2018年11月05日版:坊農 真弓(会誌/出版担当理事)

  • 2018年11月05日版

    「「女性」という下駄」

    坊農 真弓(会誌/出版担当理事)


     この記事で私がみなさんにお伝えしたいメッセージは,「女性が『女性』という下駄をはかされているうちは,真の女性の活躍は見込めない」ということだ.手荒な言い方かもしれないが,女性自身が問題に気がついて主体的に動かなければ,今の日本は変わらないと,私は思っている.

     みなさんご存知のように,情報処理学会は女性会員が極端に少ない.2017年度の統計資料によると女性会員は全体の8%だそうである.学生会員だけに絞ると17%, ジュニア会員だけに絞ると23%と,若いほど女性のパーセンテージは上がっていく.正会員だけに絞ってしまうと6%と非常に残念な数字である.

     情報処理学会の正会員の大半は,今ほど女性の活躍が叫ばれなかった時代に日本社会を支えてきたシニア層である.男性はソトで働き,女性はウチで守るという生き方が非常に合理的だった時代である.平成が終わりゆく2018年の今であっても,この生き方を選択する人々はとても多いと私は感じる.女性は妊娠・出産という身体的に非常に負担のかかる時期を過ごさざるを得ない.妊娠・出産前にバリバリと働いていた女性にとっては,社会から取り残される感覚や時間が止まったような感覚に襲われてしまう時期である.33歳で第一子を出産した私は,まさか自分もあの「M字カーブ」の窪みに落ち込んでしまうとは夢にも思っていなかった.第一子が8歳になろうとしている今,この窪みから這い上がり,M字のもう1つの山を築いていく自信は私にはまったくない.若いときほどの体力がないのだ.

     さて,日本はどうしていったらいいのだろうか.先日,子供をお風呂に入れてふと一息ついたとき,NHKのドキュメンタリー番組の一部を目にした.「ハートネットTV平成がのこした“宿題” 第2回「ジェンダー格差」」(2018年10月3日午後8:00初回放送)である.この日は,男女平等指数が9年連続1位のアイスランドの取材をベースに番組が作られていた.アイスランドでは国会議員や企業役員の4割が女性だそうである(参考URL(1)より).この30年,日本でも女性の社会進出が一気に進んだ.結婚や出産をしても働き続けることが当たり前となってきた.育児しながら働き続ける私たちを見て,親世代の女性は「私たちの時代はそんなことは許されなかった.あなたたちは恵まれている」と口をそろえる.その一方で,同時期のアイスランドの女性らは,自ら立ち上がり,「女性の休日」と呼ばれるストライキを行った.1975年10月24日,アイスランドの女性らは北欧に存在する不平等に対し,男女平等を訴える目的で,仕事のみならず家事や育児も放棄したのだ.その結果,国は大混乱.「学校や託児所,銀行,工場,店は閉めなくてはならず,父親は子どもたちを会社に連れて行く羽目に」(参考URL(2)より).国民全体の意識を変える歴史的なストライキだった.

     一方で,日本の女性は男性主体の社会に守られていると感じる.結婚・出産をしても働き続けられる環境は,女性諸先輩がたのさまざまな努力や活動があったにせよ,男性主体の会社や社会が女性が働き続けるための規則作りを進めてきたことに楚をなしている.昨今の安倍内閣による「すべての女性が輝く社会づくり」(参考URL(3))も男性主体の内閣が掲げている政策である.アイスランドのストライキほどのインパクトを要するかは別にして,女性自身が社会全体を震わせる動きをしていくべきではないだろうか.私たち女性が,「女性」という下駄を履かせてもらって,分不相応な仕事をいただいていると実感している限り,社会は男性主体で回っている.さあ,今こそ「女性」という下駄を脱ぎ捨てて,自分の足で歩き,自由に発想してみようじゃないか!

    参考URL:
    (1)https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2272/1716125/?fbclid=IwAR19twFVdrQPIATyI9S74Twqy-rKNr030QVb4UypNUjkv4dud0c-Hmuea2g
    (2)https://www.cafeglobe.com/2015/11/050285womens_day_off.html
    (3)https://www.kantei.go.jp/jp/headline/josei_link.html