2001年度研究会活動報告
2001年度研究会・研究グループ活動報告
<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS
<情報環境領域>
DPS HI CG IS FI AVM GN DSM DD MBL CSEC ITS QAI EVA ICIIgr IACgr BCCgr
<フロンティア領域>
NL ICS CVIM CE CH MUS SLP EIP GI
コンピュータサイエンス領域
◆データベースシステム(DBS)研究会
[主査:清木 康、幹事:市川哲彦、角谷和俊、遠山元道、細川宜秀]
1.定例の研究会活動報告
第124~126回の研究発表会を開催した。特集テーマとしては、データベース分野における感性情報検索、マルチメディア、WWW などを取り上げた。 特に7月に開催した第125回研究会は発表件数89件、参加者数100名を越える会議となり盛況を博した。 また、1月に開催した第127回研究会ではデータベース分野と他分野の融合を目的として、「実空間とサイバースペースの融合:感性、データベース、ロボティクス」をテーマとして日本感性工学会感性ロボティクス部会との共催研究会を開催した。
研究発表は主に、画像検索、映像DB、放送型DB、WWW 検索、文書管理、データマイニング、時空間DB、モバイルDB、並列処理、情報提示、DB高度応用などである。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- データベースとWeb情報システムに関するシンポジウム(DBWeb2001)
このシンポジウムは、電子情報通信学会データ工学研究専門委員会にも協賛を頂いており、我が国におけるデータベース研究領域の最大規模のシンポジウムとして、12月5日、6日、7日の3日間、「データベースとWeb情報システム」を特集テーマとして開催した。平成13年度は、Web情報システムに関する国際会議 ISE2001 との開催時期を合わせ、京都で開催した。
「マルチメディアコンテンツ技術」に関する招待講演、「World Wide Web コンソーシアムでの最新テーマである Semantic Webの現状と課題」をテーマとしたチュートリアル、ならびに、「XMLエンジン最新動向」、日本建築学会との連係による「Web3D技術と建築・都市空間デザイン」、情報処理相互運用技術協会(INTAP)との連係による「Semantic Web」をテーマとしたパネルを開催した。さらに、日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業「マルチメディア・コンテンツの高次処理の研究」プロジェクトの成果報告特別セッションを開催した。
一般研究発表論文としては、23件(フルペーパー:14件、ショートペーパー:9件)が採択された。最終的な参加者数は190名であった。
また、本シンポジウムでは情報処理学会論文誌「データベース(IPSJ -TOD)」第14号(来年度発行予定)との同時投稿による連係を行った。同時投稿件数は辞退も含めて12件あった。
3.情報処理学会論文誌:データベースの報告
平成10年度にFI研と合同で創刊した研究会論文誌「データベース(IPSJ-TOD)」の第10号、第11号、第12号、第13号の発行を終えた。また、第10号では 15 件、第11号では 8 件、第12号では 6 件、第13号では18件が採録された。来年度発行予定の第14号は、データベースシステム研究会が主催しているシンポジウムとの同時投稿による連係を行い、同時投稿件数は辞退も含めて12件あった。
4.総括
ネットワークとマルチメディア技術の進展により、データベースシステムの重要性が一層大きくなるとともに、ネットワーク・マルチメディア時代の新しい情報共有のための中枢機構としての新しいデータベースシステム像が求められている。
データベースシステムは、広域の高速ネットワーク、モバイルコンピューティング・ネットワークが普及した段階では、広い範囲でのメディアデータの共有・統合を実現するための中心的なシステムとして位置づけられ、メディアデータ共有・統合に向けてのデータベース技術およびコンテンツの研究開発が、今後さらに重要になるものと考えられる。
データベースシステム研究会は、メディアデータおよびネットワークが形成する新しい情報環境を視野に入れながら、さらに、平成13年度、DBWeb2001での日本建築学会や情報処理相互運用技術協会(INTAP)、1月研究会での日本感性工学会感性ロボティクス部会と連係したように、他分野との連携を積極的に行うことによって,データベースシステム分野の発展拡大に貢献することを目指していく。
5.その他
データベースシステム研究会は、永続的な情報の共有・検索・利用のための諸技術に焦点をあてた研究会であり、広範なデータ処理技術をカバーし、今後データベースや情報検索に対する需要の高まりと共に、益々その守備範囲が拡大していくものと予想される。
そこで、本研究会は、他学会の関連組織(電子情報通信学会データ工学研究会、ACM SIGMOD 日本支部)と連携を強化し、データベース関連の研究者、技術者のコミュニティの更なる発展を目指ざす。
◆ソフトウェア(SE)工学研究会
[主査:青山幹雄、幹事:田村直樹、中島 震、中谷多哉子]
1.定例の研究会活動報告
第131~136回の研究発表会を開催した。発表件数は90件を数える。
これらの発表を分野別に見れば、要求分析、モデル化技術、設計手法、検証技術、ソフトウェアプロセス、構成管理、開発環境、ソフトウェア進化、プログラム解析/理解、開発事例、教育などが挙げられ、ソフトウェア工学の広範な分野をカバーしている。一方、技術面では、オブジェクト指向を中心として、UML、コンポーネント、アーキテクチャ、フレームワーク、パターン、ユースケース、XML、Webサービス等となっており、新たな技術への活発な取り組みが見られる。オブジェクト指向を扱う発表は多いが、その話題も、設計パターン、分析パターン、フレームワーク、コンポーネント、などの大規模システムを構築するための工学的な素材や技術が進化し、実践への適用が増しているといえよう。事例研究は、電子商取引などのWeb,上のアプリケーション、ビジネスアプリケーション、組み込みシステム、通信ソフトウェアなどが目についた。特に、Web上のアプリケーション開発への取り組みが活発となっている。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
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オブジェクト指向シンポジウム
第8回となるオブジェクト指向シンポジウムを2001年8月22日から3日間にわたり法政大学で開催した。直前の台風にもかかわらず、248名の参加者があった。今回も充実したプログラムが組まれ、参加者の関心も非常に高かった。基調講演は、海外2名、国内1名の3名であった。要求工学の研究で著名なColin Potts氏(Georgia Institute of Technology, USA)による実世界の分析についての示唆に富む講演、ならびに、ソフトウェアパターンの研究で著名なLinda Rising氏(AG Communication Systems, USA)から組織のパターンなどの最近の動向について会場を巻き込んだ講演があった。
日本IBM常務取締役の内永ゆか子氏は企業における新たな開発の仕組みと人材育成について講演され、大会場で立ち見がでるほど盛況であった。6件のチュートリアル、3件のパネル討論、20件の論文発表、恒例のモデリングワークショップ、6件のデモ発表が行われ、活発で充実したシンポジウムであった。また、シンポジウムにあわせ、論文誌でオブジェクト指向特集号を企画し、2002年6月 に刊行した。 -
ウィンターワークショップ
特定のテーマについて泊り込み形式で議論を通して新たな研究開発の可能性や方向性を探る本格的なワークショップを例年開催している。本年度は、2002年1月17日-18日に伊豆高原にある三菱電機 五景館で開催した。 テーマは「アーキテクチャと組み込みシステム」、「ソフトウェアプロセス」、「要求工学」、「Web技術」とし、48名の参加があった。
本ワークショップのまとめは2002年5月の研究会で報告した。 -
ソフトウェア進化の原理に関する国際ワークショップ(IWPSE2001)
IWPSE (International Workshop on Principles of Software Evolution) 2002ををESEC(European Software Engineering Conference)と併設して、オーストリアのウイーンで2001年9月10日-11日に開催した。17か国あまりから予想を上回る50名の参加者があり、国内からも多くの発表・参加を得た。ソフトウェア進化は新しい研究分野であり、わが国が世界で主導的に研究を進めている分野である。新たな国際的研究の場を創るよう発展させたいと考えている。運営にあたっては、国際プログラム委員会を編成した。本分野の草分けであるManny Lehman(Imperial College, UK)と片山卓也氏(北陸先端大,)による基調講演と、フルペーパ7件、ショートポジションペーパ23件の発表 と討議を行った。新しい分野の立ち上げにふさわしく、活発な討論が繰り広げられた。なお、正式な論文集はACM Pressから刊行の予定である。 -
アジア太平洋ソフトウェア工学国際会議(APSEC 2001)
APSEC(Asia-Pacific Software Engineering Conference)はアジア・太平洋地域を主体とするソフトウェア工学に関する国際会議で、東京で開催した第1回に続き、本年は第8回目となる。本研究会はこれを主催する団体の一つとして、アジア太平洋地域でのソフトウェア工学の研究開発の活性化とコミュニティの育成に主体的に取り組んできた。今回はマカオで開催され、日本からも多数の発表と参加があった。 今後ともアジア・太平洋地域でこのような国際会議を続けることに意義があることを、再確認した。 -
企業分散オブジェクト指向コンピューティング国際会議(EDOC2001)
全年に当研究会が運営を行い東京で開催した本国際会議がSeattleで開催された。新しい研究分野であり、発展のために協力を継続している。
3.ワ-キンググループ活動
特定の技術について、創発的な議論を継続し、研究開発の活性化やコミュニティの育成を図るワ-キンググループの制度を設けている。本年度は、前年度に引き続き、要求工学、ソフトウェアプロセス、組み込みシステ ムをテーマに活動を行っている。
4.総括
ソフトウェア工学研究会は、登録者も多く、かつ増加しつつある。研究会での研究発表数も多い。シンポジウム、ワークショップ、国際会議の他に、研究会も10月には電子情報通信学会(ソフトウェアサイエンス研究会、知 能ソフトウェア工学研究会)と合同で行った。このような多様な活動を通して、ソフトウェア工学における研究開発の活性化と実践の向上を図るよう活動を続けたい。
5.その他
2002年度は国際会議として IWPSE2002を5月にソフトウェア工学国際会議と併設して米国オーランドで開催する。また、 APSECやEDOCのような国際的活動を通して、アジア・太平洋地域と世界における当研究分野の 活性化へ貢献するとともに、若手研究者、技術者の育成を図ることが、重要課題と考えられる。
◆計算機アーキテクチャ(ARC)研究会
[主査:笠原博徳、幹事:安里 彰、児玉祐悦、中田登志之、中村 宏]
1.定例の研究会活動報告
平成13年度は、第135~139回の5回の研究発表会を開催した。発表件数は計画の90件より11件多い101件で、全体的に参加者も多く活発な議論が展開された。以下各研究発表会の概要を報告する。第135回は2001年 5月11日に筑波の独立行政法人 産業技術総合研究所にて一般テーマで開催し、8件の発表と共に独立行政法人化後の研究体制について産総研関口智嗣氏よりご説明戴いた。第136回は2001年 7月25-27日に沖縄コンベンションセンターにてSWoPP2001(CPSY, FTS, OS, HPC, PRO と合同)として開催し、33件の発表と共にARCセッションには100名を越える参加者が集まった。第137回は2001年 11月28-30日に北九州国際会議場にてデザインガイア2001 (CPSY, FTS, ICD, VLD, SLDM と共催/連続) としてシステムLSIシンポジウムと連続して開催し、ARCとしては9件の発表があった。
第138回は2002年 2月1日に名古屋大学にてSHINING 2002(アーキテクチャとコンパイラの協調および一般)というテーマで開催し、16件と多くの発表があった。SHININGは2000年度からPACT,ASPLOSのような分野の議論を盛り上げるために開始したが、平成12年度に引き続き好評であった。第139回は2002年 3月7-8日に洞爺湖文化センターにてHoKKE-2002(ハイパフォーマンスコンピューティングとアーキテクチャの評価に関する北海道ワークショップ:HPC との合同)として開催したが、発表枠35件を上回る非常に多くの発表申し込みがあり、一部の発表は4月以降の研究発表会での発表をお願いした。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- 2001年並列処理シンポジウム (JSPP2001)
第13回にあたるJSPP2001は、21世紀最初の記念シンポジウムという位置づけで、2001年6月5-8日に例年より1日長い4日間会期で、島崎眞昭実行委員長、天野英晴プログラム委員長の下、京都リサーチパークで開催された。フルペーパ査読により、59件の投稿論文より採択された36件のレギュラー論文発表、及び34件のポスター論文発表、海外よりの2件の招待講演、基調講演、4件のチュートリアル等盛りたくさんの内容で、盛大に開催された。
3.総括
平成13年度は上記5回の研究会で上述のように101件と計画を1割以上上回る多くの論文が集まると共に、多くの参加者を得、興味深い議論を展開することができた。また21世紀最初の記念イベントとしてのJSPP2001も、充実したプログラムで非常に多くの参加者を集め分野の活性化に貢献できたものと思われる。また、13年度の発表論文の傾向としては、チップマルチプロセッサアーキテクチャ、メモリアクセスオーバーヘッド軽減のためのアーキテクチャ及びソフトウェアによる最適化技術、並列化コンパイラ技術等の発表が多くなっていることが挙げられる。
4.その他
平成12年度より発行が開始されたトランザクション(HPS)は、ハードウエア、アーキテクチャからソフトウエア、応用までを含む、高性能コンピューティングのための要素技術およびシステム技術に関する論文を専門に扱う研究会論文誌であり、平成13年度も小柳義夫編集委員長の下、HPS3,4号が順調に発行された。
◆システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)研究会
[主査:石川 裕、幹事:木下俊之、並木美太郎、西尾信彦]
1.定例の研究会活動報告
- 第87~89回の研究発表会を開催した。
- 第87回は、例年通り6月末の28・29日に、電子情報通信学会コンピュータシステム研究会と共催、テーマは「マルチメディアネットワーク社会(inter, intra, extranets)のシステムソフトウエアと応用技術, ならびにシステムソフトウエア一般」であった。例年本特集は、沖縄ムーンビーチホテルで開催したが、平成13年度は、SWoPPが沖縄で開催されることから、北海道の函館みらい大学にて開催した。21件の論文が集まり、適応制御、性能評価、組込みシステム、分散OS、情報家電、保護、リアルタイムシステム、のセッションで発表が行われ、活発な議論が行われた。
- 第88回は、7月26・27日に, 沖縄コンベンションセンターにて, 並列/分散/協調処理に関する研究会を電子情報通信学会ならびに他研究会と合同で開催した。研究会合同の特別講演を1件開催し、OS研究会としての論文発表は14件であった。発表を5つのセッション(プロセス管理、並列処理、分散システム、セキュリティおよびネットワーク構築、資源管理および教育) で構成し、活発な議論が行われた。
- 第89回は、2月14・15日に九州大学においてシステム評価研究会との合同で開催した。テーマは、「システム評価およびシステムソフトウェア一般」とした。セッションは、「システム評価とアーキテクチャ」、「ネットワークコンピューティング」、「並列と分散」、「システムソフトウェアの構成」、「システムソフトウェアの動的生成」、「分散システム」、「組込みシステム」の7つで構成し、合計23件の一般発表が行われ、活発に議論された。また、初日のセッション後には懇親会を開催した。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- コンピュータシステム・シンポジウム
11月19・20日に東京国際展示場で「ポストPC時代を支える基盤ソフトウェアとシステム評価」をテーマに選び、1件の招待講演と1件のチュートリアルと18件の一般講演があり、活発な議論が行われた。今回、前年に引き続いてMST2001, Embedded Technology Conference and Exhibitionに併設し、また新たにシステム評価研究会と情報家電研究グループとの共催を実施した。招待講演も海外からReal-TimeJavaの第一任者を呼ぶことができ好評であった。参加者は前年よりやや増えて例年並に戻った。また、シンポジウム直後の論文誌特集号での投稿クォリティの向上を期待して、カメラレディ原稿に対しての査読サービスを実施したが、時間的な制約のためか実質的な成果を見ることができなかった。
3.総括
平成12年度に引き続き、インターネット、組み込み向けオペレーティングシステム、実時間処理などの分野で活発な討論が行われた。コンピュータシステムシンポジウムでは, 共催研究会を増やしたことにより, 一般講演では投稿数が増えた.次年度のシンポジウムでも基本的な体制は同じにする予定でいる.
今後も、インターネット、組み込みシステム、情報家電等時代のニーズに即したテーマを中心に、他研究会や企業主体のシンポジウムと連携しながら、システムソフトウエアの観点から活発な研究会活動を推進していきたい。
◆システムLSI設計技術(SLDM)研究会
[主査:浜村博史、幹事:沼 昌宏、福井正博、山田正昭]
1.定例の研究会活動報告
- 以下に示す第101~105回の研究発表会を開催した。
- 第101回:発表件数:17件、5月17・18日、テーマ:システム設計および一般、長崎大学工学部中部講堂、電子情報通信学会(VLSI設計技術研究会(VLD)と共催
- 第102回:発表件数:8件、11月20・21日、テーマ:システムLSI設計技術研究会30周年記念研究会、東京国際展示場(東京ビッグサイト) 会議棟、 MST2001 と同時開催
- 第103回(デザインガイア2001):発表件数:21件、11月28・29・30日、テーマ:システム設計とCAD技術および一般、北九州国際会議場、電子情報通信学会(VLSI設計技術研究会(VLD)、集積回路研究会(ICD)、コンピュータシステム研究会(CPSY)、ディペンダブルコンピューティング研究会(DC))、情報処理学会(計算機アーキテクチャ研究会(ARC))と共催
- 第104回:発表件数:24件、1月23・24日、テーマ:FPGAとその応用および一般、パシフィコ横浜 会議センター、電子情報通信学会(VLSI設計技術研究会(VLD)、コンピュータシステム研究会(CPSY))共催
- 第105回:発表件数:5件、3月4・5日、テーマ:実時間処理および組込システム、慶応義塾大学 湘南藤沢キャンパス、実時間処理に関するワークショップ:RTP2002, CPSY共催
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- 以下に示すシンポジウムを開催した。
- システムLSI設計技術研究会30周年記念シンポジウム、9月27日 山口大学 吉田キャンパス、発表件数:5件、情報処理学会全国大会における研究会企画として開催
- DAシンポジウム2001 7月23~25日 浜名湖遠鉄ホテルエンパイア、発表件数:41件、SWEST3(組込みシステム技術に関するサマーワークショップ)と同時開催
3.その他の活動
編集委員会を組織してジャーナル特集号「システムLSIの設計技術と設計自動化」の論文募集、編集を行った。運営委員会を年度内に4回開催し、以上の活動や全体の方針を審議決定した。
4.総括
本研究会は、システムLSIを中心とする電子装置の設計技術、設計自動化技術の研究分野をスコープとして活動している。
平成11年度に実施された「設計自動化研究会」からの改称と、それに伴うスコープの拡大、活動の活性化が達成され、平成13年度は、研究会結成30周年の記念行事(記念研究会、記念シンポジウム)を開催するに至った。また、研究会単独主催の「DAシンポジウム」は年々参加者が増大し、162名を数えるに至っている。
5.その他
本研究会は、今後共、常に時代の要請に的確に応えながら、将来の電子機器の設計およびEDA技術の先端研究開発の交流の場として、皆様のお役に立てるよう一同頑張って参りたいと存じます。今後共ご支援の程お願い申し上げます。活動予定については、下記をご参照ください。
http://cas.eedept.kobe-u.ac.jp/SLDM/
◆ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)研究会
[主査:佐藤三久、幹事:須田礼二、妹尾義樹、横川三津夫]
1.定例の研究会活動報告
第86~89回の研究発表会を開催した。第86回は、東京工業大学で開催し、第87回は例年通りSWoPP'01(沖縄にて開催)にて開催した。88回は和歌山大学にて開催し、第89回は今回で9回目となる「ハイパフォーマンスコンピューティ ング、アーキテクチャ、オペレーティングシステムの性能評価」に関するワークショップHOKKE-2002を計算機アーキテクチャ研究会と共催で、北海道洞爺湖文化センターにて開催した。当該年度の研究発表会開催数はこれまでの5回から4回になっているが、これは1月にシンポジウムを開催したためである。発表件数は88件となり、10件程度少ないがシンポジウムでの発表をいれると逆に増加していることになる。
この数年の傾向として、従来ハイパフォーマンスコンピューティングの主役であったスーパーコンピュータや超並列計算機に加えて、ワークステーションやPC等の急激な高性能化、また、それらをネットワークで結合することにより並列計算環境を構築する、いわゆるクラスタ技術関連の研究発表が多くなっていたが、既に主要な技術として定着した感がある。これに加えて、広域ネットワークを利用したグリッドコンピューティング関連の研究が活発になってきており、各方面から注目されるようになってきた。PCクラスタやグリッドがHPCの主要な技術になるにつれ、計算科学の各応用分野から発表も増えてきており、本研究会が目指してきた応用分野と計算機技術分野の交流という場として活発化している。例年、3月に北海道にて開催しているワークショップHOKKEは今年で9回目となるが、発表件数が40件あまりになり、2日のワークショップの時間的な制約のために、残念ながら、数件の発表について辞退していただくことになってしまった。本ワークショップの運営については再検討する時期にきていると思われる。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- 2001年並列処理シンポジウム(JSPP2001)
例年通り、計算機アーキテクチャ研究会等と並列処理シンポジウムを共催した。並列処理は、高性能計算のための主要な手段になっており、本研究会にとって重要なシンポジウムとなっている。このシンポジウムでは並列応用、性能評価、並列数値計算等の分野を主に担当した。 - 2002年ハイパフォーマンスコンピューティングと計算科学シンポジウム
1月に本研究会主催で、シンポジウムを開催した。本シンポジウムは、HPC研究会としては論文募集を行なう初のシンポジウムである。HPCに関連の深い計算科学の各分野の学会の協賛を得て、計算機システム側の研究者と計算科学の研究者との研究発表、情報交換の場として企画したものである。広い分野から31件の投稿があり、プログラム委員会での厳正な審査の上19件の採録となった。採録率は6割であり、質の高いシンポジウムとすることができた。日本学術振興会「次世代超並列計算機開発」未来開拓プロジェクトと共催し、海外からの2名の招待講演を行った。今、注目を集めているグリッドコンピューティングや計算化学に関する講演で、時宣を得たものであった。参加者は100名を超え、非常に活発な議論を行なうことができた。当初の計算機システム側、計算科学側との交流の場としての目的を果たすことができたと考える。論文投稿のスタイルや研究発表での重点の置き方など、計算科学の応用分野と計算機側がスタイルや観点の違いも見られたが、交流を通して双方の分野にとって価値のあるシンポジウムにしていくことが重要である。HPC研究会ではこのシンポジウムを継続的な活動として行く予定である。また、優れた発表論文の迅速な公表を促進するために、研究会論文誌HPSとのリンクをする計画も検討中である。
3.総括
研究会の研究発表の傾向にも見られるように、ワークステーションやPC等の高性能化、計算機クラスタ技術による並列計算など高性能計算を支える技術革新により、研究会の関連する分野の裾野が広がっている。加えて、インターネットの発展に伴い、HPCのための技術としてグリッドコンピューティングが注目されている。これらのことから、発表件数だけでなく研究会への参加者も増え、研究会の活動は活性化している。さらに、ハイパフォーマンスをキーワードとして、ハードウエアからソフトウエア、数値計算アルゴリズム、並列処理、システム性能評価、科学技術計算応用、インターネット技術と多岐に渡る技術分野の議論の場となっている。特に当該年度においてはシンポジウムを開催したが、通常の研究会に加えて、質の高い研究を促進する場として、今後の本研究会の分野の発展に寄与できるものと考える。研究会担当分野の方向性より、ハイエンドコンピューティング、科学技術計算に関連する内容が多いため、発表は大学や研究所からが多いが、産業の発展を広く支える基盤的技術としてハイパフォーマンスコンピューティングの重要性はさらに増しており、応用分野のユーザならびに産業界に対し、これからも広く参加者、発表者を呼びかけたい。
4.その他
本研究会が参加し、発刊を始めた研究会論文誌「ハイパフォーマンスコンピューティングシステム」は年間3号のペースで発刊されており、研究成果の公表の場として認知されつつある。編集委員会は順調に運営されており、この論文誌が本研究会の研究分野の定評のある発表の場となり、新しい発展に寄与することを期待する。
◆プログラミング(PRO)研究会
[主査:柴山悦哉、幹事:天海良治、小野寺民也、村上昌己]
1.定例の研究会活動報告
第34~38回の研究発表会を開催した。このうち、第35回(7月、SWoPP2001)と第37回(1月)が他研究会との連続開催であり、残りの3回が単独開催である。総発表件数は67件であった。平成13年度も、トランザクション:プログラミング(PRO)と密着した体制で研究発表会を開催した。トランザクション(PRO)に投稿された論文は、まず研究会で発表され、発表会の直後に開催されるトランザクション(PRO)編集委員会において、参加者全員で議論し、査読者を定めて本査読を行なった。投稿の有無に関わらず、1件あたり発表25分、質疑・討論20分の時間を確保し、参加者が研究の内容を十分に理解するとともに、発表者にとっても有益な示唆が得られるように務めた。各回に特集テーマを定めたが、特集テーマと直接は関係しない発表も常に受け付けるようにした。発表総数67件のうち、投稿を伴うものの件数は45件であった。総採録件数は26件になる予定である。採択率は約58%である。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- 情報処理学会5研究会および電子情報通信学会3研究会の共同主催により、平成13年並列処理シンポジウム(JSPP2001)を6月5~8日に開催した。
3.総括
トランザクション(PRO)の発刊にともなう大幅なシステムの変更からちょうど4年が経過した。登録会員数、発表申込件数、投稿論文数、採録論文数等の各種指標は、平成12年度とほとんど変わらず安定した状態となっている。発表会とトランザクションをリンクさせ、1件45分の時間を確保する方式は、編集委員の負担が重いという問題はあるが、議論の活性化、的確で迅速な査読に役立っている。高い見識をもった査読候補者が自然に多数参加することにより、活発な議論をリードし、参加者が研究内容を理解する助けとなっている。また、単純な疑問点は直ちに照会できるため、査読期間の削減にも役立っている。研究発表会の内容に関しては、Java 言語の普及とプログラミング言語技術の応用の深化に触発され、全体的にこの分野の研究が活発化・高度化しているように感じられる。
4.その他
トランザクションの発行コスト(特にLaTeX原稿の処理に要する費用)が予想以上に高く、わずか4年間で別刷代を2倍近く値上げせざるをえなくなった。この問題を解決するために研究会が取りうる選択肢が何もないため、今後深刻な問題となる可能性がある。
トランザクションのWeb公開も行われるようになったので。従来限定的であったサーキュレーションを拡大するための努力を今後も続けたいと考えている。
トランザクション(PRO)独自の価値観に基づく論文として、システム開発の経験に基づくノウハウに関する報告などを積極的に受け入れたいと考えている。
◆アルゴリズム(AL)研究会
[主査:今井 浩、幹事:稲葉真理、岩田 覚、田島 玲]
1.定例の研究会活動報告
第78~83回の研究発表会を開催した。発表は計56件であった。発表内容は、グラフ・ネットワークに関するアルゴリズム、計算幾何学、近似アルゴリズム、量子計算、並列・分散アルゴリズム、ゲノム情報解析, 計算複雑度理論と多岐に渡っている。咋年度より、毎回の研究会において招待講演を企画しており、幅広いアルゴリズム研究における各分野の最先端の動向を知るよい機会となっているばかりでなく, 次の何を研究すべきかを示すものにもなっており、来年度もこの企画を継続、さらに充実させる予定である。
他学会研究会との連携として、電子情報通信学会コンピュテーション研究会と1回、同回路とシステム研究会・ コンカレントシステム研究会と1回の連続開催を行い、これら研究会の間の研究交流も行った。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
小規模国際会議として、韓国の研究会と連携してアルゴリズム・計算日韓共同ワークショップを、6月28・29日に Pusanで開催した。発表件数は韓国より9件、日本より12件であった。多数の両国の若手研究者を始めとして約60名の参加を得て、盛会となった。この小規模国際会議は継続して行う予定で、平成15年度は大分での開催を予定している.
3.総括
情報科学・情報工学の土台であるアルゴリズムを研究する研究会として、新規挑戦分野を開拓していくことが重要であり、そのためにも咋年度より企画している招待講演が非常に役にたっている。第一線のお忙しい先生方に、毎回1時間にわたってよくまとまった講演を頂いており、研究会参加者の増大にもつながっている。平成13年度は, この試みを軌道に載せることができたといえる.
昨年度、日程調整ができずに数理モデル化と問題解決研究会との連続開催が実現できなかったが、従来から連続開催していた電子情報通信学会の研究会とも連続開催でき、招待講演の共有など工夫もこらしたものとなった。
4.その他
情報処理の土台となるCS領域の研究会として、継続して基礎分野の充実を図るとともに、新規重要分野の開拓が行われつつある。たとえば、量子計算がその際たるものである。そのためにも、招待講演をさらに発展させた新規分野のチュートリアル開催など研究普及面でのさらなる企画も望まれる段階といえる。
◆数理モデル化と問題解決(MPS)研究会
[主査:城 和貴、幹事:秋山 泰、鈴木泰博、中條拓伯、三木光範]
1.定例の研究会活動報告
平成13年度は研究発表会を5回(第34~38回)開催した。
- 第34回:5月10日、於奈良女子大学大、発表14件(招待講演1件)、参加者数約30名。
- 第35回:6月26日、於Monte Carlo Resort、 Las Vegas、発表9件、参加者数約20名。
- 第36回:9月17日、於岡山大学、発表10件、参加者数約20名。
- 第37回:11月19日、於生命情報科学研究センター、発表10件、参加者数約25名。
- 第38回:3月15・16日、於地獄谷温泉後楽舘、発表13件、参加者数約25名。
平成13年度の発表の内訳は、数理モデル化全般が10件(新しいモデルの提案、モデルの改良、等)、数理モデル応用が46件(学習理論、ゲノム、数理生物、並列分散処理、パターン認識等)であった。発表件数自体は昨年度の66件から10件減少したが、昨年度までの増加傾向があまりに急激であったため、発表件数自体は定常状態に達してきたと見るべきであろう。すなわち、平成11年2月に第1号を発行したトランザクション:数理モデル化と応用(TOM)への『取り敢えず投稿』という傾向がなくなってきたからと考えられる。これに対して、数理生物学等の新しい対象分野を取り込む等、数理モデル応用分野のさらなる拡大に引き続き取り組んでいる。一方、第35回研究会は、平成12年度の第30回研究会同様、International Conference on Parallel and Distributed Processing Technologies and Applications (PDPTA01)との共催を行ない、大盛況に終った。当該会議において、本研究会主査(城和貴)はPDPTA02より学会運営に協力してきたことにより、Achievement Award を受けた。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- 「進化的計算シンポジウム2001」
10月18・19日、於同志社大学、基調・特別講演2件、一般講演34件、ポスター講演36件、参加者数100名以上。
本シンポジウムでは、進化的計算に関する理論、アルゴリズム、実問題などの応用などに関する幅広い議論を行った。特に、一部の特定の研究者や研究グループだけでなく、さまざまな幅広い多分野の研究者による意見交換や討論を行うことで、進化的計算のますますの発展と、実問題への効果的な応用が期待されると考えられた。実際、2セッションにわかれて34件の一般講演と36件のポスターセッションが行われたが、セッションによっては部屋に入りきらないほどの聴衆が議論を盛り上げた。また、進化的計算研究の権威であるDavidE. Goldberg氏(イリノイ大学)による特別講演が行われた。シンポジウムでの研究内容、参加者ともに非常に活気溢れ、シンポジウムの開催は大成功であった。なお、本シンポジウムでの研究成果については、現在TOM(進化的計算特集号)への掲載を行なうべく査読を進めている。
3.総括
本研究会活動の主たる特色は、運営面から見れば論文誌TOMの発行、国際会議(PDPTA)との共催(平成12・13年度実績、14年度も予定)の二点にある。利用者の立場で見ると、国際会議との共催の研究会にて当該プロシーディングスにフルペーパー査読の論文を発表後、その内容を洗練して後日TOMでの論文発表までが可能である。さらに昨年度の進化的計算シンポジウムは非常に好評であったため、14年度も同シンポジウムを開催予定であり、その後のTOM特集号も含めて本研究会活動の特色にしていく予定である。本研究会活動を研究面から見ると、数理モデルという切口から理工系の研究を横断的にカバーするという研究会設立当初からの目的が実現されている。実際、本研究会の対象とする応用分野は回路設計やゲノム、環境工学や経営工学等、20を数えるものである。このような活発な本研究会の問題点は、運営側の負荷である。上記多岐に渡る活動は少数の委員のボランティアに全面的に頼っているのが現状であり、健全な運営体制とは言えない。今後はより頑強な運営体制を目指すものである。
4.その他
本研究会は理工学上の問題に関するモデル化と解決アルゴリズム両面に関わる研究を扱う研究会として発足し、7年目を迎えた。論文誌TOMの発行も4年目を迎え、国際的な活動も実績が上がってきている。国立研究所、大学の独立行政法人化が進行する折、数理モデルの創造と実践の両側面から、また技術移転という観点からも、本研究会の重要性は益々増してきている。産・官・学の共同の場として積極的に活動を強化していきたい。
情報環境領域
◆マルチメディア通信と分散処理(DPS)研究会
[主査:宮部博史、幹事:勝本道哲、串田高幸、櫻井紀彦、佐藤文明]
1.定例の研究会活動報告
定例研究会は、以下の通り5回実施した。
第103回 DPS研究会 / 2001年6月7日-8日 / 北海道大学
第104回 DPS研究会 / 2001年9月13日-14日 / 東大阪市石切温泉 ホテルセイリュウ
第105回 DPS研究会 / 2001年11月15日-16日 / 金沢大学工学部(金沢市)
第106回 DPS研究会 / 2002年2月14日-15日 / 静岡大学情報学部(静岡県浜松市)
第107回 DPS研究会 / 2002年3月28日-29日 / 独立行政法人 通信総合研究所(東京都国分寺市)
第104回の研究会は、はじめて定例の研究会を宿泊形式で行い、研究者相互のより深い交流がはかられた。第105回の研究会は、電子情報通信学会AI研究会と並行開催、第106回は、コンピュータセキュリティ研究会と合同開催で実施し、研究者間の有意義な交流が行われた。研究発表の件数は、招待講演も含めて総計で132件であった。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- マルチメディア、分散、協調とモーバイルシンポジウム(DICOMO2001)
平成13年6月27~29日、於ルネッサンス・リゾート・ナルト(徳島県鳴門市)、発表件数:130件(招待講演2件を含む)。 本シンポジウムは、DPS,GW,DSM,MBL,CSEC,ITS,QAIの7研究会共催のシンポジウムであり、今回で第5回となる。分散システムやネットワーク関係の最新成果の発表の場であることが徐々に認知され、今回の参加者は220名を越えた。発表は、32セッション、4つのパラレルで行われ、活発な議論が行われた。招待講演は、四国での開催ということもあり、四国電力で実験されている「OpenPLANET」システムに関する講演と、産総研での新しいユビキタスコンピューティングに関する講演が行われた。 - マルチメディア通信と分散処理ワークショップ
本ワークショップは、平成13年10月24~26日、安比グランドヴィラ3(岩手県安比高原)にて開催された。今年で9回目となった本ワークショップでは、40件の論文発表と、3件の特別セッションを合宿形式で行い、79名の参加者のもと真摯な議論が行われた。投稿されたすべての論文は、プログラム委員によって査読された。発表は既存の研究分野にとらわれずに、分野を越え、分野を融合したチャレンジャブルな論文も多く見られ、査読コメントに基づいて改良された論文をベースとした討論は、発表の場として発表者、参加者の双方にとって有意義であったものと確信する。
さらに今年度は、特別セッションとして、Tamkang UniversityのTimothy K. Shih氏、仙台応用情報学研究振興財団 野口氏、慶応義塾大学 松下氏のご講演を頂き、最新のマルチメディア通信関連技術の見識を深めることができた点、また恒例となった合宿形式によるワークショップの実施により、終了時間を意識することのない論文発表に対する深い議論の促進と、参加者間の懇親を深めたという点でも、今後の本研究領域の発展に寄与するものと考えられる。一方、ワークショップ会場の準備と運営に関しては、学生アルバイトの協力も得て、スムーズに行なうことができた。今回のワークショップの経験を生かし、来年度以降もこの合宿形式のワークショップを継続することによって、さらにレベルの高い成果を生み出すよう努力する所存である。 - 論文誌「マルチメディアコミュニケーションシステム」特集
本特集では、21世紀の高度情報化社会の実現に向けた、高速ネットワークを基盤とするマルチメディアコミュニケーションシステムに関する理論や方法論のみならず、実際の応用システムに関する研究論文を一括掲載することを目的として企画し、73件の論文投稿があり、査読の結果、50件を採録とした。本特集号では、当初のねらい通り、マルチメディアシステムに関する、システム構築の方法論や実システムの評価論文を多く採録することができ、21世紀の高度情報化社会のシステム像を読者に十分に読者に伝えることができたと考えいる。これらの技術は、新たな技術課題を提供する分野でもあり、大きく変化していく分野でもあるので、来年度も特集号を企画したいと考えている。
3.総括
本研究会では、5回の定例研究会、シンポジウムを通して、研究者相互の交流と研究に対する活発な意見交換の場を提供することができた。また、本研究会の研究分野を深く議論する場として、DPSワークショップはこの分野の研究者に定着してきたものと考えられる。特集論文については、非常に多くの方にご協力いただき、遅延のない査読プロセスを進めることができた。ここに改めて、査読をご協力頂いた皆様に感謝する次第である。今後も、DPS関連研究者の更なる研究の活性化、また国際化への支援を進めていく予定である。皆様からの、DPS研究会への多くのご意見、 またご協力をお願いしたい。
◆ヒューマンインタフェース(HI)研究会
[主査:増井俊之、幹事:大野健彦、小池英樹、中小路久美代]
1.定例の研究会活動報告
- 第93~97回の研究発表会を開催した。それぞれ小特集として実世界、情報メディア、ロボット、Toyメディア、モバイル、ウエアラブル、音声等のに関する発表を集めた。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- 第6回ヒューマンインタフェース・プロフェッショナル・ワークショップ(HIP6)開催(2001/7/18,19)
山形厚生年金休暇センタにて、「情報メディアの過去と未来」というテーマで情報メディアが地域コミュニティに果たす役割等を議論するワークショップを開催した。招待講演として上林憲行氏(山形大学)に「情報メディア論」と題する講演をいただいた。 - インタラクション2002を開催(2002/3/5-6,GN研究会と共催)。
早稲田大学国際会議場にて開催し、参加者300余名を集めた。招待講演にはThad Starner氏(ジョージア工科大学)をお招きし、Wearable computerの最新事情について講演していただいた。シンポジウムの内容としては、近年のホットトピックスである実世界指向、エージェントから、入出力インタフェースやVirtual Reality等まで多岐に渡った。 - 第64回全国大会特別トラック「ヒューマンインタフェース」を編成 (2002/3/12-14)
「ヒューマン-エージェント・コミュニケーション」「『流れ』としての時間を扱う情報:創出、表現、インタラクション」「視線とジェスチャ によるインタラクション」「ヒューマンインタフェース一般」の4テーマ について発表時間20/30分、予稿集最大8ページなど、従来の全国大会の枠にとらわれないトラックを編成し、発表47件、招待講演2件を集めた。
3.総括
ヒューマンインタフェースは様々な分野と関係しており、関連分野との連係、情報交換などが重要である。シンポジウム「インタラクション2002」は、本分野における活発なシンポジウムとして定着しつつあり、また他分野の参加者も多い模様から、この役割を十分果たしていると思われる。
4.その他
今後は国際会議との連係の強化などを通じて、研究会、シンポジウムにおける優れた発表を海外へも積極的に発信する体制を支援する方策を検討して行く予定である。
◆グラフィクスとCAD(CG)研究会
[主査:近藤邦雄、幹事:岡田 稔、齊藤隆文、土井章男]
1.定例の研究会活動報告
- 平成13年度は第103~106回の研究発表会を開催した。各研究会の概要は以下のとおりである。
- 第103回:学会事務局にて4月20日に開催し、7件の発表があった。
- 第104回:夏の集中研究集会として、「柔らかなCGとCAD」をテーマに繋温泉(盛岡)にて 9月13~14日に催した。20件の発表があり、生物などの複雑形状の処理をはじめとする新しいCG研究に関して、1泊2日で活発な議論が行われた。
- 第105回:中部大学にて11月9日開催、「IT時代のコンピュータグラフィクス」をテーマとした。11件の発表があった。また、関連する分野から2件の招待講演を行った。
- 第106回:CG-ATRS協会にて2月21日開催。テーマは「CG/CAD教育」で、17件の発表があった。図学、プログラミング、情報技術、デザインなど、さまざまな観点からのCG教育に関して、一般講演および2件の招待講演が行われた。他の教育機関のCG教育方法を知る機会はめったにないため、情報系以外の分野も含めた数多くの方が参加され、大好評であった。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
グラフィクスとCADシンポジウムを、6月21~22日に画像電子学会Visual Computing研究委員会と合同で、北海道大学にて開催した。本シンポジウムは、研究発表と討論を重視するシンポジウムとして高い評価を得ており、平成13年度は過去最高の45件の投稿があった。発表時間の制約から、本シンポジウムとしては初の試みであるポスターセッションを行い、登壇発表と合わせて29件を採録した。一般セッションは、レンダリング、ボリューム処理、メッシュ処理、アニメーションとインタラクション、モーフィング、モデリングという構成となった。メッシュを使った各種処理や、自然景観、自然形状の扱いなどへの問題意識が高かった。ポスターセッションの前に、各ポスターの概要を1件あたり3分で登壇発表していただいた。一般講演とは別に、SIGGRAPHに採択された研究の概要を報告してもらう招待講演を2件行った。Eurographicsについては、日本からの採録数が8件と多かったため、タイトルと著者名をまとめて紹介するだけとした。特別講演は、「走りながら考える産学連携」と題して 山本 強 氏にお願いした。
3.総括
研究会登録会員へのサービスは上記の研究会、シンポジウムの開催のほか、以下のことを検討、実施した。
- トランザクションの発行については、情報環境領域の他研究会と連携しての発行を、引き続き検討中である。準備段階として、平成13年度もCGをテーマとしたジャーナルに論文特集を企画し、発行した。
- 学会の第64回全国大会において、特別トラック「IT時代のCG,VR,CVフュージョン技術」を企画し、52件の発表があった。平成12年度の第62回と同様、質疑を充実させるために、一般セッションよりも発表・討論時間を長くとり、論文も6ページまでとした。また、学生を中心とする若手研究者が対外発表を気軽に経験できるように、若手セッションを設けた。
さらに、招待講演を1件行った。 - 韓国のグラフィクス研究会との連携については、今年も資料の交換を行った。
◆情報システムと社会環境(IS)研究会
[主査:神沼靖子、幹事:魚田勝臣、刀川 真、辻 秀一]
1.定例の研究会活動報告
- 第77回 一般、発表9件、チュートリアル1件、6月26日、学会会議室
- 第78回 一般、発表4件、チュートリアル2件、9月8日、学会会議室
- 第79回 若手の会、発表9件、3月18日、KDDI(神奈川県川崎市)
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- 情報システムと社会環境シンポジウム -情報システムを巡る社会的環境の分析アプローチ-
1月15日、於学習院大学、特別講演2件、一般講演8件、パネル討論
3.総括
我々は、企業の内外を問わず、日常生活の中で何らかの情報システ ムと共に生活し、常に接触を持っている。本研究会では、そのような多様な情報システムに関する種々の問題点の指摘やその 解決策、利用者と共存するためのあるべき姿などを、情報システムに対して問題意識を持っている利用者、設計者、開発者 などの多様な視点から議論してゆくことを目的として、活動を行なっている。平成13年度も12年度と同様に情報システムの方法論の提案や、具体事例の紹介・分析を中心として、上記の通り研究会を開催した。
まず、第77回に、情報システム投資の有効性評価、高齢者の情報化ニーズ、社会的状況が情報問題解決プロセスに及ぼす影響など、情報システムの多様な側面からの研究発表が行なわれた。また、第78回に、保育現場へのマルチメディア導入、情報サービス産業のインフラ産業化など、社会や産業の情報化研究について理解を深めた。第79回の若手の会では、組織活性化支援のためのマルチモーダルナレッジの活用、XP手法を用いた産学共同によるソフトウェア開発、講習会支援システムにおける教材の賞味期限と世代管理などの、情報システムの方法論の提案や先進事例の紹介があり、若手を中心として活発な議論が行なわれた。
さらに、情報システムのデザインにおいて考慮すべき環境の社会的特徴を理解する方法に着目し、「情報システムを巡る社会的環境の分析アプローチ」をメインテーマとしたシンポジウムを企画、開催した。本テーマに興味を持つ多数の参加者を得て、エスノメソドロジー等の社会学的アプローチ、ソフトシステムズアプローチの研究者による特別講演2件、実際の現場での情報システムのデザインやその運用・評価に関する研究・事例報告など8件の一般講演、異なる分析アプローチを実践している研究者及びコンサルタント4名によるパネル討論によって、情報システムのデザインに不可欠な社会的環境の分析アプローチについて幅広く活発な議論を行うことができた。
4.その他
情報システムの教育研究を活性化させるために、情報システム論文の書き方と評価基準を策定し、研究発表会の場を通じて提案を行なった。また、活性化のもう一つの方策として、情報システム研究に重要な課題やテーマについて、より広く理解していただくためにチュートリアルを開き、情報システムの方法論の普及に努めた。第63回全国大会に「新しい情報システム教育カリキュラムとコースの概要紹介」、第64回全国大会に「情報システム再構築のための都市計画アプローチ」をテーマとするチュートリアルを企画した。これに関連して、オブジェクト指向技術の適用に関するチュートリアルを通常の研究発表会に併設して2回開催した。これらについては、次年度も積極的に実施してゆく予定である。
◆情報学基礎(FI)研究会
[主査:大山敬三、幹事:仲尾由雄、中川裕志、中谷多哉子、福島俊一]
1.定例の研究会活動報告
- 第62~66回の研究発表会を開催した。
- 第62回はテーマを「人にやさしい感性情報処理:感性情報検索、マルチメディア、WWW その他一般」として、データベースシステム研究会と合同開催し、2件の招待講演を含め、21件の発表と84人の参加者があった。
- 第63回はテーマを「情報検索の技術とテストコレクション その他一般」として、NTCIRワークショップからの協力のもと、18件の発表と54人の参加者があった。発表論文の中から5件がTODへ推薦された。
- 第64回はテーマを「自然言語処理と対話的情報検索 その他一般」として、自然言語処理研究会と合同開催し、19件の発表と49人の参加者があった。
- 第65回はテーマを「ディジタル図書館に関わる情報学基礎研究 その他一般」 として、ディジタル図書館ワークショップと共催し、5件の発表と9人の参加 者があった。
- 第56回はテーマを特に定めずにデジタル・ドキュメント研究会と合同開催し、情報検索・抽出・クラスタリング、自然言語・文書処理などを中心に、20件の発表と70人の参加者があった。
以上、5回の研究発表会での発表件数の合計は83件(平成12年度66件)であった。本研究会のテーマは幅が広く、他の多くの研究会と重なる部分があるために、関連する研究会との合同開催を多く企画した。従来から扱っていた情報検索・抽出などのテーマに関する関心が高まっており、各回とも多くの参加者を集めた。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
日本学術会議ほかと共催で、2002年情報学シンポジウムを「情報社会のセマンティクス XMLとSemantic Web、電子政府への展望、ロボットとの共生」というテーマで開催した。情報と社会や生活との関わりを中心に多様な側面について、2日間にわたって組織委員長挨拶、基調講演2件、招待講演8件、一般発表7件が行なわれ、第一線の研究者による講演と討論が行われた。
シンポジウム全体に対して聴衆から高い評価(テーマ設定について94%がとても良い/良い、内容全体に対して同80%)を得た。参加者も126名と多く、学生の参加数が約1割あったことからも、本シンポジウムが幅広く参加者の注目を集めたといえる。
3.総括
本研究会の基調テーマは、情報の分析・記述・表現、コンテンツの構築・管理・流通、情報検索全般、ディジタルライブラリ、情報利用、その他であり、最近の研究発表の動向としては、情報検索・抽出・管理などの基礎研究から様々なメディアやサービスへの応用など、本研究会の対象分野における多面的な展開が顕著である。
情報に関する基礎的な側面を対象としているため、技術的あるいはシステム的指向をもつ他研究会と補完することにより情報環境の変化に対応した展開が期待されることから、引き続き他研究会との連携を図ってゆく予定である。
4.その他
DBS研究会と合同で、情報処理学会論文誌:データベースを第13号まで発行した。特に第13号は情報学基礎研究会の企画により「情報検索の技術とテストコレクション」の特集を組んだ。引き続き内容の充実と購読者数の増加を図るとともに、関係の他研究会へ参加を呼びかけてゆきたい。
◆オーディオビジュアル複合情報処理(AVM)研究会
[主査:八島由幸、幹事:小舘亮之、秦泉寺久美、柳原広昌]
1.定例の研究会活動報告
- 第33~36回の研究発表会を開催した。
- 第33回 6月8日、早稲田大学工学部、発表件数5件。リファレンスなしの画質評価方式、シーン同定・検索のための類似度抽出、MPEG-4におけるグローバル動き補償、MPEG-2トランスコーダなどについて研究報告があり、活発な議論が行われた。
- 第34回 10月5日、広島県情報プラザ、発表件数3件。MPEGのカット点検索やオーディオインデクシング・トランスコードによる高速編集などを用いたWebベースのMPEGデータベースシステム、スケーラビリティ構造を利用した映像情報課金システム、時空間特徴を用いた画像検索システムに関する研究報告が行われた。
- 第35回 12月13・14日、北海道大学工学部/名古屋大学工学部、発表件数25件。電子情報通信学会および映像情報メディア学会との共催で、岡山大、北陸先端大など各大学を衛星回線で結んで行われた。 特に、MPEG-7を用いた略画検索や、画紋情報による検索、ニュース映像からのテロップ検出など映像検索に関する発表が多く行われた。また、自由視点画像生成やディジタルミラーなど新しいアプローチによる研究発表や、無線Ad-Hoc無線ネットワーク技術に関連しての特別講演が行われるなど、様々な分野の発表が多数行なわれ、質疑応答も活発であった。
- 第36回 3月8日 長崎大学工学部、発表件数14件。映像コンテンツの検索、MPEGビデオからの人物抽出や動領域抽出、MPEG-4スプライト符号化、アニメーション符号化などの発表が行われたほか、H.323-SIPのプロトコル変換を行うゲートウェイの研究開発の発表がデモンストレーションを交えて行われ注目を浴びた。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
9月14日にマルチメディア記述のための国際標準MPEG-7標準に関するシンポジウムを行った。まず最初に早稲田大学の富永英義氏より「MPEG標準化の歴史」について基調講演が行われた後、MPEG-7の概要と役割や産業分野での活動動向が報告された。また午後からはMPEG-7標準内容についてDDL+System、MDS、Visual、Audioに関する技術的なチュートリアルが行われた。さらに、1時間以上のデモセッションを設けて実際MPEG-7で何ができるのかに触れて もらう機会を設けた。本シンポジウムは、250名を越える多数の参加者を集め、デモを交えたプログラム構成についても、参加者より大変好評で高い評価をいただいた。なお本シンポジウムについては、情報処理学会情報規格調査会C29専門委員会のMPEG-7小委員会との共催で開催され、オーディオビジュアル情報処理の標準化技術を所掌するAVM研究会としてもたいへんタイムリーな企画で大成功であったと言える。
3.総括
オーディオビジュアル系の標準化スケジュールとマッチしたシンポジウム開催の成功や、各研究会におけるMPEGやJPEG関連技術の発表の盛況さにより、AVM研究会が国際標準化技術と強いかかわりを持っていることが改めて浮き彫りになった。MPEGをはじめ国際標準化活動では、技術内容の詳細や有効性の評価が必ずしも議論されるとは限らないし、公開される内容にも限度がある。さらに標準化にかかわっていない一般の研究者にとっては最終的なドキュメントは入手できるものの、そこに至った技術の背景を詳細に知ることはできない。AVM研究会はそのような技術を世の中に発表していく場を提供するとともに、マルチメディア流通時代に向けての新たな分野・課題にも取り組んでいきたいと考える。
4.その他
本研究会は、他学会とも積極的な連携を図りながら活動を進めている。特に12月に行われる衛星接続による遠隔形式での研究会が定着し、電子情報通信学会や映像情報メディア学会の関連研究会と広く連携を図ることで、多数の発表がなされるようになるとともに研究会を通じての幅広い人的ネットワークも拡大した。平成14年度は、従来から取り組んでいる国際標準化と連携した研究活動とともに、「画像符号化シンポジウムおよび映像処理シンポジウム」への共催、ディジタルシネマ関連のシンポジウム開催など、より専門性を深めた質の高い研究活動を行っていく予定である。
◆グループウェアとネットワークサービス(GN)研究会
[主査:星 徹、幹事:関 良明、垂水浩幸、坂内祐一]
1.定例の研究会活動報告
- 平成13年度は以下の通り、第40~43回の研究会を開催した。
- 第40回:5月24・25日 於山形大学工学部、一般、発表件数13件、招待講演2件、参加人数 30 名
- 第41回:10月18日 於大阪大学工学部、一般、発表件数11件、参加人数 25名
- 第42回:1月24日 於日本IBM箱崎事業所、一般、発表件数9件、参加人数 30名
- 第43回:3月22・23日 於香川大学工学部、一般、発表件数20件、招待講演2件、参加人数 51名
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- マルチメディア、分散、協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2001)共催 6月27~29日、
徳島県鳴門市ルネッサンスリゾート ナルトにて、DPS、MBL、DSM、CSEC、ITS、およびQAI研究会と共催で開催した。
発表件数128件、招待講演2件、参加者226名であった。4パラレルセッション構成で活発な討議が行なわれた。 - Interact 2001 (IFIP)7月9~13日、早稲田大学国際会議場で開催されたIFIP主催の「Interact 2001
(IFIP)」にグループウェアとネットワークサービス研究会として協力した。 - インタラクション2002共催
3月 6・7日、早稲田大学国際会議場にて、HI研究会と共催で開催した。発表件数12件、招待講演1件、
インタラクティブ発表72件、参加者322名と、発表件数・参加者共過去最高を記録し大盛況であった。 - 第64回全国大会 特別トラック「グループウェアとネットワークサービス」主催
3月 12~14日、第64回全国大会(於東京電機大学)において特別トラック「グループウェアとネットワークサービス」を主催し、
23件(5セッション)の論文発表があった。論文発表の各セッションにおける優秀な発表に対して「特別トラック優秀発表賞」を授与した。
3.総括
平成13年度より研究会名称を「グループウェアとネットワークサービス研究会」とし, 研究分野を従来のグループウェアだけでなくネットワークサービスの分野にまで広げたことにより、平成12年度以上に活発かつ多彩な活動を行うことができた。今後もブロードバンドの普及により当該分野での研究活動の重要性は増すと考えられ、研究コミュニティの充実を図っていく予定である。◆分散システム/インターネット運用技術(DSM)研究会
[主査:箱崎勝也、幹事:相原玲二、大塚秀治、宮地利雄]
1.定例の研究会活動報告
年間計画に基づき以下の通り研究会を開催した。4回の研究会で合計42件の発表があり、各回平均の参加者数は約50名であった。
研究会では教育用計算機システムの管理方法、大規模ネットワークの管理・運用方法、ネットワークの性能評価、分散システム上のアプリケーションなどの幅広いテーマについて、多くの発表がなされ、活発な討議がなされた。特に、情報コンセントや無線ネットワークにおける利用者認証・アクセス制御に関する研究発表が多く見られた。
第1回 5/25(金) NEC本社(東京都港区)
第2回 7/27(金) 高知工科大学
第3回 10/5(金) 岩手県立大学
第4回 11/30(金) 鹿児島大学
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- 分散システム/インターネット運用技術シンポジウム2002
1月31日, 2月1日の両日に渡り、日本電信電話株式会社武蔵野研究開発センタで開催した。招待講演3件、一般講演15件、パネルディスカッションから成り、約80名(招待者含む)の参加を得て、2日間を通じて活発な議論が行われた。今回のシンポジウムの参加者数は、前回実績を下回ったが、これは企業からの参加者の減少によると思われる。招待講演では、サイバーテロ関連研究の現状と今後の動向、ISDN時計同期を用いた分散型映像スイッチング方式、Storage Network の展望の各テーマに関して、深く広い話題の提供を頂いた。一般講演では、ネットワーク・システムの管理運用技術、ネットワークの性能解析・QoS制御、教育用計算機システムの設計・運用などのテーマに関するものが多く、本シンポジウムの趣旨にふさわしい実際的・実用的な内容にあふれる論文発表が行われた。今回も前回に引き続き、多数の応募から選考の上決定されたため、研究発表の内容・質の両面で好評であった。パネルディスカッションでは、定額制、広帯域化によって大きな展開をみせるワイヤレスインターネット接続サービスについて、サービス提供側の立場からそれぞれの特徴や今後のサービスのあり方について活発な議論が行われた。企業展示については例年併設されていたが、残念ながら本年度は会場の都合で実施しなかった。このように今回のシンポジウムは、本研究会のこれまでの成果を集約するとともに、今後の発展の方向性を示唆するものであり、参加者にとって大いに役立つものであった。
3.総括
上記の研究会、シンポジウムに加えて、6/27~6/29に徳島県鳴門市で開催されたDICOMOシンポジウムを共催した。このシンポジウムでも十数件の本研究会に関連したテーマの研究発表が行われた。
また、前年度に引き続いて、本研究会が中心となり、『次世代のインターネット/分散システムの構築・運用技術』をテーマとする論文誌特集号を企画し、論文募集を行った。32件の投稿があり、最終的に17件を採録とし、Vol.42, No.12として発刊した。この数は昨年度と比較すると投稿数は若干減少したが、採録数は増加しており、一定の成果があったといえる。本研究会が扱う分野の研究を更に活性化するために、来年度も引続き論文誌特集号の発刊を計画している。
研究会活動・シンポジウム等を円滑かつ活発に進めるため年 5回の運営委員会を開催した。
◆デジタル・ドキュメント(DD)研究会
[主査:安達 淳、幹事:市山俊治、大野邦夫、高橋善文]
1.定例の研究会活動報告
第28~32回の研究会を開催した。第28回~31回は本研究会単独開催で14件,第32回は情報学基礎(FI)研究会と合同で20件の発表があった。上記のうち,第28回は(社)日本工業技術振興協会とJavaコンソーシアムXML部会,第30回以降はXMLコンソーシアムの協賛である。
単独開催の回の発表件数は本研究会の方針として,本年も1回あたり3~4件に押さえ,討議の時間を十分に取るようにしている。参加人数は20名程度であった。本年の合同開催(第32回)は,発表件数が20件と盛況になったため,2トラックのパラレルセション方式で,終日開催とした。単独開催の回の発表は,ここ数年の傾向どおり,XML関連の発表が14件中10件と大半を占め,内容はXMLの処理系,応用,技術動向などであった。
XMLの処理系ではXML DBシステムの評価,応用では,BMLによるデータ放送コンテンツの編集,XMLによる電子申請の内容検証,プログラムドキュメントのXMLによる生成等,技術動向では,標準化動向,Semantic Webであった。XML以外では,コンテンツのあり方,表示/レイアウト,および生成に関する発表,および,ウェブを使ったサービスに関する発表があった。なお,発表者の産学の比率は約2:1である。
合同開催の回の発表内容は,ドキュメント利用環境関係が5件,XMLと自然言語処理の関係が3件,XMLと文書処理の関係が2件,情報検索関係が5件,情報抽出とクラスタリング関係が5件であった。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- デジタルドキュメントシンポジウム2002:次世代Webを展望する
2002年2月1日に工学院大学にて開催。テーマを「次世代Webを展望する」とし、招待講演者として、大星公二氏(ドコモ)を招き、ブロードバンド時代の新しいソリューションについて講演いただいた。また、WebサービスとセマンティックWebを中心に次世代Webを支える要素技術のチュートリアルを実施した後、ITベンダ6社の参加によるWebサービスへの取り組みについてのパネル討論を開催した。
参加者アンケートの集計結果は、良かったとした回答率がシンポジウム全体に対しては約80%であり、特に招待講演に関しては約90%であった。時宜を得たテーマであったことと、ITベンダの実システムに関する話題が豊富であったことが評価されたものと思われる。
3.総括
本研究会は、1998年のシンポジウム以来、XMLを先進的に取り上げて適用技術の検討、市場動向、技術動向の紹介などに努力してきたところである。その後XMLがインターネット上の幅広いアプリケーションのインフラとして認知され、本研究会の守備範囲も単にキュメントの枠を超えて幅広い分野に展開しつつある。上記のように、13年度は、産学分野ともXML関連の発表が多かったのであるが、ドキュメント分野のみならず、電子申請、電子政府のような行政分野、ヒューマンインタフェースを含む放送業界、音声認識技術を含む携帯電話の応用分野などをカバーするに至っている。今後は、モバイル機器や携帯電話のような組み込みシステムにXMLが適用される機運にあり、デジタルドキュメントシンポジウム2002では、ドコモ会長大星公二氏にキーノート講演をお願いしたが、それが好評を博した。
4.その他
本研究会は、これまで時間をかけて少ない件数をじっくりとこなすような運営をしてきたが、今後は発表件数を増やす方向へと変えてゆきたいと考える。そのためには、研究会の固定客的な関係者を増大させる努力が必要である。その具体的な方策を、先日の連絡委員会で議論したが、過去の発表者に定期的にメールを送る、DD研のセールストークを考える、論文形式にするためのアドバイスを行う、DD研のニューズレターを発行する、定期開催の研究会にテーマを付ける等の意見が出された。研究会論文誌については継続検討としているが、研究会報告から"研究会推薦論文"を出せるので、まずはそれから始めることとしたい。◆モバイルコンピューティングとワイヤレス通信(MBL)研究会
[主査:高橋 修、幹事:井手口哲夫、井戸上彰、高橋克巳、塚本昌彦]
1.定例の研究会活動報告
第17~20回の研究発表会を開催し、合計66件(共催の場合はMBLとして申し込まれたもの)の発表があった。発表件数は昨年度(54件)よりも増加しており、本研究会での発表が引き続き活発に行われている。発表内容は、広域モバイルネットワークのアーキテクチャ/プロトコルに関するものから、アドホックネットワーク、端末技術とユーザインタフェースやウェアラブル、位置情報やコンテンツ配信などの各種アプリケーションなど多岐にわたっており、本研究会で扱う分野が引き続き拡大・発展している。また、第17回は電子情報通信学会モバイルマルチメディア通信研究専門委員会、第18回は高度交通システム研究会および知的都市基盤研究グループ、第19回はヒューマンインタフェース研究会、第20回は電子情報通信学会移動通信ワークショップとの共催であり、他学会や他研究会との交流も活発に行っている。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- モバイルコンピューティングとワイヤレス通信シンポジウム2001
平成13年10月12日、富士通本社(丸ノ内)にて、「IMT-2000サービス現状と展望 - 花咲く新世代モバイルコンピューティング -」のテーマで開催した。中川氏(慶応大学)より「IMT-2000を支える無線技術」、木下氏(J-PHONE)より「モバイルコマースの動向」、高橋氏(KDDI)より「次世代携帯ビジネスの展望」、中野氏(NTTドコモ)より「IMT-2000サービスの現状と今後の展望」、鷲見氏(ケイ・ラボラトリー)より「IMT-2000のコンテンツサービス」と題してそれぞれ基調講演が行われた。また、2000年度MBL研究会優秀論文(18件)の表彰も行われた。その後、真下氏(日経モバイル)の司会により、「IMT-2000サービスの理想と現実」をテーマとして4名のパネラーによる意見表明・討論が行われた。参加者数は約100名であり、IMT-2000の今後の発展に関して活発な意見交換が行われた。
- DICOMO 2001シンポジウム
平成13年6月27~29日、徳島県鳴門市にて、マルチメディア通信と分散処理研究会、グループウェアとネットワークサービス研究会、分散システム/インターネット運用技術研究会、コンピュータセキュリティ研究会、高度交通システム研究会および高品質インターネット研究会との合同で開催した。一般論文129件、招待講演2件の発表があった。発表件数は昨年と同程度であり、複数の研究会に関連する発表テーマも多く、合宿形式で有意義なシンポジウムであった。
- 小規模国際会議
平成13年8月20~22日に、International Association for Computer & Information Science (ACIS: 米国)および名古屋工業大学との共催で、「第2回ソフトウェア工学、AI、ネットワーキングおよび並列・分散コンピューティング国際会会議: 2nd International Conference on Software Engineering, Artificial Intelligence, Networking & Parallel/Distributed Computing:(SNPD '01)」を開催した。当初計画を大幅に上回る153名(海外から58名)の参加があり、発表論文は、招待講演6件に加えて、23セッション141件であり、情報処理技術に関わる最新の研究成果に関する討論を行うことができた。
3.総括
本研究会が発足して5年が経過したが、IMT-2000や無線LANなどのモバイルネットワークインフラと端末の急速な発展・普及に加え、アドホックネットワークやユビキタスネットワークなどに関する新たな研究開発の取り組みも進んでいる。次年度以降も、研究会やシンポジウムの開催、運営委員会での意見交換、論文誌特集号、研究会ホームページの充実などの活動を継続し、より高度なモバイルコンピューティング環境、ユビキタス通信環境の実現を目指した研究開発に関する発表・討論を活発に行い、研究会をより発展・充実させるようにしたい。
◆コンピュータセキュリティ(CSEC)研究会
[主査:佐々木良一、幹事:岡本栄司、林誠一郎、村山優子]
1.定例の研究会活動報告
H13年度は、第13~16回の研究発表会を開催し、発表件数合計94件にのぼった。このうち、第14回の研究発表会では、セキュリティ分野での学会間の交流を目的とした合同研究発表会を「電子情報通信学会情報セキュリティ研究会(ISEC)」と共に開催した。両学会から合わせて約150名近くが参加し、活発な意見交換を行った。また、第16回の研究発表会では、研究会間の交流を目的とした合同研究発表会を「マルチメディア通信と分散処理研究会」と共に開催した。いずれの合同研究発表会も、セキュリティの研究視野を広げる上でも有意義であった。本研究会が対象とする研究分野は、OS、ネットワークセキュリティ、暗号、ソフトウェア保護、セキュリティ評価など幅広く、平成13年度の発表内容も暗号やコンテンツ保護、そして、セキュアシステム技術など多岐に渡っている。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- コンピュータセキュリティシンポジウム2001 (CSS2001)
従来の2パラレルセッションで2日間の形式から、2パラレルセッションで3日間の形式とし、盛岡地域交流センター「マリオス」で10月31日~11月2日にかけ開催した。開催期間を延長したこともあり、最終投稿数が75件、セッション数22となり、投稿数は昨年度から20件も増となった。また、選出した優秀論文賞2編と学生論文賞3編を懇親会で表彰したり、従来2名の講演者を招いて行っていた基調講演を3名とするなど、シンポジウム自身の活性化にも努めた。
・佐々木 良一 氏(東京電機大学) 「印鑑と電子印鑑の歴史と類似性の分析」
・山村 元昭 氏(シマンテック) 「Inside Internet Security 2001」
・大矢 邦宣氏 (岩手県立博物館) 「みちのくのセキュリティ~藤原清衡(きよひら)夫妻の平和文化戦略~」 - マルチメディア、分散、協調とモバイル (DICOMO2001) シンポジウム
6月27~29日にかけ、徳島市ルネッサンスリゾートナルトにおいて開催した。 DICOMOは、情報処理学会のCSEC研究会を含む多数の研究会が協賛しているシンポジウムであり、ネットワークからセキュリティまで幅広い研究分野をカバーしている。このため、セキュリティについての発表テーマも、セキュリティ管理、セキュアシステムとその実現手段、認証ならびにプライバシ保護と多岐に渡っている。一般講演129件、参加者総数230名前後と盛大なシンポジウムとなった。
3.総 括
研究発表会4回のうち2回を合同研究会形式とし、また、DICOMO2001シンポジウムにも協賛するなど、研究会発足4年目も、学会ならびに研究会間の交流に力を入れ、セキュリティ技術研究の広がりと深みを増すための場の提供に注力した。さらに、良い発表を論文につなげるため、CSEC研究会内の推薦論文制度整備を継続推進、2002年8月特集号『電子社会に向けたコンピュータセキュリティ技術』の企画、そして、特集号をCSEC会員に配布するという、研究会の活動サイクルの確立も行った。
平成13年度は、これまで4年間の研究会活動を見直しながら、より良い研究会を目指し活動を行ってきた。平成14年度も、各方面の研究者の意見交流の場を積極的に提供していくと共に、この分野のさらなる発展に寄与していくことのできる研究会活動を推進していきたいと考えている。会員の方々には積極的なご協力をお願いしたい。
4.その他
平成14年度は、研究発表会4回(うち地方開催2回)、10月末に大阪(大阪市立大学)でのシンポジウムCSS2002を開催する予定である。研究発表会では、平成13年度に引き続き、第18回「電子情報通信学会ISEC」との合同開催、第20回「マルチメディア通信と分散処理研究会」との合同開催を計画している。また、2003年8月特集号『新たな脅威に立ち向かうコンピュータセキュリティ技術』発行をめざした特集号編集委員会の立ち上げ、「マルチメディア、分散、協調とモバイル (DICOMO2002) シンポジウム」なども計画している。今後共、会員の方々には積極的な発表、論文投稿と参加をお願いしたい。
◆高度交通システム(ITS)研究会
[主査:松下 温、幹事:伊東幸宏、小花貞夫、関 馨、屋代智之]
1.定例の研究会活動報告
平成13年度は、第5~8回の研究発表会を開催し、70件の研究発表と2件の招待講演があった。毎回、50~70名程度の参加があり、活発な質疑応答が行われた。内容もITSに関する国内の動向から、交通流解析・制御、通信方式・プロトコル、地図・位置情報処理、画像解析、インターネット応用、ナビゲーション、鉄道への応用など基礎から応用までの技術について幅広い発表、議論が行われた。9月(はこだて未来大)の研究会は、MBL研究会、ICII研究グループと合同で開催し、また、3月(東京電機大)は、電子情報通信学会(ITS研究会)と共催した。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- 高度交通システム2002シンポジウム
ロケーションコンピューティングをテーマにシンポジウムを開催した(平成14年1月18日 学術総合センター)。携帯電話やカーナビゲーション、鉄道向けサービス、歩行者ITSなどさまざまな視点によるロケーションコンピューティングの考え方と、今後のロケーションコンピューティングのための技術動向について、9件の招待講演を行い、110名の参加があった。また、シンポジウムにおいて、平成13年1月~12月の研究会で発表された優秀論文14件の表彰を行った。 - DICOMO2001シンポジウム
6月27~29日、徳島県鳴門市にて、DPS、GN、DSM、MBL、CSEC、QAI研究会と共催で開催した。一般論文129件、招待講演2件の発表があった。まだまだITS研究会関連の発表は少なく、今後より一層の啓蒙が必要であると思われる。
3.総括
高度交通システム研究会として発足してから2年目の平成13年度、会員数も順調に増加し、また発表件数、参加者数ともまずまずの結果であった。また研究発表者の所属組織も初年度と比較してやや広がりを見せており、ITSに関する研究活動のすそ野の広がりを感じさせる。発表分野も車関係のみならず、徐々に鉄道などに広がりつつあり、活発な意見交換の一助となっていると考えられる。しかし、まだまだITSに関する潜在的な研究者が数多くいると考えられることから、こういった研究者に魅力ある研究会活動を通じて、より広範な意見交換が行える場を提供して行きたい。
4.その他
2回の産業フォーラム/ITSを企画、開催し、産業界・学術界の専門家による講演およびパネル討論を行った。これによって、情報処理学会会員のみならず、情報処理学会非会員を含む多くの一般の研究者に対して、ITS分野の研究に興味を持ってもらうための啓蒙を図った(7月「ITSとロケーションサービス」、11月「ITSとヒューマンマシンインタフェース」)。また、本フォーラムで興味を持った参加者が多かったテーマを参考にして高度交通システム2002シンポジウムを開催した。今後ともITS研究会の活動とリンクさせてより多くの研究者に啓蒙を行って行きたいと考えている。
また、3月12~14日に東京電機大学鳩山キャンパスにおいて開催された全国大会で、特別セッションITSを企画、開催した。延べで140名ほどの参加者があり、活発な質疑応答が行われた。平成14年度の全国大会についても、ITSに関する特別トラックを企画、開催する予定である。
◆高品質インターネット(QAI)研究会
[主査:尾家祐二、幹事:, 伊藤 篤, 江崎 浩, 岡村耕二吉田健一]
1.定例の研究会活動報告
第1・2回の研究発表会を開催した。初年度という事で2回の開催であったが、次年度については関連学会との共催 などを検討し、活動を増やす予定である。分野としては2回目の研究回をJGNシンポジウムと共催した事もあり、IPv6、ギガビットネットワークなどに関連した研究報告が多かった。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
SAINT2002とDICOMOシンポジウムを行った。3.総括
既存のアプリケーションの通信機能の評価、既存のトランスポートプロトコルの品質評価、ルータにおける品質制御手法の評価、ユーザ側での品質改善手法の評価、新しいトランスポートプロトコルの評価、インターネット向きトラフィックモデルの確立、通信路実験装置、トラフィックデータのデータベース化、伝送レベルでのデータ収集に関する社会的妥当性の検討などインターネットの普及にともない重要性の高まっているインターネットの品質保証にかかわる技術について広く議論した。
4.その他
進歩の速い分野であり、国内外の研究者の連携を計ることが重要である。そのため、国外においては米国IEEE CSと連携し、SAINTを情報処理学会として共催しているが、QAI 研究会はその主要な関連研究会としてワークショップの開催、PCの選出など中心的な活動を行っている。また、国内においては信学会IA/IRC研究会と協力しながら活動を進めており、14年度は4回の研究回を共催予定である。
◆システム評価(EVA)研究会
[主査:福田 晃、幹事:河野知行、杉野栄二、中西恒夫]
1.定例の研究会活動報告
平成13年度に発足した研究会で、第1回~2回の研究会を開催した。記念すべき第1回研究会(平成13年6月15日、岡山大学)には、招待講演として、日本IBMの高安啓至氏をお招きし、シドニーオリンピックにおける情報システムの概要、パフォーマンス事例、システム規模、トランザクション量、システム構成など、興味深い話をうかがった。また、その他の研究発表件数は5件であった。発表内容は、システム支援環境、運用ソフトウェア、システムLSI、セキュリティシステムなどの評価など、多岐に渡っている。招待講演、研究発表では多くの質問があり、活発な議論が行われた。第2回(平成14年2月14・15日、九州大学)はOS研究会と共催した。発表件数は、22件であった。発表内容は、システム評価とアーキテクチャ、並列/分散/ネットワーク、システムソフトウェアの構成、組み込みシステムなど、多様なシステム評価であった。多くの質問、活発な議論が行われた。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
コンピュータシステムシンポジウムを、OS研究会、情報家電コンピューティンググループとの開催で、平成13年11月19・20日、東京国際展示場(東京ファッションタウン)で行った。テーマは、「ポストPC時代を支える基盤ソフトウェアとシステム評価」である。招待講演には、組込みJavaの第一人者として著名なGreg Bollella氏(Sun Microsystems)(内容:組込みJavaの現状と今後)、およびチュートリアルには、Webシステムのチューニングで活躍されている鈴木康裕氏(日本IBM)(内容:Webシステムのサーバーサイジン)のお二人をお招きして、ご講演頂いた。発表件数は、18件であった。発表内容は、モバイル、情報家電、実時間処理など、分野としては、最近ホットな分野に関するものが多く、多くの質問、活発な議論が行われた。
3.総括
発足したばかりの研究会であり、平成13年度は不十分な点があり、改善していきたい。登録会員数は、計画した人数を超えているものの、まだ少ない。また、発表件数も不十分である。発表内容は、システム評価の中で、まだ性能評価に偏っており、性能評価のみならず多様な観点からのシステム評価に関する研究発表・議論の場を提供していきたい。今後、宣伝活動の活発化など多くの手段を講じて、これらの改善に努める所存である。。
◇知的都市基盤(ICII)研究グループ
[主査:中島秀之、幹事:大内一成、久野 巧、平松 薫]
1.定例の研究会活動報告
第1・2回の研究会を開催した。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- 第1回 知的都市基盤シンポジウム
3.総括
4.その他
◇情報家電コンピューティング(IAC)研究グループ
[主査:徳田英幸、幹事:井上雅裕、斉藤 健、戸辺義人、西尾信彦]
1.定例の研究会活動報告
平成13年度は、第1~2回の研究発表会を開催した。第1回研究会は7月9・10日に 慶應三田キャンパスにて開催した。2日目に国内からの研究発表(15件)を行なった。企業から9件、大学から7件と、産学双方からの高い関心が寄せられた。内訳は、情報家電のユーザインタフェース、デジタル放送応用、家電機器制御、プラグアンドプレイ等の簡単操作に関する研究、ホームネットアプリケーション、システムソフトウエア/ミドルウエア等、多岐に渡る分野における発表が行なわれた。産学双方、多彩な業界からの発表に対して、業界をまたいだ活発な議論を行なうことが出来た。参加人数も100名以上と、想定人数を大幅に上回り、盛況であった。第2回研究会を「情報家電、生活支援技術、移動体通信技術」などをテーマとして、情報家電産業総合会議と連係して3月25日に開催した。傾向としては基礎技術に関する発表がなされる一方で、完成されたシステムに関する報告が多く行われた。また、発表申し込み件数も予定より多く、この分野における研究が活発に行われていることを端的に示していた。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
国際会議を本研究グループ単独で1回、シンポジウムを他の2つの研究会と共催で開催した。7月9日、第1回研究会に併せて、International Workshop on Information Appliances and Smart Computing を慶應三田キャンパスにて開催した。国内外から、4名の招待講演者を招き、情報家電、ユビキタスコンピューティングに関する議論をパネルも含めて活発に行った。シンポジウムとして、11月19・ 20日 に東京国際展示場にて、システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会、システム性能評価研究会と共催で、「コンピュータシステムシンポジウム」を開催した。情報家電以外に、システムソフトウェア、システム性能評価の幅広い分野での討議を行うことができた。
3.総括
本研究グループは、平成13年度発足し、産業界から多くの参加者を集めることができ、産学合同での議論の場を提供することができた。また、本研究グループを窓口として、海外の一線で活躍する研究者を招いて議論できたことは、本分野の促進に貢献できたと考えられる。情報家電は個々の事例を見ると製品化の動きも目覚しいものがあるが、システム全体としての議論も重ねて行く必要もあるし、情報家電によるコンピューティングをユビキタスコンピューティングの一例としてより広い議論を行う必要もあり、平成14年度も引き続き、積極的に活動を続けていく。
4.その他
産業フォーラム/情報家電を企画、開催し、情報処理学会の非会員を多く集め、産業界の専門家による講演とパネル討論を通じ、情報処理学会の中での情報家電に関する取り組みを知っていただいた。
◇放送コンピューティング(BCC)研究グループ
[主査:水野忠則、幹事:岡田謙一、楠見雄規、菅 隆志]
1.定例の研究会活動報告
2002年2月、情報処理学会にて、第1回の研究発表会を開催し、11件の発表があっ た。発表内容は、放送型情報サービス、データ放送、通信放送融合方式をはじめ とした放送コンピューティングに関する各種要素技術や放送コンピューティング を応用した各種アプリケーションなど多岐にわたっている。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
- 放送コンピューティング研究グループ第1回ワークショップ
2001年10月、情報処理学会にて、「放送コンピューティングがかかえる課題と将来展開」というテーマで研究グループ設立のワークショップを開催した。研究グループ幹事の楠見氏(松下電器)より「データ放送の動向」、同幹事の菅氏(三菱電機)より「通信・放送融合の動向」と題してそれぞれ基調講演が行われた。その後、参加者全員によるポジションペーパに基づく自由討議を行い、参加者全員で意見交換や討論を行った。当日の参加者数は約20名であった。
3.総括
本研究グループは平成13年度発足したばかりであるが、今後放送のデジタル化やFTTHをはじめとするブロードバンドネットワークの急速な普及により、本研究グループに関連するテーマは大きく広がっていくことが予想されている。また、2002年度は、2001年度に引き続き研究会やシンポジウムの開催を行うとともに、「マルチメディア、分散、協調とモバイルシンポジウム」への協賛や関連研究会との共同研究会の開催を予定している。
フロンティア領域
◆自然言語処理(NL)研究会
[主査松本祐治、幹事:奥村 学、永田昌明、宮田高志]
1.定例の研究会活動報告
第143~148回の研究発表会を開催した。
5月の研究会はSLP研と合同で開催し、特に話し言葉に関する言語処理の特別セッションを開いた。このテーマに関する多くの発表を集めることができ、有意義な議論が展開された。7月には、電子情報通信学会のNLC研と合同ではこだて未来大学で開催した。地方の開催であるにもかかわらず、27件という多数の研究発表があった。9月にはFI研との合同研究会を開催し、対話的情報検索や情報検索への言語処理応用などの研究発表が行われた。後半の3回の研究会は単独開催であったが、形態素解析、構文解析、意味解析などの言語処理の基礎的な解析技術から文書処理や情報抽出などの幅広い応用に関する発表がバランスよく見られた。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
平成13年度は実施なし。
3.総括
平成13年度も6回の研究会を開催した。発表申込参加申込とも順調で、106件の発表と300名以上の参加者を集めることができた。開催の半数を他学会(電子情報通信学会NLC研究会)および他研究会(SLP, FI)との協賛とする方式、および、隔月で関東方面とその他の地域を交代で開催地とする方式も定着し、自然言語処理に関する代表的な研究発表の場として機能している。
4.その他
今後も、年6回の開催と他研究会との合同を進める予定である。
◆知能と複雑系(ICS)研究会
[主査:沼尾正行、幹事:和泉 潔、小野 哲雄、長尾 確]
1.定例の研究会活動報告
- 第124回 平成13年5月17日招待講演1件・他特集7件。情報処理学会会議室(芝浦)において開催された。テーマは、「知識流通を求めて---知識共生とGlobal Intelligence」であり、特集テーマに関係する8件(うち、1件は招待講演)の発表があった。知識共生のフレームワーク、知識流通モデル、情報流通、知的情報検索、強化学習などに関する発表があり、 活発な討論が行われた。
- 第125回 7月23・24日 発表14件。電子情報通信学会の2研究会(「人工知能と知識処理研究会」と「オフィスシステム研究会」)と合同で広島市立大学にて開催。特集:「インターネット時代のAIとオフィス -- コンセプト、理論、アプリケーション」および一般発表。合同開催らしく、実際のシステム運用の報告から基礎的な研究まで、幅広い内容の発表が行われ、議論も活発に行われた。
- 第126回 10月12日 学会会議室で開催。発表8件。特集テーマ「ヒューマンロボットインタラクションにおける知能」に関する発表が8件であった。人とロボットのインタラクションに関して、理論的な側面から工学・心理学分野までを含む幅広い発表と議論が行われた。また、発表者以外の参加者も多く、活発な議論がなされた。
- 第127回 平成14年1月9・10日チュートリアル1件・他特集25件、一般1件。電子情報通信学会(人工知能と知識処理研究会)との共催で、ラフォーレ修善寺(静岡)において開催された。テーマは、「社会システムにおける知能」で、一般発表も含めた27件(うち、1件はチュートリアル)の発表があった。主に、経済システムのモデル、人工知能、知的情報検索、推論、 エージェントなどに関する発表が多く、 活発な議論が行われた。また今年はチュートリアルが英語であったので、試験的に国際セッションを設け、8件の発表があり、活発な議論が行われた。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
平成13年度は実施なし。
3.総括
平成13年度は開催した4回すべてで特集を組んだ結果、発表者および参加者は予想以上に多く、極めて活発な討論がなされた。
4.その他
本研究会は1986年に人工知能学会が成立する際の母胎になった歴史ある研究会であり、現在の使命は人工知能における最新の成果を情報処理学会の会員に提供していくと同時に、「知能」を解明する際に重要となる「複雑系」の分野との交流も図っていくことにある。この目標はかなり達成されており、今後も活動を充実させていきたい。
◆コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)研究会
[主査:池内克史、幹事:佐藤洋一、中村裕一、村上和人、八木康史]
1.定例の研究会活動報告
第127~132回の研究発表会を開催した。平成13年度は、以下に示すテーマ別オーガナイズドセッションを企画し、毎回100名前後の聴講者があり、熱心な討論が繰り広げられた。
第2回(2001年7月):人を観る(1)-人の動き・姿勢の計測・復元
第3回(2001年9月):人を観る(2)-人の動作・意図の計測・認識とインタラクション
第4回(2002年1月):大量カメラとネットワーク
また、新たな企画として、毎年5月の研究会に前年度学部を卒業し、修士課程に進学した学生を対象とした特別セッションを企画することになり、2001年5月にその第1回目を開催した。この特別セッションでは、若手研究者の育成を目的に、学部課程で研究してきた内容(卒業論文の内容)をポスター形式で発表してもらっている。そして、優秀な発表に対しては、研究会より最優秀賞ならびに優秀賞を授与した。以下は、2001年5月開催の卒業論文セッションの受賞者である。
最優秀賞 (1名)
【127-9】題名:SAIによる3次元形状操作
著者:○増田智仁、池内克史(東大)
優秀賞 (3名)
【127-15】題名:視点固定型ステレオカメラを用いた対象追跡
著者:○常谷茂之、和田俊和、松山隆司(京大)
【127-10】題名:撮像素子の能動制御による効率的な3次元画像計測
著者:○野田隆史、日浦慎作、井口征士(阪大)
【127-14】題名:三次元道路形状情報獲得のためのステレオ動的輪郭モデルの提案
著者:○矢野真也、八木康史、谷内田正彦(阪大)
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
平成13年度は実施なし
3.トランザクション:コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)の報告
平成13年度は、第2号、第3号の発行を行った。第3号からは、テーマ別オーガナイズドセッションと連係した形で特集号を組んでいる。具体的に第3号は、2001年1月開催のオーガナイズドセッション「全方位ビジョン」と連動した形で企画した。これまでの特集号とは異なり、一般投稿による研究論文の他に、この分野のこれまでの歩み最近の話題をまとめた解説論文、そしてこの分野の発展に寄与してきた研究グループ研究を総括的に記述した総合論文の3部構成をとることで、この分野の動向がこの一冊で理解できるように工夫した。また、2001年1月から11月までの研究会で発表された論文を対象に、優秀発表を選出し、研究会論文誌への投稿を呼びかけた。現在集委員会にて査読中で第5号に研究会推薦論文として掲載予定である。以下は、平成13年度発行の特集号と今後の予定である。
第2号 「特集:Geometry-based VisionとVRとの接点」(2001年6月発行)
第3号 「特集:全方位ビジョン」(2001年11月発行)
第4号 「特集:人を観る」(2002年6月発行予定)
第5号 「特集:大量カメラとネットワーク」「研究会推薦論文」(2002年12月発行予定)
4.総括
平成13年度は、研究会論文誌におけるオーガナイズドセッションとの連係、卒業論文セッション、研究会論文誌への推薦制度と言った新しい試みを行った。その結果、研究会への参加者も毎回100名程度と増え、議論が白熱することが多く、研究会の活性化が行えたと感じる。来年度は、本研究会主催の画像の認識・理解シンポジウムが開催されることから、当分野のさらなる活性化を図っていく所存である。
5.その他
2002年7月末に、本研究会主催の画像の認識・理解シンポジウム MIRU2002を名古屋工業大学で開催予定である。
◆コンピュータと教育(CE)研究会
[主査:武井惠雄、幹事:角 行之、佐野 洋、澤田伸一]
1.定例の研究会活動報告
第60~63回の研究発表会を開催した。第60回研究会は大阪学院大学、61回は日本工業大学、62回は東京外国語大学、第63回は学会事務局会議室での開催であり、全体で37件の発表があった。後述の夏の情報教育シンポジウムにおいても、招待講演を除いて38件の研究発表があり、定期研究会の活動が年を追って
活発化して来ていると言えるだろう。
平成13年度の顕著になってきた傾向を、研究内容に立ち入って見てみよう。
(イ)実際的なeラーニングを目指す努力:教育・学習支援システムや教材コンテンツの研究に進展が見られた。一つは完成度が高まって来たことであり、実際の使用に耐えるシステムやコンテンツの報告が増加して来た。もう一つは、eラーニングを意識しての開発が進行してきたことである。後者では、学習状況の定量的な把握や進行制御の機構の開発を進めて、学習観の変化に対応したeラーニングの実現を目指した研究が見られた。
(ロ)高度な学習支援を目指す努力:その一つは、HCI(Human-ComputerInteraction)とも重なる分野であるが、黒板やノートの高度化などの研究で、学習という観点に重点をおいた興味深い報告が見られた。もう一つは、教材やシステムに意味論的な視点を持ち込む動きであり、教育環境におけるアノテーションの実現につながるものとして期待できる。
(ハ)学習環境・教材コンテンツの平易な構築を目指す努力:たとえばReal Playerといった、よく流通しているものだけを使って学習環境や教材を構築する実践が見られるようになった。素朴なようだが、教育の情報化を進める上で、看過できない流れとなろう。
(ニ)その他:小中学校の事例よりも、大学教育を意識したものが多くなった。これは、初等中等教育課程の改善への対応が一段落したことと、大学等で、実際に各教科の情報化を自ら実践している教員の発表が多かったせいだが、そこには、狭義の情報技術だけでなく、教育・学習観の広がりを見ることが出来る。広義の情報学、テクニカルライティング、インストラクショナルデザイン、多言語教育といった広がりを見ることができた。
2.シンポジウムの報告
平成13年8月21~23日に「情報教育シンポジウム SSS2001—深化する情報教育—」を長野県更級郡上山田町戸倉上山田温泉で開催した。これは、本研究会が主催するシンポジウムとしては3年目となるが、“情報教育”に関わる三つの軸 — 学校教育サイド、研究者サイド、教具教材開発サイド—が、立場の違いを乗り越えて語りあうという趣旨で、SSS99以来、熱気のこもった研究会となっている。今回も、査読制の基で、306ページに上るプロシーディングを初日に配布し、二泊三日にわたって深更まで議論するという厳しいものであったが、97名に上る参加者があって成功した。全体セッションが4、分科会セッションが7、そして招待者を中心とする5件のパネルの他に、いまではすっかり名物となったナイトセッション2とレイトナイトセッションがいくつか開かれた。今回は、最初にテーマA~テーマHを立てて論文を募集し、プログラムの編成を行ったので、目的意識がはっきりとしたシンポジウムになった
といえよう。内容的にも優れた論文が見られ、論文誌編集委員会に対して、研究会から2編の論文を推薦した。
3.総括
平成13年度は、前々から努力してきた「初等中等教育における情報教育」が一段落した年で、研究の新たな方向を求めての活動が始まった年と位置づけることができる。2項に述べたように、発表された研究会論文は、実用性や先見性の点で従来とは違った特徴と充実が見られるようになり、こらからの発展が期待される。
それでもまだ、研究会の登録会員数に比べて発表件数が多いとは言えず、研究会の開催数の増加や開催地の選定、あるいは開催時刻の変更などによって、
改善していくことを決めた。ただし、「教育」ということを掲げる研究会であるため、他の研究会に軸足を置いて、研究会報告だけを閲覧する会員もかなりの数に上ることが分かっており、単に発表数を増やすだけではなく、世界的な教育観の変化と、情報社会の在り様に対する洞察を根底において、独創的な研究活動と、研究者の研究支援を発展充実させることを目標にしている。
しかし、研究会で発表された研究が、出来るだけ広く流布されることは研究会として最も重要なことであり、以前から検討していた論文化推進委員会の活動を活発にして、研究会論文の論文誌論文化の強化を開始した。
4.その他
平成12年度から始まった研究運営委員会制度が次第に定着し、運営委員の研究発表会および運営委員会への出席率が高まり、研究会の主体性が確立してきた。その結果、発表会の司会に、若手で意欲的な研究者を当てることが出来るようになり、討論の内容も深まってきた。
◆人文科学とコンピュータ(CH)研究会
[主査:加藤常員、幹事:相田 満、山本泰則、リンネ マリサ]
1.定例の研究会活動報告
第50~54回の研究発表会を開催した。
- 第50回:5月25日、国立民族学博物館、一般発表5件、初代主査・杉田繁治国立民族学博物館副館長の第50回研究会記念講演、パネル討論、参加者42名。
- 第51回:7月13日、駿河台大学、発表8件、参加者25名。
- 第52回:10月12日、茨城キリスト教大学、発表8件、参加者31名。
- 第53回:1月26日、宮崎経営産業大学、発表10件、参加者34名。
発表は人文科学の諸分野に対象としたデータベース、データマイニング、Webベースの情報探索手法、可視化技法などのツールの開発、知識表現や認知モデルなどに関するものであった。特記すべきは、現実の人文系コンテンツを実際に扱った話題が数多く見られるようになって来た。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
12月15・16日の2日間、「デジタルアーカイブ-21世紀にもっていくもの-」をテーマに立命館大学衣笠キャンパスにて第2回人文科学とコンピュータ(じんもんこん2000)シンポジウムを開催した。発表件数は39件で、その他特別講演、招待講演、企業展示等を行い、171名の参加を得た。「デジタルアーカイブ」という人文系のあらゆる領域で関心があるテーマであったことから投稿論文数、参加者数で予想をはるかに上回る結果を得て、この分野に対する関心の深さと期待の高さを実証する結果となった。内容では、講演者の熱心な発表や討論が得られた。また、カナダから招いた招待講演や特別講演をふまえた講演者を含め、パネル討論を行った。論文集が不足し、経費上も当初計画とは異なる結果となったことは今後の反省としたい。
3.総括
平成13年度は、第50回の記念研究会を含む定例の4回の研究会と1つのシンポジウムを開催した。登録者数は約300名で毎年微増傾向にあると思われる。本研究会は設立以来、地方開催を旨としているが毎回登録者の一割前後が研究会に参加し、熱心な討論が行われている。一方、地方開催は、常時参加が難しいとの意見もあり、50回の節目に検討すべき課題と考えている。
また、発表内容からは人文科学の研究現場で使われているコンテンツにもとづく確実な成果が報告されるようになって来ている。これは本研究会のひとつの目標としてきた人文科学者と情報関連科学者とのコラボレーションによるものである。今後もこの傾向の進展に期待すると共により幅広い研究の啓発を行っていきたい。
4.その他
本研究会は人文科学への情報処理技術応用の境界領域の研究会として、他に同種の学会もなく一定の成果を挙げて来た自負している。一方、研究分野として人文科学と情報諸分野との学際領域として成立するか否かを問いつつ、一層の人文科学者と情報関連科学者とのコラボレーションによる研究の発展を目指したい。
◆音楽情報科学(MUS)研究会
[主査:小坂直敏、幹事:片寄晴弘、菅野由弘、堀内靖雄]
1.定例の研究会活動報告
第40~44回の研究発表会を開催した。平成13年度は分野の学際性を反映し、他研究会等との共催研究会が4回を数え、また、コンサートも含めて発表内容は多岐にわたった。年間発表件数
(研究報告目次掲載分)は56件である。各研究発表会の内訳は以下の通り。
* 第40回(5月23日:情報処理学会会議室) 発表8件およびフリーディスカッション。
* 第41回(8月4・5日:静岡文化芸術大学)通称「夏のシンポジウム」。新世紀メディアアートフェスティバルと共催。発表15件とフリーディスカッション。
* 第42回(10月26・27日:ATR)発表14件。前日のチュートリアル併設(2.参照)およびけいはんなメディアコンサートも共催。
* 第43回(12月22・23日:慶応義塾大学藤沢湘南キャンパス)インターカレッジ・コンピュータ音楽コンサートと共催。発表7件。コンサート34作品、展示9件。
* 第44回(2月15・16日:和歌山大学)日本音響学会音楽音響研究会と共催。発表12件。
研究会参加者人数は平均40名であった。例年同様、自動作曲・編曲、作曲支援、音楽分析、自動伴奏、自動演奏、演奏モデル、音色合成、物理モデル、自動採譜、音楽検索、音楽情報処理システム、メディア情報処理システム、邦楽・民俗音楽の情報処理、音楽認知・理解、等、音楽情報科学全般にわたり幅広い発表があった。第41,42,43回は続けて企画もので、2日プログラム、コンサート付きであった。逆にコンサートが多すぎ、研究発表募集に苦労する、という現象も起こり、企画ものが3回連続したことが一部の会員には負担であったようである。
以上の運営方針とは別に、研究発表そのものは順調に行われ、芸術応用以外の情報処理研究としての音楽研究が盛んになってきた。
2.シンポジウム・小規模国際会議等の報告
平成12年度にコンピュータ音楽チュートリアルの実施を予定していたが、これが延期され平成13年5月26日に実施した。内容はサウンド・プログラミング入門で、Windows上でのMIDI処理技術、サウンド処理技術の二つを広範に、また、事例をあげながらわかりやすく解説してもらった。
これらの技術は、音楽ソフトを考える際必須の技術となり、主催側が計画したよりも多くの参加者が集まり、会場の机がほぼ全員聴講者で埋まり、熱気のある会となった。講師には田辺義和氏を迎えた。参加人員は43名である。
この成功をうけて、第2回目をけいはんなでの大川センターで10月25日に再度開催した。関西での開催であり、このときも好評であった。ただし、もう少し演習もほしい、という要望も強かった。
3.総括
上の活動報告にも見られるように、研究発表は音楽情報科学全般にわたる広い範囲におよんでいる。また、平成13年度にはジャーナルでの音楽情報科学特集号の発行されるなど、内容的にも益々充実したものとなっている。また、チュートリアルでは、同一テーマとはいえ、2度にわたる開催が好評で、今後も強い開催の要望があることがわかった。
また、一方では、コンサート開催が年間3回におよび、研究陣からの「頻度が高い」との声も出始め、学際的企画としてやってきた当研究会の音楽企画との融合の見直し点に来たと感じられる。
一方では、阪大 塚本氏らの提案によりエンターテインメントとしての研究の発展などの可能性も出てきて、様々な流れの中で本研究会は時代に即して変容を遂げようとしている。
4.その他
恒例となったインターカレッジコンピュータ音楽コンサートは13年度は開催までの流れはスムーズにはいかなかった。しかし、会期中の運営そのものは例年どおりスムーズに開催された。音情研との係わりについて見直す時期に来ている。
一方では、自動演奏のコンクールの実施に向けた研究プロジェクト(蓮根)の支援など、新たな研究支援活動も推進していきたい。一般向けコンピュータ音楽のチュートリアルを今後も継続して行っていきたい。
◆音声言語情報処理(SLP)研究会
[主査:小林哲則、幹事:相川清明、伊藤克亘、河原達也、鹿野清宏]
1. 定例の研究会活動報告
第36~40回の研究会を開催し、合計102件の一般講演、6件の招待講演,4件のサーベイ講演と、1回のパネルディスカッションが行われた。- 第36回:一部を自然言語処理研究会(NL)と合同開催。「話し言葉処理」をテーマとして13件の講演があり、活発な討論が行われた。
- 第37回:1泊2日の合宿形式。ロボット・人工物とのインタラクションをテーマに、「人間型頭部ロボットの開発」高西淳夫氏(早稲田大学)と「人とのインタラクション機能を持つパーソナルロボットPaPeRoの紹介」大中慎一氏(NEC)の2件の招待講演が行われた。その他このテーマに関する14件の講演と自由討論が行われた。
- 第38回:「VoiceXML と対話記述」をテーマとして9件の講演と、「モバイル・インターネット時代の対話記述」と題したパネルディスカッションが行われた。
- 第39回:第3回目となる「音声言語シンポジウム」の形式で開催。電子情報通信学会音声研究会・言語理解とコミュニケーション研究会、音声研究会と共催(2日間)。4件の招待講演(「ロボット聴覚の課題と現状」奥乃博氏(京大/JST), 「ロボットによる言語獲得」岩橋直人氏 (ソニー)、「セマンティック・トランスコーディング」長尾確氏 (名古屋大)、「大規模テキスト知識ベースに基づく自動質問応答」黒橋禎夫氏 (東大))4件のサーベイ(話者適応、耐雑音音声認識、日本語話し言葉コーパスの音声認識の進捗、最近の情報検索関連コンテストにおけるタスク)を中心に、27件の一般講演があり、熱心な討論が行われた。
- 第40回:1泊2日の合宿形式。ヒューマンインタフェース研究会との合同。「音声を活かした”新しい”インタラクション」をテーマに、29件の発表があった。
2.シンポジウム・小規模国際会議の報告
平成13年度は実施なし。
3.総括
合宿形式であるか否かにかかわらず、活発な討論が行われた。中でも、3年目に入った12月開催の「音声言語シンポジウム」は講演件数も多く、充実していた。このシンポジウムで各セッションに先立って行われる関連分野のサーベイは、諸学者に限らず専門家にも参考になるものが多く、有意義であった。平成13年度の特徴としては、VoiceXMLを用いた対話記述など応用的研究に目が向けられてきたことが挙げられる。その中にあって、10月の研究会で行ったパネルでディスカッションは、真に時期を得た企画であり、好評であったと考える。4. その他
共通利用可能な音声認識ツールの提供とその普及を目的として、本研究会の下に設立した、連続音声認識コンソーシアム(CSRC)(代表:鹿野SLP 特別幹事)が着実な成果を上げている。多くの参加者からの賛同を得て健全な運営体制を確立するとともに、その体制の下で利用価値の高いツールを提供し、講習会を通じて地道な普及活動を続けていることは高く評価される。今後の活動も期待できる。
研究会活動自体は、規模が大きくなるにつれて、深い議論をしにくくなりつつあるように思う。通常形式の研究会に加えて新たな議論の形態を導入することについて検討を始めたい。
◆電子化知的財産・社会基盤(EIP)研究会
[主査:安田 浩、幹事:池田 誠、河原正治、松本恒雄]
1.定例の研究会活動報告
- 以下の通り、第12~15回までの4回の研究会を開催した。
- 第12回:6月1日、一橋大学大学院において開催。発表件数8件。
- 第13回:9月8日、東京大学駒場リサーチキャンパスにおいて開催。発表件数7件。
- 第14回:11月30日、NTT武蔵野研究開発センターにおいて開催。発表件数7件。
- 第15回:2月16日、早稲田大学において開催。発表件数9件。
2.シンポジウム・小規模国際会議の報告
平成13年度は実施なし。
3.総括
平成13年度は、研究発表・議論の場を提供すると同時に、各研究会において招待講演を設定することで、聴講者にタイムリーな話題を総合的に紹介することを心がけた。このような試みの効果もあり、発表件数は平成12年度の21件から31件に増加した。
発表テーマとしては、平成12年度に引き続き、著作権管理システムおよび電子商取引に関するものが中心であった。平成13年度の特色の一つとして、認証や電子透かしなどの技術的課題に関する発表が増えたことが挙げられる。また、モバイルコマースやインターネットオークションに関わる技術的・社会的問題についての発表が増加し、活発な討論が展開された。平成14年度もこのような新しい視点での研究発表が増加すると考えている。
4.その他
本研究会の特徴は、情報技術者だけではなく、弁護士、ジャーナリスト、行政関係者など、隣接分野からの参加者も交えて、オープンな討論が行われることであり、平成14年度も同様に4回の研究会を開催し、活発な議論の場を提供していく予定である。
◆ゲーム情報学(GI)研究会
[主査:松原 仁、幹事:飯田弘之、田中哲朗、吉川 厚]
1.定例の研究会活動報告
第6回の研究会を6月7日に公立はこだて未来大学で行なった。日本認知科学会の全国大会の直前であった。従来の将棋などの完全情報の思考ゲームの研究に加えてロールプレイングゲーム、コントラクトブリッジ、音楽学習支援システム、ボードゲームを用いた学習支援、ロボカップサッカー、ロボカップレスキューなどさまざまな研究の発表が行なわれた。本研究会はゲームを広く捉えることを目指しているが、そのことが少しずつ実現していっていると思われる。発表件数は11件であった。地方開催であったが、連続開催ということで多数の参加者があった。
第7回の研究会を3月25日に東京農工大で行なった。情報処理学会全国大会の直後であった。前回に引き続き、サッカーの協調行動、ジャグリング、将棋種の歴史的変遷、認知心理学的分析、四人将棋など幅広い発表が行なわれた。都内ということもあって多数の参加者があった。発表件数は10件であった。
2.シンポジウム・小規模国際会議の報告
第6回ゲームプログラミングワークショップを10月26日から28日まで2泊3日の泊り込みで箱根の仙石原セミナーハウスで行なった。約60名の参加者、33件の発表があって 盛況であった。このワークショップは1994年にコンピュータ将棋協会の主催で始まって(国内でゲームの国際会議のないときは)毎年実施されている。本研究会の母体に なった活動で、ゲーム研究の関係者にとって日常的な行事となってきたものと思われる。夜は学生有志によるコンピュータ将棋大会も行なわれた。
3.総括
研究会も発足後3年が経過し、関係者の発表の機会として定着してきた。ものごとをゲームとして捉えるという方法論はますます重要性を増すと思われるので、範囲を広げる努力をさらにしていきたい。
4.その他
情報処理学会として力をいれているentertainment computingについては、今後国内ワークショップの主催組織となるなどして全面的に協力していきたいと考えている。