「レイヤ2ネットワークにおけるループ障害のリモート診断方式」

平成21年度論文賞受賞者の紹介

「レイヤ2ネットワークにおけるループ障害のリモート診断方式」[情報処理学会論文誌 Vol.50, No.8, pp.1810-1822]

[論文概要]

 経済的に大規模なレイヤ2ネットワーク(イーサネット)の構築が可能となってきているが,障害の波及範囲も広域化し,可用性を低下させる要因となっている.特に,ループ障害は,システム全体の稼働停止に至る典型的な大規模障害である.これを回避するSTP等の従来技術では,十分な効果が得られない場合も多い.また,従来は,ループ障害が発生するとネットワークの機能は全て失われるため,ネットワークを利用したリモート診断は不可能と考えられていた.本論文では,ネットワークの正常機能を回復させた上で,その原因箇所をリモートホストから迅速に探索発見する診断型のアプローチを提案している.



[推薦理由]

 本論文は、レイヤ2でループが構成されて障害が発生しているネットワークに対して、障害原因を診断する方式を提案している。近年、VLANをベースとした広域レイヤ2サービスが企業向けに広く普及する一方、広域化・VLANの利用によってレイヤ2でのループ原因の究明が非常に複雑・困難なものになりつつある。本論文はループ障害を事前に防止するという従来のアプローチとは異なり、発生したループ障害の原因個所を迅速に発見しようとするものである。簡単、かつ、汎用のL2スイッチにも対応できる方式となっており実用性も高い。また実測データを用いてその有効性の評価も十分に行っている。以上のように、新規性と有効性に優れた高いクオリティを持つことから、本論文を論文賞に推薦する。

勝山 恒男

 1974年慶應義塾大学工学部計測工学科卒業.1976年同大学大学院修士課程修了.同年富士通(株)入社.富士通研究所において,ネットワークアーキテクチャ並びにネットワークサービス,サービスプラットフォーム技術およびICTシステムの自律型運用管理技術に関する研究開発に従事.博士(情報科学).電子情報通信学会会員.

安家 武

 1996年大阪大学工学部通信工学科卒業.1998年同大学大学院博士前期課程修了.同年(株)富士通研究所入社.ネットワーク監視技術に関する研究に従事.電子情報通信学会会員.

野村 祐士

 1992年北海道大学工学部情報工学科卒業.1994年同大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.同年富士通研究所入社.以来、ネットワークアーキテクチャ、ネットワークにおける障害検出に関する研究開発に従事.2001-2002年コロンビア大学客員研究員.電子情報通信学会会員

若本 雅晶

 1982年横浜国立大学大学院工学研究科修士課程了.同年富士通(株)入社.富士通研究所において,交換ソフトウェア,インテリジェントネットワーク,IPサービス制御アーキテクチャ,IPネットワーク計測・運用技術の研究開発に従事.電子情報通信学会会員.

野島 聡

 1978年早稲田大学大学院理工学研究科電子通信専攻修士課程修了.同年株式会社富士通研究所入社,現在に至る.主にパケットネットワーク,スイッチング技術の研究に従事.電子情報通信学会会員.

木下 和彦 君

 1973年生.1996年大阪大学工学部情報システム工学科卒業.1997年同大学大学院工学研究科情報システム工学専攻博士前期課程修了.1998年3月同博士後期課程退学後,同年4月より同大学大学院工学研究科情報システム工学専攻助手.同大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻助手,助教を経て,2008年同准教授.現在,ネットワークアーキテクチャ,モバイルネットワーク,エージェント通信システムに関する研究に従事.博士(工学).電子情報通信学会,IEEE各会員.

村上 孝三

 1971年大阪大学工学部電子工学科卒業.1973年同大大学院修士課程修了.同年富士通(株)入社.富士通研究所通信研究部門,同所マルチメディアシステム研究所を経て,1995年大阪大学大型計算機センター教授.1998年同大学大学院工学研究科情報システム専攻教授.2002年同大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻教授.マルチメディア情報通信システム,フォトニックネットワーク,インテリジェントネットワーキングの研究に従事.IEEEフェロー,電子情報通信学会フェロー.工学博士.