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日本の情報処理の顔として何に重点を置くべきか?
- 情報処理技術の普及・促進
- 中立的な場(特にディファクトスタンダート、暗号、セキュリティ関連)の提供
- 情報処理学会は中立、権威、先導性、海外とのチャネル等の立場をうまく利用すべきである。
- 産官学の連携
- 学会活動において基礎研究と開発研究をつなぐ。
- 産業界とのインタフェースの場の提供。日本の社会的構造を本学会が反映しているのだが、本委員会が求める学会のあるべき姿は、基礎研究とプロダクトを統括し、バランスを取りつつ拡大して、広いスペクトルであらゆる分野の情報の顔となることである。
- 規模の大きさゆえに担える役割を果たすべきである。(例えば、産官学との協調体制の検討など)
- 科学技術基本法を背景とした産官学の連携という問題に学会として対応していく。
- 情報処理学会が問題提起をすべきである。情報のゲートウェイなどのアプローチをする。
- アカデミアは産業界に期待せず、企業はアカデミアに期待しないという対立構造を取るのではなく、産業界のニーズとアカデミアの研究が良くマッチしたJavaにみられるように、将来的にはアカデミアと産業界とのバランスの取れた融合を計れるような学会を目指すことが大切である。
- 日本には、大学と企業の密着度を高められるような社会的仕組みがなく大学と企業のギャップは大きい。そのギャップを埋め、連携を高められるようなことを学会ができれば良い。(CS委員会議事録から)
- 大学と企業のギャップには、情報工学の専門家が、まだ企業の中で主流になっていないという現状もある。
- 学界側からの産業界への歩み寄りばかりを期待してはいけないが、産業界が理解しやすいようなイベントを、産・学共同で開催していける体制を作れれば、産業界も離れることはなくなるのではないだろうか。
- 科学技術基本法について17兆円という予算があるが、お金を配る仕組みはできたが、未だ縦割り行政の中で、成果をきちんと評価できるメカニズムもなく、継続性の保障もない現状である。
- 日本の社会構造の変革の必要性という、一学会では対応できないような課題が存在する中で、現実を見すえた産・官・学の連携強化が必要ではないだろうか。
- 権威
- 学会のみならず、研究会としても何をめざし、どのような権威をもつかを考えるべき。
- 現在の研究会発表はよい発表もあるが、その多くは学生の教育の場という程度のもので権威がない。
- 例えば、研究発表会などは止めて、年1〜2回程度の査読付きのきちんとしたシンポジウムなどを行い、権威あるパブリケーションを出すなどの方法を考えた方がよい。
- 学会のオーソリティが落ちている。日本の情報処理技術向上のために権威を取り戻すべきである。例えば、ACMやBCSのカリキュラムに対する権威。
- 賞の乱発は権威を失墜させる。
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情報処理の顔となるための外部に対するアクションとしとどのようなものが考えられるか?
- 本来入るべき会員に入会してもらうチャネルの設立
- 会員数をキープしなければ経営上成立しない。
- 会員が従来の流れで固まっていて、ソフトバンクやマイクロソフト等のソフト産業の人たちが会員にいない。ベンダーのアカデミックに近い人たちでも会員になっていない。
- マイクロソフトなどソフト関係の企業が入会していない。チャネルがわからないからであるが、このチャネルをどう確保するか考える必要があるのではないか。
- 外部との接点を作り、コミュニティを広げてサービスをしていくべきである
- 新しい市場の開拓−本学会のユーザーは産・学ばかりではなく、情報に携わる広い分野の人々(初等教育関係者、物理、化学、ロボットの分野等)もまた潜在的ユーザーのはずである。こうした第三のユーザーへのサービスも考えねばならないのではないか。
- 例えばコンピュータと教育研究会が土曜日に研究会を開催した時には、小中校の先生が100人も参加したことで分るように、本学会が扱うべき分野の裾は広く、新しいマーケットはたくさんあるのだから、そうしたものを積極的に取り込んでいく努力をするべきである。
- 社会に役立つものを扱っているということをアピールする
- 受け身ではなく、Newテクノロジー、トピックスをこちらから見つけて個々の活動(研究会、学会誌等)をしていくしかけが必要。
- 場の提供ばかりでなく、こちら側からの情報発信も大切である。
- 理工系離れを防ぐため、学会が子どもたちに対してインターネットのおもしろさをアプローチしてはどうか。
- 大衆化に向けて、ホットな情報をインターネットを使って発信してはどうか。例えば、インターネット新聞やかわら版的なもの。大学や企業の研究課題、学生に対する起業化の情報などを載せる。
- 情報処理技術の教育
- カリキュラムの開発・認定
- 各大学の情報処理教育カリキュラムの評価を学会が行うという話が出ているようだが、評価する側に大学関係者が含まれる学会という所では、身内が身内を評価するという点で危険ではないだろうか。
- 小、中、高の教育関係の先生をターゲットとする。文部省研修の一貫として認定制度を設けてはどうか。
- 情報処理に関する学部・学科のある各大学にキーパーソンとなる人を設けてはどうか。
- 評価、資格制度を導入してはどうか。
- 表彰
- よいアイデアの論文を積極的に評価する賞を設けたらどうか。例えば、コンセプト賞。
- 日本で育ったオリジナルソフト等、実用性や社会的貢献度の高いものに対して賞を設けたらどうか。例えば、一太郎に貢献賞。
- 情報処理全般に関して、社会的に影響を与えた人に対する賞を設けたらどうか。例えばインターネットを社会に広めたとして村井氏に功労賞(業績賞)。
- 本学会は論文に偏りすぎで数%の会員しか対象にならず、製品アイディアに与えるものに比べると社会的インパクトに欠ける。
- 体制の強化
- 賛助会員に資金と人材のサポートを受けてはどうか。
- オープン化(第7回CS領域委員会議事録)
- 一般市民のためにも学問と現実の社会とのギャップを縮められるような貢献活動を考えて欲しい。
- 覚悟を決めれば、やれることはたくさんあり、調査委員会議事録にあるように「一点突破・全面展開」を考える。
- 学会の電子化にしても、学会発行物をできる限りオープンに公開(WWW等)して、一般の多くの人の目に触れさせ、学会で何が行われているかということを、まず知ってもらうことが裾野を広げるためにも必要ではネいか。
- 学会誌の内容等の改善という以前の問題で、オープン化を考えなければ部外者からは中が見えず興味の湧きようもなく、現実の社会との溝は、深まるばかりではないだろうか。
- オープン化して成功した例は世の中にたくさんある。例えば大相撲の放送に対して、初め、協会側は観客数の減少を懸念して強く抵抗したが、結果として今は放送のおかげで相撲ファン人口は格段に増え、国技館は連日満員の観客を得ている。
- そうしたオープン化の一方で、会員には何がしかの特典、例えば、ACMのように全会員にメールアドレスを配るなり、全会員にWWWホームページを作るなり、CD-ROMを配布するなりといった、思い切ったことをすることが必要ではないか。
- 学会でメールアドレスを配れれば、各種情報の伝達にも役立つだろう。
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情報処理関連の他国内学会との連係をどうすべきか?
- 情報の顔としての役割
- 専門学会として、特殊学会(ソフトウェア科学会や人工知能学会など)とオーバーラップさせながらの権威が大切。特殊学会は本学会がカバーしきれない部分をカバーすれば良いのではないか。
- 情報の分野が対象にできる裾は広く、本学会はそうした境界領域から見える情報の顔であるべきで、ソフトウェア科学会や人工知能学会とは違って持つべき、本会の役割ではないだろうか。
- 技術屋だけでなく、情報屋を取り込むことを考える。
- 連携を深めるというより、情報処理学会が主となるように本研究を権威付けさせれば、相手は必ず協賛してくる。
- 棲み分け
- 共催シンポジウムアカデミックな活動のみを望むのならば、アカデミズムのための学会であるソフトウェア科学会で活動すれば良いが、本学会の役割はそれのみではない。
- ソフトウェア科学会にはソフトウェア科学会の存在意義があり、今のままの規模・組織で良い。PRO(プログラミング)研究会との住み分けを考えると、あまりにも広すぎて今の研究会の組織体制ではカバーしきれない部分をソフトウェア科学の科学会のワークショップでカバーしている。内容によっては組織化された情報処理学会の方がやりやすいこともある。
- 現実的には、ソフトウェア科学会や言語処理学会などに実質的な活動が移り、本学会を中心に活動している研究者は減っているのではないか。
- 事業分野の重視
- 他分野の学会では、事業活動に携わる人でも学会に関心を持っているデータがあるが、情報関連の学会ではその比率が低い。言い放しの議論が多いことや、実際の技術には役立たないという認識が、他の分野の学会に比べて情報関連学会には多いのではないだろうか。
- 学会への参加比率(XX社データ)3200名中200名が研究開発
| 通信学会 |
応用物理 | IPSJ |
ソフトウェア科学会 |
研究開発 | 51% |
63% | 83% |
*データ上に上らない |
事業 | 49% |
37% | 17% |
僅かな程度の参加率 |
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全体としてどのようなサービスをするのか?
- 会員へのバランスのとれたサービス
- 学会の役割として、(1) 社会に役立つこと、(2) 知的好奇心の満足、があると思うが、現在、研究会・全国大会における双方の割合は、後者が8〜9割を占め、前者が1割程度しかない。産業界が全体の7割を占める本学会において、この比率は逆ではないだろうか。前者と後者のバランスを取ることが大切。
- アカデミアと産業界。現在、会員の3割がアカデミアであり、7割が産業界である。更にアクティブメンバーは3割のアカデミアの何分の一かの人口でしかない。今まで本学会はこのアクティブメンバーを機軸としたアカデミア中心のサービスを行ってきたように思われるが、これからは全体の7割を占める産業界をも大切にしていくべき時ではないか。
- 純粋アカデミアに閉じることはもう許されない。これを越えて産業界や第三のユーザーにも積極的に関わり、情報のサポート等のサービスを充実させ、日本の情報処理分野の根幹であるべきである。
- アカデミックな人から実務に携わる人までカバーするには現在の組織では無理があるのではないか。
- 先端最新技術の紹介
- 本来、学会が行うべきものではないか。
- インターネットや各種商業雑誌の普及で必要情報は得られてしまう。
- アカデミズ
- アカデミックな所がなければ学会ではなく、良い成果が海外に出ずに、国内で発表されるような、国際的競争力に対抗できるようなアカデミックな体制作りは、(もちろんこればかりで良いのではなく他の使命も考えるべきだが)やはり大切なことである。
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産業界会員へのサービスはどうあるべきか?
- 相互的立場の確立
- 学会はアクティブに産業界をフォローできる場であるべきと同時に、産業界も学会に信頼を持ち学会を育てるような気持ちを持ってもらうことが必要である。
- 産業界の期待に沿うような改革がなされることは産業界にとっては有難いが、本当に改革を行うとすると、アカデミアに大きな変革を要求するものとなり、その対応は大変なものとなるのではないか。それが本当にできるのだろうか。
- 情報提供
- アンケート結果にあるように、実務家は訳の分らない難しい書物ではなく、日経XXのように実際に役立つ技術情報や、自分が現実に直面している問題を解決してくれそうな分かりやすいものに情報を求めている。現場が本当に困っていることを察知し、そうしたテーマを取り上げてくれれば実務分野の参加も増えるはずである。
- アイデアの提供
- 学会が企業からの問題についてプロポーズしそれに対してアウトプットする。資金は企業から提供を受ける。
- 技術評価
- 企業は新しい技術を評価してもらいたいのであり、学会は新しいものを叩くばかりではなくそれをエンカレッジできるよう、減点主義ではなく加点主義を取ることも必要ではないか。
- 製品のアナウンス
- ACMには企業が新製品をアナウンスする場がある。
- 企業のエンジニアの教育
- IEEEのように各企業のエンジニアに役立つような教育・情報伝達を行うという立場で活動しないと学会全体が先細りしてしまう。
- 技術革新の速さ、企業の能力主義導入による社内教育の変化から、大学の活用などの企業の要請に応え、産業界と協力していくことができるのではないか。(リフレッシュ教育)
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アカデミア会員へのサービスはどうあるべきか?
- 研究成果の公表の場
- 大学での研究成果を世に問う場として、学会が最有力であることは今後も変わらないだろう。ただし、現状には問題がある。成果発表のために提供するメディアをテクノロジーの進歩に合わせて改良する必要がある。
- 討論の場
- ニュートラルな場で、公の議論を展開する場は学会しかない。公の討論のための場の提供の仕方、討論の内容の公表の仕方については、課題が多い。学会での公開討論、紙上討論を積極的に進めていく必要があるだろう。
- 研究成果の評価・権威づけ
- 大学の研究評価の場としても学会が今後も有力であることは変わらないだろう。しかし、現状の論文誌システムでは、「論文のための論文」、「質より量」といった問題が生じている。
- 研究成果の社会への橋渡し
- 大学は基礎研究といえど研究成果を社会に還元し、社会からの具体的なフィードバックを受けて、研究をすすめていく必要がある。研究成果を生み出す側と利用する側の、気楽な(コミットを強制されない)相互選択可能な「見合い」、「交流の場」として学会の役割は極めて大きい。
- 後継者育成
- 大学側にとって教育スタッフの確保は非常に重要な意味をもつ。公募などで短期間で判断するのではなく、学会での長い交流をベースに人材確保できるようにしておくことは意義が大きい。
- 学生の鍛練の場としての位置づけ。大学のオープン化では限界がある。学生が自分の研究について社会と交わる最初の場。
- 交流
- 他のアカデミア会員、企業、学生との交流。
- 研究成果の結びつき(ある研究成果の上に、次の研究成果を積んでいく)のためにも学会は欠くべからざる存在である。
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