2007年度長尾真記念特別賞

2007年度(平成19年度)長尾真記念特別賞の表彰


 


松尾  豊 君(正会員)

「Webマイニングによる社会ネットワーク抽出に関する研究」

1997年 東京大学 工学部電子情報工学科卒業.2002年 同大学院博士課程修了.博士(工学).同年より,産業技術総合研究所 サイバーアシスト研究センター研究員.2004年7月より,同研究所 情報技術研究部門 研究員.2005年10月よりスタンフォード大学客員研究員.2007年10月より,東京大学 大学院工学系研究科総合研究機構 准教授.2002年 人工知能学会 論文賞,2006年人工知能学会 創立20周年記念事業賞.人工知能とWebマイニングに興味がある.情報処理学会,人工知能学会,言語処理学会,AAAIの各会員.

[推薦理由]
インターネットに散在する断片的な情報の間の意味的な関係を明示化することにより、さまざまな事物を相互に結び付ける巨大な意味のネットワークが紡ぎ出され、これによって実世界での相互作用を支援できるのではないか。松尾豊君は、このような構想を実現するため,大量のWebのコンテンツから人間関係のネットワークを自動的に構築する手法とそのネットワークの分析に基づくさまざまなサービスを開発し,実際に学会等でのコラボレーションの支援に適用している。これは,学術的に卓越しているのみならず,ソーシャルキャピタルの醸成にも資する有意義な成果であり,本賞を授けるにふさわしい。

 

門田 暁人 君(正会員)

「ソフトウェア開発データに基づくプロジェクト管理の定量的支援」

1994年名古屋大学工学部電気学科卒業.1998年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.博士(工学).同年同大学同研究科助手.2004年同大学助教授(2007年より准教授).2003~2004年Auckland大学客員研究員.主な研究分野はエンピリカルソフトウェア工学.2006年Int’l Conf. on Software Process and Product Measurement最優秀論文賞,2007年Int’l Symp. on Empirical Software Engineering and Measurement最優秀論文賞.2004年より情報処理推進機構ソフトウェア・エンジニアリング・センター定量データ分析部会委員,2007年より関西経済連合会組込みソフト産業推進会議委員.信学会,IEEE,ACM 各会員.

[推薦理由]
近年,ソフトウェアシステムの大規模化に伴い,多数の企業による多重構造のソフトウェア開発が日常的に行われるなど,開発プロセスが複雑化している.門田暁人君は,工学の原点に立ち戻って現場の開発データを集め,データを分析・評価し,その結果をプロジェクト計画立案,管理,プロセス改善に活用するための基盤技術の研究に取り組むとともに,各種委員活動等を通して研究成果を産業界へ移転してきた.主要な国際会議において最優秀論文賞を受賞するなど学会での評価も高く,産学双方において今後の発展が大いに期待されるものであり,本賞の受賞にふさわしい.

 

山口 弘純 君(正会員)

「分散協調通信システムの設計支援技術に関する研究」

1994年大阪大学基礎工学部情報科学科卒業.1998年同大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).オタワ大学客員研究員,日本学術振興会特別研究員を経て,1999年大阪大学大学院基礎工学研究科助手.2007年より大阪大学大学院情報科学研究科准教授.分散システムならびに通信プロトコルの設計開発に関する研究に従事.2004年国際コミュニケーション基金優秀研究賞,2005年第20回電気通信普及財団賞テレコムシステム技術賞受賞.情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE各会員

[推薦理由]
ピアツーピアコンピューティングや分散Webサービスなど,分散システムの新しいパラダイムが社会に浸透しつつあるが,複雑な分散システムのプログラム設計と動作保証には多くの課題がある.山口弘純君は,分散システムの相互接続性を保証し,サービスを正しく実現するに必要な,分散システム設計支援技術に関する研究に従事してきた.その研究成果は基礎理論と応用可能性の両面から国内外で高く評価されている.また,様々な分野での活用が期待されるセンサネットワークでの適用も開始しており,将来の発展も期待できる.このような優れた業績は,本賞を贈るにふさわしいものである.