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最終更新日:2003.11.28

4.学会誌

 
 学会誌は学会が全会員に提供できる唯一最大のサービスである。学会誌が魅力的なものであれば、会員の学会に対する満足度を大きく向上でき、会員の増大、学会の活性化が促されるはずである。

 学会誌のあるべき姿は次のとおりと認識され、読者の視点から、「見やすく、読みやすく」することが肝要と思われる。ここでは以下に、(1)内容、(2) 編集プロセス、(3) 誌面、(4) メディアの4つの視点から学会誌の改革案を提案する。

[学会誌のあるべき姿]

  1. 会員の関心のあるテーマを取り上げた分かりやすい解説記事を中心とする情報提供。目標とする例:IEEE Computer、CACM (World Classの学会誌を目指す)学会誌として、一般雑誌とは一線を画す、公平正確で掘り下げた見識ある解説の提供。
  2. 学会誌は情報処理技術のビジョンを示す。
  3. 会員の情報交流:学会イベント案内、会員の声。
    1. *参考:実務家向けに対する入会理由のアンケート:「学会誌の購読」が「上司,会社に勧められて」に次いで第2の理由(40%)に挙がっている。

4.1現状の問題点(内容の問題点と原因)


  1. 「学会誌は面白くない」という多くの声
    1. 内容が対象読者(会員構成)の変化(研究→産業)(図-1)に対応できていない。
  2. 会員の多数が必要とする情報(最新技術動向、実践的技術)を提供していない。インターネットなどのホットトピックスが取り上げられていない。
    1. 参考:資料-1a:情報処理とIEEE Computer, CACMの特集テーマの比較
         資料-1b:情報処理と日経コンピュータの特集テーマの比較、
         資料-2a:情報処理,電子情報通信学会, 日経コンピュータの目次構成の比較、
         資料-2b:情報処理,IEEE Computer, CACMの目次構成の比較 
  3. 読者(会員)のために学会誌になっていない:読みにくい分かりにくい。
    1. ほとんどの読者は当該分野の専門外であるが、同分野の専門家向けの記述となっており大多数の読者には理解が困難。
  4. 現行の閲読制度では内容や表現の見直しまではできない。

◇資料-1a:情報処理とIEEE Computer, CACMの特集テーマの比較(1996年1-12月)

情報処理 IEEE Computer CACM
1 計算物理学と超並列計算 外科医療への応用 自然言語処理
2 マルチメディア法律問題 同期 製造におけるコンピュータ科学
3 シミュレーション技術 ニューラルコンピューティング 暗号利用
4 並行計算の理論 形式的手法 学習者指向設計
5 第五世代コンピュータ ディジタル図書館 仮想現実
6 暗号安全性 インタフェース設計 電子商取引とインターネット
7 データベース標準化 対話的自然言語処理 アウトソーシング
8 計算機ベンチマーク Web/Java 計算のニューパラダイム
9 ディジタル図書館 オブジェクト指向開発の管理 技術移転
10 ゲノム情報 計算の50年(記念特集) ソフトウェアパターン
11 計算機ハードウェア システム試験と信頼性 データマイニング
12 計算機ハードウェア 共有メモリマルチプロセッサ インターネット@ホーム

*注:IEEE Computerは特集ではなく,巻頭論文のテーマのみを示す

◇資料-1b:情報処理と日経コンピュータの特集テーマの比較(1996年1-12月)

情報処理 日経コンピュータ
1 計算物理学と超並列計算 C/S時代を生き抜くSE, 小人数で開発期間1/3
2 マルチメディア法律問題 基幹系をパッケージで作る,イントラネットが広がる
3 シミュレーション技術 ワークフローで仕事を変える,ユーザを救う情報マネジャ
4 並行計算の理論 WindowsNTの実像,伸びる会社の脱オフコン法,情報システム動向調査,IBM最後の戦略NCC
5 第五世代コンピュータ WWWが覆すC/Sの常識,電子社会に規制の波,迫り来る不正侵入の危機,2000年問題待ったなし
6 暗号安全性 社内ソフトはこう管理する,ネットワークエージェント,WWWの弱点を克服する,OCNから始まる新システム
7 データベース標準化 攻めの基幹システム再構築,SEに問われる対話技術,Javaが走り出す,フリーソフトを使いこなす
8 計算機ベンチマーク Javaが起こすC/S開発革命,市販ツールが運用管理の主役,使えないデータ・ウェアハウス,クライアントはNTか95か
9 ディジタル図書館 寿命を考えたソフト開発,WWW時代のLAN構築法,動かないコンピュータ
10 ゲノム情報 次世代全社サーバの覇者,ヘルプデスク・サービスを試す,強い会社のシステム哲学,めざせソフト産業の国際化
11 計算機ハードウェア C/Sの性能を劇的に高める,情報共有に正攻法で挑む,実録・大規模C/S高速開発,イントラネットのユーザ管理
12 計算機ハードウェア 一歩進んだグループウェア活用,ORDBへの主役交代始まる,コンピュータユーザ顧客満足度調査

◇資料-2a:情報処理、電子情報通信学会、日経コンピュータの目次構成の比較(1997年1月)

情報処理 電子情報通信学会誌 日経コンピュータ
巻頭言 巻頭言 編集ノート(巻末)
特別論説(1編):「情報処理最前線」 寄書(1編) トレンド(4編)
特集(7編)

解説(1編)

事例(1編)

総合報告(1編)

解説(6編)

連載講座(1編)

教養のページ(1編)

学生のページ(1編)

私の意見(1編)

特集1, 特集2(2編)

技術解説(1編), 基礎講座(1編)

SYSTEMS INTEGRATION

(2000年問題コラム、システム最前線,

 危機からの脱出、がんばれユーザ部門,

 読者と考える中堅企業の情報化戦略)

インタビュー

書評

ニュース

シンポジウム開催報告

論文誌アブストラクト

本会記事(会告、会員の声)

図書紹介

ソサイエティのページ

国際会議報告

本会だよりなど

BOOKS

ニュース、

業界ニュース,新製品

カレンダー,伝言板

読者の声


◇資料-2b:情報処理, IEEE Computer, CACMの目次構成の比較(1997年1月)

情報処理 IEEE Computer CACM
巻頭言 Editor's Message  
特別論説(1編):「情報処理最前線」 Cover Features(4編) Cover Story(1編)
特集(7編)

解説(1編)

事例(1編)

Computing Practices

Department(Cybersquare, Internet Watch,Management,Object Technology,Binary Critic)

特集(4編)

解説(4編)

Practical Programmer(Columnsの一つ)

Columns(From Washington, On Site,Inside Risks)

書評

ニュース(シンポジウム開催報告)

論文誌アブストラクト

本会記事(会告,会員の声)

News Briefs

Product Reviews

CSUpdate

Report to Member

Technical Activities Forum

Call and Calendar

Open Channel/Letters

News Track

Forum

Calendar/Calls for Participation

Technical Opinion


4.2改革のアプローチ


[改革の理念]

  • 会員の関心のあるテーマを取り上げた分かりやすい解説記事を中心とする質の高い情報をタイムリーに提供。情報処理学会はこのような解説記事を書ける人材の我が国最大の組織であるはず。
  • 会員相互の交流の場。
[アプローチ]

内容、編集プロセス、誌面、メディアの4つの視点から改革のアプローチを提案する。短期的施策と長期的施策に分け、短期的課題は直ちに着手する。
  1. 内容:ホットトピックスを積極的に取り上げる姿勢とその仕組み作り。 →4.3. 1項
    1. 執筆要綱の見直し:スタイルに加え、執筆姿勢、記述方法などを示す。
    2. 海外関係学会との連携
  2. 作成方法・プロセス:改革を実現する組織とプロセスの仕組み作り。 →4.3. 2項
    1. 編集組織
      1. 編集長制度と少数の編集委員会
      2. 編集マネジャ制度の導入:読みやすさなどの表現の向上、誌面作りを行う専門家利用
    2. 編集プロセス
      1. 編集マニュアルの作成
      2. 特集の基準見直し:公募、レビューシステムの導入
  3. 誌面:分かりやすい誌面作り →4. 3. 3項
    1. *参考:資料-2a,2b
    2. 目次、内容のカテゴリ化(研究・実践)、表紙や表現のビジュアル、カラー化。
  4. メディア:インターネットの積極的な活用 →4. 3. 4項

4.3改革のアプローチを具体化する方法の提案

*●:短期的施策、○:長期的施策

4.3.1内容:ホットトピックスを積極的に取り上げる姿勢とその仕組み作り。


  1. 編集方針・ガイドラインを公開(宣言)する。

    ●学会誌の編集方針を早期に学会誌上で会員に公表。今後、著者にもこの方針で執筆依頼。○編集上の方針・ガイドラインを編集マニュアルとして具体化する。 ○研究偏重からの脱却:実用的(応用,実践)技術を扱う枠を設ける。情報技術の政策・社会的なインパクトも視野に入れる。○情報処理と社会,国の政策の関わりも扱うべき。

  2. 執筆要項の見直し

    ●執筆要項に読みやすさのガイドを示す。○スタイルに加え、執筆姿勢、記述方法などを示す。●執筆要項に優れた解説記事の例を付ける(Webで公開)。

  3. 特集・解説

    ●ホットトピックスの解説をタイムリに掲載できる仕組み。特集と解説の役割の見直し:特集のスペースを減らし,解説を増やす。ホットトピックスの解説を単独の解説論文として掲載できる機会を増やす。○特集・解説などの公募制度化とレビューシステムの導入,閲読制度の見直し○特集の決定プロセスの見直し, 編集サイクルタイムの短縮 →3か月計画●実務者向けの解説を継続して掲載する枠組みを作る。

  4. Department System

    1. 特定テーマに関する継続的な情報提供の場を設ける
    2. *参考:資料-2a,2b  参考:IEEE Computer(Internent Watch、Industry Trend、Management、Standard等)

  5. 会員の情報交流

    ○ニュース:毎号、教育・研究・産業で何が起きているかのニュース情報発信○会員の意見の広場

  6. ホットトピックスを集める方法

    ●研究会とのリンク:各研究会から1名アドバイザ。○研究会,シンポジウムのホットトピックス,優れたサーベイを掲載。●IEEE CS/ACMとの連携:情報提供の遅れを解消。優れた解説(グローバルなホットトピックス)の翻訳掲載:毎号1編以内。*参考:日経コンピュータは毎号IEEE Computer/Softwareなどの論文を1編翻訳掲載。

4.3.2編集プロセス


  1. 組織

    ○組織構成  編集長、副編集長、編集委員会(内容・企画立案)、エディタ(表現の改善)[専任が望ましい]*エディタ以外は学会会員が望ましい。○編集委員長の導入  編集全体に対する責任を負う:特集の決定、Departmentの運営○編集委員会の構成を見直す *参考:資料-3:編集体制の比較  肥大化した編集委員会のスリム化と各編集委員のコミットを高める。参考:情報処理:100名以上、IEEE Computer: 25名  記事項目をベースとする担当の明確化。実績をベースとする委員の選任。○権限のあるエディタ制度の導入  専任エディタにより読者の視点から分り易い文章になるようレビュー。例:IEEE CSではManaging editorが読み易さ等の点から編集する体制

  2. 編集プロセスの仕組み作り

    ○基本的な編集プロセスの概略を編集マニュアルとして示す。

  3. 内容に対するオープンなフィードバック

    ●内容に対する意見をWeb上で収集する。●内容に対する意見やモニターの評価をWeb上で公開する。

    ◇資料-3:情報処理,IEEE Computer, 日経コンピュータの編集体制の比較

      情報処理 IEEE Computer 日経コンピュータ
    編集長 編集委員会制度

    委員長1名

    副委員長1名

    編集長1名

    副編集長1名

    編集長1名

    副編集長5名

    編集委員 100名超

    (基礎、ソフト、ハード、アプリケーション、

     実務、書評・F-0=毎に主査・幹事各1名)

       
    アドバイザー 6名

4.3.3誌面


  1. 表紙

    ●カラー(多色刷) 参考:電子情報通信学会誌、電気学会誌、IEEE Computer、CACM●表紙デザインを毎号変える。 最初はカラーを入れてみることから始めて成功した例もある。

  2. 目次の視覚化

    ●カラー(多色刷) ●内容のカテゴリ(特別論説、特集、解説など)を視覚的にグループ化して表現。参考:電子情報通信学会誌、日経コンピュータ、IEEE Computer、CACMの目次  ●次号予定は別の場所に移す。

  3. 内容

    ●絵、図を多用した視覚的表現 →執筆要項に明記(要項には良い例を添付する)

  4. 版型

    ○A4版化

4.3.4インターネットの活用


  1. 学会誌に関する情報発信

    ●学会誌の目次、内容梗概をWeb上で公開、検索可能とする。 例:IEEE Computer、CACMでは実施済み○学会誌の電子出版化  例:IEEE Internet Computingでは記事をWeb上で公開。○Web上での記事に関連したサイトへのリンク付け。

  2. 非会員への情報発信
  3. 情報処理に関する産官学ならびに一般市民に対する情報提供の場