2024年03月28日版:長原  一(調査研究担当理事)

  • シェアする
  • ツイート
  • noteで書く
  • LINEで送る
  • 2024年03月28日版

    「メディア技術と人の進歩

    長原  一(調査研究担当理事)


     気づいてみれば、2022年の6月に調査研究担当理事を拝命してから、もうすぐ2年が経ち任期も終わりに差し掛かっております。調査研究担当理事は、本会の運営を行う理事会、研究会などの研究活動をサポートする調査研究委員会、またその中の研究領域の研究サポートを行う領域委員会の運営を主に行っております。私が着任した2022年はまだコロナ禍で、ほぼすべての委員会活動はオンラインにて行われておました。昨年5月に新型コロナ感染症が5類に移行してから、研究会や全国大会、学会主催のシンポジウムなどは、徐々に対面での通常開催やハイブリッドに戻ってきましたが、残念ながら学会の理事会や委員会はオンラインが主体で、在任中は一度しか理事の皆様と対面でのご挨拶や議論ができなかったことが残念でした。いつも領域会議でお会いしている研究会主査の方と、たまたま対面でお会いする機会がありましたが、他の方ともいろいろとお話ししたかったと思っています。

     皆様も実感されたように、新型コロナにより対面でのコミュニケーションが制限されたことからウェブ会議などの新たな通信コミュニケーション手段が一般的となり我々のビジネスや生活スタイルを一変させました。ウェブ会議システムは、我々を場所や時間の制限から解放して効率的な仕事やコミュニケーションを実現したため、この有益性よりもう二度ともとの対面中心の会議には戻ることはないと思います。しかしながら、学会や学術活動は見知らぬ人と研究課題を通して新たなつながりができたり、ある意味非効率な議論を通じて新たな着想や協力ができることにあるとも、昭和世代の私は思ってしまいます。 この対面とのギャップは現状の遠隔コミュニケーション技術がまだ不十分であることが問題だと思いますが、将来的には技術がこの問題を解決してくれるのでしょうか?

     私が委員長をしているメディア知能領域(MI領域)は、「視覚・聴覚・触覚等、人の情報入力チャネルによって受容されるメディア情報のコンピュー タ上での表現、外界システムの知的モデル化、これらを基盤としたメディア技術開発・評価や社会応用を研究対象する」という研究分野の領域で、画像や音声などさまざまなメディア情報の解析や活用を行うまさに新たなコミュニケーション技術を研究している研究会や研究者が活動しております。昨年は産業界でもAppleもHMDを発表したり、ChatGPTやSoreなどの生成AI技術が注目され、これらの製品はすでに研究ステージからビジネスでどのように利用するかという応用ステージに移行しています。これらさまざまな五感デバイスやAIの発展により我々は効率的でより本質的な理解が可能なコミュニケーション手段を持つのか、そのような技術の発展が期待されます。

     一方で、 AIが人の仕事や能力を奪うのかという技術の発展に対するネガティブな議論も盛んに行われています。私は字がへたで、子供のころは綺麗な字を書かないと仕事ができないと言われ習字を習わされ、計算能力も必要だとそろばんも習わされてた記憶があります。しかしながら、現在はスマートフォンやPCの普及によりこれらの能力はそんなに重要でなくなりました。もちろん、字がきれいなことに越したことはなく、暗算もできた方がいいですが、これらの能力の優先順位は技術の発展により完全に変わってしまいました。こらから生成AIなどの普及で、同じようなことが起こると予想されます。次の時代には技術発展によりどのような価値観になり人にどのような能力が求められるか、情報技術が時代の価値観や要求を変えていくのを見るのが楽しみでもあります。
  • シェアする
  • ツイート
  • noteで書く
  • LINEで送る