「センサ観測値分布の概要把握を可能とする階層化ドロネーオーバレイネットワーク構築手法」

2010年度論文賞受賞者の紹介

「センサ観測値分布の概要把握を可能とする階層化ドロネーオーバレイネットワーク構築手法」

[情報処理学会論文誌 Vol.51, No.2, pp.624-634]
[論文概要]

 広域にわたるセンサ情報を収集するために,収集対象となるセンサを要求される密度を満たすように一様に選択し,選択されたピア群からなる上位階層ネットワークを持つ階層化ドロネーオーバレイネットワークの構築手法を提案する.このとき,各ピアが自律的に情報収集対象となるか判断できるよう,ボロノイ領域の面積に基づいた確率的手法を用いる.提案手法をシミュレーションにより評価し,ピアの分布の疎密に関わらず領域全体から一様にピアを選択し,ドロネーオーバレイネットワークの階層化が行えることを確認した.



[推薦理由]

 本論文は,ドロネーオーバレイネットワークを適用したセンサネットワークにおけるピア(センサ)選択手法であり,階層的にドロネーオーバレイネットワークを構成することで,所望の分布密度で空間的に一様なピア選択を実現する手順を明らかにしている.提案手法は,ネットワーク全体のピアの分布状況を知ることなく,各ピアの保持する局所的な情報のみで実現可能な画期的な手法であり,新たな研究領域を開拓する内容となっている.ピアが空間的に偏って分布している場合も,領域全体から一様にピアを選択しセンサデータを収集することが可能であり,様々なアプリケーションへの適用が期待できる.また,幾何学的なモデルを用いて提案手法の有効性を数学的に示している点も高く評価できる.よって,本論文を論文賞として推薦する.

小西 佑治 君

 平成19年大阪大学工学部電子情報エネルギー工学科卒業.平成21年同大学院情報科学研究科博士前期課程修了.在学中は P2P ネットワークに関する研究に従事.同年,株式会社アイ・エム・ジェイ入社.現在,株式会社IMJモバイルに出向中.

寺西 裕一 君

 平成5年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.平成7年同大学院基礎工学研究科博士前期課程修了.同年,日本電信電話株式会社入社.平成17年大阪大学サイバーメディアセンター講師,平成19年同大学院情報科学研究科准教授,現在に至る.博士(工学).マルチメディア情報システム,ユビキタス応用システムなどの研究開発に従事.IEEE 会員.

竹内 亨 君

 平成13年大阪大学基礎工学部情報科学科卒業.平成15年同大学院基礎工学研究科博士前期課程修了.平成18年同大学院情報科学研究科博士後期課程修了.博士(情報科学).同年同研究科マルチメディア工学専攻助手,平成19年同助教,平成21年情報通信研究機構専攻研究員を経て,平成23年日本電信電話株式会社未来ねっと研究所研究主任となり,現在に至る.ソーシャルネットワークおよびオーバーレイネットワークを活用した情報システムの研究開発・展開活動に従事.IEEE会員.

春本 要 君

  平成4年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.平成6年同大学院基礎工学研究科博士前期課程修了.同年,大阪大学大学院工学研究科情報システム工学専攻助手.平成11年大阪大学大型計算機センター講師,平成12年同大学サイバーメディアセンター講師を経て,平成16年同大学大学院工学研究科助教授となり,現在に至る.博士(工学).データベースシステム,マルチメディア情報システムなどの研究に従事.電子情報通信学会,IEEE各会員.

下條 真司 君

  昭和56年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.昭和61年同大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).同年大阪大学基礎工学部情報工学科助手.平成元年同大学大型計算機センター講師.平成3年同助教授.平成10年同教授.平成12年同大学サイバーメディアセンター教授,現在に至る.平成17年より同センター長,平成20年より独立行政法人情報通信研究機構大手町ネットワーク研究統括センター上席研究員,平成23年より同テストベッド研究開発推進センター長に就任.LAN のアクセス方式の性能評価,分散処理システムの性能評価,分散型オペレーションシステム,グリッドコンピューティング,ユビキタスネットワーク等の研究に従事.電子情報通信学会,IEEE,ソフトウェア科学会各会員.

西尾 章治郎 君

  昭和50年京都大学工学部数理工学科卒業.昭和55年同大学院工学研究科博士後期課程修了.工学博士.京都大学工学部助手,大阪大学基礎工学部および情報処理教育センター助教授,大阪大学大学院工学研究科情報システム工学専攻教授を経て,平成14年より大阪大学大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻教授となり,現在に至る.平成12年より大阪大学サイバーメディアセンター長,平成15年より大阪大学大学院情報科学研究科長,その後平成19年より大阪大学理事・副学長に就任.この間,カナダ・ウォータールー大学,ビクトリア大学客員.データベース,マルチメディアシステムの研究に従事.現在,Data & Knowledge Engineering等の論文誌編集委員.本会理事を歴任.本会論文賞を受賞.電子情報通信学会フェローを含め,ACM,IEEE等8学会の各会員.