会誌のハイブリッド刊行に向けて

稲見昌彦(会誌「情報処理」編集長)
中田眞城子(会誌「情報処理」副編集長)

 本会がめでたく60周年を迎えましたが,同時に会誌である「情報処理」も1960年に第1巻目が創刊し,休刊することなく通巻668冊目を迎えております.
 この間,歴代の担当編集が会員の皆様のさまざまなご意見,ご要望を取り入れつつ,時代に即した改変を行ってくださったことに敬意と感謝を申し上げます.
 近年では2017年に西尾章治郎元会長の命により,塚本昌彦編集長がこれまで単色印刷であった記事ページをカラー化し,全ページフルカラーが実現しました.また本会が小・中学生を含む若い世代へのアプローチとしてジュニア会員制度を始めてからは,その世代に向けた情報発信についても取り組みを進めております.
このたび60周年という区切りをきっかけとしまして,新たな取り組みとして行った本誌の紙とオンラインでのハイブリッド刊行についてご報告させていただきたいと思います.
 多くの出版物は徐々に紙媒体からオンラインへと移行していると思います.本会でもこれまで幾度となく議題に上げ検討を重ねてくださっていました.すでに学会には2000年から「電子図書館」という形でオンライン化は進んでおります.ただ,これまでの電子化は紙媒体として印刷されたものをpdf化して公開するという形であり,公表形態としては紙媒体を正本とするものでした.
 そもそも,学会において会誌を発行する意義はなんであるか.その1つは,情報処理にまつわる話題をその時代に記事としてアーカイブしておくという役目であり,また,ジュニア会員を含める新たな会員獲得に資するというのも大きな目的でしょう.
 しかし,本来一番の目的というのは,誌面を通じて会員同士が繋がる交流の場としての役割ではないか.そういう意味では,紙に印刷された誌面を楽しみにしてくださっている方々もいらっしゃるのですが,ソーシャルメディアにおいて活発な議論が行われている現状を踏まえ,オンラインという軸足を強化しても良い時期だと思います.
では今,手にしてくださっている本誌をやめてしまうのかといえば,そう言うわけではありません.取り組もうとしているのは「会誌のハイブリッド化」つまり,紙媒体とオンライン双方の特性を活かした誌面作りです.
 「ソサエティ5.0」で示されているのは「物理世界と情報が重畳され,有機的に統合された」社会であり,決して情報世界の中だけですべてを捉えようという方向ではありません.本誌の出版の在り方としてもどちらか一方を選択するのではなく,記事の特性に合わせて適切な媒体を選ぼうと考えています.
 現在の誌面でも話題になっている事象に関して「緊急記事」という名目で可能な限り「即時性」を求めて発信しています.とはいえ紙媒体では編集会議を経て印刷,配布という手順ではタイムラグが生じてしまいます.即時性を重んじる話題については印刷配布という手順を省く方が良く,どんどん移行して行こうと思っていますが,紙媒体という物理には情報のポータルとしての役目があり,今後も大いに活かそうと考えています.
 さらに,会誌をオンラインで始めるにあたり同時に「note」というWeb上のサービスの活用も進めます.紙媒体でのある意味かしこまった形式では中々筆が進まなかった事柄も,カジュアルな「note」を利用することで比較的容易にまとめられるということもありそうです.本誌原稿との中間的な存在として活用できるのではないかと考え,これから実験的に執筆を進めていくとともに,すでに活用されている会員の方も多くいらっしゃるようですので,会員同士の議論の場にしたいと考えています.
 さらに,このたびソーシャルメディアも編集委員会の活動の一部と考え,学会や本誌への入り口の役目としてtwitterの発信も積極的に進めます.すでに本会のアカウントがありますが,これまでは事務局からのお知らせのみの利用に限られていました.今後は,編集委員会の責任の下で学生会員主体の発信に切り替え,学生たちの素朴な疑問なども親しみのある言葉で発信し,情報処理に携わっていない方や,ジュニア会員にも情報処理を身近なものと認識してもらえるようにしたいと考えています.
 以上のように会誌は,紙媒体と,電子記事,note,twitterをハイブリッドに組み合わせて刊行することにいたします.すべて,これからスタートの取り組みであり今後も試行錯誤を続けるかと思います.
 私自身,紙に印刷された活字は大好きで,紙という物理メディアに対する想いもあります.会誌自体が薄くなることは残念でもありますが,情報処理に携わる者のスキルとしてもWebメディアを使いこなすことは必須だと考えております.
 まずは,一旦本誌を置き,PCやスマホの中の「情報処理」にも目を通していただくことをお願いいたします.

(2020年9月11日)
情報処理Vol.61,No.11掲載