2019年08月05日版:栗原 英俊(財務担当理事)

  • 2019年08月05日版

    「企業系会員による学会活用」

    栗原 英俊(財務担当理事)


     学会は、一般社団法人のため、おおざっぱに言えば、会誌発行やイベント開催等の実務を担う事務局(社員)の方々、本業の傍らで学会全体の方針を担う理事会から構成され、さらに各委員会、各研究会に大学や企業から多くの方々がかかわって運営されています。

     一般企業のように学会自身が魅力あるイベントや会誌などのサービスを提供して事業として成り立たせてくことも重要ですが、会員の方、特に企業系会員の方がもっと学会を活用していくことが会員自身のメリットと学会の価値向上に繋がると思います。

     私は企業の研究所に所属していて、部署(約80人)でアンケートをとってみたのですが、情報処理学会には約半数の方が会員になっていました。その中でも、企業の研究者として活躍している方は、研究会や連続セミナーなどに積極的に参加することで社外との人脈や信頼関係ができ、社外会員の方と論文輪講や査読の機会が増えて、本業の研究開発にもうまく活用できているようです。読者の方で会誌だけを利用している方は、機会があれば研究会やイベントにも参加してみると良いのではないでしょうか。

     一方、学会に入らない理由として、会費の個人負担、会員にならなくてもイベント参加可能、他の学会に所属していることが主なものでした。企業系会員の減少が続く中、非会員の方を単に勧誘するのは難しい状況です。既存の企業系会員の方が自己投資として学会を活用して活躍することで、非会員の方が学会に関心を持ち、新たに会員になってもらえば、大学や他企業の会員同士で相互研鑽できる学会になっていくのではないかと思います。

     企業系の研究者は本業に近いため、学会に興味を持ってもらえますが、ソフトウェア開発者等の実務家に対して、学会がどう向き合っていくのかは大きな課題と考えます。学会は実務家向けのデジタルプラクティスを発行していますが、今後の方針をどうしていくかは議論になっています。

     私は研究開発部門に移る前は、システムエンジニアでした。業務に必要な情報は、業界誌・書籍・Webなどから得られるため、学会と接点を持つ機会はほとんどありませんでした。しかし、先端技術が必要な場合は、研究所や他企業・大学と連携するケースがありました。現状は、各企業で個別に産学連携を行っていると思いますが、もし学会が中立的にハブとなれるように広く情報を提供できる機能を持てば、産学の関係者に対して新たな価値を提供できる可能性があると思います。

     特に昨今はデジタルトランスフォーメションに向けて、IT企業はデータやAIなどを活用することで、事業を革新したい企業の現場や経営者に対して、事業価値を高める提案が求められています。1社単独で価値を提供するのは難しい時代になっているので、学会が産学連携や業界連携の場を提供するには良いタイミングだと思います。具体的な施策については、学会の関係者と議論していきたいと思いますが、メールニュースの読者から意見やコメントがあればぜひ取り入れていきたいので、よろしくお願いします。