2023年度受賞者

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2023年度コンピュータサイエンス領域功績賞受賞者

コンピュータサイエンス(CS)領域功績賞は,本領域の研究会分野において,優秀な研究・技術開発,人材育成,および研究会・研究会運営に貢献したなど,顕著な功績のあったものに贈呈されます.本賞の選考は,CS領域功績賞表彰規程およびCS領域功績賞受賞者選定手続に基づき,本領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は9研究会の主査から推薦された下記9件の功績に対し,本領域委員会(2023年10月6日)で慎重な審議を行い決定しました.各研究発表会およびシンポジウムの席上で表彰状,盾が授与されます.

飯沢 篤志 君 (データベースシステム研究会)
[推薦理由]
 本会正会員飯沢篤志君は,我が国のデータベース研究分野において,企業研究者(株式会社リコー,リコーITソリューションズ株式会社)の立場から,長年にわたって,データベース管理システム,マルチメディアシステム,文書管理システム,図書館情報システム,特許システムなどの研究開発に従事し,多くの成果を挙げてきた.これに加え,データベースの教科書(「データベースおもしろ講座」共立出版 (1993年4月30日))を執筆するなど,データベース技術の普及,教育にも貢献されている.
 学会活動においては,日本データベース学会において,監事(2012〜2016年),総務担当副会長(2016年〜2022年)の要職を歴任し,特に総務担当副会長として学会の一般社団法人化に多大な貢献をされている.
 以上のことから,飯沢篤志君は,我が国のデータベースコミュニティの発展に極めて顕著な貢献をされており,CS領域功績賞に相応しい人物として強く推薦する.
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今村 智史 君 (システム・アーキテクチャ研究会)
[推薦理由]
 今村智史氏は,我が国のコンピュータ・アーキテクチャ分野に対して,研究活動と学会運営の両面において,大きく貢献を続けている人物である.メモリやストレージシステムに関する研究に従事し,特に次世代不揮発性メモリの分野において優れた成果をあげている.また学会運営の面でも,2020年度から2022年度にかけて,システム・アーキテクチャ研究会の幹事として,産業界の立場から当研究会の活性化に大いに貢献した.特にコロナ禍の中で,さまざまな前例のない課題に対処しながら,オンラインやハイブリッド形式での研究会開催に尽力され,学会員や研究会登録会員にこれまでと同等以上の体験を提供することができた.以上のとおり,同氏によるシステム・アーキテクチャ研究会ならびにコンピュータ・アーキテクチャ分野に対する貢献は極めて大きいことから,CS領域功績賞の受賞候補者にふさわしいと判断しここに推薦する.
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石川 裕 君 (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
[推薦理由]
 本会正会員石川裕君(フェロー)は高性能コンピューティングのためのシステムソフトウェアの発展に大きく貢献した.1990年代のPCクラスタの黎明期から,PCクラスタのためのシステムソフトウェア技術の研究開発を主導した.その成果はクラスタ計算機用超並列プログラム実行環境としてオープンソースで配布され,国内外の多くの大学・研究機関等で利用された.2001年にはPCクラスタコンソーシアムを発足させ,現在もPCクラスタ技術の発展に貢献し続けている.2014〜2020年度にはスーパーコンピュータ「富岳」の開発プロジェクトリーダーを務め,OSレベルでの高性能化や使いやすさの向上などを実現した.1999〜2002年度にはシステムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会主査を務め,2005〜2006年度には論文誌コンピューティングシステム(ACS)の編集長を務めるなど,数多くの役職を歴任しており,運営面でもCS領域に多大な貢献がある.以上より,石川氏のシステムソフトウェアおよびCS領域への貢献は極めて顕著であり,CS領域功績賞に相応しい人物として強く推薦する.
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川村 一志 君 (システムとLSIの設計技術研究会)
[推薦理由]
 川村氏はSLDM研究会運営委員会の幹事を2021年度から2022年度の2年間に渡り務められ,合計6回の運営委員会を主催し,円滑な研究会運営に大きく貢献された.また,2019年度から2020年度の2年間においてはSLDM研究会が主催するフラッグシップシンポジウムであるDAシンポジウムの実行委員幹事を務められたほか,2022年度にもDAシンポジウムの開催に大きく貢献いただいた.加えて,2021年度から2022年度において当研究会が単独開催したWIP Forumの企画・実施を務められた.上記のように川村氏は,研究会の運営やイベントの開催など,多方面にて近年のSLDM研究会に多大な貢献をされており,SLDM研究会は川村氏をCS領域功績賞の候補者としてふさわしい者として推薦いたします.
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岩下 武史 君 (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
[推薦理由]
 岩下武史君は, 高速電磁場解析シミュレーションや高性能な大規模連立一次方程式の求解法の分野で優れた研究を行ってきた.特に,3次元ポアソンソルバや前処理付き反復法の並列アルゴリズム開発で著名であり,その成果は高く評価されている.例えば,2012年に提案したABMC(Algebraic Block Multi-Color)順序付け法は,HPCGベンチマークの高性能実装技術の一つとして知られ,商用解析ソフトウェアにも採用されている.また,本会山下記念研究賞や電気学会電力・エネルギー部門誌優秀論文賞を受賞するなど,高性能計算分野と電気工学分野の学際領域で質の高い研究を行ってきた実績を持つ.北海道大学では研究室を主宰し,多くの学生の研究指導を行っており,CS領域における人材育成への貢献も大きい.以上の研究業績だけではなく岩下君は,情報処理学会ハイパフォーマンスコンピューティング研究会主査・幹事・運営委員を歴任し,CS領域の発展に顕著な貢献を行ってきた.これらの多年にわたる岩下君のCS領域への貢献を評価し,同君をCS領域功績賞に推薦する.
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岩崎 英哉 君 (プログラミング研究会)
[推薦理由]
 岩崎英哉氏は,1997~2000年度,2003~2011年度にプログラミング研究会の連絡委員・運営委員・幹事・主査を,2000~2003年度,2005~2011年度に論文誌プログラミング編集委員・編集長をそれぞれ歴任され,研究会・論文誌の発足・刊行初期の運営に尽力されました.プログラミング言語およびその処理系,システムソフトウェア等に関する研究会発表は委員を退任された後も数多く行われているほか,論文誌の査読にも多くご協力いただいており,現在に至るまで継続的に研究会の活性化に貢献されています.加えて,プログラミング分野の人材育成への貢献も大きく,実際,本研究会および論文誌の運営委員・幹事・編集委員として活躍する人材を多く輩出されています.
 このように,氏の長年にわたる研究会運営への貢献ならびにプログラミング研究分野における研究,人材育成への貢献は顕著であり,コンピュータサイエンス領域功績賞にふさわしい者として推薦いたします.
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岡本 吉央 君 (アルゴリズム研究会)
[推薦理由]
 岡本吉央氏は,コンピュータサイエンス計算理論分野で優れた研究を行なっており,特に情報科学の基盤となる離散数学,離散アルゴリズム,離散最適化分野において,第一線で活躍され多くの研究成果を挙げ,研究分野の発展に大きく貢献された.さらに計算理論の国際雑誌Graphs and Combinatorics,Journal of Computational Geometry,Journal of Graph Algorithms and Applicationsなどの編集委員,計算理論国際会議International Symposium on Algorithms and Computation(ISAAC2017)のCo-chair,国際会議のProgram Committee Memberを30回以上を勤めるなど,計算理論分野において国際的にも大きく貢献された.
 本学会においては,2021年船井ベストペーパー賞を受賞され,アルゴリズム研究会の幹事を2014年度からから2017年度まで4年間勤め本研究会の運営に寄与した.
 以上のように,日本におけるアルゴリズム,計算理論の研究の推進への貢献は高く,CS領域功績賞に値すると考え,推薦いたします.
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棟朝 雅晴 君 (数理モデル化と問題解決研究会)
[推薦理由]
 棟朝雅晴氏は,情報処理学会数理モデル化と問題解決研究会 主査を2013年度から2014年度まで2年間勤め,この間,約10回の研究会を開催したほか,情報処理学会 論文誌「数理モデル化と応用」編集委員長を2019年度から2022年度まで勤め,当研究会の活性化に大いに貢献した.また,このうち2回は Int'l Conf on Parallel and Distributed Processing Techniques and Applicationsの中でMPSセッションとして開催するなど,研究会の国際化にも努めてきた.2022年度から現在まで進化計算学会 会長をはじめ,7大学情報基盤センター クラウドコンピューティング研究会 主査,国立情報学研究所 学術情報ネットワーク運営・連携本部委員,クラウド利用促進機構 総合アドバイザー,大学ICT推進協議会 理事等の役割を果たしてきた.
 棟朝雅晴氏は,ビッグデータ時代における高性能なインタークラウドシステムを実現する研究を進めてきており,全国の大学や研究所が所有するプライベートクラウドシステムに加えて, 民間のパブリッククラウドシステムも連携させたクラウドのクラウドとなるインタークラウド環境を柔軟かつ容易に実現するための研究を進めるとともに, 最適化スーパーコンピュータとクラウドシステムを連携させた高度な数値計算やデータ解析を実現する研究分野を先導してきた.
 上記のように同氏による研究会の運営を始め,多方面にて当研究会が対象とする研究領域に対する貢献は極めて大きく,CS領域功績賞受賞候補者として推薦するものである.
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小野寺 民也 君 (量子ソフトウェア研究会)
[推薦理由]
 2010年代半ばより量子コンピュータは一大新潮流として台頭し,主要国は国家戦略としてこれに投資し開発競争も熾烈を極めているが,1980年代の始原期よりこれを進展させてきたのは主として物理学者と理論計算機学者であった.実用化にむけた動きが加速するなかで,情報,数理,電子工学等のさまざまな分野の研究者が結集すべきことが喧伝され,就中,これまでのコンピュータシステムの発展を牽引してきた情報系の研究者の益々の参画が不可欠と考えれている.
 かかる状況のなか,小野寺民也氏は,我が国の情報処理技術を牽引してきた本学会が,量子ソフトウェアの新分野に参画することは,時代の要請であり学会の責務であることを痛感したのであった.而して,迅速なる行動のもと,斯会の泰斗を含む26名の発起人を集め,新設提案書を短期日に作成し,2019年8月18日に自らを発起人代表としてコンピュータサイエンス領域委員長に提出し,量子ソフトウェア研究会を時機を失することなく設立すべきことを建言したのであった.
 当該提案書は無事裁可され,量子ソフトウェア研究会は,研究グループを経ることなく,2020年度より発足した.爾来,有力なる役員陣のもと,2022年度までに8回の研究発表会を実施し,登録会員数は155名に上り(2022年10月時点),順調なる軌道を辿っている.
 情報処理学会における量子ソフトウェア研究会の発足は米国計算機学会に先んじるものであり,発足3年を経て,多様な専門性を持つ研究者および実務者が集結する場として着実に成長しつつあり,日本における量子ソフトウェアなる新分野の発展を牽引しつつある.
 かかる研究会の発足と育成に尽力した小野寺氏の功績は絶大無比であり,ここに本研究会からのCS領域功績賞受賞候補者として熱烈に推薦する次第である.
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