験制度の手引」全体を通して、記述に一貫性の欠如、一般に使用されていない単語の使用や、記述の曖昧な表現が散見され、理解が困難です。例えば、以下の用語は知識体系の中で定義が明確になって、業界で広く認知されている用語であるか疑問です。
 p. 5 「サービスマネージャ」、あるいは、後のページでは、「ITサービスマネージャ」
  そもそも、「新試験制度の手引」で「サービス」あるいは、「ITサービス」の内容が不明です。
 p.14 基本情報技術者で、「ITソリューション・製品・サービスを実現する」とありますが、「サービス」の意味が不明です。(ITサービスとサービスは別でしょうか?)
 p. 15 応用情報技術者試験「サービスチーム」とは何でしょうか?
 p.31 「ビジネスモデル、業務モデル」とありますが、いずれも、business modelの邦訳ではないでしょうか?

4. 成績通知についての提言

 p. 6で「合格証書には得点を記載する」とありますが、人材育成の面では、合格者だけでなく、不合格者に点数、あるいは、到達度を通知すべきではないでしょうか?

以上