2007年度(平成19年度)喜安記念業績賞

 

2007年度喜安記念業績賞の表彰

◆素因数分解専用ハードウェアの開発とRSA暗号の安全性評価

[推薦理由]

富士通は,世界で初めて専用ハードウェアによる素因数分解実験に成功し,実験結果の分析により,RSA暗号の解読可能性の見積精度を向上した.この成果は,我が国の電子政府推奨暗号を使用する際の,暗号鍵更新時期見積り等への指針となっている.具体的には,総務省及び経済産業省が主催するCRYPTRECプロジェクト(電子政府推奨暗号の安全性を評価・監視)の2006年度暗号技術監視委員会報告書に掲載され,電子政府システムにおけるRSA暗号の鍵長更改検討の基礎データとして使用されるなど,産業分野に貢献している.



 

小暮 淳 君(正会員)

1987年東京大学大学院理学系研究科数学専攻修士課程修了.同年富士通(株)入社.以来,UNIX OS 開発,セキュリティ製品企画に従事.1998年より(株)富士通研究所にて暗号理論の研究に従事.楕円曲線暗号,RSA 暗号,格子暗号等の安全性を研究.2000年~2003年暗号技術評価委員会公開鍵暗号評価小委員,2003年~暗号技術調査WG委員.2005年東京大学客員助教授,2005年~中央大学兼任講師,2007年東京大学客員教授.2007年~早稲田大学兼任講師.電気科学技術奨励賞受賞.情報処理学会会員.

下山 武司 君

1991年横浜市同大学大学院修士課程修了,同年(株)富士通研究所入社,1996年通信放送機構出向,1998年富士通研究所復職,以来共通鍵暗号設計や素因数分解に関する研究に従事,現在富士通研究所主任研究員,2000年中央大学大学院工学部博士課程修了,博士(工学),1997年SCIS論文賞,2007年IWSEC2007 Best Paper Award,2007年電気科学技術奨励賞,各受賞. 2006年一般数体篩法による素因数分解世界記録達成,著書「情報セキュリティ事典(共立出版)」「情報セキュリティ暗号・認証・倫理まで(昭晃堂)」.

伊豆 哲也 君(正会員)

1997年より富士通株式会社及び株式会社富士通研究所に勤務.情報セキュリティ・暗号理論の研究に従事.2001年 Waterloo 大学(カナダ)客員研究員.1999年 SCIS 論文賞,2002年 CSS 優秀論文賞,2005年電子情報通信学会基礎・境界ソサイエティ功労賞,2007年科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞.IACR, IEICE, IPSJ, JSIAM 各会員.博士(工学).

鳥居 直哉 君

1981年大阪大学工学部通信工学科卒.1983年 同大学大学院工学研究科通信工学専攻修士課程修了.同年(株)富士通研究所入社.音声スクランブラ,暗号関数の実装技術の開発に従事.また,システムセキュリティや組み込み機器のセキュリティの研究に従事.現在,ソフトウェア&ソリューション研究所セキュアコンピューティング研究部部長.第53回電気科学技術奨励賞受賞.IEEE,電子情報通信学会会員.

笛木 俊介 君

1984年度富士通(株)入社.電子デバイス部門にて微細加工技術開発に従事.電子ビームリソグラフィシステムの高速データ制御技術を担当.1996年度から同研究所において,高速データ処理システム方式,次世代FPGA研究にたずさわり,2000年度より同社の不揮発メモリであるFeRAMを応用した商品開発に参加.非接触スマートカードの暗号機能の開発や不揮発メモリ内蔵FPGAデバイスの開発を担当.2005年よりダイナミックリコンフィグデバイス開発に従事.電子情報通信学会会員


 ◆携帯電話によるネットワーク型コーパスベース音声翻訳システムの構築

[推薦理由]

20年に及ぶ音声翻訳に関する研究成果を統合し,日常旅行会話の音声翻訳を可能とするシステムを開発し,TOEICスコアが650点という人間に匹敵する翻訳性能を実現した.また,この技術を世界に先駆けて携帯電話とサーバを用いた商用サービスとして事業化した.さらに,総合科学技術会議にて,日本が誇る先端技術の一つとして取り上げられ,日本の科学技術政策イノベーション25の代表的技術の一つとして認められた.数々の顕著な研究成果をあげ,世界で初めての商用音声翻訳システムを実現したことは,本賞に相応しい.

中村 哲 君(正会員)

昭和56年京都工芸繊維大学電子工学科卒.昭和56~平成6年シャープ(株)勤務.平成4 年京都大学博士 (工学).平成6~12年奈良先端大 助教授.平成12年より(株)ATR.現在,音声言語コミュニケーション研究所長,および,(独)情報通信研究機構 上席研究員,MASTARプロジェクトPL.独カールスルーエ大学客員教授,けいはんな連携大学院教授.音声翻訳,音声認識などの音声言語情報処理の研究に従事.電気通信普及財団賞,情報処理学会山下賞,AAMT長尾賞,ドコモモバイルサイエンス賞受賞.情報処理学会,IEEE,電子情報通信学会,日本音響学会会員.

隅田 英一郎  君(正会員)

昭和57年 電気通信大学大学院修士課程修了. 平成11 年京都大学博士(工学).現在, (株)ATR音声言語コミュニケーション研究所自然言語処理研究室室長.(独)情報通信研究機構 言語翻訳グループGL, 神戸大学大学院工学研究科連携教授, ATR-Langue取締役副社長兼務. 機械翻訳, eラーニングの研究に従事. 情報処理学会, 電子通信学会, 自然言語処理学会, 音響学会, ACL, IEEE 会員.

清水 徹 君 (正会員)

昭和60年東京工業大学大学院修士課程了.同年より国際電信電話(株)(現KDDI(株)) 勤務.
平成6~9年(株)ATR出向.平成16年より(株)ATR出向.平成18年より(独)情報通信研究機構出向.現在,(株)ATR 音声言語コミュニケーション研究所統合システム研究室長兼音声音響処理研究室長.これまで,音声認識・合成処理, 自然言語処理の研究開発,商用化に従事.情報処理学会, 電子情報通信学会, 日本音響学会会員.

葦苅 豊 君

昭和59年大阪大学大学院理学研究科生物化学専攻博士前期課程修了.情報処理係の企業にて,エキスパートシステム開発ツール,自動プログラミング,電子メール,RDB,ERPシステム などの研究開発を行う.平成13年より(株)ATR勤務.現在,(株)ATR 音声言語コミュニケーション研究所上級主任研究技術員.(独)情報通信研究機構 知識創成コミュニケーション研究センター専門研究員.音声認識エンジン,音声翻訳システム等の研究開発に従事.日本音響学会会員.

袋谷 丈夫 君

昭和52年 大阪大学基礎工学部物性物理工学科卒.医用システム開発販売会社, 情報処理サービス会社, 音声処理技術ベンチャー勤務を経て, 平成13年 より(株)ATR勤務.主に研究成果の事業展開を担当.現在,(株)ATR 音声言語コミュニケーション研究所企画担当部長.平成18 年より(独)情報通信研究機構 知識創成コミュニケーション研究センター専門研究員を兼務.他に(株)ATR-Langue代表取締役社長,(株)ATR-Trek社外取締役.

 ◆Webサービス技術の基盤確立と標準化,ならびに普及への貢献

[推薦理由]
Webサービス技術,特に,セキュリティ技術の開発とOASISでの標準化,ならびに,実装と普及の中心的役割を果した.開発技術を基幹ミドルウェア製品やWebサーバApacheの処理系Axisとして実装し世界中で多数のユーザに利用されている.さらに,Webサービスに関する英文書籍や情報処理学会誌などを通して国内外での啓蒙と普及に貢献した.Webサービス技術はソフトウェアをサービスとして利用する情報システム開発の基盤となっており,Webサービス技術の開発と実用化を通して情報システム開発技術の発展に世界的に多大な貢献を果した.

 

丸山 宏 君(正会員)

日本アイ・ビー・エム(株),東京基礎研究所所長.1983年,東京工業大学理工学研究科情報科学専攻修士課程修了.同年,日本アイ・ビー・エム(株)入社,東京基礎研究所にて,自然言語処理,XML,Webサービス,セキュリティ等の研究に従事.XML署名,XML暗号化,WS-Securityなどの標準化に貢献.主な著書に,XML and Java: Developing Web Applications (邦訳 「XMLとJavaによるWebアプリケーション開発」),「XMLとWebサービスのセキュリティ -- XMLデジタル署名と暗号化 --」.IBM Distinguished Engineerかつ IBM Academy of Technologyメンバー.工学博士.

羽田 知史 君(正会員)

1995年,神戸大学工学研究科電気工学専攻修士課程修了.同年,国際電信電話(株)(現KDDI)入社,研究所にて,MHEG (Multimedia and Hypermedia information coding Experts Group)および暗号理論の研究に従事.1999年,日本アイ・ビー・エム(株)入社,東京基礎研究所にて,XMLセキュリティ,Webサービス・セキュリティ,アクセス制御,プライバシー保護,内部統制,暗号理論の研究に従事.博士(情報科学).

根山 亮 君

1999年,早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了.同年,日本アイ・ビー・エム(株)入社,東京基礎研究所にて,SOAPエンジン,Webサービス・セキュリティ,分散トランザクショナルキャッシュの研究に従事.2007 年,ウタゴエ(株)でのPeer-to-Peer映像音声配信の研究を経て,2008年より(株)トヨタIT開発センターにてソフトウェアプラットフォームの研究に従事.現在,早稲田大学理工学術院博士後期課程に在学.

中村 祐一 君

1990年,大阪大学大学院工学研究科応用物理学専攻博士課程修了.同年,日本アイ・ビー・エム(株)入社,東京基礎研究所にて,オブジェクト指向プログラムの視覚化,移動エージェントなどに従事.1999年よりWebサービスに関する研究を開始し,オープンソースプロジェクトApache Axisの立ち上げ, IBM製品への技術移転,性能・セキュリティ・ツールに関する研究などに貢献.2008年1月より,サービス事業部に勤務.工学博士.