2021年度詳細

2021年度(令和3年度)山下記念研究賞詳細

 山下記念研究賞は,研究賞として本会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および 山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は40研究会の主査から推薦された計54編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い決定の上,理事会(2021年7月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の下記受賞者には,3月に開催される第84回全国大会で表彰されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL EMB QS

<情報環境領域>
DPS HCI IS IFAT AVM GN DC MBL CSEC ITS UBI IOT SPT CDS DCC ASD

<メディア知能情報領域>
NL ICS CVIM CG CE CH MUS SLP EIP GI EC BIO CLE AAC

コンピュータサイエンス領域

●TIN上での空間的スカイライン問合せ
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2021)(2021/3/2)](データベースシステム研究会)
kasai

笠井 雄太 君 (正会員)

2019年3月 名古屋大学工学部電気電子・情報工学科 卒業.
2021年3月 名古屋大学情報学研究科知能システム学専攻 博士課程(前期課程) 修了.
現在,ソフトウェア開発に従事.

[推薦理由] 既存の空間的スカイライン問合せはユークリッド距離に基づくため,地理空間を対象とした場合,計算上の距離と実際の移動距離が大きく乖離することがある.そこで本論文では,TIN(triangulated irregular network)を用いたより正確な移動距離に基づく空間的スカイライン問合せについて考察している.TIN上での移動距離に関する索引や枝刈り手法を用いた効率的な解法を示し,評価実験により提案手法の有効性を確認している.本論文は手法的にも興味深く,空間的スカイライン問合せの実用性を広げるものとして高く評価できる.よって,山下記念研究賞に相応しい論文としてここに推薦する.
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●動的なソーシャルネットワークにおける興味関心の伝搬を考慮した将来予測モデル
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2021(2021/3/2)](データベースシステム研究会)
ito

伊藤 寛祥 君 (正会員)

2015年 筑波大学情報学群情報科学類 卒業.
2017年 筑波大学システム情報工学研究科 博士前期課程 修了.
2019年 日本学術振興会特別研究員 (DC2).
2020年 筑波大学システム情報工学研究科 博士後期課程 修了.博士 (工学).
2020年 筑波大学図書館情報メディア系 助教.
データマイニング,機械学習に関する研究に従事.

[推薦理由] DEIM2021で伊藤氏が発表した論文,動的なソーシャルネットワークにおける興味関心の伝搬を考慮した将来予測は,グラフにおける枝と節点の属性の変化の両方を予測するという挑戦的な課題に対して,節点の潜在ベクトルの相関に基づく予測技術を提案し,実世界グラフにおいて高精度な予測を達成している.本研究の成果は,ソーシャルネットワークでの利用だけではなく,購買予測やコミュニケーションネットワークなど幅広い応用の可能性を秘めている.そのため,研究技術として高水準なだけではなく,実社会においても有効に活用されることが期待できる.上記の理由により,山下記念研究賞を受賞するに値する論文として推薦する.
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●深層学習と遺伝的アルゴリズムを用いたプログラム自動生成
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム(SES2020)(2020/9/12)](ソフトウェア工学研究会)
kurabayashi

倉林 利行 君 (正会員)

2012年3月 慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科 卒業.
2014年3月 慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻 博士前期課程 修了.
2014年4月 日本電信電話株式会社 入社.
現在に至る.
ソフトウェアテスト,実装自動化技術の研究開発に従事.

[推薦理由] 本論文では,プログラミングコンテストの正解プログラムを自動生成する技術を提案している.従来のプログラム自動生成は入出力例を満たすようプログラムを合成するものが主だったが,本論文では過去のコンテストと問題文とそれを実装した正解プログラムの関係性を学習することで,与えられた問題文に対する正解プログラムを自動生成するものである.評価実験では実際のコンテストの問題文の約1/4に対して正解プログラムの生成を成功している.本論文では実装の自動化のファーストステップとしているが,将来のソフトウェア開発を見据えたアグレッシブな論文である.以上より,山下記念研究賞にふさわしい論文である.
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●メソッド抽出リファクタリング推薦手法に対するメソッド名予測を用いた精度改善の試み
[2021-SE-207(2021/3/1)](ソフトウェア工学研究会)
yamanaka

山中 仁斗 君 (学生会員)

2020年3月 岩手大学理工学部システム創成工学科 卒業.
2020年4月 筑波大学理工情報生命学術院システム情報工学研究群 博士前期課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,ソフトウェア開発で行われるリファクタのうち,代表的な代表的なメソッド抽出リファクタリングについて,リファクタリングの対象とすべきコードを推薦する技術を提案している.既存技術に対してコード片がメソッド名をつけやすい意味的なまとまりであるかを意味するメトリクスを付加することにより,推薦精度が向上することを示している.評価実験も丁寧に実施されており,学術論文としての完成度も高い。リファクタリングはソフトウェア開発において重要な活動であり,本論文の成果が実務的な効果をもたらす期待もできる.以上より,山下記念研究賞にふさわしい論文である.
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●プリフェッチ距離の性質に着目した命令プリフェッチャ
[2020-ARC-241(2020/7/30)](システム・アーキテクチャ研究会)
nakamura

中村 朋生 君 (学生会員)

2018年 東京大学工学部電気電子工学科 卒業.
2020年 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 修士課程 修了.
2020年 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 博士課程 進学.
2021年 日本学術振興会特別研究員 (DC2).
現在に至る.

[推薦理由] 命令キャッシュミスは,現代のマイクロプロセッサの性能向上を阻害する大きな要因の一つとなっている.この問題を解決すべく,命令プリフェッチに関する研究が数多くなされてきたが,未だ決定的となるアプローチは発見されていない.これに対し本研究では,新しいプリフェッチ技法として Distant Jolt(D-JOLT)を提案している.これは,関数呼び出し履歴より生成したシグネチャにより自己学習するものであり,プリフェッチ距離の拡大により適切な命令取得タイミングを実現するのみならず,メモリ性能向上に必須となるカバレッジの向上も同時に達成する.定量的評価を行った結果,最新プリフェッチャに対しても十分な性能向上を達成しており,今後のプロセッサアーキテクチャ研究における重要な方向性を示す価値の高い成果である.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●Unikernelを用いたコンテナのためのハイパーバイザによる軽量高セキュアな実行基盤の検討
[2021-OS-151(2021/3/2)](システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
hishinuma

肥沼  健 君 (正会員)

2021年3月 東京農工大学工学部情報工学科 卒業.

[推薦理由] クラウドにコンテナを構築する際は,セキュリティ面の問題から,ホストOSのカーネルを共有しない仮想マシンが利用されることが多い.コンテナ構築において,軽量さや起動時間の速さから,ライブラリOSやUnikernelの利用が提案されているものの,汎用OSや仮想化基盤が巨大であることから脆弱性が問題となる.本研究では,Unikernelを利用したコンテナ構築において,脆弱性の発生が少ないとされる軽量なハイパーバイザを用いる手法を提案している.これにより,コンテナを安全に動作させる実行基盤の構築を実現している.本研究は,クラウドの基盤技術における貢献も大きく,評価により有効性も示されていることから,今後のさらなる発展が期待される.以上から,本研究を山下記念研究賞に相応しい研究として推薦する.
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●実回路の経年速度劣化測定結果の環境変動補正手法
[DAシンポジウム2020(2020/9/9)](システムとLSIの設計技術研究会)
shimamura

島村光太郎 君 (正会員)

1990年3月 東京大学大学院理学系研究科 修士課程 修了.
1990年4月 株式会社日立製作所 入社.現在に至る.
超並列スーパーコンピュータ向け高性能マイクロプロセッサ,フォールトトレラント電力変換器制御装置,フェールセーフマイクロコントローラなどの研究開発に従事.博士(工学).

[推薦理由] 半導体製造技術における微細化の進展に伴い,経年速度劣化による回路遅延の増大が拡大しており,集積回路の信頼性を脅かす要因となっている.本論文では,実回路の経年速度劣化量を測定する際に,温度などの環境変動を補正する手法を提案している.具体的には,劣化を抑制したリング発振器を用いて環境変動を検出し,クリティカルパスの遅延変動を補正する.65nmのテストチップで劣化量測定に適用したところ,従来の補正手法と比べて,劣化量の誤差を平均68%削減できた.本論文は,高性能かつ高信頼なチップ設計において大きな指針を与える価値の高い論文であることから,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●Quantization Techniques for Small Number of Bits in Transformer based Natural Language Processing
[2021-SLDM-193(2021/1/26)](システムとLSIの設計技術研究会)
ding

丁   一 君 (学生会員)

2018年7月 (中国) 天津大学電気系工学部 工学学士 卒業.
2021年3月 東京大学電気系工学研究科 工学修士 修了.
同年 (中国) アントグループ 入社,現在に至る.

[推薦理由] 高精度な自然言語処理を行うニューラルネットワークBERTは巨大なモデルであるため,大量のメモリや計算を必要とする.本論文では,ハードウェア実装のために量子化によりBERTの重みのビット幅を削減したQ8BERTに対し,ビット幅をさらに削減するため,重みの範囲を制限するクリッピング,非線形量子化,重みの範囲をいくつかの部分に分けて量子化する区分量子化を提案した.評価の結果,量子化後の重みのビット幅を8ビットより小さくした場合でも,精度低下を抑えられた.本研究は,ニューラルネットワークアクセラレータの高性能化,小型化,省エネルギー化に貢献する価値の高い論文であることから,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●スーパーコンピュータCygnus上におけるFPGA間パイプライン通信の性能評価
[2020-HPC-173(2020/5/12)](ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
fujita

藤田 典久 君 (正会員)

2011年3月 東京工科大学コンピュータサイエンス学部 卒業.
2013年3月 筑波大学システム情報工学研究科 博士前期課程 修了.
2016年3月 筑波大学システム情報工学研究科 博士後期課程 修了,博士(工学).
2016年4月 筑波大学計算科学研究センター 研究員.
2019年12月 筑波大学計算科学研究センター 助教.
現在に至る.

[推薦理] 本研究発表では,発表者らが開発しているOpenCLで記述可能な高速FPGA 間通信システムであるCIRCUSについて述べ,その性能評価を行った.CIRCUS はFPGA 内通信に用いられるChannel をFPGA間に拡張し,通信と演算を融合したパイプラインの構築を可能とする技術である.本研究では,二種類の通信に関するベンチマークによる性能評価を行い,通信と演算が一体となったパイプラインを正しく構築できたことを示した.本研究はHPCアプリケーションをFPGAにより高速化する上で重要な技術的進展であり,山下記念研究賞に相応しい研究であると評価できる.
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●適応的分割法によるPARADISの高速化
[2020-HPC-175(2020/7/30)](ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
ojiro

尾城 拓真 君 (学生会員)

2020年3月 慶應義塾大学環境情報学部環境情報学科 卒業.
2020年4月 慶應義塾大学政策メディア研究科 入学,現在に至る.

[推薦理由] 本研究では,並列radix sortアルゴリズムであるPARADISについて,多くの場合に同アルゴリズムが優れた性能を有する一方で,発表者らがblock caseと呼ぶ特定の状況において性能劣化が生じることを見出した.さらに,同アルゴリズムのこの弱点を克服するための手法として,適用的分割法を提案し,その実装,検証を行った.数値実験の結果,従来法との性能比較において,block case以外の場合には同等,block caseでは最大で57%の改善を確認した.本研究はデータサイエンスを含む,様々な応用で用いられるソーティング技術において最先端の技術的進展を示すもので,山下記念研究賞に相応しい研究であると評価できる.
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●フラット項書き換えシステムにおける正規形の一意性に関する性質の決定不能性
[(2020/10/30)](プログラミング研究会)
sato

佐藤 悠稀 君 (正会員)

2019年3月 新潟大学工学部情報工学科 卒業.
2021年3月 新潟大学大学院自然科学研究科 博士前期課程 修了.
2021年4月 三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 書き換え規則の両辺の形を強く制限したフラット項書き換えシステムの諸性質の決定可能性問題は長く研究者の興味を集めてきたが,正規形性については結果が知られていなかった.本論文では,従来の手法の簡単な応用によってこの問題が決定不能であることを証明している.フラット項書き換えシステムについては,正規形性よりも弱い一意正規形性が決定可能であることも知られており,本研究の成果は,決定可能性と決定不能性の境界に近づく研究の一つであると言える.技術的には既知の合流性に関する決定不能性の証明を応用したものであるが,未解決問題への簡潔な解として高く評価できるため,本賞にふさわしい研究発表として推薦する.

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●Sorting by Five Prefix Reversals
[2020-AL-179(2020/9/1)](アルゴリズム研究会)
yamanaka

山中 克久 君 (正会員)

2003年 群馬大学工学部情報工学科 卒業.
2005年 群馬大学大学院工学研究科情報工学専攻 博士前期課程 修了.
2007年 群馬大学大学院工学研究科電子情報工学専攻 博士後期課程 修了.
2007年 日本学術振興会特別研究員DC2(受入研究機関: 群馬大学).
2007年 日本学術振興会特別研究員PD(学位取得による資格変更, 受入研究機関: 群馬大学).
2008年 電気通信大学大学院情報システム学研究科 助教.
2011年 岩手大学工学部電気電子・情報システム工学科 助教.
2016年 岩手大学理工学部システム創成工学科 助教(改組による所属変更).
2018年 岩手大学理工学部システム創成工学科 准教授.
2020年 岩手大学理工学部システム創成工学科 教授.

[推薦理由] ソート問題は古くから多種多様な問題設定において研究されてきた.本研究ではその中でも与えられた区間を反転させるという操作を繰り返して配列をソートする問題を扱っている.この問題はパンケーキソートや,パス上のトークンスワッピング問題の一般化となっている.本研究ではどんな長さnの配列も,ソートする際にO(nlogn)回の操作で完了することのできる5つの区間が必ず存在することを示している.これは従来特定の長さでのみしか示されていなかった事実である.さらに本研究ではその操作回数が漸近的に最良であるということも示しており,高く評価できる.以上の理由により,山下記念研究賞にふさわしいものとして本研究を推薦する.
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●Towards a Functional Reactive Programming Model for Developing WSANs
[Asia Pacific Conference on Robot IoT System Development and Platform(APRIS2020)(2020/11/10)](組込みシステム研究会)
watanabe

渡部 卓雄 君 (正会員)

1986年3月 東京工業大学理学部情報科学科 卒業.
1988年3月 東京工業大学理工学研究科情報科学科専攻 修士課程 修了.
1991年3月 東京工業大学理工学研究科情報科学科専攻 博士課程 修了.理学博士.
1990年4月 日本学術振興会 特別研究員.
1991年9月 イリノイ大学計算機科学科 研究員.
1992年4月 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科 助教授.
2001年1月 東京工業大学情報理工学研究科計算工学専攻 助教授.
2002年4月 国立情報学研究所ソフトウェア研究系 助教授.
2004年4月 東京工業大学情報理工学研究科計算工学専攻 准教授.
2016年4月 東京工業大学情報理工学院情報工学系 准教授.
2017年1月 東京工業大学情報理工学院情報工学系 教授.

[推薦理由] 本論文は,受賞者が提案する関数型リアクティブプログラミング(FRP)言語である"Distributed XFRP"を用いて,無線センサ・アクタネットワーク(WSAN)のシステムの事例を通じ,分散制御を記述する際のFRPパラダイムの有用性を示すものである.論文は"Distributed XFRP"の基礎的な概念と実行モデルを詳細かつ明快に説明した後,ノード間通信におけるグリッジによって同期が困難となる課題を,部分的にではあるが本質的に解決する道筋が示されている.よって組込みシステムの開発技術の発展に貢献するところが大きいことから,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●Classical verification of quantum computing with trusted center
[2020-QS-01(2020/10/16)](量子ソフトウェア研究会)
morimae

森前 智行 君 (正会員)

2009年 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 博士課程 修了.博士(学術).
2013年 群馬大学先端科学研究指導者育成ユニット 助教.
2021年 京都大学基礎物理学研究所 准教授.

[推薦理由] 量子計算能力を有する証明者の計算結果を,従来計算能力のみを有する検証者が正しく検証できるかについては,長い間未解決の問題であった.多項式時間量子計算で解けない問題を前提に,この問題は肯定的にMahadev氏によって2018年に解決されたが,この制限がない場合は依然として未解決である.一方,信頼できる第三者を仮定すれば情報理論的に肯定的な結果が本研究の著者の一人によって示されたが,その第三者を古典通信による遠隔量子状態準備プロトコルに置き換えることができないことが,計算量理論的仮定の仮定のもとで本研究によって示された.情報理論的仮定のみでの量子計算結果の検証の難しさが明らかになり,今後の発展も期待され,山下記念研究賞にふさわしいと考える.
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情報環境領域

●高次元データ多クラス識別問題におけるGBDTライブラリの実装と改善
[マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(DPSW2020)(2020/11/12)](マルチメディア通信と分散処理研究会)
fujino

藤野 知之 君 (正会員)

2010年 慶応義塾大学物理情報学科 卒業.
2012年 慶応義塾大学院基礎理工学専攻 前期博士課程 修了.修士(工学).
同年NTT研究所入社,現在に至る.
産業用IoTシステムの開発などに従事.

[推薦理由] AI技術は様々な領域での活用が期待されている.本論文では,推論処理が軽量でありエッジでの適用が可能なGBDT (Gradient Boosting Decision Tree) に注目し,高次元データの多クラス識別問題における学習の軽量化手法を提案している.本手法は,入力次元数の削減による計算量の抑制と,判定木のバランス化による過学習の抑制を特長としており,学習時間を大きく削減しつつ,既存手法に迫る精度を達成している.AI技術は今後の科学技術の発展に重要なキーとなる技術であり,その適用範囲を広げる本技術は重要であると考えられるため,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●路側設置振動センサによる交通量推定システムの検討
[マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(DPSW2020)(2020/11/12)](マルチメディア通信と分散処理研究会)
yoshida

吉田  誠 君 (学生会員)

1998年 大阪工業大学工学部電子工学科 卒業.
2005年~(現在) オンキヨー株式会社開発部にて低ノイズ音声回路の開発,音・振動センシングシステムの研究開発に従事.
2018年~(現在) 大阪工業大学電子情報システム工学科 非常勤講師.
2020年~ 奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 博士後期課程に社会人博士として入学.
現在に至る.技術士(電気・電子部門).

[推薦理由] 候補者は,長年人手に頼っていた道路交通量調査を,低コストで設置が用意なピエゾ素子と用いた振動センサにより実現することを目指している.本論文では,機械学習を用いて測定対象レーンにおける車両の通過を検知する手法について提案している.実際に対向二車線の道路に設置し,評価を行い雨天時においてもF値として0.89の精度で検知できることを示している.IoTやスマートシティの活用として有用である技術であるとともに,実際の環境において評価し,有用である事を示している点から本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●色差を考慮した量的データ表現用グラデーションの作成ツール
[2020-HCI-189(2020/9/8)](ヒューマンコンピュータインタラクション研究会)
misue

三末 和男 君 (正会員)

1984年3月 東京理科大学理工学部情報科学科 卒業.
1986年3月 東京理科大学大学院理工学研究科情報科学専攻 修士課程 修了.
1986年4月~2004年7月 富士通株式会社および株式会社富士通研究所に勤務.
1997年5月 博士(工学)東京大学.
2004年8月 筑波大学システム情報工学研究科 助教授(その後 准教授).
2015年4月 筑波大学システム情報系 教授.
現在に至る.情報可視化,視覚的インターフェース,グラフ自動描画等の研究に従事.

[推薦理由] グラフにおいて量的データを表現するために使われるグラデーションの可読性を向上させることは重要である.本論文に示されている作成支援ツールは,グラフを見る者がデータの順序を読み取りやすいグラデーションを作り,かつ,どのような色を使うのかという点において独自性のあるグラデーションを作ることを可能としている.提案アルゴリズムも汎用的であり,他のソフトウェア(例:表計算ソフトウェアのグラフ作成モジュール)に組み込めるものなっている.したがって本研究の有用性は極めて高い.また,学術的な成果に加えて実装も優れており開発されたツールは軽快に動作する実用的なものとなっている.これらの理由により,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●在宅勤務が職場の関係性及びメンタルヘルスに及ぼす影響
[インタラクション2021(2021/3/10)](ヒューマンコンピュータインタラクション研究会)
akahori

赤堀  渉 君 (正会員)

2015年 早稲田大学先進理工学部応用物理学科 卒業.
2017年 早稲田大学先進理工学研究科物理学及応用物理学専攻 修士課程 修了.
同年 日本電信電話株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文には,在宅勤務の導入によって同僚間のコミュニケーションにどのような変化があったのかについて,従業員17名を対象とした経験サンプリング,インデプスインタビュー,アンケートを組み合わせた調査の結果が報告されている.特に分析結果として,繋がりの強い同僚間のコミュニケーションと弱い同僚間のコミュニケーションの二極化が,在宅勤務時の不安感を増加させる要因の一つとなりうること等が報告されている.これらの結果は,在宅勤務を行う労働者のメンタルヘルスや仕事の創造性が低下するという課題を解決するための糸口となる点で極めて有用である.また,本研究の調査方法は更なる調査方法,分析方法を探るのに資する点で学術価値が高い.これらのように,本研究は社会的要求に応えつつ学術的価値も大きい成果を挙げており,山下記念研究賞受賞候補にふさわしいと判断される.
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●IoTデバイスを用いた大浴場混雑可視化システムのリリース・運用についての事例報告
[2020-IS-153(2020/8/22)](情報システムと社会環境研究会)
manabe

眞鍋  悠  君 (正会員)

2019年3月 千葉大学教育学部 小学校教員養成課程 卒業.
2019年4月 株式会社星野リゾート 入社.
現在,内製・外注ソフトウェアの企画・設計・開発に従事.

[推薦理由] 本論文は,新型コロナウィルス感染拡大に伴う三密状況回避を目的とした,IoT センサーデバイスを用いた宿泊施設での大浴場混雑可視化システムの事例報告である.2020年は新型コロナウィルス感染拡大に伴い,産業部門,特に観光業では大きな危機を迎えることとなった.このような状況下で4月から5月までの短期間に経営会議での意思決定からアプリケーションの構想,アーキテクチャやUIデザインの決定・実装・リリース後の修正,経営からの評価,顧客からの評価について報告されたものである.時々刻々と変化する社会環境の中で「使える」情報システムの開発を研究対象としている当研究会にとって有用性が高い事例研究であり,山下記念賞に値すると判断した.
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●網羅性を重視した学術論文に対する検索手法
[2020-IFAT-139(2020/7/31)](情報基礎とアクセス技術研究会)
fukuda

福田 悟志 君 (正会員)

2013年3月 広島市立大学大学院情報科学研究科情報科学専攻 博士前期課程 修了.
2015年10月 九州大学システム情報科学研究院情報学部門 パートタイム職員.
2016年9月 広島市立大学大学院情報科学研究科情報科学専攻 博士後期課程 修了.
2017年10月 九州大学システム情報科学研究院情報学部門 助教(特定プロジェクト教員).
2021年4月 中央大学理工学部ビジネスデータサイエンス学科 助教.
自然言語処理,データサイエンス等に関する研究に従事.

[推薦理由] 本研究では,学術論文検索のように網羅性が重視されるタスクに有用な,単語ベースの検索クエリによる文書検索手法を提案している.本手法はLDAを用いてブーリアン検索を行うが,LDAのパラメタは検索性能に大きな影響を持つ一方で,最適なパラメタは文書集合によって異なるため,事前に決定することは難しい.そこで,検索対象の文書集合とクエリキーワード集合が与えられた際に,異なる複数のLDAパラメタを用いて文書集合をトピック系列化し,各LDAモデルにトピック化したクエリを用いてブーリアン検索した結果を統合することで,検索結果のランキングを決定する.さらに,本手法のランキング結果と従来の各種ランキング法の結果を統合することで,網羅性(再現率)の高いランキングを実現している.手法の独創性および従来研究に対して一定の性能向上が達成されていることから,受賞候補論文として推薦する.
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●Occlusion aware Facial Landmark Detection based Facial Expression Recognition with Face Mask
[2021-AVM-112(2021/2/26)](オーディオビジュアル複合情報処理研究会)
yang

楊   博 君 (正会員)

2010年9月 早稲田大学国際通信情報研究科 博士前期課程 入学.
2012年9月 早稲田大学国際通信情報研究科 博士後期課程 入学.
2015年10月 早稲田大学GITI 招聘研究員.
2019年4月 KDDI総合研究所 研究主査,現在に至る.
画像処理,自然言語処理,マルチモーダル対話AIなどの研究に従事.

[推薦理由] 候補者は,マスクを着けている人でも,90%以上の精度でポジティブ・ニュートラル・ネガティブの表情を分析できる表情認識技術を提案した.本研究は,顔マスクを着用する時人の表情認識を行う目的に,オクルージョンを意識した顔ランドマックの検出に基づく顔認識の深層学習モデルを提案し,その性能検証を行った.具体的には,まず,本研究はグローバル弁別器とローカル弁別器を含む敵対生成ネットワークの方式を採用し,マスクを着用する人の顔ランドマックの検出精度向上を実現した.次に,本研究は鼻周囲のランドマックを使い,顔マスクで隠れされた顔領域と顔マスクで隠れされた顔領域を分離され,それぞれの顔領域を別々で処理することができるようになった.最後に,本研究は注意機構に基づく深層学習モデルを利用し,マスクを着用する顔の三種類表情(ポジティブ,ニュートラル,ネガティヴ)の分類が行えるようになった.評価実験では,実際のマスクを着用する顔写真に対する精度評価を通じて,従来技術に対する有意な改善効果が確認された.以上を踏まえ,候補者を山下記念研究賞に推薦する.
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●情報の信頼性への関心を高める流言注意喚起ボットの開発
[グループウェアとネットワークサービスワークショップ(GNWS2020)(2020/11/20)](グループウェアとネットワークサービス研究会)
nishimura

西村 涼太 君 (学生会員)

2021年3月 和歌山大学システム工学部 卒業.
2021年4月 和歌山大学大学院システム工学研究科 博士前期課程 進学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,インターネット上で発信・拡散される虚偽情報である「流言」に着目し,ユーザが日常生活において流言に惑わされないよう,LINEアプリケーション上でファクトチェック支援や最新の流言通知を行うボットである「ちるも」を提案し,ユーザ評価を通じてその有効性を検証している.新型コロナウィルス感染拡大によって実際にいくつもの流言が拡散される昨今の情勢下,日常生活において流言への気づきを与えその拡大を防止することを目的とする本論文は,ユーザの不安解消のみならず,社会全体の安定にも寄与する可能性のある重要な成果である.よって本論文を山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●地域コミュニティにおけるドキュメントコミュニケーションに関する一考察
[2021-DC-120(2021/3/26)](ドキュメントコミュニケーション研究会)
akimoto

秋元 良仁 君 (正会員)

2016年9月 国立本店 ほんとまち編集室 参加.
2019年9月 本棚部部長 就任.
国立本店にて,「対の本棚」「ミツな本棚」「図鑑棚」等,ほんの団地・本棚企画運営等の活動に従事.

[推薦理由] 本研究は,市民が公共サービスを提供する場であるコモンスペースにおいて,コミュニティへの参加意識を高めるドキュメントの役割について着目し,ドキュメントを用いたコミュニティ意識尺度の適用可能性について論じている.コミュニティの活性化にドキュメントを活用する点で新規性があり,加えて,報告では東京都国立市に拠点を置くコモンスペースを事例に,限られた資源の中でドキュメントの果たす役割が実践されており,有用性が高い.以上のような理由から,本研究はドキュメントコミュニケーションの発展に資する内容であり,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●SD-RoFネットワークの設計と実装
[2021-MBL-98(2021/3/2)](モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究会)
aiura

相浦 一樹 君 (学生会員)

2020年3月 大阪大学工学部電子情報工学科 卒業.
2020年4月 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 修士課程 進学.
現在に至る.

[推薦理由] 本発表では,プロトコルフリー,大容量性,低遅延性を併せ持つ無線アクセスネットワークアーキテクチャを実現するために,光スイッチと電気スイッチを組み合わせたSD-RoF (Software-Defined Radio over Fiber)ネットワークの要素技術を提案している.SD-RoFネットワークではユーザの要求に応じて光パスであるRoF経路を適応的に割り当てることが重要となる.これを実現するために,本発表ではElastic RoF moduleを設計・実装した.本モジュールは光領域での周波数変換および合波を電気領域で実施することで,RoF経路の適応的な割り当てを安価に実現しており,将来有望な技術を実用化するための有用な技術開発であり,推薦に値する発表である.
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●受動的かつ不完全なセキュリティログ情報を用いたネットワーク構成情報検証手法
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2020)(2020/10/27)](コンピュータセキュリティ研究会)
uekawa

上川 先之 君 (正会員)

2016年 岡山大学工学部情報系学科 卒業.
2018年 岡山大学大学院自然科学研究科 博士前期課程 修了.
同年 日本電信電話(株)入社,NTTセキュアプラットフォーム研究所にてサイ バー攻撃対策技術の研究開発に従事.
2021年 NTTテクノクロス(株)入社.現在,セキュリティアドバイザリサービス の開発に従事.

[推薦理由] セキュリティ対策の現場で生じている課題に対し,アプローチしている.具体的には,ネットワークトポロジを自動的に把握したいというニーズがあり,それ自体を満たす代わりに,オペレータの推論と矛盾するかどうかを自動判定するという課題を設定し,その解を示しているところが面白い.この現実的な問題に,解集合プログラミングという手法で取り組んでいる.総じて,実践的内容を含み大変興味深い研究である.本研究は今後の研究領域の発展につながる可能性も高く,山下記念研究賞の受賞にふさわしいものとして推薦する.
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●スクリプト実行環境に対するテイント解析機能の自動付与手法
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2020)(2020/10/28)](コンピュータセキュリティ研究会)
usui

碓井 利宣 君 (学生会員)

2012年3月 慶應義塾大学環境情報学部 卒業.
2015年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 修士課程 修了.
2015年4月 日本電信電話株式会社 入社.
2018年9月 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 博士課程 入学.
現在,NTT社会情報研究所にて,マルウェア解析に関する研究に従事.

[推薦理由] この論文で述べられている研究では,スクリプト言語固有の型変換に起因するテイント伝搬漏れを特定し,それを解消する強制伝搬ルールを生成する手法を提案している.生成した強制伝搬ルールを既存のテイント解析に適用することにより,各種スクリプトに対するテイント解析およびデータフロー解析を実現している.新規性が高く,また,データフロー解析に有意義で実用性も高く,論文としての完成度が非常に高い.よって,山下記念研究賞の受賞にふさわしいものとして推薦する.
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●遅延の傾向を反映したLSTMによる列車遅延予測手法
[2020-ITS-83(2020/11/17)](高度交通システムとスマートコミュニティ研究会)
tatsui

辰井 大祐 君 (正会員)

2006年 電気通信大学電気通信学部 卒業.
2008年 東京大学大学院工学系研究科システム量子工学専攻 修了.
同年 財団法人鉄道総合技術研究所 入社.
列車のダイヤ策定,旅客流動に関する研究に従事.

[推薦理由] 本論文はLSTMを用いて列車の遅延予測を行う方式に関するものである.列車混雑などによる小さな遅延とそれに伴う運行間隔調整などによる遅延を予測する手法を提案しており,過去の運行履歴情報を用いて複数のモデルの遅延予測精度を評価している.提案内容・評価方法・結果ともに完成度・質が高く,本分野での貢献は高く評価できる.以上より,山下記念研究賞の候補として推薦する.
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●複数レシピで並行調理する際の調理環境に応じた最適調理手順作成法と評価
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2020)(2020/6/25)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
nakabe

中部  仁 君 (正会員)

2019年3月 広島市立大学情報科学部 卒業.
2021年3月 奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 博士前期課程 修了.
同年 楽天グループ株式会社 入社.現在に至る.

[推薦理由] 本研究では,複数レシピを用いた並行調理をタスクスケジューリング問題として定式化し,その最適調理手順の作成法を提案している.タスクスケジューリング問題の最適化アルゴリズムに基づき,料理特有の洗い物を考慮した拡張を行うことで,効率よく最適調理手順を探索する.評価実験において,提案アルゴリズムを実際のレシピから作成した献立に対して実行し,調理時間を15%短縮できることを示しおり,ユビキタスコンピューティング技術の家庭応用が期待される.以上から,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●行動認識ニューラルネットの理解に向けたActivation Maximizationの活用に関する検討
[2020-UBI-68(2020/12/19)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
yoshimura

吉村 直也 君 (学生会員)

2018年3月 大阪大学工学部電子情報工学科 卒業.
2020年3月 大阪大学大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻 博士前期課程 修了.
2020年4月 大阪大学大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻 博士後期課程 進学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,ウェアラブルデバイスに搭載される加速度センサを用いた行動認識ニューラルネットワークを分析する可視化手法を提案したものである.行動認識技術にニューラルネットワークの利用が増加しているが,内部動作を解釈するための方法は十分に検討されていない.本論文は,ニューラルネットワークの内部機能を可視化するActivation Maximizationを行動認識モデルに適用した.また加速度特有のノイズを低減する正則化手法を合わせて提案し,実在する加速度データに近い信号を生成した.さらに,提案手法を用いてモデルが抽出する特徴を俯瞰する特徴地図を作成し,行動認識ニューラルネットワークの理解に活用できる可能性を示した.本取り組みは行動認識技術に解釈性を導入する新しい取り組みとして,ユビキタスコンピューティング分野に大きく貢献するものである.よって,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●分散コンピューティング基盤における宣言的構成管理の適用可能性と論点
[インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2020)(2020/12/3)](インターネットと運用技術研究会)
makabe

真壁  徹 君 (正会員)

1997年 青山学院大学経営学部 卒業.
1997年~2000年 株式会社大和総研.
2001年~2015年 日本ヒューレット・パッカード株式会社.
2015年~現在 日本マイクロソフト株式会社.
2021年 北陸先端科学技術大学院大学(東京社会人コース) 先端科学技術研究科 博士前期課程 修了.
クラウドコンピューティングに関する技術支援に従事.

[推薦理由] 手続きを逐一指示せずに,あるべき姿を定義すれば基盤をその通りに設定・維持できる宣言的構成管理のための分散コンピューティング基盤として,Kubernetesが普及している.本論文では,ハザード分析手法であるSTAP (System-Theoretic Accident Model and Processes) によりKubernetesの構造を分析し,宣言的構成管理の分散コンピューティング基盤への適用可能性を議論している.本分析により,適用可能性の論点として「入力時検証」「アプリケーションのエラー耐性」「実行空間の分離と優先制御」「プル型orプッシュ型」「管理対象の異種混在」に絞り込み論じている.Kubernetes全体の構造を分析する他に類のみない研究成果であることから,山下記念研究賞候補に推薦する.
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●教室でのオンライン講義受講のための無線接続環境評価
[インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2020)(2020/12/4)](インターネットと運用技術研究会)
ishihara

石原 知洋 君 (正会員)

2009年 慶応義塾大学政策・メディア研究科 後期博士課程 修了.
2010年 博士(政 策・メディア).
2009年より東京大学総合文化研究科特任助教に就任.
2016年 同研究科 助教.
2019年 同研究科 准教授.
ドメインネ-ムシステムおよびインター ネット・無線LANの運用技術に関する研究・開発に従事.

[推薦理由] オンラインと対面の講義が混在している大学のネットワークでは,オンラインコンテンツを視聴するために,多数の学生が同時利用できるか把握することが重要である.本論文では,実際の環境を用い,各種条件下で同時視聴した場合のネットワーク使用状況の分析やコンテンツの品質を評価している.本評価により,モバイルWi-Fiルータの使用を禁ずるなどのいくつかの条件を整えれば,想定されている無線接続を用いた大教室における同時オンライン講義の受講が十分に可能であることが明らかとなった.コロナ禍に際して,多くの大学関係者にとって有益な情報・知見を示している非常に有用性の高い研究であることから,山下記念研究賞候補に推薦する.
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●日本国内における児童向けセキュリティ教材の実態調査
[2021-SPT-41(2021/3/2)](セキュリティ心理学とトラスト研究会)
tsubone

坪根  恵 君 (学生会員)

2019年 早稲田大学基幹理工学部情報通信学科 卒業.
同年 早稲田大学大学院基幹理工学研究科情報理工・情報通信専攻 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,小中学校のプログラミング教育が必修化される中,小中学校の教科書と地方行政機関が独自に発行しているパスワード啓発資料といったセキュリティ教材において,パスワード管理がどう教えられるかを調査・報告するものである.調査の結果,教科書によって取り上げられ方が大きく異なることを明らかにした.また,地方行政機関の取り組み状況についても明らかにした.このような調査は児童教育ジャンルでの初の試みであると思われ,新しい視点を提供するものである.また,今後の研究の発展・展開も大変興味が持たれる.以上から,セキュリティ心理学とトラスト研究会として,坪根氏を山下記念研究賞受賞候補者として推薦する.
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●IEEE 802.19.3 Standardization for Coexistence of IEEE 802.11ah and IEEE 802.15.4g Systems in Sub-1 GHz Frequency Bands
[2020-CDS-28(2020/9/22)](コンシューマ・デバイス&システム研究会)
nagai

永井 幸政 君 (学生会員)

1998年3月 電気通信大学電気通信学部電子情報学科 卒業.
2000年3月 電気通信大学大学院電気通信学研究科電子情報学専攻 博士前記課程 修了.
2000年4月 三菱電機株式会社 入社.
2016年10月~2020年3月 Mitsubishi Electric Research Laboratories (米国・ボストン) 出向.
2019年4月 静岡大学創造科学技術大学院情報科学専攻 博士後期課程 入学.
現在,三菱電機株式会社情報技術総合研究所にて,IoT向け通信システム,等の研究開発に従事.

[推薦理由] 環境モニタリングやスマートメータのような多数IoT端末から情報を収集するニーズに対し,920MHz帯を使用したLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる無線通信システムが注目されている.本研究では,同一周波数で運用される複数のIoT向け無線通信システム間の共存問題を提起し,通信環境の予測と効率的な帯域割当を行う共存メカニズムを提案した.シミュレーション評価によって,干渉やパケット遅延を抑えつつ双方の公平性を担保できることを示している.また,提案方式は,IEEE 802.19.3国際標準化規格としても採用された.コンシューマ向けIoT無線通信システムの研究としてCDS研究会のテーマとも合致し,当研究会会員の評価も高かったため,当該論文を山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●Smart Layer Splitter:pix2pixを用いたデジタルイラスト制作の色塗り工程における自動レイヤ分けシステム
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2020)(2020/6/25)](デジタルコンテンツクリエーション研究会)
watanabe

渡邉  優 君 (学生会員)

2019年 東京電機大学情報環境学部 卒業.
2021年 同大学院情報環境学研究科 修士課程 修了.
在学中はAIを活用したデジタルコンテンツの創作活動支援に関する研究に従事.

[推薦理由] デジタルイラスト制作の一工程である色塗り工程では,線画を髪や肌などのパーツごとにレイヤ分けする作業が必要であるが,既存のグラフィックソフトに付属する塗りつぶしツールでは手間がかかるという問題があった.そこで,本論文では,conditional GANの一方式であるpix2pixを用いてこの作業を自動化する方式を提案し,さらに,自動処理の結果誤りが発生した場合でも,手動での修正が可能なUIを持ったシステムを開発し,評価実験を通じてその有効性について確認している.本論文は,DICOMO2020において優秀な論文に対して授与されるDICOMO2020優秀論文賞を受賞している点と,また,2020年度の対象論文に対する幹事,運営委員による投票の結果,高得点を獲得している点から,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●ライブ配信動画に同期して点灯制御が可能なLED表示装置の実証実験について
[2021-DCC-27(2021/1/25)](デジタルコンテンツクリエーション研究会)
yanagisawa

柳沢  豊 君 (正会員)

1994年 大阪大学工学部情報システム工学科 卒業.
1998年 大阪大学大学院工学研究科 博士後期課程 修了.
1998年 日本電信電話公社(基礎研究所)入社.
2000年 NTTコミュニケーション科学基礎研究所.
2009年 西日本電子電話株式会社.
2013年 mplusplus 株式会社 CTO 就任.
同年より,NTT コミュニケーション科学基礎研究所客員研究員,
神戸大学大学院工学研究科研究員を兼任,現在に至る.
博士(工学).
IEEE,情報処理学会,各会の会員.

[推薦理由] 従来のオンラインのライブ配信サービスでは,ステージで行なわれるコンサートやライブの参加者の満足度を高める要素のひとつと考えられている「非日常感」が得られにくいという問題があった.そこで,本論文では,ライブ映像に同期して点灯制御が可能な高輝度LEDを使用した小型LEDステージ,及びそれらを同期制御することができる点灯制御システムを提案し,音楽をメインコンテンツとするライブ配信サービスの観客の満足度を向上させる試みについて報告している.本論文は,毎回のDCC研究会発表会で発表された優秀な研究・制作に対して授与されるDCC優秀賞を受賞している点と,また,2020年度の対象論文に対する幹事,運営委員による投票の結果,高得点を獲得している点から,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●深層学習による車いす使用者向け経路探索のための路面評価に関する研究
[2021-ASD-20(2021/3/6)](高齢社会デザイン研究会)
sumida

隅田 康明 君 (正会員)

2010年3月 九州産業大学情報科学部 卒業.
2012年3月 九州産業大学大学院情報科学研究科 博士前期課程 修了.
2016年3月 九州大学大学院システム情報科学府情報学専攻 博士後期課程 修了.博士 (情報科学).
2020年4月 九州産業大学理工学部情報科学科 講師.
現在に至る.

[推薦理由] 高齢者や障害者でも独力で移動できる都市環境の整備が進められているが,歩道を含む都市環境のバリアフリー化はいまだ十分ではない.路面状態の定量的な評価を行い,それを基にした経路の提示を行えるシステムの開発につなげる試みである.電動車いす移動時に必要とする消費電力(路面状態と相関)を,深層学習によって路面画像から推定する実験を実施した結果,屋外の路面に限定した場合,約5.3%の誤差で検証用データを推定することを示した.福祉や高度交通システムの観点から高齢者の移動を拡張させる可能性が示唆され,本研究発表の社会的意義は高く,山下記念研究賞受賞候補者として推薦する.
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メディア知能情報

●潜在的なトピック構造を捉えた生成型教師なし意見要約
[2020-NL-246(2020/12/3)](自然言語処理研究会)
isonuma

磯沼  大 君 (学生会員)

2015年3月 東京大学工学部システム創成学科 卒業.
2017年3月 東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 修士課程 修了.
2018年9月 東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程 入学.
2020年4月 日本学術振興会特別研究員(DC2).
現在に至る.

[推薦理由] 本論文では,生成型教師なし要約のために,トピックに関する木構造を導入し,その木構造の深さに応じて意味的な粒度が変化して要約文が構成されるという着眼点を導入している.このアイデアを実現するために,再帰的な混合ガウス分布に基づく木構造ニューラルトピックモデルと自己回帰型文生成モデルを組み合わせる手法を提案しており,そのアイデアは非常に明瞭かつ,提案手法自体も先駆的な取り組みと言え新規性も高い.近年の代表的な手法と比較を行い,その有用性を評価できており,定性的,および定量的な分析の両者で提案手法の特徴を深堀りできている点も高く評価できる.論文自体もよく構造化して記載されており読み物としての完成度も高い.
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●マルチエージェント深層強化学習を用いたライドシェアのサービスエリア制御とスケーラビリティの確保
[2020-ICS-200(2020/9/7)](知能システム研究会)
yoshida

吉田 直樹 君 (正会員)

2019年 早稲田大学基幹理工学部情報通信学科 卒業.
2021年 早稲田大学基幹理工学研究科情報理工・情報通信専攻 修士課程 修了.
同年 モリカトロン株式会社入社.
現在に至る.

[推薦理由]ライドシェアでは,乗客はモバイル端末から配車を要求でき不特定多数の乗客が乗り合うことで安価なサービスが提供できる.しかし地域によってドライバの過剰供給や不足が生じている.著者らはこれまでに深層強化学習を用いてエージェントに待機地域を割り当てるシステムを提案した.しかしエージェント数が増えるほど学習時間が増加し,ライドシェアのようにエージェント数が膨大な環境ではこれを無視できない.そこで本論文ではあらかじめ少ないエージェント数で学習し,それらの学習器を複製することで学習コストの削減を行うシステムを提案した.学習に要する時間を抑えながら既存システムと同等の性能を発揮できることを示しており,学術性及び実用性の両面から優れた論文である .
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●未知散乱条件下での深層学習によるMulti-view Stereo
[2020-CVIM-223(2020/11/6)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
fujimura

藤村 友貴 君 (正会員)

2016年3月 京都大学工学部情報学科 卒業.
2018年3月 京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻 博士前期課程 修了.
2019年4月 日本学術振興会特別研究員(DC2).
2021年3月 京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻 博士後期課程 修了.博士(情報学).
2021年4月 奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科情報科学領域 助教.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究発表は,霧や煙などの散乱現象下での多視点ステレオに対して,深層学習を用いた手法を提案している.提案手法では,多視点間の幾何拘束と画像の劣化を同時にモデル化する手法としてdehazing cost volumeを新たに導入し,そのdehazing cost volume を用いて散乱媒体の散乱パラメータをシーンの深度と同時推定するアルゴリズムについても提案している.また,実際の霧がかったシーンで撮影された画像での実験によって従来手法を上回る性能を示している.散乱による劣化の物理モデルと深層学習によるデータドリブンなモデルとを上手く融合させた手法となっており,コンピュータビジョン分野の研究として高く評価できる.以上により本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●空間周波数損失を用いた畳み込みニューラルネットワークの学習
[2021-CVIM-225(2021/3/4)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
ichimura

市村 直幸 君 (正会員)

1994年 電気通信大学大学院電気通信学研究科 博士後期課程 単位取得退学.
同年 通商産業省工業技術院電子技術総合研究所入所.
2001年 国立研究開発法人産業技術総合研究所 主任研究員,現在に至る.
工学博士.主に機械学習,コンピュータビジョンの研究に従事.

[推薦理由] 画像生成を行う畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の学習において,画像間の一致度を測るためにL2 損失およびL1 損失を用いると,ボケた画像が生成されるという問題がある.本論文では,この問題を解決するために,空間周波数損失を用いたCNNの学習方法を提案している.提案法では,ラプラシアンフィルタバンクをCNNの出力に適用し,空間周波数損失を全てのサブバンドにわたる特徴のL2損失の重み付き和として定義するとともに,高周波成分への重みを強調して学習する.実験ではimage inpaintingのタスクに対し,空間周波数損失を追加することで生成画像の画質が向上することを定量的に示した.本研究で得られるCNNへの空間周波数損失の導入が有用であるという知見は,image inpaintingのみならず他の画像生成・変換タスクへも適用できる可能性があり,その波及効果の高さから本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●毛のレンダリングのための効率的な重点的サンプリング
[Visual Computing(VC2020)(2020/12/2)](コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学研究会)
shibaike

芝池 祐星 君 (学生会員)

2020年3月 和歌山大学システム工学部 卒業.
2020年4月 和歌山大学大学院システム工学研究科 入学 .

[推薦理由] 本研究は,人間の髪の毛や動物の毛皮の画像生成(レンダリング)に必要な,方向の重点的サンプリング手法を提案している.従来手法では,毛に入射する光の位置を一様サンプリングにより求めていたが,本研究では,経路ごとの光の減衰率の積分値に比例した確率で入射位置と経路を選択している.これにより,従来手法と同時間レンダリングで比較して,黒髪において,提案法は最大 2.85 倍ノイズを削減することができた.また,茶髪や白髪,アライグマの毛においても一定の改善が見られており,幅広い入力に対して従来手法を上回る結果を得られていることから,当該手法には確かな有用性がある.よって,本研究発表を山下記念研究賞候補として推薦する.
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●新入生を対象としたプログラミング入門科目におけるオンライン授業と教室授業の実践比較
[2020-CE-156(2020/8/29)](コンピュータと教育研究会)
suzuki

鈴木 大助 君 (正会員)

1999年 京都大学理学部理学科 卒業.
2001年 京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻 修士課程 修了.
2004年 京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻 博士課程 修了.博士(情報学).
東京理科大学工学部経営工学科 助手,東京工科大学コンピュータサイエンス学部 助教,北陸大学情報センター 講師,同大学未来創造学部 講師,同大学経済経営学部 講師,同 准教授を経て,
2021年 北陸大学経済経営学部 教授.現在に至る.
情報教育,教育工学の研究に従事.

[推薦理由] 未経験者を対象としたプログラミングの授業に関して,オンライン授業と教室授業の教育効果を対照実験により比較検証している.オンライン授業の優れている点をアンケートとテストの結果に基づいて客観的に示しており,オンライン授業に対する学生・教員・社会の理解を促進する一助となると期待されるため,推薦する.
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●FPGAを用いた論理回路設計実験の遠隔実践
[2020-CE-157(2020/11/7)](コンピュータと教育研究会)
akaike

赤池 英夫 君 (正会員)

1988年 電気通信大学計算機科学科 卒業.
1990年 同大学院 修士課程 修了.
1994年 同大学院 博士課程 単位取得退学.
1996年 電気通信大学電気通信学部 助手.
2010年 電気通信大学大学院情報理工学研究科 助教,現在に至る.
工学修士.HCI,インタラクティブシステムが専門.

[推薦理由]コロナ禍の中で,インターネットを通してFPGA回路の実験授業を成立させた試みの報告である.物理的な実験装置を遠隔で操作して実験を行う環境を構築し,ソフトウェアによる操作と機器のカメラ画像を組み合わせることで遠隔ながらも臨場感のある実験装置が構成されており,有用性が高い.本内容は実践内容,オンライン化の課題およびその対応策,および実施状況(結果)が明確に示されており,オンライン授業を検討する教員等に対して,多くの知見を与える内容と考えられるため推薦する.
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●日本中世絵巻における性差の描き分け-IIIF Curation Platformを活用したGM法による『遊行上人縁起絵巻』の様式分析
[人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2020)(2020/12/12)](人文科学とコンピュータ研究会)
suzuki

鈴木 親彦 君 (正会員)

2003年 東京大学文学部歴史文化学科 卒業.
2005年 東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻 修士課程 修了.
2005年 株式会社トーハン 入社.
2012年 東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究専攻 修士課程 修了.
2017年 東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究専攻 博士課程 単位取得退学.
2017年 ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター 特任研究員,国立情報学研究所兼務.
2019年 ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター 特任助教,国立情報学研究所兼務.
2020年 東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究専攻にて博士号取得.
博士(文学).人文情報学および文化資源学の研究に従事.

[推薦理由] 本研究は,美術史学の様式研究に対し,デジタルツールIIIF Curation Platformと機械学習を併用した「GM法」を適用することで,研究における物理的な制約をクリアし大規模化・効率化を達成した.美術史の先行研究を補強するだけでなく,GM法の大規模化かつ網羅性を活かして「性差(僧侶・尼僧)の描き分け」を試みた点も新しい.描き分けの分析結果は,研究対象『遊行上人縁起絵巻』に対する美術史研究に知見をもたらしただけでなく,時宗の研究そのものにも展開可能である.GM法の応用可能性は広く,美術史研究および情報学研究双方のコミュニティに多いに資すると考えられる.
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●音色変動の変分モデルによる楽音生成
[2021-MUS-130(2021/3/17)](音楽情報科学研究会)
masuda

増田 尚建 君 (学生会員)

2018年3月 東京大学電子情報工学科 卒業.
2020年3月 東京大学情報理工学系研究科電子情報学専攻 修士課程 修了.
2020年4月 東京大学工学系研究科電気系工学専攻 博士後期課程 入学.現在に至る.

[推薦理由] 複雑な音色を生成できる手法として,深層生成モデルによる楽音の合成が近年注目されている.本論文は楽音における音色の時間的変動を考慮した深層生成モデルを提案している.変分オートエンコーダ(VAE)によって楽音の各フレームにおける瞬時的な音色をモデル化し,回帰型ニューラルネットにより(VAE)の事前・事後分布を制御することで音色の変動をモデル化する.提案手法により,楽器の種類および感性的な質感について制御した楽音合成が可能となり,楽音の新たな合成手法としての応用が期待される.音楽情報処理分野において,直感的な楽音合成の手段を与えるという点で重要な試みである.
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●BERT によるSequence-to-Sequence 音声認識への知識蒸留
[2020-SLP-134(2020/12/2)](音声言語情報処理研究会)
futami

二見  颯 君 (学生会員)

2020年3月 京都大学工学部情報学科 卒業.
2020年4月 京都大学大学院情報学研究科 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,言語モデルBERTによる双方向文脈依存の単語埋め込みを, sequence-to-sequence 音声認識に活用する方法を提案している.先行する文 脈のみを考慮する従来法と異なり後続文脈も考慮するBERTの知識を,音声認識 モデルに蒸留する.提案法は,音声データより多量に存在するテキストデータ を効果的に利用でき,また,発話を超えて続く文脈を考慮できる.故にこの提 案法は,深い音声認識の発展に強く貢献している.以上の理由により,山下記 念研究賞にふさわしい論文として本論文を推薦する.
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●テレビ録画とその字幕を利用した大規模日本語音声コーパスの構築
[2020-SLP-134(2020/12/2)](音声言語情報処理研究会)
ando

安藤 慎太郎 君 (正会員)

2019年3月 東京大学工学部電子情報工学科 卒業.
2021年3月 東京大学大学院工学系研究科 修士課程 修了.
2021年4月 アマゾンウェブサービスジャパン株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,テレビ録画とその字幕を用いて,音声認識のための大規模日本コー パスを構築している.音声認識研究におけるコーパスは大規模化しており,数千 時間規模のものを使うことも一般的だが,日本語音声コーパスの整備がこれまで 進んでいなかった.著者らは,論文中で音声認識とデータ精錬の反復により2000 時間の音声コーパスを構築し,更に最終的なコーパスを頒布している.本論文と それに連なる活動は,音声認識の研究に強く貢献している.以上の理由により, 山下記念研究賞にふさわしい論文として本論文を推薦する.
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●欧米における侵害通知の状況と日本への示唆
[2021-EIP-91(2021/2/19)](電子化知的財産・社会基盤研究会)
kaneko

金子 啓子 君 (正会員)

1981年 京都大学法学部 卒業,松下電器産業(株)(当時)入社.
1993年 ミシガン大学ロースクール LL.M.修了.
2014年 パナソニック(株) 退職,(株)ベネッセホールディングス 入社.
2017年 情報セキュリティ大学院大学 博士後期課程 修了.
2018年 (株)ベネッセホールディングス 退社,大阪経済大学経営学部 准教授(現在に至る).

[推薦理由] 金子啓子氏は,個人情報に関する法制を専門分野としており,これまで,米国や欧州の動向を中心に個人情報保護法制の動向や個人情報が漏えいしたあとの侵害通知や被害者の保護の仕組みなど,先端的な情報技術が社会にもたらす影響とその対応・緩和策などを研究してきた.EIP研究会において,積極的に発表を重ねている.本講演では,個人情報の侵害通知に着目し,企業においての実務経験を生かして,実効性のある侵害通知の仕組みについて提案しており,同分野のわが国の政策に与える影響は大きい.よって,金子啓子氏を2020年度山下記念研究賞に相応しいと考えるため,強く推薦するものである.
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●Quixoの強解決
[ゲームプログラミングワークショップ(GPW2020)(2020/11/15)](ゲーム情報学研究会)
tanaka

田中  智 君 (正会員)

2019年3月 東京工業大学工学部情報工学科 卒業.
2021年3月 東京工業大学情報理工学院情報工学系情報工学コース 修士課程 修了.
同年 株式会社ユーザーローカル 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 状態数の大きいゲームを強解決するには膨大な計算資源が必要となる.本論文では一般的な計算機の主記憶装置に収まらない広大なサイズ状態数を持つ 5x5 Quixoの強解決をおこない,2人プレイで初期状態から各プレイヤーが最適に行動した結果が引き分けになるなどの重要な性質を明らかにした.適切な状態表現法による記憶容量の削減,外部記憶装置と主記憶装置の使い分け,分散計算による実行時間の削減などの解析に用いられた手法は,同様のゲーム強解決をおこなう多くの研究にも適用可能であり,本論文の意義は大きい.以上,本論文は新規性,実用性ともに山下記念賞に相応しいと判断し推薦する.
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●わんテーブル:犬と人が食体験を共有するための匂い伝送システム
[エンタテインメントコンピューティング(EC2020)(2020/8/29)](エンタテインメントコンピューティング研究会)
hoshino

星野 瑠海  君 (正会員)

2021年3月 早稲田大学基幹理工学部表現工学科 卒業.
2021年4月 株式会社ベネフィット・ワン 入社.

[推薦理由] 本研究は,飼い主の食事の匂いを犬の食事に伝送することで,人と犬の食体験の共有を目指したシステムである.挑戦的な研究であるが,ヒューマン・ペットインタラクションはQoLを向上させる観点で意義が高く注目されている分野である.多くの参加者,特にペットを飼っている人の共感を得た内容であり,議論も活発に行われた(シンポジウムベストプレゼンテーション賞).新型コロナ感染拡大状況下において50件の調査を行っていることも評価できる.以上のとおり,ペットを対象としたエンタテインメントコンピューティング技術に新たな方向性を示した点を評価して,推薦したい.
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●けん玉できた!VR:5分間程度のVRトレーニングによってけん玉の技の習得を支援するシステム
[エンタテインメントコンピューティング(EC2020)(2020/8/30)](エンタテインメントコンピューティング研究会)
kawasaki

川崎 仁史  君 (正会員)

2007年 慶應義塾大学理工学部情報工学科 卒業.
2009年 慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 卒業.
2009年~2018年 日本電信電話株式会社.
2019年~現在 イマクリエイト株式会社.
2021年~現在 東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻 博士後期課程.
XRを活用したトレーニングシステムに関する研究開発に従事.

[推薦理由] 本研究は,キャプチャされた熟練者の進退動作の提示や,玉の速度を調整することを特徴としたVRを応用した技能習得システムである.システムの完成度に加え,体験者は練習を楽しむことができ,成功したことのない技を習得できたという結果を得ている.論文の完成度も高く(シンポジウム最優秀論文賞),発表時にも多くの議論があった.著者はけん玉検定の有段者とのことで,けん玉の楽しさを十分に反映した研究内容であることがうかがわれる.以上のとおり,研究としての完成度が高く,楽しめる技能習得システムとしてエンタテインメントコンピューティング分野において有意義なため,推薦したい.
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●GBDTによる化合物の血液胎盤関門透過性予測
[2021-BIO-65(2021/3/11)](バイオ情報学研究会)
ohue

大上 雅史 君 (正会員)

2011年4月 日本学術振興会 特別研究員 (DC1).
2014年3月 東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻 博士後期課程 修了,博士(工学).
2014年4月 日本学術振興会 特別研究員 (PD).
2015年4月 東京工業大学大学院情報理工学研究科 助教.
2016年4月 東京工業大学情報理工学院 助教,現在に至る.
日本バイオインフォマティクス学会 理事,並列生物情報処理イニシアティブ 理事.2014年 日本学術振興会 育志賞,2018年 船井情報科学振興財団 船井研究奨 励賞,2019年 科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞,2020年 Oxford Journals-JSBi Prize等受賞.

[推薦理由] 本研究は,限られた実験データセットから化合物(薬剤)の血液胎盤関門の透過性を予測するための方法論の提案,ならびに,その予測サービスを提供するウェブサービスを構築したものである.母体に投与された薬剤の胎児への影響を評価する上で,血液胎盤関門の透過性は重要な指標であり,その正確な予測は薬剤候補探索の効率性を大幅に向上させるものである.本研究は,既存手法よりも高い精度を比較的軽量な計算で達成できる予測手法を提案しており,その学術的貢献は大きい.さらに,その成果をwebサービスとして公開しており,当該分野における有用性も高く評価できる.以上の理由から,本研究を2021年度山下記念研究賞受賞の候補として推薦させていただく.
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●学生のレポート評価点に応じた学習活動フィードバックを行うシステムの検討
[2020-CLE-32(2020/11/27)](教育学習支援情報システム研究会)
aoki

青木 大誠 君 (正会員)

2020年3月 九州大学工学部電気情報工学科 卒業.
2020年4月 九州大学大学院システム情報科学府電気電子工学専攻  修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 大学生等のオンライン学習に際しては,その学習活動が学習ログとして蓄積される.学習活動に対するフィードバックの高度化は,学習成果改善にとって大変重要であるが,本研究では対象学生に対して少し上位の成績グループの学習活動を用いたフィードバック手法を提案されており,新規性が認められる.また,フィードバック効果調査も実際に行われており,信頼性も認められる.以上のことから,山下記念研究賞に相応しいものとしてCLE研究会より推薦する.
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●在宅認知症者を支援する「拡張認知機能」の提案~スマートエアリアルハンド:Sahasraの構想~
[2020-AAC-13(2020/8/29)](アクセシビリティ研究会)
nakayama

中山 功一 君 (正会員)

2002年3月 三重大学大学院工学研究科 修了(修士:工学).
2005年3月 京都大学大学院情報学研究科 修了(博士:情報学).
2005年4月 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)研究員.
2009年4月 情報通信研究機構(NICT)専攻研究員.
2010年4月 佐賀大学理工学部 准教授.現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,在宅の認知症者の支援のために拡張した認知能力を提供する手法についての構想を述べるとともに,認知症者と健常者の分け隔てない支援によって認知症の悪化を防ぐ可能性を論じた内容である.情報処理技術の研究開発を通してだれもが積極的に参加できる社会の実現を目指す当研究会のポリシーに合致した内容であり,超高齢社会における技術支援の可能性を示した意義ある発表である.以上の点を評価し,中山氏の発表を当研究会より推薦する.
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