「京都情報大学院大学第4代学長富田眞治先生」
長谷川 亘(IT産業連携担当理事)
去る2024年9月21日,78歳で逝去されました,京都情報大学院大学第4代学長富田眞治先生に,謹んで哀悼の意を表します。
富田眞治先生は,京都大学工学部卒,同大学院博士課程修了(電気工学専攻),工学博士でいらっしゃいます。九州大学大学院総合理工学研究科教授,京都大学工学部教授,同大学院情報学研究科教授,同総合情報メディアセンター長,同大学院情報学研究科長,同物質-細胞統合システム拠点特定拠点教授/事務部門長などを経て,京都情報大学院大学教授に就任されました。2018年から副学長,2023年より学長をお務めになりました。また,富田先生は本会正会員(フェロー)で,1990年度から94年度は計算機アーキテクチャ研究会主査,1996年度から97年度は研究会将来ビジョン調査委員会委員長,1995年度から96年度及び1998年度から99年度は理事,2001年度から02年度は関西支部長を歴任されています。1987年度と1992年度は本会論文賞を受賞されています。
京都情報大学院大学は,京都コンピュータ学院を母体とし,2004年に開学した日本最初のIT専門職大学院です。初代学長には,1970年代から,講師派遣などで京都コンピュータ学院の教育活動においてお世話になっていた萩原宏先生,第2代学長には長谷川利治先生,第3代学長には現名誉学長である茨木俊秀先生,そして第4代学長には富田眞治先生にご就任いただきました。
富田先生は,京都大学においては,コンピュータの高速化を目指すコンピュータアーキテクチャの研究に従事され,その分野における世界的権威でいらっしゃいました。紙の上やシミュレーションによる研究では不十分であり,実機を開発しなければ本当のことを追究することはできない,また学生の教育にもならないという強い信念をお持ちで,実学に重きを置かれ,役に立つ教育を実践されました。京都情報大学院大学学長に就任された後も,「コンピュータ構成論」の講義を担当されていましたが,基礎知識をもう一度勉強し直し,体系立てて学生に教えるというのはたいへん楽しいとおっしゃっていました。文科系学部出身者がITを学ぶ基礎となる数学カリキュラムの立案,豊富な知識とご経験を活かした専門分野である「人工知能」のカリキュラム構築にもご尽力いただきました。学生や教職員に対し常に心配りをしてくださいました。温厚篤実なお人柄で,皆さんから慕われ,信頼され,尊敬されていました。また,時々,私が考案したレシピを基に作った「KCGカレー」(Kyoto Computer Gakuin(KCG)Curry)を,富田先生に召し上がっていただいたことがありましたが,「おいしい」と褒めてくださったことが今でも心に残っています。
2023年8月の「新学長就任披露式」で,富田先生は次のように述べられていました。「終の棲家という言葉がありますが,私にとって本学はまさに終の学園であります。これまでの私の専門分野とはまるで異なった多様な分野の研究者との交流,新規組織の設置の経験,事務組織との連携の経験などを生かして,本学の喫緊の課題である生成AIの活用や国際化の一層の展開などについて,最大限の努力をしたいと思っております」。以上の,そのお言葉のとおり,お亡くなりになる直前まで,学長として,教育者として,京都情報大学院大学の教育の充実と発展のために尽くしてくださいました。
富田先生は,非常に多くのものを京都情報大学院大学に残してくださいました。ご教授いただいたことは,京都情報大学院大学の学生,修了生,教職員,関係者,皆にとって永遠の誇りであります。未来永劫,そのご功績を伝えていかなければならないと決意しております。お教えを今後に生かしていくことが,先生のご恩に報いることになると考えております。
富田眞治先生,本当にありがとうございました。どうか,安らかにお眠りください。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。