「Network-on-ChipにおけるFat H-Treeトポロジに関する研究」[論文誌Vol.48, No.SIG13(ACS19), pp. 178-191(2007)]

平成19年度論文賞受賞者の紹介

「Network-on-ChipにおけるFat H-Treeトポロジに関する研究」[論文誌Vol.48, No.SIG13(ACS19), pp. 178-191(2007)]

[論文概要]
 Fat H-Tree は Fat Tree の代替として提案されたツリー型トポロジであり,2個の H-Tree から成るトーラス構造を内包している.本論文では,Fat H-Tree 向けのルーティングアルゴリズムを提案し,Fat H-Tree トポロジの性能およびハードウェア量を他のツリー型トポロジと比較する.さらに,3次元構造を持ったIC向けに Fat H-Tree のレイアウト方法を提案し,Fat H-Tree の2次元および3次元レイアウトについて配線量と消費エネルギーを評価する.その結果,Fat H-Tree は同規模の Fat Tree よりも配線量が若干多いものの,面積,性能,消費エネルギーの点で Fat Tree よりも有利であることが分かった.

[推薦理由]
 本論文は、計算機システムの高性能ネットワークに対して、Fat H-Treeと呼ばれるトーラスと木を内包した方式を提案し、その最短経路のルーティングを求めている。方式とアルゴリズムは新規性が高いだけでなく、ハードウェアとして実装した上で、実際的なベンチマークプログラムにより評価することで、性能、ハードウェア量、消費電力などを明らかにしており、有用性も高い。また、3次元LSIにおけるレイアウトの提案についても触れており将来性も高い。以上の理由により論文賞に相応しいと判断する。

松谷 宏紀 君  平成16年 慶應義塾大学環境情報学部卒業.平成20年 同大大学院理工学研究科開放環境科学専攻博士課程修了.博士(工学).現在,同大大学院理工学研究科訪問研究員.平成18年度より日本学術振興会特別研究員.チップ内ネットワークの研究に従事.

鯉渕 道紘 君  平成12年 慶應義塾大学理工学部情報工学科卒業.平成15年 同大大学院理工学研究科開放環境科学専攻博士課程修了.博士(工学).平成14年度より16年度まで日本学術振興会特別研究員.現在,国立情報学研究所助教,総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻助教(兼任).相互結合網と並列処理に関する研究に従事.IEEE,電子情報通信学会会員.

天野 英晴 君  昭和56年 慶應義塾大学工学部電気工学科卒業.昭和61年 同大大学院工学研究科電気工学専攻博士課程了.工学博士.現在,慶應義塾大学理工学部情報工学科教授.計算機アーキテクチャの研究に従事.