2005年度長尾真記念特別賞

2005年度(平成17年度)長尾真記念特別賞の表彰

 

  


青木 恒

青木 恒 君(正会員)

「放送番組の映像構造化技術の研究開発」

 1993年東京大学工学部物理工学科卒業.同年,株式会社東芝に入社.同社研究開発センターにて映像構造化処理技術の研究に従事.1998年~1999年米国Massachusetts Institute of Technology, Media Laboratory客員研究員として画像処理技術のウェアラブル・コンピュータ応用を研究.2004年より東芝研究開発センター研究企画室にて研究開発戦略策定業務に従事.現在に至る.2001年より情報処理学会ヒューマンインタフェース研究会運営 委員.2005年より同研究会幹事.インタラクション2003運営委員,同2005,2006プログラム委員,WISS2001~ 2005プログラム委員.2005年東京大学大学院工学系研究科非常勤講師.博士(工学)(2005年東京大学). WISS2000対話発表賞,平成12年情報処理学会論文賞受賞.2001年情報処理学会誌表紙デザイン.情報処理学会会員.

[推薦理由]
ハードディスクレコーダの登場でテレビ放送のデジタル録画は近年急速に普及し,大量の録画番組から平易な操作で目的の場面を高速に検索できるヒューマンインタフェースが求められている.青木恒君は1994年より一般家庭でのデジタル録画時代を見据えた映像構造化技術の開発に従事し,軽量な画像処理アルゴリズムによって高速な意味的場面分割を実現した.2005年には同技術が製品搭載され産業に対しても貢献した.国際会議で招待講演を行うなど,その業績は国内外で認められており,通通信放送融合での映像視聴文化発展において大いなる活躍が期待できる.

 

高村 誠之

高村 誠之 君(正会員)

「高能率映像符号化に関する研究開発」

 1991年東京大学工学部電子工学科卒業.1995年同大大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了.同年博士(工学).同年,NTT入社.現在,NTTサイバースペース研究所画像メディア通信プロジェクト主任研究員.また2005年より米Stanford大学客員研究員.入社後は画像の高能率圧縮符号化アルゴリズム,MPEG国際標準化活動などに従事.2001年画像電子学会研究奨励賞,2002年映像情報メディア学会丹羽高柳賞論文賞,2004年電気通信普及財団テレコムシステム技術賞,2004年画像符号化シンポジウム(PCSJ)フロンティア賞受賞.情報処理学会,画像電子学会,映像情報メディア学会,IEEE各会員.

[推薦理由]
高村誠之君は、実物と映像とを並べてもどちらが実物なのか区別ができないような究極の映像システム「超自然映像」の実現を目指し,空間解像度・時間解像度・色再現性などの観点から,新しい符号化方式を一貫して追求してきた.具体的には,符号化前処理としての最適中間解像度変換処理,LSI向け1パスVBRアルゴリズム,高フレームレート映像信号符号化,多原色映像信号の効率的符号化,可逆スケーラブル符号化などに関する研究に先駆的に取り組み,表彰・報道等による高い評価をうけている.これらの成果は今後の新しい映像符号化の流れを的確に捉えたもので,本賞の受賞にふさわしい.

 

千葉 滋

千葉 滋 君(正会員)

「プログラム変換技術を活用したソフトウェア開発ツールの開発と普及」

1991年 東京大学理学部情報科学科卒業,1996年同大学大学院理学系研究科博士課程退学.1996年同大学助手.1997年より筑波大学電子・情報工学系講師,2001年より東京工業大学大学院情報理工学研究科講師を経て,2003年より助教授.この間,1998年から2001年まで科学技術振興事業団さきがけ研究21「情報と知」領域研究員,2003年より現在まで国立情報学研究所客員助教授,2004年より現在まで東京大学特任助教授を併任.2004年7月フランス・パリ第6大学Professor Invite.博士(理学).ACM 会員.

[推薦理由]
千葉滋君はリフレクションやアスペクト指向開発に基いたプログラム変換技術の研究を行い,その成果を用いたプログラミング言語変換器の開発を行っている.これらの変換器は,複雑なソフトウェアの自動的な書き換えを行わせることでソフトウェア開発の信頼性と効率の向上を可能にするもので,国際的にも高い評価を受けている.中でも OpenC++ や Javassist といった変換器は、世界中の大学・研究機関・産業界において広く使われ,数多くの研究やソフトウェア開発につながっている.研究・開発の土台を提供する意味での貢献も非常に大きく,本賞を贈るにふさわしいものである.