教育学習支援情報システム(CMS)研究グループ新設のお知らせ

教育学習支援情報システム(CMS)研究グループ新設のお知らせ

目的

本研究グループでは、高等教育機関における教育・学習のための基盤ソフトウェアであるコース管理システム(Course Management System、 CMS)に関する研究発表および教育実践発表を通じて、大学教育と情報技術を核とした学際的な教育・研究実践コミュニティを形成することを目指す。

背 景

教育現場における多様なニーズに対応するため、米国やカナダ、オーストラリア等の高等教育機関においては、CMS の導入が急速に進んでいる。CMS は高等教育機関における教育・学習活動を、講義時間外も含め、情報技術により総合的に支援するためのシステムであり、高等教育機関での教育・学習活動に不 可欠なシステムとして発展している。例えば、米国における CMS の導入率はすでに80%を越えるとともに、平均で40%を越える講義等で活用されている。このような流れの中で、CMS に関する標準化が始まっており、教材・テストなどのコンテンツに関する標準化が IMS グローバル・ラーニング・コンソーシアムにより、また機能面での標準化が MIT の OKI プロジェクトで行われている。しかしながら、これら標準規格の利用は今なお限定的であり、普及のためには詳細化・規格の再検討が必要な状況である。 IMS・OKI プロジェクトに参加している国内の大学はなく、日本からの貢献が必要な状況である。

さらに、OKI 準拠で実際に運用できるシステムを目指して、2004年1月にミシガン大学・MIT・スタンフォード大学・インディアナ大学が共同で Sakai プロジェクトを開始した。このプロジェクトは、各大学が個別に開発してきた CMS 関連のシステムを統合し、2005年秋から 4 大学が同時に全学的なシステムとして運用する計画である。すでに、Carnegie Mellon University、 Columbia University、 Cornell University、 Harvard University、 Johns Hopkins University、 New York University、 Princeton University、 UC Berkeley、 UC Los Angeles など、北米の研究大学を中心とする 75 を超える大学がパートナープログラムに参画しており、大学間連携による CMS の研究開発とその活用に関する実践的経験を共有する大きな動きが生まれている。

一方、我が国においても、学生の学力低下に伴う補習教育、社会人を対象にしたリカレント教育・生涯教育など、教育の多様化 が進んできており、CMS の導入は今後急速に進むと考えられる。実際、WebCT などのベンダー製の CMS を導入した教育活動が一部の高等教育機関で試みられているが、極めて限定的な状況である。これは、米国と我が国の文化および教育・学習スタイルの違いのた め、CMS 導入に際して様々な工夫が必要となっているためである。さらに、携帯端末を利用したモバイルインターネットや低価格ブロードバンドなど、我が国の特徴的な 情報技術の活用により、いつでもどこからでも誰もが教育を受けられる大学教育を可能にする CMS の開発が重要である。このように、米国のCMSの動向を注視しつつ、我が国の教育現場で求められる次世代のCMSを探求することが現在求められている。

研究グループ設立の意義

そこで、本研究グループでは、高等教育機関における教育・学習のための基盤ソフトウェアである CMS に関する研究発表および教育実践発表を集め、これらを相互に影響させながらスパイラル状に発展させることにより、大学教育と情報技術を核とした学際的な教育・研究実践コミュニティを形成することを狙う。 大学では、日々膨大な数の講義や演習・セミナーなどが開催されており、その学問分野は多岐にわたる。このような多様で多数な教育現場をどのように情報技術を活用して支援するかは、競争が激化する現在の各大学に課せられた重要な指命である。しかも、情報技術自体、すさまじいスピードで進歩しており、技術と教育現場を上手く取りなしつつ、多様で多数な教育現場からのニーズに応えなければならない。 このような時代の流れの中で、CMS に関する情報技術の進歩と教育現場での改善を相互に影響させながらスパイラル状に発展させることが極めて重要になってきている。特に、CMS の導入・運用に おいては産学連携が必須であり、CMS のシーズ・ニーズ・ウォンツの源泉である大学と CMSの開発・運用を支援する産業界との連携の場を提供することは、教育現場にとっても、また産業界にとっても意義深い。また、現在、国内外の諸大学等で独自に進められているCMSの開発にかけられているリソースを、統合や相互協力により、効率よく活用することは、優れたシステムを低い総合所有コスト(TCO)で提供するという重要な課題に貢献するものである。

教育学習支援情報システム研究グループWebページ : http://www.ulan.jp/sigcms/

主な研究分野

本研究グループでは、情報技術および教育学の両面からアプローチし、CMSに関わる研究発表およびCMS を活用した教育実践発表を幅広く扱う。
  • プラットフォームに関する技術開発
  • 学習効果測定のためのツール開発
  • 標準化
  • 導入検討・構築・運用に関する事例研究
  • 学内での運用・普及
  • 学内他システムとの連携
  • 教材作成法
  • 効果的利用法
  • 教育実践
  • 授業とその評価
  • 授業デザイン
  • 大学間連合あるいは地域での活用
  • 他国での事例研究
  • その他、CMS に関するもの一般

提案者(五十音順)

発起人代表:間瀬健二(名大)
発起人:稲垣知宏(広大)、井上 仁(九大)、宇佐川毅(熊本大)、浦 真吾(CSK)、小村道昭(エミットジャパン)、角所 考(京大)、梶田将司(名 大)、隅谷孝洋(広大)、全 炳東(千葉大)、多川孝央(九大)、武井惠雄(帝京大)、竹村治雄(阪大)、壇辻正剛(京大)、照屋さゆり(玉川大)、中井 俊樹(名大)、中澤篤志(阪大)、中島英男(名大)、中野裕司(熊本大)、仲林 清(NTTレゾナント)、福原美三(慶応大)、福村好美(長岡技科大)、 冬木正彦(関西大)、安武公一(広大)、矢野米雄(徳島大)、山川 修(福井県立大)、山口和紀 (東大)、山里敬也(名大)、山田恒夫(NIME)、間瀬健二(名大)、松浦敏雄(大阪市立大)、美濃導彦(京大)、渡辺博芳(帝京大)