「相乗りのための将来需要を考慮した経路最適化」

2020年度論文賞受賞者の紹介

相乗りのための将来需要を考慮した経路最適化

[情報処理学会論文誌 Vol.60 No.10, pp.1653-1661]
[論文概要]

 配車サービスにおける相乗りを実現するために,膨大な計算量を伴う顧客と車両の割当および経路生成が必要である.従来より予測モデルに基づいて割当を行う手法が提案されている.しかし,従来法では予測モデルにより生成した架空の顧客を用いて車両の割当を最適化するため,車両の総移動距離が大幅に増加する問題があった.本論文では,架空の顧客を扱うのではなく,実在する顧客のみを車両に割り当てた後,将来需要を考慮した経路を生成する手法を提案した.タクシーの実データを用いた数値実験の結果,提案法は車両の移動距離をほとんど増加させずに,乗車できない顧客数を減らせることを確認できた.

[受賞理由]

 世界中で急成長しているシェアリングビジネスのひとつの領域として移動のシェア、相乗り、がある。研究も多数行われており、関心が高い課題である。本論文では、従来に比べてリジェクト率(乗車できない顧客の割合)と車両の平均移動距離がバランスよく計算可能であるといった有用性を提案手法が有することを、実データを用いて示しており、実問題解決への貢献が認められる。また、相乗りはマルチエージェントシステム研究の対象事例の一つであり,学術分野への貢献も明確である。以上から、論文賞に相応しい優れた論文として推薦する。

大社 綾乃 君

2015年大阪府立大学工学部知能情報工学科卒業.2017年同大学大学院修士課程修了. 同年株式会社豊田中央研究所入社.意思決定や経路の最適化に関する研究に従事.

大滝 啓介 君

2016年京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻修了.京都大学博士(情報学). 同年株式会社豊田中央研究所入社.意思決定に関するデータ解析と最適化に関する研究に従事.

小出 智士 君

2004年大阪大学理学部数学科 卒業.2006年同大学情報科学研究科 博士前期課程 修了.同年株式会社豊田中央研究所入社.2020年名古屋大学情報学研究科 博士後期課程 修了.時空間データベースと機械学習の研究に従事.

西 智樹 君

2005年大阪大学応用理工学部機械工学科卒業.2007年同大学大学院知能機能創成工学専攻修士課程修了.同年株式会社豊田中央研究所入社.意思決定の最適化と自動運転及びMaaSへの応用に関する研究に従事.