| 今後の日本にとって、情報処理産業は国の基幹産業の一つに数えられても良い。情報処理産業に携わる者は、技術のみならず、自らの活動が持つ経済的、文化的影響力をも意識する必要がある。情報処理の応用分野が多岐に渡り、技術自体も成熟して来るにつれ、情報処理に携わる人々の層も拡大してきた。 | 
           
            | このような社会環境の中で、日本の情報処理分野の根幹であるべき本学会が、社会全体に対してどのような役割を果たすべきかを、(1)学会という中立な立場から情報技術の発展を促し、その成果を社会に還元するためには何をすべきか、(2)学会は誰を相手にサービス(貢献)をするのか、という2つの観点から検討し、ここに提言をまとめる。
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 5.1産官学の連携 | 
           
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                国レベルの政策に対して 
                  
                    産官学の連携の問題は一学会では対応できないくらい大きい。しかし、どこかの学会が主体的に動かざるを得ないとしたら、それは情報処理学会が適任であろう。国レベルの科学技術政策に対して、アカデミアや産業界を代表して明確な意見を述べるべきである。 
                  広いスペクトルを持つ 
                  
                    本委員会が求める情報処理学会のあるべき姿は、基礎研究から製品までを統括し、産官学の広いスペクトルを視野に収め、あらゆる情報分野の顔となることである。 
                  ニーズとシーズの出会いの場 
                  
                    学会の場において基礎と基盤、基盤と応用をつなぎ、アカデミアのシーズ、産業界のニーズが出会う場を提供する。 
                  将来的には、アカデミアと産業界とのバランスの取れた融合を目指す。 
                アカデミアと産業界とがお互いに歩み寄るためのイベントの開催などを企画する。 
                あるいは、企業が抱えている情報処理に関する基本的な問題を公開する場を、学会が提供する。 
                さらに一歩進んで、学会がニーズとシーズを arrange 
                  することも考えられる。 
                他学会との関連 
                  
                    類似あるいは隣接した研究領域の学会に対する交渉や、将来の日本における情報系学会の整理統合再編への準備、推進役を期待されている面もある。 
                  議論の場の提供 
                  
                    公(産官学、ユーザ等)のために、議論の場を提供できるのは学会しかない。会議等での公開討論、紙上討論を積極的に進めていく必要がある。 
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 5.2技術、産業の振興 | 
           
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                新しい情報処理市場の開拓 
                  
                    情報処理にとっての新しい市場の開拓を志すべきである。 
                      例えば、初等教育関係者、物理、化学、ロボット等であり、このような人々に対する新しいサービスの創出を行い、産業間の交流を深める必要がある。 
                  表彰制度の見直し 
                  
                    これまでは、水準の高い論文を生み出した研究成果に対して表彰が行われていた。今後これだけでは不十分である。例えば、アイデアの優秀さを積極的に評価する賞、日本で育ったオリジナルソフトや製品等、実用性や社会的貢献度の高いものに対する賞、社会的文化的に優れた影響を与えた人に対する賞、などが考えられる。 
                  社会に役立つ論文の採録 
                  
                    「論文のための論文」あるいは「質より量」を意識せざるを得ないような論文を採録する現状の論文誌システムには疑問を感じる。本当に社会生活に役立つ研究成果を評価し権威づけすべきである。 
                      これが、情報技術・技術者の社会的地位向上へとつながる。 
                  実務家に役立つ情報の提供 
                  
                    現在の情報処理学会は実務家にとって役立つ情報を提供していない。 
                      実務家にとって役立つ情報とは、日経XX 
                      のような業界最新動向や、自分がビジネスの現場で直面している問題を解決するためのヒントなどである。 
                  ベンチャービジネス 
                  
                    ベンチャービジネス育成の支援 (特に具体的な方策の議論はされなかった)。 
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 5.3技術成果の還元 | 
           
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                時宜を得た製品情報のアナウンス 
                  
                    学会は基本的に中立な立場を堅持すべきであるが、中立にこだわり過ぎるあまり、タイミングを逸していることはないか。優れた技術を持った製品なら、それをアナウンスする場を提供しても良いだろう。 
                  基礎研究レベルからの社会への成果フィードバック 
                  
                    大学は基礎研究といえど研究成果を社会に還元し、社会からの具体的な評価やフィードバックを受けて、研究を進めて行く必要がある。研究成果を生み出す側と利用する側の、気楽な(コミットを強制されない)相互選択可能な「見合い」、「交流の場」として学会の役割は極めて大きい。 
                  学会発行物の電子化および公開 
                  
                    学会発行物をできる限り電子化して公開し(WWW 
                      上などで)、会員のみならず一般の多くの人々の目に触れさせ、学会では何が行われているかということをまず知ってもらうことが情報処理技術に関する裾野を広げるために必要である。 
                  当該分野に関する情報提供 
                  
                    各研究分野に関する情報 (研究者、研究テーマ、研究成果等) 
                      を整理して公開し、研究や教育に利用する。 
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 5.4教育、啓蒙 | 
           
            | 情報処理に関する教育や一般人に対する啓蒙を、情報処理学会が責任をもって遂行することは、学会の権威の源となろう。教育の対象者として 
              1. 大学などの学生 2. 社会人 (エンジニア、マネージャ)3. 
              技術者、研究者 4. 教員 の 4 種類が考えられる。
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                学生に対する教育 
                  
                    大学における情報カリキュラムの開発・認定、各大学の情報カリキュラムの評価などが考えられる。 
                    学生の鍛練の場、あるいは学生が自分の研究について社会と交わる最初の場として学会を位置づけることもできる。大学をオープン化するだけではやはり限界がある。 
                    また、理工系離れを防ぐため、学会が子供達に対してインターネットの面白さを伝えるイベントを企画するのも良いだろう。 
                  社会人に対する教育 
                  
                    技術革新の速さ、企業の能力主義導入による社内教育の変化から、教育を必要としているのは、エンジニアだけではなく、マネージャやエグゼクティブも同様である。 
                    学会において定評のある専門家による、会員、非会員に対する情報処理教育・セミナを企画すべきである。企業が大学を教育機関として活用することも可能で、学会はその橋渡しをするのに適任である。・IEEE 
                      のように各企業のエンジニアに役立つような教育・情報伝達は必須である。 
                  技術者、研究者に対する教育 
                  
                    大学側にとって教育スタッフの確保は非常に重要な意味をもつ。 
                      公募などで短期間で判断するのではなく、学会での長い交流をベースに人材確保できるようにしておくことは意義が大きい。 
                  教員に対する教育 
                  
                    小中高の情報処理担当の先生をターゲットとする。 
                      文部省研修の一貫として認定制度を設ける働きかけ、支援をすると良いだろう。 
                  社会に対する啓蒙 る必要がある。 
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