2024年IPSJ/IEEE Computer Society Young Computer Researcher Award
2024年 IPSJ/IEEE Computer Society Young Computer Researcher Awardの表彰
鳴海 拓志 君(正会員) 「Outstanding Research on Human Augmentation with Virtual Avatars」 2006年東京大学工学部システム創成学科卒業.2008年東京大学大学院学際情報学府修了.2011年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻助教,講師を経て,2019年より准教授,現在に至る.博士(工学).JSTさきがけ研究者.バーチャルリアリティや拡張現実感の技術と認知科学・心理学の知見を融合し,限られた感覚刺激提示で多様な五感を感じさせるためのクロスモーダルインタフェース,身体と心の相互作用を活用して人間の認知,行動,能力を変化させるゴーストエンジニアリング等の研究に取り組む.文部科学大臣表彰若手科学者賞,日本バーチャルリアリティ学会論文賞,ヒューマンインタフェース学会論文賞,文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞,グッドデザイン賞など,受賞多数. [推薦理由] 鳴海氏は,バーチャルリアリティ(VR)を活用して人間の身体と多感覚情報処理や認知機能の間の複雑な相互作用を明らかにする研究に従事しています.また,その研究成果をもとに,アバターによる身体変容の影響を積極的に活用して知覚・認知能力を拡張することが可能な人間拡張技術群を開発し,アバターを適切にデザインすることで人が望む能力や心の状態を獲得することを支援する技術として「ゴーストエンジニアリング」の概念を提唱しています.触覚,嗅覚,味覚などの知覚の増強,創造性の向上,共感・相互理解の促進,身体能力の向上,同調圧力の緩和,議論の質の向上,個人間の効率的な技能伝承の促進など,さまざまな応用を対象としてアバターの効果とその適切な設計・利用のための指針を示してきました.こうした成果は,IEEE TVCGやIEEE Access等の国際ジャーナルやIEEE VRやISMARといったトップカンファレンスで発表されています.直近ではIEEE VR 2023において融合身体という新たなアバターの使用法によって高い効率で身体技能伝達を行える手法を提案してBest Paper Awardを受賞するなど,アバターを用いた知覚・認知拡張という新しい研究分野を開拓したことが国内外で高く評価されており,多くの後続研究を生み出しています. |
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馬場 雪乃 君(正会員) 「Outstanding Research on Machine Leaning for Human-AI Collaboration」 2012年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了.博士(情報理工学).同年東京大学特任研究員,2014年国立情報学研究所特任助教,2015年京都大学大学院情報学研究科助教,2018年筑波大学システム情報系准教授を経て,2022年より東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻准教授.機械学習,ヒューマンコンピュテーションの研究に従事.2017年度日本データベース学会上林奨励賞受賞.IJCAI 2018 Early Career Spotlight,2023年度東京大学卓越研究員. [推薦理由] 人工知能の研究開発が進むにつれて,人間の判断を取り入れない人工知能の危険性や,人間を介在せずに人工知能単独で判断することの危険性が明らかになり,人間と人工知能の協働に注目が集まっています.馬場雪乃氏は,人間と人工知能の協働の重要性に早期から着目し,この分野の開拓を国際的に先導してきました.人間の正確な判断を人工知能に取り入れるために,複数の情報源の中から信頼できる情報を見つけ出す「真実発見」と呼ばれる機械学習技術を多数開発し人工知能の安全性向上に貢献しました.また,人間の判断を多様な方法で機械学習モデルに取り込むための「人間参加型機械学習」の基盤技術を多数開発し,人間と調和する人工知能の実現に貢献しました.創薬・医療などの幅広い分野において,人間AI協働の技術を応用し成果をあげています.さらに,発展途上国の予防医療や車載ネットワークのセキュリティなど,社会・産業の重要課題における機械学習応用でも成果をあげています. |
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孫 鶴鳴 君(正会員) 「Research on Neural Network-based Learned Video Compression」 2011年上海交通大学電子情報電気工学部卒業.2012年早稲田大学大学院情報生産システム研究科修士課程修了.2014年上海交通大学大学院情報通信工学研究科修士課程修了.2017年早稲田大学大学院情報生産システム研究科博士課程修了.早稲田大学実体情報学博士プログラム修了.博士(工学).2017年NEC中央研究所研究員,2018年早稲田大学次席研究員を経て,2023年より横浜国立大学准教授.画像処理およびニューラルネットワークのアルゴリズムとアーキテクチャに関する研究に従事.IEEE VCIP最優秀論文賞(2020),PCSベストペーパートップ10(2021),IEEE Computer Society Japan Chapter Young Author Award(2021)などを受賞. [推薦理由] 孫氏は,動画像圧縮のアルゴリズムとアーキテクチャの研究開発に取り組んでいます.動画像情報は現在のインターネットトラフィックの80%以上を占め,動画像圧縮による伝送帯域とストレージ負担の軽減が最重要課題の一つとなっています.孫氏は,学生時代はHEVC動画像圧縮規格に取り組み,世界初のHEVC 8K@120fps デコーダチップの開発に貢献しました.早稲田大学講師となった後は,ニューラルネットワーク(NN)を用いた学習型動画像圧縮(LVC)に取り組んでいます.LVCは,ハイブリッド方式とエンドツーエンド方式に分類できます.ハイブリッド方式ては,イントラ予測とループフィルタ用のNNを開発しました.イントラ予測では,既存の予測モードを置き換える畳み込みNN及び全結合型NNを開発しました.ループフィルタでは,量子化パラメータに適応する畳み込みNNを提案しました.エンドツーエンド方式では,2020年と2023年に最先端の学習型画像圧縮(LIC)NN構造を開発し,また,NNの重み・入出力を整数化した固定小数点演算実装を実現しました.さらに,FPGA用のNNエンジンを設計し,リアルタイムのCPU-FPGAヘテロジニアス符号化復号システムを完成しました.孫氏は,90件以上の査読付き国際ジャーナルと会議で発表すると共に,Google Scholarの引用数は1800件を超えています.14件以上の受賞を受けると共に,多数のコードをGitHubで公開し,研究コミュニティに貢献しています. |
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