2023年IPSJ/IEEE Computer Society Young Computer Researcher Award

2023年 IPSJ/IEEE Computer Society Young Computer Researcher Awardの表彰

 
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石田 繁巳 君(正会員)

Outstanding Research on Practical Acoustic Sensing

2006年芝浦工業大学工学部卒業.2008年東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了.2012年同大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).2008年(株)アクティス入社.2013年米国ミネソタ大学客員研究員,2013年九州大学システム情報科学研究院助教を経て,2021年より公立はこだて未来大学准教授.無線通信,センサネットワーク,異種無線間通信,高度道路交通システム,IoTセンシングに関する研究に従事.山下記念研究賞(2016),情報処理学会DICOMO最優秀論文賞(2016),ICMU Best Paper Award(2016),情報処理学会DICOMOベストカンバーサント賞(2019,2021),情報処理学会DPSWSベストカンバーサント賞(2020),情報処理学会DPSWS最優秀論文賞(2021,2022)などを受賞.

[推薦理由]

石田氏は,無線通信技術を応用した音響センシングの実用的な研究に取り組んでいます.多入力多出力(MIMO=Multiple Input Multiple Output=)無線通信にヒントを得てアレイマイクから得られる信号が不安定であることを考慮したアレイの信号処理を実現しています.従来の音響センシング技術ではアレイのマイクロフォンによって音源の位置を高精度に推定したり,音信号を正確に分割したりしています.氏はこれとは異なり,信号が不安定になりがちな無線通信からアイデアを拝借しています.無線通信では一般的な手法である方向推定などの初期信号処理の後に信号処理を行っています.無線通信の技術は音響信号の周波数帯が不明であるため,直接は音信号処理に適用することはできません.そこで氏は,不安定な音信号を扱うための新しいアプローチを開発しました.氏の研究は主に車両センシングのプロジェクトと関わっていますが,スマートハウスのセンシングプロジェクトでも使われています.これらのアイデアはいまやもとの無線通信のワイヤレスセンシングにも導入されるまでになっています.氏の最近のIEEE Globecom の論文では,無線デバイスをグループ化するために不安定性を利用した無線センシングについて述べています.氏は実用的なシステム開発への多大な功績により以下をはじめとする25以上の学会賞を受賞しています.
情報処理学会山下記念研究賞(2016年),ICMU最優秀論文賞(2016年).

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劉 志 (正会員)

Outstanding research on point cloud video and VR video streaming

2014年国立総合研究大学院大学/国立情報学研究所博士課程修了.博士(情報学).日本学術振興会(JSPS)特別研究員,早稲田大学次席研究員,静岡大学助教を経て現在電気通信大学大学院情報理工学研究科准教授.映像ネットワークシステム,最適化/AIを活用したネットワークなどの研究に従事. IEEE ICPADS2021 best paper runner-up,IEEE MSN2020 best paper award,IEEE ICOIN 2018 best paper,2022 IEEE ComSoc Multimedia Communications Technical Committee (MMTC) outstanding young researcher,電子情報通信学会通信ソサイエティ活動功労賞などを受賞.

[推薦理由]

劉氏は,点群映像やVR映像のストリーミングとその応用を中心に研究しています.例えば,点群映像では新しいビューポート予測法,新しいセマンティックビデオタイリング法,深層強化学習による送信スケジューリングなどを提案しています.VR映像では映像のトランスコーディングに対応したマルチキャストを導入し,新しいマルチユーザVR伝送方式を提案しました.それによってビューポートの予測誤差を考慮した伝送の最適化などを行っています.また,プロトタイプを実際に作成し,提案方式の性能を検証しています.これらの研究成果を実世界に応用することで,劉氏らは,スマートグリッド監視システムなどを構築しています.これらの研究成果は,多くの日本学術振興会の助成金を受けており,新聞や専門誌で取り上げられています.また研究成果は60以上のIEEEジャーナル論文に掲載され,そのうち5つの高被引用度論文があり3500回以上の被引用回数を誇っています.IEEE MSN2020,IEEE ICPADS2021等から6つのIEEE最優秀論文賞を受賞,ICPADS2021などのIEEE最優秀論文賞,IEEE ComSoc MMTCの優秀若手研究者賞などを6回受賞しています.IEEEや情報処理学会誌の編集者,IEEEや情報処理学会の組織委員を務めるなど,学会活動への貢献も積極的に行っています.

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大倉 史生 (正会員)

「Outstanding research on computer vision techniques which advanced the analysis and classification of botanical plants

2014年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.博士(工学).同年INRIA Sophia-Antipolis客員研究員.2015年より大阪大学産業科学研究所助教を経て,2020年より大阪大学情報科学研究科准教授.2017年から2021年までJSTさきがけ研究者を兼務.コンピュータビジョンとコンピュータグラフィックスの境界領域に関する研究に従事.特に,最近は植物の形質を定量化する植物フェノタイピングに興味を持つ.2012年度日本バーチャルリアリティ学会論文賞,2012年度電子情報通信学会マルチメディアと仮想環境基礎研究会MVE賞,2014年度日本バーチャルリアリティ学会複合現実感研究委員会SIG-MR賞などを受賞.

[推薦理由]

大倉氏は植物のデジタルツイン,つまりメタバースにおける植物の仮想ツインの実現に積極的に取り組んできました.技術的な要素としては,1)現実世界の植物の復元,2)植物の外観の操作,3)植物の特性を分析する植物科学への応用,などが挙げられます.特に,植物の形状や構造の3次元的な再現は,研究の中核をなしています.このテーマは,複雑な枝分かれ構造を持つなどといった植物特有の特徴があるため,コンピュータビジョンの分野では注目すべき課題となっています.氏の手法は,最新のディープラーニングと伝統的な3D再構成を効果的に組み合わせ,枝葉の部分的な隠蔽構造を再構成しています.植物のデジタルツインは,栽培や育種の自動化など,植物科学の分野ですぐに役立つものです.植物科学者と共同してそれらの技術の応用を模索し,植物に関する多くの実用的な問題に対して,最新のCV技術を適用しています.氏の業績は,コンピュータ科学と植物科学の間の学際的な研究分野にまたがり,それぞれの分野で重要かつ評価の高い論文を発表しています.氏は表現型(形状や外観など)の獲得にコンピュータビジョンが重要な役割を果たすという,新しい研究分野「植物フェノミクス」の創生を主導しています.