本学会の活性化の議論の背景には、平成3年度をピークに減少する会員数に対しての学会経営上の大きな危機感が存在する。会員数減少の外的要因としては、バブル崩壊とダウンサイジングが大きく影響していると考えられるが、これら外的要因にも増して本学会が内部に抱える最も大きな根本的な問題点は、社会情勢等の周辺を取り巻く環境の急速な変化、および会員層の拡大という学会自体の成長に、組織および運営の変化が伴わなかったことであろう。現在の約3万人の会員の構成は、3割がアカデミア(研究教育)であり、7割が産業界である。更にアクティブメンバーは3割のアカデミアの何分の一かの会員が中心である。今まで本学会はこのアクティブメンバーを機軸としたアカデミア中心のサービスを行ってきたように思われるが、今後は、社会環境の変化に合わせ、その活動も改善されていなねばならない。 |
これからの情報処理学会は純粋アカデミアに閉じることなく、産業界や第三のユーザー(初等教育関係者、物理、化学、ロボット等の情報に関わる広い分野の潜在的ユーザー)にも積極的に関わり、アカデミアと産業界との融合を図り、拡大した会員層を中心に各方面へのバランスの取れたサービスを充実させ、日本の情報処理分野の根幹であるべきと認識する。本委員会では、将来ビジョン検討委員会とは別に、調査研究運営委員会、領域委員会等の関連委員会の意見を取り入れつつ、学会の中心である研究会活動に携わるアクティブメンバー、および他学会からのメンバーも加えて、将来ビジョン提言のための検討を重ねてきた。多くの議論の末、以下の情報処理学会のあるべき姿についての合意を基に、(1)学会誌、(2)
研究会・論文誌・全国大会、(3) 社会的貢献、という視点から個々の現状の問題点の分析を行い、学会の基幹をなす、学会誌、論文誌、研究会、全国大会の役割を明確化し、会員の要求を満足させるべく改善策を以下のとおり提言し、学会の活性化を望むものである。 |
尚、本提言は大きな意識改革を伴う改革となるので、提言提出後は速やかにこれを全学会員に周知するとともに、その実施に当たっては関連諸活動における充分な検討を経た上で、組織の調和を保ちつつ実行に移されることが望まれる。特に、研究会・論文誌についての提言内容は最終的な改革後の姿を示すものであり、提言の実施過程・手段に関しては、学会の将来ビジョン検討委員会(委員長:野口会長)との整合性について調整しつつ進めることとする。 |
将来ビジョン検討委員会提言との関連については、双方の委員会で議事録等は公開され、(1)特に第6回学会の将来ビジョン検討委員会に提出された論文誌・研究会・全国大会の提言案は、本委員会における多くの意見を基に作成されていること、(2)学会誌の提言についても本委員会の視点との大差は無いように思われることから、本提言は基本的には学会の将来ビジョン検討委員会提出の提言案をreferした形でまとめられたものであることを付記する。 |
※これまでに指摘された問題と議論の詳細は、添付資料(西田委員作成WWW)を参照。(本委員会および関連委員会における主な意見:主に議事録より抜粋) |
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本委員会における情報処理学会のあるべき姿についての合意
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- 情報処理学会は、日本の「情報処理」の顔である
- 情報関連学会を代表するという意味。
- あらゆる意味での情報発信を行い、他の分野が最初に頼ってこれる所。
- 圧力団体という意味であっても良い。
- アカデミア/企業/教育などへのサービスの場
- 特にアカデミア以外へのサービスの充実。
- 教育へのサービスは、情報弱者を作らない意味からも社会的貢献となる。
- 新しいソリューションの提供の場
- 中立的な場(特にデファクトスタンダート、暗号、セキュリティ関連)の提供
- 産業界とのインタフェースの場としての役割。
- 社会に貢献する高い技術力の獲得、および提供の場
- 情報処理技術の評価と基礎研究へのフィードバック
- 境界領域(初等中等教育、数学、物理、化学等)とのインタフェース
- 萌芽的領域へのバックアップの推進
- 国際的な情報発信と交流
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