2020年度研究会活動報告
2020年度研究会・研究グループ活動報告
コンピュータサイエンス領域
◆データベースシステム(DBS)研究会
[主査:天笠俊之,幹事:上田真由美,片山 薫,鈴木伸崇,宮森 恒,
湯本高行,北島信哉,福原知宏,若林 啓]
1.定例の研究会活動報告
第171回,第172回の定例の研究会を開催した.両研究会とも,当初は現地+オンラインによるハイブリッドの開催を計画していたが,COVID-19 の感染状況を踏まえ,完全オンラインで開催した.
第171回研究会は,VLDB2020国際会議と連続開催として,9月5日(土)にオンラインで開催した.これまで9月研究会は,DBS研主催のシンポジウム(WebDBフォーラム)と併設していたが,今年度はVLDB2020と同時期ということもあり,合同研究会のみを開催した.具体的には情報基礎とアクセス技術研究会(IFAT)および電子情報通信学会データ工学研究会(DE)と合同で,2019年度CS領域功績賞受賞記念講演(招待講演)に加えて一般講演6件(DBS 1件,IFAT 1件,DE 4件)の発表があった.
第172回研究会は,電子情報通信学会データ工学研究会(DE)と合同で「データ工学・データベースシステムとエンターテインメントおよび一般」という議題で12月21日(月)-22日(火)にオンラインで開催した.招待講演2件に加えて一般講演14件(DBS 4件,DE 10件)の発表があった.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
DBS研究会では,産学連携をコンセプトとした都市開催のWebDBフォーラムと地方開催のDEIMフォーラムという二つのシンポジウムを開催してきた.上でも述べたように,2020年度はデータベース・ビッグデータ分野のトップ会議の一つであるVLDB(International Conference on Very Large Data Bases)がオンライン(当初は東京を予定)で開催された.VLDBの準備および運営の負荷を考慮し,2020年度はWebDBフォーラムの開催は取りやめとした.
データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIMフォーラム2021)」(3月1日(月)-3日(水))は,関連分野で最大の規模で実施されるシンポジウムである.今回はCOVID-19対応として完全オンラインで実施し,参加者は1,121名であった.招待講演2件,企業による技術報告を含めて341件の口頭発表があった.
◆ソフトウェア(SE)工学研究会
[主査:丸山勝久,幹事:石尾 隆,位野木万里,小川秀人,丹野治門,伏田享平,吉田則裕,鷲崎弘宜]
1.定例の研究会活動報告
第205~207回の研究発表会を計画し,合計61件の研究発表(招待講演・活動報告を含む)があった.
- 第205回 7月2日 オンライン発表15件 (SIGSE/SIGSS連立開催)(2019度23件)
- 第206回 11月27日 オンライン発表14件(2019度9件)
- 第207回 3月1日~2日 オンライン発表42件 (2019度16件)
分野は,要求分析から設計・実装・テストに至るソフトウェアライフサイクル全般にわたっている.社会がソフトウェア化しつつある情勢や技術の隆盛を反映して,従来からのソフトウェアエンジニアリングの話題に加えて,デジタルトランスフォーメーション(DX)や機械学習工学に関する発表が一定数見られた.第206回研究会は南山大学理工学部創立20周年記念 ソフトウェア工学国際講演会と連続開催した.コロナ禍において場所を選ばず発表および聴講可能なオンライン開催方式が定着し,特に第207回は例年に比べて多数の発表があり盛況であった.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2020(SES2020)
2020年9月10日~9月12日の3日間にわたりオンライン開催した.研究論文,実践論文,一般論文,既発表論文,ポスター展示において,数多くの研究発表が行われた.従来からのソフトウェアエンジニアリングの話題に加えて,コロナ禍におけるリモートワークや遠隔講義に関する発表も一定数見られた.他にも,アーキテクチャおよびテレワーク環境に関する2件の基調講演,機械学習工学のチュートリアル,5件の併設ワークショップ,多数の招待講演,ならびに,キャリアトークセッションを企画し,いずれも盛況であった.ポスター展示についてもオンライン上での密なインタラクションの形態を工夫し盛況であった.シンポジウム参加者は,オンライン開催に伴い過去最高の309名となった.参加者アンケートを見ても,いずれの企画も高い有益度と満足度であり,産学の研究者・技術者・実務者による活発な研究発表や議論および交流をすべてオンライン上で進め,場所を選ばずに参加しやすい新たな開催形態を実現できた.セッション外の気軽な交流や懇親機会のオンライン提供については継続的な検討課題である. - ウィンターワークショップ2021・オンライン(WWS2021)
2021年1月19日,21日,22日の3日間にわたり,3つのテーマに分かれてオンラインで研究発表および討論した.オンライン化に伴い場所の制約が取り払われて柔軟に,DXや形式手法,コロナ禍の産学連携といった旬のものを含む様々なテーマで集う機会となった.
3.総括
上記で報告した研究会,シンポジウム,ワークショップに対して,本年度も多くの方の参加を頂くことができ,特にシンポジウムについては過去最高の参加者を得て充実した活動内容となった.他にも,ソフトウェア工学研究会では様々なワーキンググループ(要求工学WG,国際的研究活動活性化WG,学連携促進WGほか)が設置されており,それぞれ活動している.試行錯誤しつつオンライン上での研究発表や交流の形態や知見を蓄積できた点が大きい.
4.その他
今後とも質と量の両面からソフトウェアエンジニアリング分野の活性化につながるように,研究会会員に対するサービスレベルの向上に努めていき,オンライン開催形態の知見を活かして新たなサービス提供も模索し,さらに充実した活動を行っていきたい.
具体的には,プロフェッショナル集団および周辺利害関係者が集う場を形成し,物理空間とデジタル空間が融合した社会におけるソフトウェアエンジニアリング確立に向けた研究,実践,人材育成の深化と拡大を通じて,社会価値を提供し続ける.集う場としては,周辺領域と密に連携しながらソフトウェアエンジニアリング領域のプロフェッショナル集団を形成し,国際会議誘致や国際役職就任などを通じた国際的プレゼンス向上も促進する.研究については,理論研究と事例研究とをあわせ,ソフトウェアエンジニアリングの地平を広げつつ実践へとつなげる.実践については,プラクティスや実践経験を共有および深掘りし,知識,スキル,コンピテンシとして体系化し,ソフトウェア社会における産業発展に貢献するとともにさらなる研究を促す.人材育成については,実証済みの教育や訓練および組織運営成果を共有するとともにプロフェッショナルが高い倫理感および職業意識を持ち社会的地位を高めることに貢献する.
◆システム・アーキテクチャ(ARC)研究会
[主査:井上弘士,幹事:塩谷亮太,今村智,谷本輝夫,新田高庸]
1.定例の研究会活動報告
第233~236回の研究発表会を開催した.基本的にすべての会を IEICE CPSYと共催し,他の研究会と共催・連載する場合も,CPSY と合同でセッションを構成した.
- 第233回 2020/07/30(木)~31(金)オンライン
SWoPP.IEICE CPSY,DC, IPSJ HPC,OS,PRO などと連催、同時・連続開催.若手奨励賞 2件. - 第234回 2020/10/12(火)オンライン
HotSPA.IEICE CPSY,DC と共催・連催.若手奨励賞 1件. - 第235回 2021/1/25(月)~26(火)オンライン
IEICE CPSY,RECONF,VLD,IPSJ SLDM と共催・連催. - 第236回 2021/03/25(木)~26(金)オンライン
ETNET.IEICE CPSY,DC,IPSJ EMB, SLDM と共催・連催.若手奨励賞 1件.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- 2020/07/29(水)に開催された The 4th cross-disciplinary Workshop on Computing Systems, Infrastructures, and Programming (xSIG 2020) を主催した.
3.総括
2019年度に引き続き,2020年度も,基本的にすべての研究会を CPSY と連催とした.また,定期的な研究会以外においても,2017年度からスタートしたxSIG(cross-disciplinary Workshop on Computing Systems, Infrastructures, and Programming)を PRO,HPC,OS 研究会と主催し,積極的に領域を跨いだ議論を展開する場を提供した.研究会活動としては,全て研究会がオンラインとなったが,新しいスタイルでの発表会を模索しつつ,比較的スムーズに運営できた.また,HotSPA では 2019 年度に引き続き「ポストムーアを考える座談会」を開催し,量子コンピューティングにフォーカスしたチュートリアル講演とパネルディスカッションを開催し,量子分野に対するコンピュータ・アーキテクチャの貢献について深い議論を展開し,大いに盛り上がった.このようなイベントを通して,今後もアーキテクチャ研究の活性化ならびに人材育成を進める予定である.
4.その他
2019年度に引き続き,他研究会との連携を進め幅広い議論を展開した.また,幹事団ならびに運営委員からなる組織構成としては,産業界/学術界,専門分野,男女比,など様々な観点から多様性を高めることを意識した.半導体微細化に限界が見えつつある現状において,デバイスからプログラミング,応用までを見据えた分野横断的アプローチの重要性が増している.このような中,我が国においてもコンピューティング技術革新に向けた投資が進みつつあり,システムアーキテクチャ研究会の重要性は高まっていると考える.2021年度は徐々に対面形式での研究会へと移行できることを期待する.引き続き,魅力的な技術交流の場の提供を目指していきたい.
◆システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)研究会
[主査:光来健一,幹事:尾上浩一, 杉木章義,田所秀和,山内利宏]
1.定例の研究会活動報告
第149~151回の研究発表会を開催した.
- 第149回 2020年5月28日(木) オンライン
毎年,沖縄で開催していたが,新型コロナウイルスのためZoomを用いてオンラインで開催した.システムソフトウェア一般について発表を募集し,OS構成法,仮想化・言語処理系,セキュリティ,ネットワーク・効率化について8件の発表が行われた. - 第150回 2020年7月30日(木)~7月31日(金) オンライン
「並列/分散/協調処理に関するサマー・ワークショップ」として複数研究会の共催の形態で開催した.ストレージ,コンテナ・IoT・GPU,並列・分散システム,ストレージ,ネットワークについて15件の発表が行われた. - 第151回 2021年3月1日(月)~3月2日(火) オンライン
システムソフトウェア一般について発表を募集し,分散・ネットワーク,仮想化,セキュリティ,メモリ,仮想化について13件の発表が行われた.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- 第32回 コンピュータシステム・シンポジウム 2020年12月1日(火)〜2日(水)
場所:オンライン
コンピュータシステム・シンポジウムは年に一回,OSやシステムソフトウェアの研究者が集い,研究を進展させる場として重要な役割を担ってきた.今回はコメントフィードバックありの一般論文(カテゴリ1)で6件,フィードバックなしの一般論文(カテゴリ2)で5件,概要のみの口頭発表(カテゴリ3)で5件,ポスター・デモ発表(カテゴリ4)で14件の発表があった.Microsoft Teamsを用いてオンラインで開催したことや事前登録した学生の参加費を無料にしたことなどにより,参加者数が100名を超えた.特別企画として,2件の招待講演と8件のトップカンファレンス・ジャーナル採択論文講演が行われた.
3.総括
システムソフトウェアとオペレーティング・システムの分野の研究発表活動は,実際の情報システムの技術の変化に沿って変遷してきた.最近では,仮想化基盤やクラウドなどの大規模システムが広く使われるものとなっているが,それらの実利用から将来の利用形態までを含めた新しい技術開発に関する研究発表が行われている.2020年度は新型コロナウイルスのためにすべての研究発表会・シンポジウムがオンライン開催となったため,オンラインでの発表の場の提供方法や議論を活発にする方策について試行錯誤してきた.今後はオンライン開催のよさを活かしつつ,ハイブリッド開催の実現に向けて準備を行っていく予定である.
◆システムとLSIの設計技術(SLDM)研究会
[主査:中村祐一,幹事:密山幸男,瀬戸謙修,君家一紀,廣本正之]
1.定例の研究会活動報告
以下に示す第192~194回の研究発表会を開催した.
- 第192回: 発表件数 31件,11月17-18日,オンライン開催
テーマ : デザインガイア2020 -VLSI設計の新しい大地-
連催: VLD/ICD/DC/RECONF研究会
協賛:IEEE CEDA All Japan Joint Chapter - 第193回: 発表件数 32件, 1月25-27日,オンライン開催
テーマ : FPGA応用および一般
連催: 電子情報通信学会 VLD/CPSY/RECONF研究会
合同: 情報処理学会 SIGARC研究会
協賛:IEEE CEDA All Japan Joint Chapter - 第194回: 発表件数 48件, 3月25-26日,オンライン開催
テーマ: 組込技術とネットワークに関するワークショップ ETNET2021
合同:情報処理学会 SIGEMB/SIGARC研究会
連載:電子情報通信学会 CPSY/DC研究会
2.シンポジウム・国際会議等の報告
以下のシンポジウムを開催した.
- DAシンポジウム2020: 9月7日-9月9日,オンライン開催,発表件数 35件
3.総括
本研究会は,システムLSIを中心とする電子装置の設計技術,設計自動化技術の研究分野をスコープとして活動している.2014年度に「システムLSI設計技術研究会」から改称を実施し,それに伴うスコープの拡大により,活動の活性化が進んでいる.
研究会単独主催の「DAシンポジウム2020」は,新型コロナウィルスの影響によりオンラインにて開催となったが,参加者のアンケートからは好評を得ている.参加者数も,昨年(104名)から20%以上増の”127名”となった.研究発表に加え,”企業デモ展示”や”アルゴリズムデザインコンテスト”などを企画している効果もあり,当研究会の活動が支持を得ていることが示されたと考えている.
学生会員育成のための表彰SWGの活動(2006年度創設)は,研究活動の更なる発展に向けた活動として定着し,「DAシンポジウム2020」では新表彰システムを導入,計13名が表彰された.
2008年度に創刊された,研究会独自のオンライン・トランザクション(TSLDM:Transactions on System LSI Design Methodology)は,2020年8月に第25号(Vol.13 August Issue),2021年2月に第26号(Vol.14 February Issue)を発行した.
4.その他
活動履歴や予定の詳細については,下記をご参照ください.
http://www.sig-sldm.org/
◆ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)研究会
[主査:岩下武史,幹事:高橋大介,藤井昭宏,星宗王,竹房あつ子,横田理央]
1.定例の研究会活動報告
2020年度は,第174-178回の研究発表会を開催し,合計86件の発表があった.
- 第174回研究発表会は,5月13日(水)にオンライン開催し,5件の発表があった.
- 第175回研究発表会は,7月30日(木)-31日(金)の2日間,ARC,PRO,及びOSなどの研究会と共同で2020年並列/分散/協調処理に関するサマー・ワークショップ(SWoPP2020)としてオンライン開催され,25件の発表があった.
- 第176回研究発表会は,9月25日(金)にオンライン開催し,8件の発表があった.
- 第177回研究発表会は,12月21日(月)-22日(火)の2日間,オンラインにより開催され,24件の発表が行われた.
- 第178回研究発表会は,2021年3月15日(月)-16日(火)の2日間,オンラインにより開催され,24件の発表が行われた.
これらの研究発表会では,前年度に引き続き,GPUやFPGA等のアクセラレータを用いた高性能計算に関する研究,深層学習や高性能なストレージシステムなど,社会的な要請が強い研究課題に関する発表が目を引いた.また,「富岳」の運用を見据え,Armプロセッサの効果的な利用や効率的な大規模システム運用に資する研究についても報告があった.その他に,2020年度は数値解析に関する発表が例年と比べて多かった.
また,2019年度の研究発表の中から,コンピュータサイエンス領域奨励賞2件,山下記念研究賞2件を推薦した.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
本研究会は,ARC,PRO,OSと共同で,2020年7月にThe 4th cross-disciplinary Workshop on Computing Systems, Infrastructures, and Programming(xSIG2020)を主催した.本シンポジウムは,SWoPP内でオンラインにて開催された.本シンポジウムの特徴は,査読付きの会議であるが,予稿集を作成せず,将来の学術論文誌,国際会議での発表を妨げることなく,むしろそれをプロモートすることにある.また,若手研究者,特に学生の研究活動を支援することに力をいれている.xSIG2020は,元HPC研究会運営委員の滝沢氏が組織委員長を務め,主査の岩下も組織委員に加わって実施された.13件の一般論文発表が行われ,総計で174名の参加者(参加登録者)を得た.
3.総括
HPC研究会は,2020年度に5回の研究発表会をすべてオンラインで実施した.年度当初はオンライン開催に不慣れな登録者が多かったためか発表申込数が低調であったが,年度の後半には従来に近い発表件数が得られた.オンライン開催では,総じて多くの参加者が得られており,部分的な参加が現地開催よりも容易なことから,活発な議論が行われたと考えている.また,Slackを利用した質疑応答も有効に機能しており,研究発表会後も議論が続いている例も散見された.一方で,現地開催の場合に行われている偶発的なアイデア交換の場はオンラインでは形成されにくい印象があった.
HPC分野では,「富岳」の運用が始まり,計算科学分野,計算機科学分野の双方で,大規模HPC環境を効率的に利用するための研究が進んでいる.また,Society 5.0に代表される人工知能・機械学習技術やICTを社会で効果的に活用するための研究が引き続き進められている.このような研究活動では,システムの省電力性能の改善など,HPC研究に期待される研究課題が多い.新型コロナウィルスの影響も懸念されるところではあるが,HPC研究会の研究成果が社会で活用されるように引き続き取り組む必要があると考えられる.
4.その他
HPC研究会では,2018年に打ち出した ① 学生,若手研究者のEncourage,② HPC研究に関する成果の産業応用,計算科学を含む実アプリへの展開の促進 を実施してきた.2021年度以降では,学生発表を対象とした賞の創設,応用物理学会シリコンテクノロジー分科会との連携,研究発表会における招待講演の実施に関して検討を行っていきたいと考えており,引き続きHPC研究会の発展に尽力していく所存である.
◆プログラミング(PRO)研究会
[主査:中野圭介,
幹事:Affeldt Reynald,石崎一明,田浦健次朗,千代英一郎,寺内多智弘,
西田直樹,日高宗一郎,平石拓,松田一孝,森畑明昌]
1.定例の研究会活動報告
第129-133回の研究発表会を開催し,合計44件の発表があった.このうち,第130回(7月,SWoPP 2020)が他研究会との共同開催であり,残りの4回が単独開催である.本年度の研究発表会はいずれも新型コロナウイルスの感染拡大の状況から現地開催を断念し,Zoomの利用によりオンラインで発表会を行った.
令和2年度も,トランザクションプログラミング(PRO)と密着した体制で研究発表会を開催した.トランザクション(PRO)に投稿された論文は,まず研究会で発表され,発表会の直後に開催されるトランザクション(PRO)編集委員会において議論し,査読者を定めて本査読を行なった.学生の発表を促進するなどして研究会を活性化させることを目的に,投稿をともなわない短い発表もあわせて募集している.短い発表は,発表20分,質疑・討論10分としている.それ以外の発表については,例年通り,投稿の有無に関わらず,1件あたり発表25分,質疑・討論20分の時間を確保し,参加者が研究の内容を十分に理解するとともに,発表者にとっても有益な示唆が得られるように務めた.本年度は12件の「短い発表」があった.
発表総数は44件で,そのうち,トランザクションへの投稿件数は20件であった.本稿執筆時点では一部の投稿論文の採否が確定していないため,採択率に関する報告は行わないが,今後とも,編集委員会において査読の観点を論文の欠点を見つけて評価する減点法ではなく,論文の長所を見つけて評価するようにこころがけていく方針である.
若手を対象としたコンピュータサイエンス領域奨励賞の受賞者を2名選出し,第131回研究発表会の場で受賞者およびその研究を紹介した.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
情報処理学会4研究会(ARC,HPC,OS,PRO)の共同主催により,xSIG 2020を,7月29日にオンラインで開催した.
また,日本ソフトウェア科学会インタラクティブシステムとソフトウェア研究会が12月16日〜18日に主催した第28回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ(WISS2020)に協賛した.
3.総括
プログラミング研究会の平成28-令和2年度の発表件数は順に45件,41件,54件,39件,44件であった.研究発表の場が多様化などにより発表件数が減少傾向にある中で,オンライン開催に限定されていたにもかかわらず,令和2年度も例年通りの発表件数があったと言える.
4.その他
令和3年度もこれまで同様に5回の研究発表会を予定している.令和2年度と同様にしばらくはオンライン開催が続くものと思われるが,開催時期の検討,査読方針や編集・査読体制の確認と検討をおこなうとともに,会員にとってより便利で有益な研究会となることを目指したい.
◆アルゴリズム(AL)研究会
[主査:定兼邦彦,幹事:浅野泰仁,鈴木 顕,泉 泰介]
1.定例の研究会活動報告
研究発表会を5回(第178~182回)開催し,全体で34件の発表があった.
- (178回) 令和2年5月9日(土)7件(内振替3件).国立情報学研究所 → オンラインに変更
- (179回) 令和2年9月1・2日(水・木)6件(内振替3件).オンライン
- (180回) 令和2年11月25・26日(水・木)4件.オンライン
- (181回) 令和3年1月28・29日(木・金)5件.オンライン
- (182回) 令和3年3月17日(水)12件.オンライン
このうち,第178回は電子情報通信学会コンピュテーション研究会 (COMP) との連催,第179回は第19回情報科学技術フォーラム(FIT2020)および電子情報通信学会コンピュテーション研究会 (COMP)との共催.第180回は電子情報通信学会の回路とシステム研究会 (CAS) およびシステム数理と応用研究会 (MSS) との連催,第181回は人工知能学会の人工知能基礎問題研究会 (FPAI) との併催である.4研究会との併催は4年前から継続しており,隣接研究分野の研究会と共同での研究会開催が定着している.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- FIT2020ではイベント企画として,併催研究会「理論計算機科学 ~アルゴリズムと計算理論の新潮流~」をCOMPと共催で行った.80名が聴講し活発な議論が行なわれた.
- アルゴリズム研究会では,韓国における同分野の研究コミュニティと連携して,Korea-Japan Joint Workshop on Algorithms and Computation (アルゴリズムと計算理論に関する日韓合同ワークショップを過去20年以上に渡り開催している.本年度は8月29・30日に東京大学本郷キャンパスで実施予定であったが,海外から日本への入国が厳しい状況であったため開催中止とした.
- 協賛という形ではあるが,バングラデシュやインドの研究グループが開催している 国際会議International Workshop on Algorithms and Computationを例年支援しており,今年度も引き続きこれを実施した,会議は2月28日~3月2日にオンラインで開催された.
3.総括
本研究会が研究対象とするアルゴリズムの研究は長い歴史を持ち,また計算機科学における理論的基盤の大きな一翼を担っているが,実応用・社会への波及という観点からは隣接分野への展開もより一層重要となっている,来年度以降も引き続き,連催・併催での研究会や招待講演を通じて応用分野との連携を深めるとともに,国際連携活動も継続していきたいと考えている.
◆数理モデル化と問題解決(MPS)研究会
[主査:関嶋政和,幹事:大上雅史,大久保好章,小谷野仁,佐藤寛之,高田雅美,渡邉真也]
1.定例の研究会活動報告
2020年度は第128回~132回の5回の研究会を開催し、計83件の発表があった。
- 第128回研究会
日時: 2020年6月29日
会場:オンライン(zoom)
バイオ情報学研究会と共催/電子情報通信学会NC研・IBISMLと連続開催、発表件数12件 - 第129回研究会
日時: 2020年7月29日(水)
会場:誌上開催
PDPTAのMPSセッションにて、発表件数11件 - 第130回研究会
日時:令和 2 年 9 月 29 日(火)
会場:オンライン(zoom)
単独開催、発表件数7件 - 第131回研究会
日時:2020 年 12 月 17 日(木)・18日(金)
会場:オンライン(zoom)
単独開催、発表件数29件 - 第132回研究会
日時:2021 年 3 月 1 日 (月)、2 日 (火)
会場:オンライン(zoom)
単独開催、発表件数24件
2.シンポジウム・国際会議等の報告
例年,ラスベガスで開催される国際会議International Conference on Parallel and Distributed Processing Techniques and Applications (PDPTA)内でMPSセッションを実施し,国際会議を通じて研究会のプレゼンスの向上を目指してきた.特に,2020年度はSpringer International Publishingからプロシーディングスが発行(ISBN 978-3-030-69983-3)されるため,参加者には多くのメリットがあると考えていたが,COVID-19の影響によりオンライン&誌上開催となったのは残念であった.
3.総括
緊急事態宣言を受けて,平常は盛況なバイオ情報学研究会との共催(電子情報通信学会NC研,IBISMLとの連催)である沖縄で開催予定であった第128回は,もう少し早くオンラインでの開催を決定しておけば良かったと考えている.これ以降,早めに年度内すべての研究会のオンライン開催を判断したため運営自体は軌道に乗り,特に後半の研究会での発表件数は増加したと考えている.
オンライン化にはメリットとデメリットがあるが,COVID-19のような新興感染症が社会的な問題になっている時にも研究を止めない,という点でアクティビティを維持できたと考えている.また,ライフイベントや授業などの関係で通常は参加しにくい研究者も研究会に参加しやすかったということも考えられ,オンラインと現地開催のハイブリッド化など,COVID-19の問題が終わった後も研究会の発展の為に2020年度の活動を省みたいと考えている.
◆組込みシステム(EMB)研究会
[主査:田中清史,幹事:大川 猛,高瀬英希,久住憲嗣,渡辺晴美]
1.定例の研究会活動報告
第54回~56回の研究発表会を開催.組込みシステムは情報処理各分野の横断的分野であることから,本年度も一部は各関連研究会との共催,およびET&IoT Digital 2020との併設開催として研究発表会を実施した.
- 第54回研究会(6月26日, オンライン):単独開催.招待講演1件,口頭発表5件
- 第55回研究会(12月11日,オンライン):「ET&IoT Digital 2020」との併設開催.招待講演1件, 口頭発表8件(内,新設の「短い発表」2件)
- 第56回研究会 (3月25~26日,オンライン):ETNET2021として,システム・アーキテクチャ研究会,システムとLSIの設計技術研究会,および電子情報通信学会コンピュータシステム研究会,ディペンダブルコンピューティング研究会と共催,口頭発表16件
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- APRIS2020 (11月9日~11月15日)
組込みシステム研究会の運営委員,Prince of Songkla University(PSU)関係者,および豊田通商NEXTYエレクトロニクス(タイランド)株式会社関係者を中心とした共同運営体制で,英語講演による会議をオンラインにより開催した.会議は7日間の開催であり,前半2日間は基調講演・招待講演・研究報告,パネルセッション等からなる本会議,後半5日間は学生や若手技術者がモデルベース設計・チーム開発手法を学びながらロボットコンテストを行う,という内容であった.
前半2日間の本会議では,ロボット・IoT関連の技術に関する講演が行われた.基調講演が1件,招待講演が2件(タイから1名,日本から1名)であった.研究論文発表としては3つのカテゴリを用意し,Regular Paper 発表10件,WIP(Work In Progress) Paper 発表11件,ポスター発表7件があり,口頭発表の合計は21件であった.本会議の参加登録人数は,タイから32名,日本から53名,マレーシアから1名,中国から2名の合計88名であり,活発に研究情報の交流がなされた.
後半5日間はプロジェクト形式(PBL)とし, 学生・若手技術者がモデルベース設計・チーム開発手法を学びながらシミュレータを活用し,知的なドローンのためのソフトウェア開発を行った.オンラインのツールとして,Teams・Zoom・Discordを活用して,各国からの参加者間の交流を促進した.タイからの24名,日本から12名,マレーシアからの1名の合計37名が混合で,5-6人の学生チームを6チーム,企業チームを1チーム作り,Amazon Work Space(AWS)上でRobot Operating System (ROS)とGazeboシミュレータで動くドローンを飛ばし,それぞれのチームがアプリケーション・シナリオを考え,設計開発した.この取り組みは組込みシステムをモデルベース・モデル駆動で設計開発するための技術の向上に資するものであり,文部科学省enPiT-embの教育プログラムの一環として行われた.
3.総括
今年度は,近年の研究活動の国際化を考慮し,これまで例年開催していた組込みシステムシンポジウム(ESS)の開催を見送り,国際会議APRISの開催に一本化し,これに注力した.APRIS2020は3年目の開催であり,コロナ禍の影響が懸念されたが,昨年度に近い論文数を集めることができた.また,研究発表会ではオンライン開催にともない従来のポスター形式発表が困難であったため,「短い発表」のカテゴリを追加し,研究初期段階のアイデアの発表を推奨したことからシンポジウムと研究発表会の棲み分けができるようになった.さらに,研究発表会の場で,当該分野で促進すべき研究・技術の方向性を示す「湯河原宣言2018」について継続した議論ができ,目的を持った活動の場が形成できた.
4.その他
2020年度はコロナ禍の影響で全てのイベントをオンラインで開催したが,対面方式と比較し,知識・技術共有のための交流の場を提供する目的は十分に達成されたとは言い難い.今後は状況を見ながら積極的にハイブリッド形式での開催を検討し,有効な開催方法を確立したい.
その他として,情報処理学会論文誌「組込みシステム工学」特集号を 令和2年8月および令和3年3月に発刊した.(合わせて13件投稿,5件採録)また,情報処理学会誌研究会推薦山下賞1名,CS領域賞1名を推薦した.
◆量子ソフトウェア(QS)研究会
[主査:今井 浩,幹事:小野寺民也,國廣 昇,田中 宗,徳永裕己,西村治道,藤井啓祐,増原英彦,山下 茂]
1.定例の研究会活動報告
- 第1回の研究発表会を開催した.発足記念講演会の翌日にオンライン開催した.27件の口頭発表の申し込みがあり,1件30分の予定を20分に変更して9:00-20:10の開催となった.非会員38名を含む124名の参加申込みがあった.量子ソフトウェアの基礎・応用に係る幅広い分野から発表があり,分野の広がりや可能性を感じさせる初回発表会となった.
- 第2回の研究発表会を開催した.第1回に引き続いてバーチャルで開催することとなった.23件とやはり第1回同様に多くの口頭発表の申し込みがあり,朝9時から夜7時まで研究会を行うことになった.ピーク時に80名以上が聴講するなど,量子ソフトウェアという分野の注目度の高さと研究人口の増加を十分に感じることができた.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
発足記念講演会を10月15日にオンライン開催した.本来は5月開催予定のところ一旦7月に延期し再度10月に延期することになったが,バーチャルながらも無事に開催することができた.「量子ソフトウェアとは何か?」と題しての講演会で,150名以上の参加者があり,10名の講師陣により多方面の話題が取り扱われ,当該分野の大きな可能性を示すことができた.社会情勢を鑑み学生の参加費を無料としたこともあり,収支は赤字となったが,本研究会の知名度の向上と登録会員の増加に寄与したのであり「発足記念」の役割を果たすことができたと考える.
3.総括
本研究会の初年度であったが,コロナ禍に見舞われ,当初5月7月に予定していた発足記念講演会と第1回研究発表会を10月に延期することを余儀なくされたが,2021年3月の第2回研究会も含めて,当初計画されてイベントを開催することができた.運営委員会も6月9月3月と機動的に合計3回開催した.
5月7月のイベントを延期し10月までイベントがなくなってしまったため,初年度の活動エネルギーを失わないように,計画にはなかった月例バーチャルセミナーを急遽開催することとした.5月から合計5回開催し,各回45名前後の参加があり好評だった.
登録会員数は3月4日の時点で111名を数え,また,量子ソフトウェアという分野の特徴から,情報系以外からの参画も多くあり,初年度としては一定の成功を収めたのではないかと考える.
4.その他
2021年度は7月10月3月の計3回の研究発表会を予定している.今井主査の抱負は次の通りである.「量子ソフトウェア研究会は,2020年度に発足した新しい研究会です.量子コンピュータが出現し利用できる環境になっており,ソフトウェアを軸にハードウェアそして情報処理のすべての分野に大きなインパクトを与える研究開発を推進することを目指しています.分野が多岐にわたることから,どうぞ幅広い分野の方が参加されることを期待しています.」
初年度は,2回の研究発表会をそれぞれ1日間ということで計画していたが,予想外にも,第1回は27件,第2回は23件の発表があり,1件あたりの発表がj20分と短いものとなってしまった.そのため2021年度は研究発表会をそれぞれ2日間の日程で計画している.
情報環境領域
◆マルチメディア通信と分散処理(DPS)研究会
[主査:田上敦士,幹事:中沢 実,重安哲也,鈴木理基,福元徳広, 寺西裕一]
1.定例の研究会活動報告
第183-186回の研究発表会を,MBL, ITS, EIP, CSECと合同で開催した.今年度の発表件数は,招待講演を除き53件であっ た.第183回と第186回は,コロナの影響でオンラインで開催した.一方で,第184回と第185回は島根県松江市,鹿児島県鹿児島市においてオンラインと現地を組み合わせたハイブリッド形式で実施した.試行錯誤な点もあったが,今後の研究会の開催形態の1つを示たと考える.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
-
マルチメディア,分散,協調とモーバイルシンポジウム(DICOMO2020)
2020年6月24日(水)から 26日(金)にオンラインにて開催された. DPS関連では,8セッション,30件(招待講演1件を含む)の発表があった.髙井氏(Space-Time Engineering)に「災害対応のデジタルトランスフォーメーションを目指して」というタイトルで招待講演を頂いた. -
マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(DPSWS2020)
今年度で28回目となった本ワークショップは,2020年11月11日(水)から13日 (金)に静岡県伊東市・ホテル暖香園でハイブリッド開催された.合宿形式の学会をハイブリッド開催するということで試行錯誤の中,大きな問題もなく終了した.論文発表22件,デモ発表6件,ポスター発表14件の研究発表を合宿形式で行い,参加者は78名(現地参加51名/オンライン27名)であった.投稿されたすべての論文は,プログラム委員によって並列査読された. - 論文誌「ネットワークサービスと分散処理」特集号
従来の分散処理とネットワークの研究分野にとどまらず,当研究会の研究分野 に関する優れた論文を一括掲載することを目的として特集号を企画し,ゲストエ ディタに菅沼 拓夫先生(東北大学)を迎え2020年2月に発行された.合計27編の 論文が投稿され,4回の編集会議において慎重な審議を経た上で,22件の論文が 採録された(採録率 81.5%).全体として,幅広いテーマ・研究者層の論文を受け入れるという理念と,丁寧な査読により質の向上を図るという方 針の特徴を出すことができたと考える.
3.総括
本研究会では,4回の定例研究会,シンポジウム,ワークショップ,論文誌特集号を通して,研究者相互の交流と研究に対する活発な意見交換の場を提供することができた.特に,ポストコロナを見据え,ハイブリッド開催という新しい研究会/ワークショップの開催形式に関してチャレンジした事,改めて,ご協力頂いた皆様に感謝する.今後も,DPS関連研究者の 更なる研究の活性化を進めていく予定である.
◆ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)研究会
[主査:木村朝子,
幹事:五十嵐悠紀,大槻麻衣,小倉加奈代,草野孔希,志築文太郎,村尾和哉,松村耕平]
1.定例の研究会活動報告
第188~192回の研究発表会を開催した.各回のテーマと招待講演,発表件数等は以下の通り.
- 第188回(オンライン)2020/6/1-2
日本バーチャルリアリティ学会,ヒューマンインタフェース学会SIGDeMO,映像情報メディア学会ITE-SIP,信学会MVEと共催
テーマ:人工現実感,エンタテインメント,メディアエクスペリエンスおよび一般
発表件数:33件(内HCI研17件) - 第189回(オンライン)2020/9/7-8
テーマ:新しいHCIの様式
招待講演:中小路久美代氏(はこだて未来大学)「インタラクティブシステムに関わる研究のフレーミングについて:台所とスキー板とハーバート・サイモン」
発表件数:19件(内1件はHCI187に掲載) - 第190回(兵庫県 淡路夢舞台国際会議場,オンラインのハイブリッド)2020/12/8-9 UBIと共催
発表件数:27件(内HCI研13件) - 第191回(オンライン) 2021/1/28-29
テーマ:価値とインタラクション
招待講演:高橋三徳氏(mercari R4D)「mercari R4D x 価値交換工学」
発表件数:21件 - 第192回(オンライン)2021/3/15-16
発表件数:40件
以上,発表総件数140件(内HCI研110件)
第188回~192回研究会より,以下の15件を学生奨励賞として表彰した:
- 第188回研究会
桑原樹蘭(明治大学)
「無目的なスマートフォン起動タイミングの検出手法の検討」
今井悠平(芝浦工業大学)
「3Dプリンタと転写箔を用いた両面基板の製作手法」 - 第189回研究会
市川佑(筑波大学)
「GUI操作における膝入力の応用可能性の調査」
増井元康 (公立はこだて未来大学)
「PerformEyebrow: 表情拡張可能な人工眉毛デバイスの設計と実装」
又吉康綱(明治大学)
「typing.run: 初学者のプログラミング学習を支援する プログラムタイピングシステムの提案と実践」 - 第190回研究会
斎藤文人(慶應義塾大学)
「垂直方向の加速度の知覚強度を増幅する錯視技法」
吉開一輝(明治大学)
「黒ひげ危機一発と生体反応を用いた他人ごと感実験の試作と検討」 - 第191回研究会
藤次徹也(東京大学)
「布を用いた折り紙に向けた樹脂パターンの配置手法」
清水美玖(明治大学)
「表示タイミングが不明なテンポラルポインティングにおけるエラー率モデル」 - 第192回研究会
飯田楓花(宮城大学)
「プログラミング的思考を育むブロック入力型学習ゲームの開発」
佐藤永虎(宮城大学)
「粉体を素材とした立体物を造形する加工機の開発」
二田悠史(岡山大学)
「敵意を喚起しない行動変容促進を目的とした 諭しおよび警告メッセージの検討」
森屋暁登(金沢大学)
「急速眼球運動の注視点到達予測に基づく情報提示システム」
夏目達也(立命館大学)
「VR空間操作コマンドとしてのアイジェスチャUI特性分析 (1) ~単一アイジェスチャのUI特性分析」
神保一馬(明治大学)
「ダミーカーソル実験における受動的な探索での自身のカーソル特定」
2.シンポジウム・国際会議等の報告
インタラクション2021シンポジウム(2021/3/10-12)をGN研・UBI研・EC研・DCC研と共催した.今回のインタラクションは,DCC研の水野 慎士先生(愛知工業大学)が大会長を務められた.COVID-19流行の影響でオンライン開催となった.ギリギリまで現地とオンラインのハイブリッド開催の実現可能性を模索されたが,最終的にはそれがかなわず,大変残念であった.基調講演としては,大阪大学の前田卓也先生に「AI on Animals: 行動認識技術とバイオロギングの融合による野生動物観測」と題して,動物にセンサデバイスを直接装着するバイオロギングのご研究について講演いただいた.オンライン開催とはなったが,運営委員の皆さんの多大なるご尽力のおかげで,質・量ともにレベルの高いシンポジウムとなった.
3.総括
通常研究会での発表件数は,昨年と同数の件数を維持することができた.また、前述のようにインタラクション2021シンポジウムも,COVID-19流行の中,多くの参加者を迎え,大成功であった.研究会活動は全体として引き続き活発である.
4.その他
2021年度も引き続き研究会の活性化に努める所存である.
◆情報システムと社会環境(IS)研究会
[主査:畑山満則,幹事:居駒幹夫,荻野紫穂,本田正美]
1.定例の研究会活動報告
2.シンポジウム・国際会議等の報告
3.総括
4.その他
◆情報基礎とアクセス技術(IFAT)研究会
[主査:難波英嗣,幹事:熊野正,村上晴美,大島裕明,金沢輝一]
1.定例の研究会活動報告
第139~142回の研究会を開催した.
- 第139回 2020/07/31(金) オンライン開催
- 第140回 2020/09/05(土) オンライン開催
IEICE DE, IPSJ DBSと合同開催 - 第141回 2021/02/13(土) オンライン開催
- 第142回 2021/03/26(金) オンライン開催
IPSJ DCと合同開催
2.シンポジウム・国際会議等の報告
なし.
3.総 括
当研究会は,情報に関する原理を解明し,それに基づいて情報アクセスに関する技術の発展を目的としている.近年は,情報のモデリングや可視化に関する基礎研究,情報検索の技術やシステムに関する応用研究,言語情報の理解に関する人工知能研究,ユーザの情報行動に関する認知科学系の研究などを取り込む学際横断的な研究会へと成長している.そこで,幅広い領域に関係する研究者間の交流を促進するために,2019年度に引き続き,2020年度も当学会ならびに関連学会の研究会と合同による開催を実施した.これにより,当研究会は幅広い領域の研究者間の交流促進に一定の役割を果たしてきたと言える.
4.その他
様々な関連研究会との合同開催は,互いの良い面を引き出して成長を続けることができる反面,両者の位置付けが分かりづらくなるという問題も生じる.当研究会には,「情報基礎(情報に関する原理の解明)」と「アクセス技術」という2つの大きな柱がある.これまで合同開催してきた他研究会は,これら2つの柱のいずれかに関連するものであったが,2つの柱を結びつける研究こそ,当研究会の独自性をより明確にするものであると考える.2021年度は,これまでの研究発表に加え,オーガナイズドセッションや関連する領域の研究者による招待講演などの企画により,「情報基礎」と「アクセス技術」を同時に扱う研究の推進を目指す.
◆オーディオビジュアル複合情報処理(AVM)研究会
[主査:内藤 整,幹事:徐 建鋒,越智大介,金井謙治]
1.定例の研究会活動報告
第109-112回の研究発表会を開催した.
- 第109回研究発表会
日時:2020年6月3日~4日
会場:オンライン開催
連催:電子情報通信学会 スマートインフォメディア研究会(IEICE-SIS)
共催:映像情報メディア学会 立体映像技術研究会(ITE-3DIT)
テーマ:知的マルチメディアシステム,組込み応用システム,立体映像技術,一般
発表件数:12件
AVM賞(AVM最優秀賞1名,優秀賞2名)の受賞式およびAVM最優秀賞受賞記念講演を実施 - 第110回研究発表会
日時:2020年9月1日
会場:オンライン開催
連催:電子情報通信学会 画像工学研究会(IEICE-IE),マルチメディア情報ハイディング・エンリッチメント研究会(IEICE-EMM),ライフインテリジェンスとオフィス情報システム研究会(IEICE-LOIS)
共催:映像情報メディア学会 メディア工学研究会(ITE-ME),電気学会 通信研究会(IEE-CMN)
テーマ:マルチメディア通信/システム,ライフログ活用技術,IP放送/映像伝送,メディアセキュリティ,メディア処理(AI,深層学習),一般
発表件数:13件 - 第111回研究発表会
日時:2020年11月26日~27日
会場:オンライン開催
連催:電子情報通信学会 通信方式研究会(IEICE-CS),画像工学研究会(IEICE-IE)
共催:映像情報メディア学会 放送技術研究会(ITE-BCT)
テーマ:画像符号化,通信・ストリーム技術,一般
発表件数:15件 - 第112回研究発表会
日時:2020年2月26日
会場:オンライン開催
テーマ:人の理解・合成技術と関連技術及びスポーツなどへの応用,画像符号化,マルチメディア情報処理,一般等に関わる技術課題
発表件数:11件
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- 画像符号化シンポジウム,映像メディア処理シンポジウム(PCSJ/IMPS)
日時:2020年11月16日~17日
会場:オンライン開催
主催 電子情報通信学会 画像工学研究専門委員会
共催 映像情報メディア学会 メディア工学研究委員会,電子情報通信学会 信号処理研究専門委員会
協賛:画像電子学会
3.総括
年度は,映像音声に関する符号化,変換,編集,伝送,検索,認識等について定例研究会4件とシンポジウムを開催した。COVID-19の影響を受け,研究会およびシンポジウムはすべてオンライン開催という形態をとった.特に,継続的に学生向けの研究会発表の機会を維持するため,萌芽的研究内容を取り扱う学生セッションを設け若手研究者の参加を促す施策を行った.また,2019年度のAVM研究会発表の中から優秀な若手研究者に対しAVM最優秀賞,AVM優秀賞を授与し,AVM最優秀賞受賞記念講演も開催した.2021年度は,関連研究会とさらに綿密に連携し,当該研究分野全体の活性化に取り組む予定である.
◆グループウェアとネットワークサービス(GN)研究会
[主査:斉藤典明,幹事:市野順子,江木啓訓,岡嶋成司,塩澤秀和,本橋洋介]
1.定例の研究会活動報告
2020年度は以下の通り,第111-113回の研究発表会を開催しました.
- 第111回(2020年5月14日 オンライン開催):発表5件
SPTと共催,電子情報通信学会LOIS研究会と連催. - 第112回(2021年1月25-26日 オンライン開催):発表39件
CDS,DCCと共催. - 第113回(2021年3月15-16日 オンライン開催):発表17件
単独開催.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
2020年度は以下の通り,シンポジウム2回,国際会議1回,ワークショップ1回を開催しました.
- DICOMO2020シンポジウム(2020年6月24-26日 オンライン開催):
発表221件,デモ5件,招待講演・特別講演9件
1997年より開催しているDICOMOシンポジウムは,DPS,MBL,CSEC,ITS,UBI,IOT,SPT,CDS,DCCと共催.
- 第26回コラボレーション技術に関する国際会議(CollabTech2020)(2020年9月8-11日 オンライン開催)
発表20件
2005年に第1回を開催し,これまでCRIWGと併設して開催してきたが,2019年からCRIWGと統合して開催.
国際会議CollabTech 2020は、オンラインで開催され、58人が参加した.
今回、このような研究分野における論文発表(Full paper 10件、Work-in-Progress paper 5件)およびポスター発表(5件)を通じて,当該分野の学術的発展に寄与するとともに,各国から参加した研究者に意見交換の場を提供することができた.
- グループウェアとネットワークサービスワークショップ2020(2020年11月20日 オンライン開催):
発表12件(査読付き論文2件、一般論文4件,ポジション6件)
2004年に第1回を開催して以来,GN研究会ならではの発表の場を提供するべく開催しています.質の高い研究成果の報告を得ると同時に,研究の芽や方向性に関する報告など,ワークショップにふさわしい多様な研究報告が行われました.今年度は,新型コロナ感染症対策でオンラインで開催しましたが.今年度の状況を反映した研究の他,魅力ある研究発表が多数されました.
- インタラクション2021(2021年3月10-12日 オンライン開催):
招待講演1件,一般講演15件,インタラクティブ発表 173件)
1997年より開催しているインタラクションシンポジウム.HCI,UBI,EC,DCCと共催.
今回で25回目となる「インタラクション2021」は,招待講演,登壇発表,実機の展示デモンストレーションを行うインタラクティブ発表(デモ),および前回からの引き続きである発表者と参加者との議論を目的としたインタラクティブ発表(ポスター)で構成された.登壇発表15件(インタラクション特集号からの招待4件を含む)と,インタラクティブ発表(デモ)116件,インタラクティブ発表(ポスター)57件が採択され,すべてオンラインで開催した.
3.総括
当研究会は,1993年度の発足以来,グループウェア技術に関して,理論から応用,情報科学から社会科学,と幅広い学際的研究活動を活発に推進してきました.この間,Webなどのグループウェアの実用化が急速に進みました.この動向を踏まえて,2001年度より,研究会名称をグループウェアとネットワークサービス研究会へと変更し,現在ではネットワークアプリケーション,インターネットサービス,ゲーミフィケーション,コラボレーション支援などの広い研究分野をカバーしています.
例年,定例研究会を開催する以外にも,泊まり込みのワークショップ(GNワークショップ),2016年度から毎年開催となっている国際会議,2回の研究会合同シンポジウム(DICOMO,インタラクション)を主催しています.今年度,新型コロナウィルス感染症対策で,活動のすべてがオンラインになりました.
ジャーナル特集号を発行しており、令和2年度特集号においても多くの原著論文を採録しました.
4.その他
研究会関連メンバへのサービスとしては,平成13年4月から毎月メーリングリストによるニュースレターの発行を継続しており,現在約200名がメーリングリストに登録されています.
◆ドキュメントコミュニケーション(DC)研究会
[主査:秋元良仁,幹事:大場みち子,中挾知延子,藤原琢也]
1.定例の研究会活動報告
今年度は,23件の研究発表,2件の招待講演,2件のミニセッションを実施した
- 第117回研究会
日時:令和2年7月10日(金)
場所:オンライン開催(Zoom)
電子情報通信学会ライフインテリジェンスとオフィス情報システム研究会(LOIS)と連催
テーマ:ライフログ活用技術、オフィス情報システム・ドキュメントのデジタル化・行動認識/行動推定と情報通信システムおよび一般 - 第118回研究会
日時:令和2年10月2日(金)
場所:オンライン開催(Zoom)
テーマ:ドキュメントコミュニケーション分野一般 - 第119回研究会
日時:令和2年12月11日(金)
場所:オンライン開催(Zoom)
テーマ:多様化時代のドキュメントコミュニケーション ~求められるアクセシビリティーの現状と今後~ - 第120回研究会
日時:令和3年(2021年)3月26日(金)
場所:オンライン開催(Zoom)
情報処理学会情報基礎とアクセス技術研究会(IFAT)との連催
テーマ:ドキュメントコミュニケーション分野一般
2.シンポジウム・国際会議等の報告
令和二年度は実施なし.
3.総括
本研究会は,デジタルドキュメントをコミュニケーションの媒体として,それらを取り巻く多様な課題について研究活動を実施している.
研究会登録者・参加者の増加をめざして,定例研究会において,電子情報通信学会 ライフインテリジェンスとオフィス情報システム研究会(LOIS),情報処理学会情報基礎とアクセス技術研究会(IFAT)との連催を実施した.他研究会・団体との情報交換を活発に実施する事ができ,有意義な研究活動をすることができた.
また,新型コロナウイルス感染症への対策として,全定例研究会をオンライン形式で開催.ミニセッションとして各地に分散するメンバーが有機的・効率的に連携するためのドキュメントの在り方について議論を展開した.加えて,議論はオンラインツールを用いてリアルタイムに可視化し,情報共有をする試みも実施した.
オンライン形式に移行したことで,研究会参加が容易になった反面,研究会企画に魅力がないと参加増加につながらないこともわかってきた.
今後は,参加者増加につながる企画として,オンラインにおけるドキュメントコミュニケーションの在り方等,ドキュメント利活用に関する新企画を立案し,研究会の活性化を検討していきたい.
4.その他
活動履歴や今後の活動予定については,下記をご参照ください.
http://sigdd.sakura.ne.jp/index.php
◆モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム(MBL)研究会
[主査:太田 賢,幹事:山口高康,平井規郎,梶 克彦,吉廣卓哉,山口弘純,上坂大輔]
1.定例の研究会活動報告
第95-98回の研究発表会を開催した.
- 第95回研究発表会 5月28日 オンライン開催
共催:情報処理学会マルチメディア通信と分散処理研究会(DPS),高度交通システム研究会(ITS)
連催:電子情報通信学会センサネットワークとモバイルインテリジェンス研究会(SeMI) - 第96回研究発表会 9月29,30日 オンライン開催
共催:情報処理学会コンシューマ・デバイス&システム研究会(CDS),ユビキタスコンピューティングシステム研究会(UBI),高齢社会デザイン研究会(ASD)
連催:第8回学生スマートフォンアプリコンテスト
優秀論文,優秀発表,奨励発表の表彰式を実施 - 第97回研究発表会 11月24〜26日 オンライン開催
共催: 情報処理学会高度交通システムとスマートコミュニティ研究会(ITS) - 第98回研究発表会 3月1日,2日
共催:情報処理学会ユビキタスコンピューティングシステム研究会(UBI)
連催:電子情報通信学会センサネットワークとモバイルインテリジェンス研究会(SeMI)
本年度の定例研究会は計画通り4回実施した.MBL枠で申し込みされた発表件数(招待講演除く)は 67 件(5月: 1件,DICOMO: 31件,8月: 8件,11月: 12件,3月: 15件)であり,活発な研究発表が行われている.2020年度は優秀論文2件,優秀発表4件,奨励発表2件,WiP奨励賞2件を選出し,研究発表の奨励と会員拡大に努めている.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2020)シンポジウム
6月24~26日 オンライン開催
共催:情報処理学会マルチメディア通信と分散処理(DPS)研究会、グループウェアとネットワークサービス(GN)研究会、コンピュータセキュリティ(CSEC)研究会、高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS)研究会、ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)研究会、インターネットと運用技術(IOT)研究会、セキュリティ心理学とトラスト(SPT)研究会、コンシューマ・デバイス&システム(CDS)研究会、デジタルコンテンツクリエーション(DCC)研究会
- 論文誌特集号の発行・企画
MBL/ITS特集号:2021年1月号
MBL/ITS両研究会の共同企画による論文誌特集号は2001年7月号以来20回目の発行となる.
今回は14件の投稿があり最終的に9件を採録した.採録論文の内訳は,行動認識 3 件,位置推定 2 件,経路推薦・施 設検索 2 件,車載ソフト 1 件,広告関連技術 1 件であり,この分野の注目されている研究テーマをカバーしており,本特集号の趣旨にふさわしい内容となった.
3.総括
2020年度は,MBL運営委員会の活動の元,4回の定例研究会の他,シンポジウムを開催し,論文誌特集号の企画を滞りなく進めた.これにより,モバイルコンピューティング技術の発展に寄与するとともに,国内外の研究者相互の交流ならびに大学と産業界の連携のための意見交換の場を積極的に提供することができた.今後とも,これらの交流で得た研究者間の関係をベースに本研究会をさらに発展・充実させたい.
◆コンピュータセキュリティ(CSEC)研究会
[主査:山内利宏,幹事:須賀祐治,森 達哉,大木哲史,大東俊博,林 卓也,井口 誠]
1.定例の研究会活動報告
第89回~第92回の研究発表会を開催した.
- 第89回 2020年 5月14日~15日(オンライン,発表21件)
合同開催:IOT研究会
連催:情報通信マネジメント研究専門委員会(ICM) - 第90回 2020年 7月21日~22日(オンライン,発表34件)
合同開催:SPT研究会
連催:情報セキュリティ研究専門委員会(ISEC),
連催:技術と社会・倫理研究専門委員会(SITE),
連催:情報通信システムセキュリティ研究専門委員会(ICSS),
連催:マルチメディア情報ハイディング・エンリッチメント研究専門委員会(EMM),
連催:ハードウェアセキュリティ研究専門委員会(HWS),
連催:バイオメトリクス研究専門委員会(BioX) - 第91回 2020年11月25日~26日(オンライン,発表37件)
合同開催:SPT研究会,EIP研究会 - 第92回 2021年3月15日~16日(オンライン,発表73件)
合同開催:DPS研究会
各研究発表会ごとに数件のCSEC優秀研究賞を授与した.また,推薦論文制度の規程にもとづき対象論文の推薦を行った.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- コンピュータセキュリティシンポジウム2020(CSS2020):
セキュリティ心理学とトラスト研究会(SPT)との共催で,マルウェア対策研究人材育成ワークショップ2020(MWS2020),プライバシーワークショップ2020(PWS2020),ユーザブルセキュリティワークショップ2020(UWS2020),OSSセキュリティ技術ワークショップ2020(OWS2020)と併催の形で,10月26日~29日にオンラインにて開催した.CSS全体の参加者数は759名,投稿数は177件であり,オンライン開催であるにも関わらず昨年度の798名から参加者数は微減程度であった.優秀な論文に対しては,CSS,MWS,PWS,UWSの各論文賞やCSS奨励賞を授与した.また,セキュリティ分野の著名な研究者を招いた基調講演を設けた. -
15th International Workshop on Security(IWSEC2020):
今回で15回目の開催となる国際会議であり,電子情報通信学会情報セキュリティ研究専門委員会(ISEC)との共催で,オンラインにおいて2020年9月2日~4日の日程で開催した.14件のポスター発表に加え,48件の投稿論文からRegular paper 16件(採択率33%)の非常にレベルの高い論文を精選し,充実した内容の論文集が作成された(Springer LNCSシリーズで出版).日本を含む9ヶ国から計78名の参加者がオンラインから参加し,国際色豊かな会議となった.また,昨年に続き本会議から特に優れた論文を情報処理学会論文誌に推薦論文として推薦した. -
マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2020)シンポジウム:
10の研究会が集い幅広い分野をカバーしたシンポジウムとして,2020年6月24日~26日にオンラインで開催した.CSECのセッションとしては, 認識・認証,プライバシ・匿名化,分析,暗号技術,CSEC/SPT合同セッション,セキュリティ応用を設けた.また,CSECの20件の発表から,2件の優秀論文賞が授与された. -
論文誌「特集:実社会を支える暗号・セキュリティ・プライバシ技術」
実社会を支える暗号・セキュリティ・プライバシ技術をテーマとした特集号を企画した.40件の投稿から22件(英語論文は7件)の論文を採録し,2020年9月に発行した.2021年9月発行の予定で次の特集号「Society5.0を実現するコンピュータセキュリティ技術」を企画し,編集作業を進めている.
3.総括
CSEC研究会登録者数は研究会会員数約600名を本年度も引き続き保っている.定例研究会の発表件数は新型コロナウイルス感染症の影響に伴い,前期での減少が見られたものの,後期において増加し,最終的には例年以上の合計発表件数となった.国内シンポジウムCSS2020はオンライン開催となり参加者数の低下が見込まれたが,4日間の開催期間を通じて昨年度同様の参加者数を保った.
国際会議IWSEC2020はオンラインに伴う参加者減があったものの,多くの国からの参加者があり,また引き続き質の高い論文投稿が多く集まっている.また,研究発表会において,2020年度もサイバーセキュリティの研究倫理に関する企画セッションを開催し,その活動を支援している.
総じて,新型コロナウイルス感染症に伴うオンライン化への対応は成功していると言え,来年度も本研究会の活動を更に活性化させるための施策を継続していく.また,本研究会の活動に留まらず,我が国のコンピュータセキュリティ分野全体の発展への貢献に努めていく.
◆高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS)研究会
[主査:重野 寛,幹事:石田繁巳,石原 進,川井 明,花房比佐友]
1.定例の研究会活動報告
定例研究会は,以下の通り,4回開催した.
- 第81回ITS研究会:2020年5月28日(木)/オンライン(Zoomを利用)
DPS研究会研究会(合同),MBL研究会(合同),信学会SeMI研究会(連催)と連携して開催した.当初,石垣市での開催を計画していたが,新型コロナウイルス感染症への対策のため,オンライン開催に変更した.この変更にともないSeMI研究会は別日程(6月18日)で開催された.全体で8件の研究発表があり,活発な議論が行われた. - 第82回ITS研究会:2020年9月8日(火)/オンライン(Zoomを利用)
信学会ITS研究会(連催),電気学会ITS研究会(共催)と連携して開催した.全体で6件の研究発表があり,活発な議論が行われた. - 第83回ITS研究会(WiP・一般講演):2020年11月24日(火)~25日(水)/オンライン(Zoomを利用)
MBL研究会(合同)と連携して開催した.14件のWork-in-Progress (WiP)発表と10件の研究発表(一般講演)が行われた.初日はオンラインでのナイトディスカッションも実施され,研究に関する議論とともに,気軽な研究者や学生の間の気軽な交流の場となった.会期全体を通じて活発な議論が行われた. - 第84回ITS研究会:2020年3月9日(月)/オンライン(Zoomを利用),金沢港クルース前ターミナル・セミナールーム
ITS研究会単独でオンラインとオンサイトのハイブリッドで開催した.全体で7件の研究発表があり,活発な議論が行われた.今回の研究会は金沢での開催を予定していたが,参加者全員が集まっての開催が難しくなったため,ハイブリッド開催とした.オンサイトとオンラインをまたいでの活発な議論が行われた.
定例研究会の各回での講演を評価して,優秀な論文や発表を選定している.2020年度全体を通じて,研究会優秀論文4件,研究会優秀発表4件,研究会奨励発表1件を選定した.
定例研究会では自動車や二輪車に関連する通信とセンシング,自動運転や協調走行,交通の予測や制御に関する研究報告が増えてきている.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- ITS研究フォーラム:2021年1月22日(金)/オンライン
「ポストコロナ・ウィズコロナ時代のMobility As A Service (MaaS)」をテーマとして、6件の招待講演を行った。今回のテーマは前回の「Mobility As A Service最前線」を踏襲したものであり,講演者も同じ方にお願いした.コロナ禍前後で大きく変化した人々の移動とMaaSの動向,それを支える情報通信技術について議論する場とした.また,ひとつの試みとして,多くの方に参加いただきやすいというオンライン開催の特徴を生かすために参加費を無料とした.このこともあり,参加者は286名と大変な盛況となった.注目度の高いテーマでもあり,活発な質疑応答が行われ,全体として充実したシンポジウムとなった. - マルチメディア、分散、協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2020):2020年6月24日(水)~26日(金)/オンライン(Zoomを利用)
本シンポジウムは,DPS,GN,MBL,CSEC,ITS,UBI,IOT,SPT,CDS,DCCの合同よる大規模なシンポジウムである.統一テーマ「アフターデジタル ~人中心に全てがつながる情報技術~」を掲げ,特別講演1件,招待講演8件を含め,221件の研究発表が8パラレルセッションをオンラインで実施した.幅広い分野の研究者の間で活発な議論が行われた.ITS研究会関連では,4セッション,15件(招待講演1件を含む)の発表があった.池田大造氏(NTTドコモ)に「モバイル空間統計の活用事例」の題目で招待講演を頂いた. ITSに関係する多くの研究者がこのシンポジウムに参加し,交流を深めた. - 論文誌特集号「5G時代の社会を創るモバイル・高度交通システム」(令和3年1月発行)
MBL研究会と ITS研究会に関わる分野の論文を一括掲載することにより,この分野の研究をさらに推進し,その発展に寄与することを目的として,MBL研究会との共同で論文誌特集号を企画した.ゲストエディタに太田賢氏(NTTドコモ)を迎え,当研究会の幹事や運営委員も編集委員会として参画した.14件の投稿があり,慎重な審議の結果,最終的に10件を採録した(採択率64%).採択された論文のテーマは行動認識,位置推定,経路推薦・施設検索,車載ソフトなど多岐に渡る.本特集では,招待論文として内山彰氏(大阪大学)にワイアレスセンシングシステムによるコンテキスト認識の研究開発動向に関するサーベイ論文の寄稿をいただいた.全体として,最新の研究成果をタイムリーに発表する場を提供できた.
3.総括
ITS研究会では,4回の定例研究会,シンポジウム,研究フォーラム,論文誌特集号を通して,高度交通システムとスマートコミュニティに関わる研究者の交流と意見交換の場を提供することができた.研究会やシンポジウムは,新型コロナウイルスへの対策からオンライン開催となり,発表件数も例年に比べ少なかったものの,オンライン会場での議論や質疑応答は活発に行われた.本研究会が対象とする領域は広く,また社会的な注目も高いことから,さらに多くの研究者との交流の場となり,本分野の研究の活性化に貢献していきたいと考える.皆様の積極的なご参加とご協力をお願いしたい.
◆ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)研究会
[主査:井上創造,幹事:榎堀 優,岸野泰恵,清田陽司,中澤 仁,前川卓也,村尾和哉,米澤拓郎,渡邉拓貴]
1.定例の研究会活動報告
第66-69回の研究発表会を開催した.
- 第66回研究発表会 2020年5月25日(月)~5月26日(火),オンライン
※2019年度UBI研究会優秀論文賞・学生奨励賞表彰式を開催
※2019年度UBI研究会国際発表奨励賞(後期)の受賞者による国際会議発表・参加報告を実施
※コロナ禍対策としてオンライン開催へ変更 - 第67回研究発表会 2020年9月29日(火)~9月30日(水),オンライン
※共催:高齢社会デザイン(ASD)研究会
※共催:コンシューマ・デバイス&システム(CDS)研究会
※共催:モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム(MBL)研究会 - 第68回研究発表会 2020年12月8日(火)~9日(水),淡路島夢舞台 (オンラインハイブリッド開催)
※共催:ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)研究会
※2020年度UBI研究会国際発表奨励賞(前期)の受賞者による国際会議発表・参加報告を実施 - 第69回研究発表会 2021年3月1日(月)〜3月2日(火),オンライン
※共催:モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム(MBL)研究会
※連催:電子情報通信学会 センサネットワークとモバイルインテリジェンス (SeMI) 研究会
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2020)シンポジウム
2020年6月24日(水)~26日(金) オンライン
※共催:マルチメディア通信と分散処理(DPS)研究会,グループウェアとネットワークサービス(GN)研究会,モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム(MBL)研究会,コンピュータセキュリティ(CSEC)研究会,高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS)研究会,ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)研究会,インターネットと運用技術(IOT)研究会,セキュリティ心理学とトラスト(SPT)研究会,コンシューマ・デバイス&システム(CDS)研究会,デジタルコンテンツクリエーション(DCC)研究会 - インタラクション2021
2021年3月10日(水)~12日(金),オンライン
※共催:ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)研究会,グループウェアとネットワークサービス(GN)研究会,エンタテインメントコンピューティング(EC)研究会,デジタルコンテンツクリエーション(DCC)研究会
3.総括
2020年度も4回の定例研究発表会を開催した.令和2年度も,他分野や産業界との連携および,研究会内での学術的連携に力を入れた.前者としては,他研究会や他学会との研究会共同開催,東京ビッグサイトで開催された展示会への出展を通じて,本研究会関係者に対して多様な機械を創出できた.後者については,研究会内で運営委員によるショートプレゼンテーションを行い,互いに研究の方向性や興味を知る良い機会となった.
研究会としても,分野を盛り上げるために,研究発表会での発表から,5件の優秀論文賞と,7件の学生奨励賞を選出した.また,国際発表奨励賞について,今年度は昨年の4件を大幅に超える,2名の学生に対してユビキタスコンピューティングシステム関連国際会議への参加をサポートし,有力国際会議における本研究コミュニティのプレゼンス向上につながった.
4.その他
本研究領域における国際的なプレゼンスをさらに高めるために,学生や若手研究者の活躍に寄与する施策を推進する.特に,MBL研究会やCDS研究会と共同して開催する学生スマートフォンアプリコンテストや,若手研究者による招待講演,引き続き実施する各章の授与はこれにあたる.
産業界との接合を強力化するために,民間企業を研究会に引き込む施策を実施する.具体的には研究会に協賛制度を構築し,より多くの若手研究者を支援する仕組みやより良いジェンダーバランスに寄与しうる仕組み等を検討し,企業と大学の情報交換を緊密にする.
これまで10回以上にわたって継続している論文誌特集号は引き続き実施し,本分野の研究成果蓄積を狙っていきつつ,そうした成果が著名国際会議での発表につながるような施策を検討していく.
◆インターネットと運用技術(IOT)研究会
[主査:宮下健輔,幹事:池部 実,石橋勇人,佐藤 聡,中村素典,西村浩二,松本亮介,村上登志男]
1.定例の研究会活動報告
以下に示すように第49~52回の研究発表会を開催した.
- 第49回 5月14日(木)~15日(金)
場所:オンライン開催
発表件数:一般8件(IOT48からの発表移行1件含),企画セッション3件(全体:一般21件,企画セッション4件)
※コンピュータセキュリティ(CSEC)研究会と共催
※電子情報通信学会情報通信マネジメント(ICM)研究会と連催 - 第50回 7月10日(金)
場所:オンライン開催
発表件数:一般8件,招待講演2件 - 第51回 9月3日(木)〜4日(金)
場所:オンライン開催
発表件数:一般7件,招待講演1件(全体:一般11件,招待講演1件)
※情報セキュリティ心理学とトラスト(SPT)研究会およびオープンサイエンスと研究データマネジメント(RDM)研究グループと合同 - 第52回 3月1日(木)~2日(金)
場所:オンライン開催
発表件数:一般17件,招待講演1件(全体:一般34件,招待講演1件)
※電子情報通信学会インターネットアーキテクチャ(IA)および技術と社会・倫理(SITE)研究会と連催
いずれの研究会においても,情報教育関連,インターネット運用技術,分散シ ステム運用技術,ネットワーク構築,セキュリティ,性能評価など,幅広いテーマで議論が行われた.今年度はCOVID-19への対処として,すべての研究会をオンライン開催に変更して対応した.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- 第13回インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2020)
本シンポジウムは,「『新しい生活様式』を見据えたシステム運用管理を求めて」というメインテーマのもと,12月3日(木)~4日(金)にオンラインで開催された(後援:京都大学学術情報メディアセンター,京都女子大学現代社会学部,電子情報通信学会インターネットアーキテクチャ(IA)研究会,ACM SIGUCSS Tokyo Chapter).当初は京都大学にて開催する予定であったが,本シンポジウムのテーマとも関連するCOVID-19の状況を鑑み,IOT研究会初の完全オンラインによるシンポジウムとなった.
講演数は招待講演1件,一般講演(査読あり)12件,ポスターセッション(査読あり)14件(計27件)であった.一般講演は19件の論文の投稿があり,査読の結果12件を採択した.招待講演では,中村眞氏(奈良市CIO)に,「いちばん古い奈良で、いちばん新しい教育を!」と題して「GIGAスクール構想の実現における新型コロナが教えてくれた課題と実現」に関する講演をいただいた.
シンポジウム併設企画として企業展示を実施し,20社から出展をいただいた.企業展示には初期段階からIOT研究会と意見交換を繰り返し開発がなされたオンライン展示システム(frAAAt)を用い,オンラインでの企業展示を成功させた.なお,IOTS2016から開始した参加企業による「冠賞」も継続して実施し,今年は2社から発表者に受賞が行われた.
シンポジウム参加者数は,1日目は81名,2日目は79名(のべ147名:一般参加95名(一般申込者100名))と非常に多くの参加となり,1日目終了後のオンライン意見交換会も盛況に執り行われた.今回のシンポジウムは,学生による発表が多かったことが特徴的であり,加えて,例年同様に研究の先駆けとなるような興味深い発表が行われ,有意義な内容となった. - マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2020)
本シンポジウムは6月24日(水)~26日(金)にオンラインにて本研究会を含む10研究会の共催により開催された.本研究会に関連したテーマで5つのセッション(一般12件,招待講演1件)が開催された.招待講演として,菊地俊介氏(さくらインターネット)に「クラウドをエッジに延伸せよ - エッジコンピューティング実現にむけたさくらインターネットでの取り組み -」と題して講演をいただいた. - The 8th IEEE International Workshop on Architecture, Design, Deployment and Management of Networks & Applications(ADMNET2020)
本ワークショップはIEEE Computer Societyが主催し本会が後援する国際会議COMPSAC2020の一部として7月13日(月)にLivestreamイベントとして開催された. - 第10回災害コミュニケーションシンポジウム
本シンポジウムは,12月25日(金)にオンラインにて,セキュリティ心理学とトラスト(SPT)研究会および情報システムと社会環境(IS)研究会と共催し,災害時の情報共有や課題などについて情報交換を行った.講演は一般8件(基調講演4件を含む)であり,本シンポジウム10年目を迎えての意見交換をパネルディスカッションにて開催した. - 論文誌「快適な運用管理を支えるインターネットと運用技術」特集
本特集号では前年末のインターネットと運用技術シンポジウム(IOTS)との連携を図っている.今回は「快適な運用管理を支えるインターネットと運用技術」をテーマとした.本特集号には13編の投稿があり,5編を採録した(採択率38.5%).今年度の取り組みとして,論文募集に先立って論文執筆アドバイスを行う取り組みを実施したが,残念ながらアドバイスを行った投稿論文がすべて不採録となる結果に至った.修正期間が十分に設けられなかったなどの原因が考えられたため,数ヶ月前倒しした形で次年度以降はアドバイス制度を試みることとしている. - 論文誌デジタルプラクティス「快適な運用管理を支えるインターネットと運用技術」特集
論文誌特集号と同じテーマによる論文誌トランザクションにおける特集号を企画した.本特集号には4編の投稿があり,2編が条件付き採録に至っている.特集号論文誌と連携することで,新規性が乏しいことで論文誌で採録に至らなかったが有用性の高い論文をトランザクション論文誌に推薦することが可能となり,有用性の高い論文の公表を促進できると期待できる.
3.総括
IOT研究会では,従来から計算機・ネットワーク運用技術に関する優れた研究を高く評価し,それらを論文化したり国際的に発表したりすることを推奨している.計算機やネットワーク運用上のベストプラクティスに関する研究発表に対する藤村記念ベストプラクティス賞(2015年度創設)を今年度も授賞し,ディジタルプラクティスへ推薦論文として投稿を促している.またIOT研究会元主査や幹事,運営委員が中心となって2014年度に設立したACM SIGUCCS東京支部も本研究会と連携して活動しており,このような研究活動をますます促進している.さらに第47回研究会からは,データマネジメントの重要性に鑑み毎年秋の研究会をオープンサイエンスと研究データマネジメント(RDM)研究グループとの合同での開催とすることとした.
今年度の研究会およびシンポジウムはすべてオンラインでの開催となり,他研究会との運用知見の共有により洗練された運用が行える環境を構築できている.次年度以降も,オンライン参加の需要が継続して求められることを鑑み,現地開催と併用したハイブリッド型研究会の開催を標準化し,様々な参加形態に対応した研究会運用を確立したいと考えている.
◆セキュリティ心理学とトラスト(SPT)研究会
[主査:金岡 晃,幹事:坂本一仁,斯波万恵,毛利公一]
1.定例の研究会活動報告
2020年度は,第37回~第41回の研究発表会を開催ならびに企画した.
- 第37回 2020(令和2)年05月14日(木) オンライン
- 第38回 2020(令和2)年07月20日(月)~07月21日(火) オンライン
- 第39回 2020(令和2)年09月03日(木)~09月04日(金) オンライン
- 第40回 2020(令和2)年11月25日(月)~11月26日(火) オンライン
- 第41回 2021(令和3)年03月01日(月)~03月02日(火) オンライン
2.シンポジウム・国際会議等の報告
2020年度は,次のシンポジウム,論文誌ジャーナル特集号,研究会企画を実施した.
- マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2020)シンポジウム(共催)
2020(令和2)年06月24日(水)~06月26日(金) オンライン - コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS)2020(共催)/ユーザブルセキュリティワークショップ(UWS)2020
2020(令和2)年10月26日(月)~10月29日(木) オンライン - 第10回災害コミュニケーションシンポジウム(共催)
2020(令和2)年12月25日(金) オンライン - 論文誌「ユーザブルセキュリティ」特集号
2020年12月発行 - ユーザブルセキュリティ・プライバシ(USP)論文読破会4
2020(令和2)年11月27日(金) オンライン - GN/SPT合同企画オンライン研究報告会
2020(令和2)年05月15日(金)
3.総括
2020年度は,主査が代わり新たな体制として進めていく中,COVID-19の影響で全てのイベントがオンラインになりその対応に試行錯誤した年であった.新たなイベントや分野推進に先立ち,COVID-19状況下でも安定した研究会活動を進めるべく活動した.
4.その他
2021年度は,オンライン研究発表会への対応やハイブリッド開催の検討を進める.また,今後のSPT研究会の運営安定化を狙い,各種ドキュメントや連絡手段の再整備に着手する.COVID-19の影響により再びオンサイトでのイベント開催が可能になるタイミングを伺いつつ,2020年度で培ったオンラインノウハウを活かしたより充実した研究会活動を推進する.引き続き,会員及び関係者の方々には積極的な論文投稿と参加をお願いしたい.
◆コンシューマ・デバイス&システム(CDS)研究会
[主査:森信一郎,幹事:杉村 博,齊藤義仰,神山 剛、高橋秀幸、花田雄一、樋口 毅、峰野博史]
1.定例の研究会活動報告
第28-30回の研究発表会を開催した.
- 第28回研究発表会 2020年9月29日-9月30日、オンライン開催 発表33件
※共催:MBL,UBI,ASD研究会
第8回学生スマートフォンアプリコンテスト,優秀発表賞,学生奨励賞の表彰式を実施 - 第29回研究発表会 2020年12月3-4日,オンライン開催 発表10件(招待講演1件)
- 第30回研究発表会 2021年1月25〜26日,オンライン開催 発表39件(招待講演1件)
※共催:GN,DCC研究会
本年度は,コロナ影響を受け,例年通りの計画を大きく変更しながらも,当初予定の研究発表会を3回開催することができた.全回ともオンライン開催ではあったが,企業,大学からコンシューマ・デバイスとシステムに関する幅広い分野の発表があり,活発な議論が行われ盛況であった.また,第8回学生スマートフォンアプリコンテストを開催し,10チームの学生が2回の審査を経て受賞することができた.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO2020)シンポジウム,2020年6月24日~26日, オンライン開催
※共催:DPS,GN,MBL,CSEC,ITS,UBI,IOT,SPT,DCC各研究会 - IEEE COMPSAC 2020: CDS 2020 (The 8th IEEE International COMPSAC Workshop on Consumer Devices and Systems held in conjunction with COMPSAC2020, 2020年7月13日-17日 Livestream.
- 情報処理学会論文誌:コンシューマ・デバイス&システムの発行状況
Vol.10(2020) 計12編
3.総括
2020年度は,コロナ感染拡大の影響を大きく受け,当初計画を大幅に変更しながらも,例年どおり3回の研究発表会を実施できた.オンライン開催ではあったものの,様々な企業からの発表および参加があり,実際に運用が開始されたコンシューマシステム,実践的なコンシューマデバイスやサービスに関する発表と活発な議論が行われた.
加えて,本年度で第8回目となる学生スマートフォンアプリコンテストにおいては,UBI,ASD研究会もさらに参画することになり,オンライン開催ならではの新たな実施方法や工夫を取り入れることで盛況に終わることができた.
2020年度において,情報処理学会論文誌 コンシューマ・デバイス&システム(CDSトランザクション)は,12編の論文を採択し掲載済みである.2020年度は,引き続きコロナ感染拡大の状況を注視しつつ,安心安全なる運営を第一に,柔軟な対応を心がけていきたい.
4.その他
2021年度は,引き続き従来の取り組みをさらに活性化させるとともに,企業および大学に加えて,学生会員・ジュニア会員をはじめとする若い世代の学生と学会をつなぐ架け橋としての役割を担うような新たな取り組みにもチャレンジしたい.
また,産学交流,技術者の相互情報交換の場の提供に加えて,研究発表会を通した地域活性化,さらなる学会会員数,研究会登録会員数,学生会員数,ジュニア会員数の増加につながるような取り組みを行い,本研究会の更なる活性化を目指す.
◆デジタルコンテンツクリエーション(DCC)研究会
[主査:阿倍博信,幹事:井上亮文,小川剛史,木原民雄,巻口誉宗]
1.定例の研究会活動報告
下記の研究会を開催した.
- 第25回研究発表会
2020年5月27日(水),オンライン開催
発表件数:5件 - 第26回研究発表会(CGVI,CVIM共催)
2020年11月5日(木)~6日(金),オンライン開催
発表件数:30件(DCC 7件) - 第27回研究発表会(GN,CDS共催)
2021年1月25日(月),26日(火),オンライン開催
発表件数:39件(DCC 11件)
2.シンポジウム・国際会議等の報告
下記のシンポジウムおよび発表会を開催した.
- マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2020)シンポジウム
2020年6月24日(水)~26日(金),オンライン開催
※主催
マルチメディア通信と分散処理(DPS)研究会
グループウェアとネットワークサービス(GN)研究会
モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)研究会
コンピュータセキュリティ(CSEC)研究会
高度交通システム(ITS)研究会
ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)研究会
インターネットと運用技術(IOT)研究会
セキュリティ心理学とトラスト(SPT)研究会
コンシューマ・デバイス&システム(CDS)研究会
デジタルコンテンツクリエーション(DCC)研究会 - インタラクション2021
2021年3月10日(水)〜12日(金),オンライン開催
※主催
ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)研究会
グループウェアとネットワークサービス(GN)研究会
ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)研究会
エンタテインメントコンピューティング(EC)研究会
デジタルコンテンツクリエーション(DCC)研究会
- 情報処理学会論文誌:デジタルコンテンツ(DCON)の発行
15号 (Vol.8, No.2, Aug. 2020)採録:3件
16号 (Vol.9, No.1, Feb. 2021)採録:5件
3.総括
研究会の実施について,ここ数年,6月は単独開催,11月はCGVI,CVIMとの共同開催,1月はGN,CDSとの共同開催という形で進めており,発表件数は6月は5件前後,11月と1月はそれぞれ10件前後となっている.DCC優秀賞は5件の発表が受賞する形となった.
また,2020年度は,結果的に,研究会,シンポジウムなど全てのイベントをオンライン開催で実施することになった.また,オンライン開催への変更にともない,DICOMOシンポジウム併設デジタルコンテンツ制作発表会は中止となった.
4.その他
引き続き,新型コロナウィルス対策を意識した研究会の運営が求められることになるが,感染対策を意識しながら,ハイブリッド開催などに取り組んでいきたい.
◆高齢社会デザイン(ASD)研究会
[主査:松浦 博,幹事:阿部明典,石川翔吾,岡田 誠,鏑木崇史,中澤篤志,山田和範]
1.定例の研究会活動報告
2020年度は第18-20回の研究発表会を計画した.
- 第18回は7月30日にオンライン開催した.招待講演は京都工芸繊維大学 桑原教彰教授の「認知症介護を支える情報通信技術の研究」であった.従来,介護分野への機械の活用は心・感情がないと避けられていたが,移乗介助などは身体・心理負担の圧倒的軽減になる.また,思い出ビデオなどによって心を込めた技術で心は伝わり,テレビ電話の活用,コミュニケーションロボットなども有用である.一般発表は無拘束肺音モニタリングデバイスとノイズ除去システム,介護練習用ロボットのため表情による痛み再現,お香を用いた高齢者の発話と情緒に関する発表であった.
- 第19回はMBL/CDS/UBIと共催で9月29〜30日にオンライン開催し,全体では33件の発表があった.ASD関係の一般発表は難聴の個人差に対応する調音様式識別,自動伴奏システムの老人ホームでの演奏支援,VR-IADLにおける動作プリミティブのセグメンテーション法,COVID-19の重症化に影響する重要因子解析の発表であった.
- 3月5日実施の第20回の招待講演は静岡大学西村雅史教授による咀嚼音・嚥下音等の「音声言語情報処理技術を活用した心身状態の理解」であった.一般発表は人工生命技術を用いたパスワード個人管理方式,信号灯色情報の車内投影システム,加齢による発話影響の深層学習とデータ拡張を用いた評価,深層学習による車いす向け路面評価,複数の情報を用いたMCIスクリーニング,当事者の状態像理解を深める認知症ケアインタラクション表現モデル, 認知症ケアの高度化に向けたICFを活用した個性表現の発表であった.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
12月13日,高齢デザインシンポジウムを,静岡県立大学を主会場としてオンライン開催した.静岡県大学長 鬼頭宏氏による「歴史人口学から見る新型コロナウイルス感染 COVID-19は高齢者の病か?」と未来医療研究機構代表理事 長谷川敏彦氏による「データに基づき考える医療とケアの未来」の講演の後,静岡大学特任教授 竹林洋一氏の司会で議論した.次に,東京大学教授橋田浩一氏による「パーソナルデータを本人が安全にフル活用する分散管理による価値最大化」と竹林氏による「住民参画型のデータ集積に基づく心身の健康と地域のデザイン」の講演ののち議論した.最後に,加賀市地域包括支援センター所長西ミキ氏による「『地域おたっしゃサークル』活動を通しての地域包括ケアシステムの構築の推進」,静岡県健康福祉部土屋厚子氏による「健康長寿日本一への挑戦」,磐田市役所健康増進課課長 村川実加氏による「住民データは宝の山」の講演の後,静岡県立大学教授 東野定律氏の司会で討論した.時機をとらえたテーマであり,広い分野の聴講者に好評であった.
3.総括
シンポジウムでは講演者は会場に集まったので,わずかでも情報交換・交流ができたことは今後の活動の展開に効果的であり,顔を合わせる重要性を感じた.また,オンラインにふさわしい学会の支援のしくみの整備が望まれる.
メディア知能情報領域
◆自然言語処理(NL)研究会
[主査:関根 聡,幹事:横野 光,進藤裕之,木村泰知,笹野遼平,内海 慶,古宮嘉那子]
1.定例の研究会活動報告
第244~247回の研究発表会を開催した.コロナ感染症対策により全ての研究発表会はオンラインで実施した.特に最初の研究会では初の試みで対応に苦慮したが,大きな問題は発生しないで進められた.今年度の最初の2回の研究会はコロナの影響があったのか,申し込者が非常に少なく(244回は6件,245回は5件)心配したが,3回目の12月には20件の発表者があった.自然言語処理の研究分野は引き続き,深層学習の様々な応用が試みられており,特に若い方からその方面での研究発表が多数あった.一方,リソースや評価データーの構築の発表,実世界応用の研究開発報告の論文も散見され,自然言語処理技術の幅広い方向性が確認された.
- 第244回(2020年7月)@オンライン
- 第245回(2020年9月)@オンライン
- 第246回(2020年12月)@オンライン
「音声言語および自然言語処理シンポジウム」として電子情報通信学会 言語理解とコミュニケーション研究会 (NLC),電子情報通信学会 日本音響学会 音声研究会(SP),情報処理学会 音声言語情報処理研究会(SLP)による合同開催 - 第247回(2021年2月)@オンライン
通常とは趣向を変え「他分野からの自然言語処理への期待」と題したシンポジウムとして企画し,6名の招待講演のみの研究会
2.シンポジウム・国際会議等の報告
なし.
3.総括
研究会の活性化を進めるために,(a)自然言語処理研究会優秀研究賞の授与,(b)若手研究者による招待講演の常設化を継続している.今年度はコロナ渦の影響で5月の研究会を延期扱いとして,その代わりに2021年2月に「他分野からの自然言語処理への期待」と題したシンポジウムとして企画し,6名の招待講演のみの研究会として開催した.動物の言語学習メカニズムに関する研究,認知行動支援での自然言語処理応用,ロボットを用いた対話理解,画像認識からの自然言語処理,AIの安全・信頼と自然言語処理,統語的多義性と韻律情報の理解という自然言語処理から見ると周辺領域で第一線の研究を行なっている先生方に講演していただき,自然言語処理の裾野を広げることを目的に開催した.多くの方に参加いただき好評であったと思う.
4.その他
自然言語処理の研究分野では,自然言語処理学会の年次大会,YANSの会,NLCなど同じような研究会や学会があり,日程調整,論文集めに苦労している.今後もまだ,新型コロナウィルス感染症の影響で開催に不安はあるが,オンライン開催などの手法を駆使し,自然言語処理の研究会としての貢献を続けていきたいと考えている.
◆知能システム(ICS)研究会
[主査:大倉和博,幹事: 大知正直,清 雄一,福田直樹,横山想一郎]
1.定例の研究会活動報告
2.シンポジウム・国際会議等の報告
3.総括
◆コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)研究会
[主査:藤吉弘亘,幹事:田中正行,出口大輔,延原章平,橋本敦史,満上育久,米谷 竜]
1.定例の研究会活動報告
第221~225回の通常の研究発表会を下記のように開催した.毎回100名前後の聴講者があり,熱心な討論が行われた.各研究発表会では,以下のようなテーマを設定し,オーガナイズドセッションを企画した.
- 2020年5月:卒論・D論セッション,CVにおけるビジネス展開(PRMU共催)
- 2018年9月:モビリティ(FIT, PRMU共催)
- 2018年11月:CV/CG技術によるコンテンツの生成・創作支援(CGVI,DCC共催)
- 2019年1月:Sustainability のための CV・VR 技術(MVE,SIG-MR共催)
- 2019年3月:特殊な環境下における CV・機械学習技術(PRMU共催)
通常の研究発表に加えて,積極的にテーマに沿った講演者も招待し,年間を通して計7件の特別講演を企画し,好評を博した.また希望者によるポスター形式の発表では,参加者の投票による奨励賞を設置しており,本年度も各研究会において1名,合計4名を表彰した.
5月の221回研究会では,若手研究者の育成を目的に,前年度に学部を卒業した方を対象とした「卒論セッション」及び,前年度に博士の学位を取得した若手研究者を対象とした「D論セッション」を開催した.卒論セッションでは26件,D論セッションでは2件の発表があった.なお,卒論セッションにおいては,最優秀賞1件ならびに優秀賞4件の表彰を行い,若手研究者の奨励を積極的に行っている.
CVIM研究会では,運営委員が事前に発表論文をチェックしてコメントをアップロードことで,より質の高い議論を提供し,発表者には有意義なフィードバックが得られる「コメント制度」を採用している.また,口頭発表に加えて,最後のセッションにポスター形式の発表の機会も提供し,発表者および参加者に研究に関する深い議論ができる場を積極的に設けている.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
第23回画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2020)を,8月2-5日の4日間,オンラインにて電子情報通信学会PRMU研究会と共催し,1,367名の参加者があった. 口頭発表への投稿論文139件より55件(発表12分+質疑応答2分のロングが27件,発表5分+質疑応答なしのショートが28件)を選定するとともに,例年人気を博しているトップカンファレンス採択者による招待講演(発表10分,質疑応答なし)を15件選出し,オーラルセッションを構成した.インタラクティブセッションは,上記口頭発表投稿からオーラルセッションに選定されなかった論文,および,一般論文から構成し,132件からなるインタラクティブ発表を3日間に分けて実施した.
オーラル発表の中からMIRU長尾賞1件,MIRU優秀賞2件,MIRU学生優秀賞2件,MIRUフロンティア賞1件を表彰した.また,インタラクティブ発表賞4件を表彰した.また,MIRU学生奨励賞を16名に授与し,若手研究者を積極的に奨励した.また,論文の評価に際して貢献のあった10名に論文評価貢献賞を授与した.
MIRU2020ではオンライン開催となったが,「学会は議論する場である」というMIRUの理念のもと,slackを併用してできるだけ活発な議論と交流ができるように工夫した.また,学生参加者は無料とし,機械学習・コンピュータビジョン分野に興味がある学生に本分野の研究をアピールすることができた.
3.総 括
研究会発表に対するコメント制度,卒論・D論セッション,ポスターセッション・奨励賞,研究会推薦論文制度など,研究者育成の活動を重視してきた.コンピュータビジョン分野のトップカンファレンスに採択される日本人若手研究者の数は増加傾向にあり,本研究会の現在までの取り組みもその一因となっていると考えられる.COVID-19の影響で2020年度の研究会は全てオンライン開催となり,良い点と悪い点が明確となってきた.今後は両者の良い点を取り入れたハイブリッド開催などの検討が必要である.
◆グラフィクスとCAD(CG)研究会
[主査:土橋宜典,幹事:今給黎隆,金森由博,岡部 誠,岩崎 慶,高山健志]
1.定例の研究会活動報告
第178-181回の研究発表会を開催した.
- 第178回 テーマ:対話的なコンテンツ制作支援およびCG技術一般
6月25日(木) Zoomによるオンライン開催
発表件数 6件 (第177回の振り替え発表(9件)は除く) - 第179回 テーマ:ジャーナルの発表を目指そう研究会
9月19日(土) Zoomによるオンライン開催
発表件数 7件 - 第180回 テーマ:CV/CG 技術によるコンテンツの生成・創造支援[CVIM, DCC研究会との合同開催]
11月5,6日(木,金)Zoomによるオンライン開催
発表件数 28件(本研究会からの参加は 7件) 招待講演 2件 - 第181回 テーマ:機械学習とCGおよびCG一般
2月16日(火)Zoomによるオンライン開催
発表件数 7件 招待講演 1件
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- Visual Computing 2020
12月2日~4日 オンライン開催
発表件数 36件,ポスター発表 49件,招待発表 15件 特別講演 2件 総参加者 500名
モデリング,レンダリング,画像合成,アニメーション,物理シミュレーションなど,多岐にわたる分野での研究が報告された.
3.総括
コロナ禍の中,すべての研究発表会・シンポジウムがオンラインでの開催となった.当初は,運営面は参加人数の面で不安要素もあったが,回数を重ねて運営にも慣れ,また,遠方からの参加も気楽に行えるなど,オンライン開催のメリットも多いことが分かった.発表件数や参加者もコロナ禍以前と比較して大幅な増減はみられなかった.また,このような状況においても,研究会で発表された研究がトップカンファレンスへでの発表に発展しているものが多くみられ,本研究会はCG分野の活性化に貢献しているようである.しかし,全般に発表件数を増加に転じさせることは難しく,さらなる工夫が必要である.
4.その他
企業関係者が参加しやすい発表形態や運営方式を維持および拡張する活動を継続させる.オンライン開催(もしくはハイブリッド開催)はコロナ禍にかかわらず継続したい.CVIM+DCC 研究会との合同開催に加え,芸術科学会NICOGRAPHとの併催も計画しており,今後,さらなる活性化に向けて検討を進める.
◆コンピュータと教育(CE)研究会
[主査:兼宗 進,幹事:越智 徹,白井詩沙香,長瀧寛之,渡邉景子]
1.定例の研究会活動報告
2.シンポジウム・国際会議等の報告
3.総括
4.その他
◆人文科学とコンピュータ(CH)研究会
[主査:鹿内菜穂,幹事:河瀬彰宏,北﨑勇帆,後藤 真,山田太造]
1.定例の研究会活動報告
- 第123回 2020年6月6日(土)オンライン開催 発表6件
新型コロナウイルス感染症の影響により,例年5月に開催していた研究会発表会を6
月開催に変更し,また学生セッションのみの縮小開催とした.これまで学生セッションはポスター発表で構成していたが,オンラインによる口頭発表とした.6
件の発表の中から,運営委員の選考により1件の奨励賞を授与した. - 第124回 2020年9月5日(土)オンライン開催 発表5件
春の研究会発表会に続き,夏の研究会もオンラインで開催した.一般口頭発表5件のほか,企画セッション「新型コロナ禍におけるCH研究会研究者の活動:2019
年度末から2020年度前期を振り返る」を行い,所属や立場の異なる7名の登壇者により情報提供を頂き,コロナ禍での教育・研究活動の振り返りを行った. - 第125回 2021年2月13日(土)オンライン開催 発表6件
一般口頭発表6件のほか,特別セッションとして「人文科学とコンピュータ研究会30
周年記念事業実施までの記録」,企画セッション「文化解析を取り巻く最近の状況」を行った.企画セッションでは,物語自動生成の課題,対応分析に関する諸問題,
N-gramによる仏教典籍の研究成果と今後の展開について,3名の登壇者により情報提供頂き,参加者を交えて文化解析およびその発展のための課題を議論した.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- 第22回人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2020)
日程:2020年12月12日(土)-13日(日)
会場:オンライン開催(拠点)筑波大学筑波キャンパス春日エリア
主催:情報処理学会 人文科学とコンピュータ研究会
実行委員長:宇陀則彦(筑波大学)
プログラム委員長:小木曽智信(国立国語研究所)
プログラム副委員長:高田智和(国立国語研究所),村井源(はこだて未来大学)
テーマを「オープンデータからオープンナレッジへ-新時代の研究様式が導く学術情報基盤」とし,12日には同テーマで企画セッションを開催した.研究会としては初のオンラインによるシンポジウムとなり,口頭発表ではzoomウェビナー,ポスター・デモ発表ではRemoを使用した.また論文集もペーパレスでオンラインによるものとした.参加者は135名,全体で44件の発表(口頭発表22件,ポスター発表14件,デモ発表8件)があった.発表の中から最優秀論文賞1件,ベストポスター賞1件,学生奨励賞1件を選考し表彰した.
3.総括
新型コロナウイルス感染症の影響に鑑み,今年度の研究会発表会およびシンポジウムは全てオンラインで開催した.特に春の研究会では例年より開催の時期が遅れ,学生セッションで行ってきた対面のポスター発表からオンラインの口頭発表に変更された.参加発表および聴講方法に変更が生じ,それに伴うトラブルも生じたものの,運営委員会および会員のご理解ご協力により,対面の時とほぼ変わらない参加人数でいずれも盛会のうちに終えることができた.
昨年度と同様に,研究会発表会では学生奨励賞,シンポジウムでは最優秀論文賞,ベストポスター賞,学生奨励賞を研究会より表彰した.研究会・シンポジウムの発表件数は昨年度より減少したが,初めて本研究会で発表した方や非会員の学生参加者は増加した.
研究会30周年記念事業として最後に目指していた情報処理学会第82回全国大会イベント「はじめての人文情報学:情報技術で文化資料の分析に挑戦しよう!」の現地開催が叶わなかったことを受けて,数年かけて実施してきた記念事業の総括を第125回研究会発表会で行い,会員と情報共有することができた.
次年度もしばらく現地開催や対面での研究活動は限られるだろうが,オンラインならではのメリットと2020年度の経験を活かして研究会を盛り上げていきたい.
◆音楽情報科学(MUS)研究会
[主査:中野倫靖,幹事:糸山克寿,竹川佳成,深山 覚,松原正樹,森勢将雅]
1.定例の研究会活動報告
2020年度は,第127~130回研究発表会の研究会を,全てオンラインで開催した.第127回研究会については,2.で述べる.
- 第128回研究会「夏のシンポジウム2020」(2020/8/24~25)では,身体動作・音楽認知・生成・音楽音響信号解析・検索に関する一般発表が12件と萌芽・デモ・議論セッションで4件の発表があった.また,音楽情報処理と密接な関係を持つ情報可視化について,お茶の水女子大学の伊藤貴之教授による招待講演を開催し,大変好評であった.
- 第129回研究会(2020/11/2~3)では,センサや自動採譜に関連した一般発表3件に加え,国際会議既発表セッションで10件,萌芽・デモ・議論セッションで5件の発表があり,また国際会議報告を行った.オンライン開催の特性を活かし,第246回NL・第134回SLP同研究発表会と連携して,部分的に相互の参加を可能とした.さらに,参加者同士のコミュニケーション促進を目的とした参加者交流企画を実施した.
- 第130回研究会(2021/3/16~17)は,EC研究会と合同で開催した.両研究会を合わせて44件もの一般口頭発表があり,音楽分析・生成・検索・合奏・歌声・音源分離・支援に関するものであった.萌芽・デモ・議論セッションの15件の発表とともに大変盛況であった.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
第127回研究会「音学シンポジウム2020」(2020/6/6~7)では,音に関係するあらゆる研究分野が対象とされており,今年で8回目の開催となった.本シンポジウムでは,MUSとSLPとの共催,かつ電子情報通信学会・日本音響学会 音声研究会との連催,電子情報通信学会・日本音響学会 応用(電気)音響研究会,日本音響学会 聴覚研究会との協賛となり,全研究会の委員が協力して企画を進めた.健康・音響イベント検出・歌声合成・音声認識・仮想演奏者・聴覚心理学に関する7件の招待講演と2件のチュートリアル講演に加えて,29件の一般ポスター発表があった.さらに,新型コロナウィルス感染拡大に伴って発表の機会がなくなってしまった研究発表の機会とするエキシビション発表を導入して29件の発表がなされた.参加者は200名を超え,活発な議論が行われて非常に盛況であった.
3.総括
2020年度は4回の開催全てがオンラインで行われ,参加者数は昨年よりも増えて幅広い聴衆を集めることができた.昨年度導入した国際会議既発表セッションと萌芽・デモ・議論セッションを引き続き実施することで,多様な発表がなされて好評であった.また,オンライン開催の特性を活かした企画も実施し,今後の研究会運営の幅を広げることにつながった.
4.その他
他分野との交流を継続的に行うとともに,第一線の研究者による招待講演や国際会議既発表の報告から,萌芽的な発表まで幅広く発表できる場を用意することに価値があると考えている.
◆音声言語情報処理(SLP)研究会
[主査:北岡教英,幹事:秋田祐哉,太刀岡勇気,高島遼一,高道慎之介]
1.定例の研究会活動報告
第132-136回の研究発表会を開催した.
- 第132回(6月 オンライン):SIG-MUSと音学シンポジウム2020を共催した.一般発表のポスターセッションに加え,7件の招待講演,4件のチュートリアル講演を実施したが,うち,SLPからは川口洋平様(日立製作所)と浜中雅俊先生(理化学研究所)をお招きし,それぞれ“音響シーン識別,音響イベント検出,機械音異常診断の世界へのご招待”および“インタラクション可能な仮想演奏者”と題して講演いただいた.また,ポスター発表に対して,「音学シンポジウム優秀発表賞」を1名,「音学シンポジウム学生優秀発表賞」を2名選定した.
- 第133回(10月 オンライン):信学会SP研究会,WIT研究会との連催で,「音声処理の実用化と福祉への応用および福祉情報工学・一般」をテーマに開催した.一般講演,ショートオーラル発表に加え2件の招待講演を実施したが,栗原清様(NHK)と安藤厚志様(NTT)をお招きし,それぞれ,“日本語End-to-End 音声合成に対するNHKの取り組み”および,“音声感情認識の分野動向と実用化に向けたNTTの取組み”と題して講演いただいた.
- 第134回(12月 オンライン):NL研究会と共催研究会とし,信学会SP研究会とNLC研究会の共催研究会との連催で「第22回音声言語シンポジウム」と「第7回自然言語処理シンポジウム」を合同開催した.一般講演,学生ポスターセッションに加え2件の招待講演を実施したが,SLPからは加藤直人様(クラスター株式会社)をお招きし,“バーチャルSNSがもたらすコミュニケーション”と題して講演いただいた.本研究会に参加を申し込まれた方は,11月に開催された第129回MUS研究会の「国際会議気発表セッション」の聴講が可能となり,第129回MUS研究会に参加申し込みされた方は本研究会の「国際会議参加報告セッション」を聴講可能とする企画を催した.
- 第135回(2月 オンライン):音声対話分野において大型プロジェクトを推進する皆様による招待講演6件のみの構成で開催した.講演は,緒方淳様(産総研),松山洋一先生(早稲田大学)“人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業(NEDO)”,河原達也先生(京大)“ERATO石黒共生HRIから新学術領域研究「知能対話学」及びムーンショット「アバター共生社会」に展開する音声対話研究”,戸田智基先生(名大)“CREST「共生インタラクション」共創型音メディア機能拡張プロジェクト”,山岸順一先生(NII)“日仏共同CREST VoicePersonaeプロジェクトの紹介”,中村哲先生(奈良先端大)“次世代音声翻訳の研究(科研費基盤研究(S))”“仮想エージェントによる社会スキル訓練システムの研究(日仏共同CREST)”であった.
- 第136回(3月 オンライン):信学会US研究会,EA研究会,SIP研究会,SP研究会との連催で実施した.2件の招待講演に加え,協賛しているAPSIPAのJapan ChapterのKick-off Workshopも合同で開催し,招待講演が実施された.また,2020年に行われた学生の発表から「企業賞」3件が表彰された.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
2020年度は実施なし.
3.総括
コロナ禍の下,例年7月に実施している宿泊・合宿形式での研究会は残念ながら中止とした.じっくりと議論できる場として長年続く研究会であるので,状況が改善すれば再開したい.現在音声言語・対話処理分野は活気があり,多くの大型プロジェクトが実施されている.そのようなプロジェクトを推進する方々は概してお忙しいが,オンライン開催が幸いし,一堂に会した招待講演研究会が実施できた.このような,現在の研究動向を一望できる機会が作れたことは研究会活性化の一つの方向性を示せたのではないかと考える.
4.その他
時代とともに研究会の役割は変遷していく.音声分野内での技術的方法論も互いに交流し境界がなくなってきている.こうした中,信学会SP研究会との連催を多く実施してきたところであるが,2021年度からはいよいよ運営を統合することとする.SLP幹事団はSP幹事団を兼務し,運営委員会も共通として発展的に統合を図っていく.さらに,従来のIEEE Tokyo Joint Chapterによる協賛に加え,APSIPA Japan Chapterによる協賛を得,Workshopの合同開催など国際的な活動も強めていく.
◆電子化知的財産・社会基盤(EIP)研究会
[主査:原田要之助,幹事:青木秀一,折田明子,加藤尚徳,黒政敦史,小向太郎,須川賢洋]
1.定例の研究会活動報告
2020年度は,第88-91回の研究発表会を開催した.とくに,2020年4月のコロナ禍による非常事態宣言を受けて第88回,第90-91回はオンラインで開催した.第89回については,コロナ禍が治まっていたことから現地開催とオンライン参加のハイブリッド形態で開催した.いずれの回においても参加者は,開催形態によらず熱心に参加してくれた.以下に各回の概要を記す.
- 第88回研究会は,信学会SITE研究会との連催で実施された.当初は立教大学での開催を予定していたが,コロナによる非常事態宣言語の終息が不明な中,オンラインによる開催に切り替えて実施した.情報セキュリティ/サイバーセキュリティガバナンスにおける「リスク」再考,欧州のデジタルシングルマーケット戦略の紹介があった.これに引き続いて,シンポジュームとして,AIの倫理問題について議論した.とくに,技術的な見地,ビジネスの場面,教育における場面などさまざまな切り口から議論できた.AIを今後,社会的に用いるにあたり避けることができない問題であり,今後も議論の積み重ねが必要であることが共有された.さらに,個人情報を中心に,「現代的プライバシー権の起源,「地方公務員法改正と個人情報保護」,「わが国の個人情報保護法制における「個人情報」と「個人に関する情報」の相違の意義」,「医療情報のビッグデータ分析におけるシャーロックリスク」などが議論された.また,コロナをテーマに,「COVID-19対策に向けたパーソナルデータの利活用」に関してヨーロッパの調査報告,ビッグデータの利活用と個人情報保護について議論がなされた.
- 第89回研究会は,DPS研究会と合同で開催された.DPSからはIoT機器やシステムなどITの物理的な課題が提供され,EIPからはセキュリティクリアランス問題,サブライチェーンの問題などITの利用面からの研究発表がなされ,お互いに共通する部分と異なる部分についての認識を持てた.EIPからは欧州の個人情報の仕組みのフォローアップがあり,また,米国のデータブローカー登録についての議論がなされた.さらに,前回のフォローアップとして,米国におけるAI倫理についての報告がなされた.
- 第90回研究会は,CSEC,STPとの3つの合同研究会を実施した.昨今,注目を浴びている顔認証について,先進的な欧州の規制などの制度面と,顔特徴抽出のアルゴリズムや個人認証などの技術面との発表を通じて,技術と制度設計のマッチングの重要性を認識出来た.これも合同研究会ならではの成果と考える.パラレルセッションで技術面,制度・利用面などに分かれたセッションもあり,ビッグデータのプライバシー問題,ブロックチェーンのリスク問題,AI(機械学習)を用いたときのビッグデータのプライバシー保護,再度チャンネル攻撃など,技術面と法制度とお互いに関係する分野の議論がなされ,合同研究会のメリットが鮮明になった.会合のあとには,オンライン懇親会が設定され,日頃,顔を合わせない研究会の面々が画面を通じて,いろいろな意見交換をすることもでき,オンライン開催が物理的な研究会でなできない側面を補うものであるとの印象を持った.
- 第91回研究会は,EIPの唯一の単独開催であった.テーマとしては,「欧米における侵害通知の状況」,「SNSアカウントを死後誰に任せるか」,「情報銀行に預託されたパーソナルデータの第三者提供」「 Q&Aコミュニティにおける応答」などの個人情報関連分野の新しい話題を中心に議論した.また,継続的な研究である「情報公開制度にまつわる情報提供」及びEUの個人情報の移転に関するSchrems IIや欧州デジタルサービス法,欧州の衛星のセンシングデータの利活用などの報告がなされ,デジタルを中心に各国が法律や制度を急速に充実させていることが分かった.また,今後ネット社会で必須となる本人認証の問題が提示された.最後には,コロナ禍をテーマにウイルスの感染のシミュレーションが示された.なお,招待講演では,情報処理学会の施策でもある若手の研究者を招待した.関西大学の水谷先生から「AI、ビッグデータと民主主義」という,現在,最も注目されているテーマをもとに講演があり,今後の課題について十分に理解できた.若手研究者の鋭い視点が重要であることを認知できた.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
2020年度は実施なし.
3.総括
2020年度はFIT2020における企画イベントがコロナ禍による現地開催の中止に伴い、開催できなかった.情報処理学会の第82回全国大会は企画イベントが中止となったが,2020年度の第83回全国大会ではオンラインで企画イベントを実施することになり,「サイバー事件回顧録」の企画イベントを実施した.経年的に実施していることもあり,多数の参加者が楽しんでくれた.現地開催に比べても参加者が多く,オンラインのメリットでもある.
4.その他
2021年度も2020年度に引き続いて,研究面では情報技術と社会制度的側面の境界領域における先端的分野を切り開く活動に努めたい.定例の研究発表会は4回の開催を計画しているが,他研究会との交流も積極的に進めて行きたいと考えている.2021年度は従来のSITE研究会,DPS研究会,2020年からのCSEC研究会SPT研究会との3研究会の合同開催実施が決定している.また,2020年度には論文誌ジャーナル編集委員の推薦を新規に行い,EIPの研究を論文誌ジャーナルに安定的にフィードバックする仕組み作りも行ってゆく.
発表数については,2020年度はオンラインの発表と他の研究会との合同が増えたため,発表数は増えた.AIの展開には社会実装が避けて通れないことでEIPがかかわる領域が増えてきている.また,昨今のGAFAに見られる社会のプラットフォームの独占による弊害や障害が社会に与える影響など,EIPが他の研究会と連携してリードするチャンスが増えていている.今後,EIPの社会へのフィードバック,プレゼンスの向上と研究会の安定運営を図って行きたい.
◆ゲーム情報学(GI)研究会
[主査:鶴岡慶雅,幹事:但馬康宏,美添一樹,五十嵐治一,佐々木宣介]
1.定例の研究会活動報告
- 第44回研究会は2020年6月27日(土)に当初の予定を変更してオンラインで開催し,11件の発表を集めた(うち5件は3月の研究会からの繰り越し).発表内容は,将棋およびその変種,お邪魔者,ガイスター,カードゲーム,パズルゲームなどと多岐に渡り,興味深い研究会となった.
- 第45回研究会は,2021年3月5日(金)にオンラインで開催し,16件の発表を集めた.発表の内容は,プレイヤの認知と行動の分析,ガイスター,競技の支援,強いAIプレイヤ,大貧民など,多様な目的に対して様々な研究が見られた.3月6日(土),7日(日)には,Game AI Tournament もオンラインで開催され,多くの参加者を集めた.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- 本研究会主催の第25回ゲームプログラミングワークショップ(GPW2020)を2020年11月14日(土)-15日(日)の2日間の日程でオンラインて開催した.15件の口頭発表,16件のポスター発表があり110名以上の参加者による活発な質疑・議論が行われた.多種のゲーム・パズルに関する様々な観点からの研究発表があり,これらの最新の研究についての熱心な討論や情報交換が行われ非常に有意義であった.なお,チャットツールSlackも併用して発表者と聴講者の情報交換を促進する仕組みを提供した.一般発表,ポスター発表,招待講演,関連イベントと大変活発なワークショップとなり,この分野の研究のさらなる発展につながる実りのある場となった.
3.総括
本研究会は発足後22年が経過し,この分野の発表の機会を与えるものとして十分に定着してきたと言える.発表の内容を見ると,パズルや将棋,囲碁などの伝統的なゲームに加え不完全情報ゲームである大貧民,麻雀などのゲームやカーリングなどのような不確定ゲーム,更には,ビデオゲームや戦略シミュレーションから人狼まで,ゲームの種類は多岐にわたる.また技術的には,ニューラルネットワークを用いた強化学習など,深層学習の流れを受けた手法の研究が進んでいる.本年度は新型コロナウィルス感染症の影響により,研究会,ゲームプログラミングともすべてオンライン開催となったが,当初心配されていた発表件数や参加者の落ち込みは少なく,活発な研究交流の場として機能した.
4.その他
平成26年度から,若手の研究者のモティベーションの向上のために,若手奨励賞を新設し,徐々に浸透している.2016年度末から,学生運営委員を新設し,若手研究者の参入を増やす試みも行うことにしている.来年度も,今年度同様,年2回の研究会,及び,GPWの開催を行っていく予定である.
◆エンタテインメントコンピューティング(EC)研究会
[主査:水口 充,幹事:山本豪志朗,棟方 渚,三武裕玄]
1.定例の研究会活動報告
第56-59回の研究発表会を開催した.
- 第56回 2020年6月1日(月), 2日(火) オンライン開催
ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)研究会と合同,日本バーチャルリアリティ学会,ヒューマンインタフェース学会デバイスメディア指向ユーザインタフェース研究会(SIGDeMO),映像情報メディア学会 スポーツ情報処理時限研究会(ITE-SIP)と共催,電子情報通信学会メディアエクスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会(MVE)と連載で開催した.音や画像などのメディア処理技術およびデバイス,XRに関するデバイスから応用,ユーザの行動分析,ユーザ支援手法などに関して,全体で33件の発表があった. - 第57回 2020年12月1日(火) オンライン開催
「with/postコロナ時代の研究会・シンポジウム運営におけるエンタテイメント技術の活用」と題して,研究会運営委員による議論(メタ研究会)を行った.VR Chatを使用してみたところ,対話的な議論が進めやすい一方で,機材の準備と慣れが必要であったり長時間の装着は疲労が大きいという問題点が実感できた. - 第58回 2020年12月11日(金) オンライン開催
コンテンツ制作支援に関して2件のショート発表があった.新型コロナ感染拡大のため,各方面での研究が著しく停滞している状況が感じられた. - 第59回 2021年3月16日(火), 17日(水) オンライン開催
音楽情報科学研究会と合同開催した.音楽情報処理およびエンタテインメントに関して,全体で45件の発表があった.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- エンタテインメントコンピューティング2020(主催) 8月29日(土)〜31日(月) オンライン開催
名城大学の柳田先生を実行委員長,明治大学の渡邊先生をプログラム委員長として名城大学での開催を進めていたが,新型コロナの感染拡大の状況を鑑みオンラインのみでの開催となった.テーマを「オンライン時代のエンタテインメント」とし,発表形式を口頭発表とデモ発表を区別せず,発表形態を自由とした.発表件数は45件で例年に比べ半数以下と振るわなかったが,すべての発表をシングルセッションで収めることができたことは,多彩な発表を漏らさず聴講することができたと参加者からは評判が良かった.参加者は160名であった.
- インタラクション2021(共催)3月10日(水)〜12日(金) オンライン開催
ヒューマンコンピュータインタラクション研究会,グループウェアとネットワークサービス研究会,ユビキタスコンピューティングシステム研究会,デジタルコンテンツクリエーション研究会との共催で開催した.登壇発表11件,インタラクティブ発表180件の発表があった.基調講演では大阪大学の前川卓也先生に「AI on Animals: 行動認識技術とバイオロギングの融合による野生動物観測」と題して講演頂いた.
3.総括
本年度は新型コロナの感染拡大のため,すべての研究会およびシンポジウムがオンライン開催となった.また,発表件数も低迷したが,年度末に向けて改善傾向が見られる.感染拡大状況の改善は当面見込めなさそうであるが,エンタテインメント技術による研究会・シンポジウムの活性化を図っていきたい.
4.その他
今年度もECシンポジウムにてQualification制度を実施したが,残念ながら有用性の認定には至らなかった.本制度は実際に体験することで有用性を確認することを趣旨としているため,オンラインでは難しい点が多いことを痛感した.関連研究会や学会などでの取り組みを参考に対応を考えていきたい.
◆バイオ情報学(BIO)研究会
[主査:倉田博之,幹事:田口善弘,吉本潤一郎,伊藤公人]
1.定例の研究会活動報告
第62-65回の研究発表会を開催した.
- 第62回は,2020年6月29日,沖縄開催をオンライン開催に変更した.数理モデルと問題解決(MPS)研究会と共催し,電子情報通信学会ニューロコンピューティング(NC)研究会および情報論的学習理論と機械学習(IBISML)研究会と連催した.総発表件数11件(うちBIOより3件)であった.
- 第63回は,2020年9月4日,福岡開催をオンライン開催に変更した.発表件数3件であった.
- 第64回は,2020年12月7日,東北大学開催をオンライン開催に変更した.東北大学電気通信研究所生体生命工学研究会と共催した.発表件数11件であった.露崎弘毅氏(RIKEN) が「行列・テンソル分解を用いた異種バイオデータ統合解析の数理」という題目の招待講演を行った.
- 第65回は,2021年3月11日,金沢開催をオンライン開催に変更した.発表件数10件であった.小長谷明彦氏(合同会社分子ロボット総合研究所)が『AI予測同期制御技術を用いて対象を自然に操作できるVR共創環境を目指して』という題目で招待講演を行った.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
2020年度の主催行事はなかった.「バイオインフォマティクス技術者認定試験」を協賛した.
3.総括
2020年度は,COVID-19予防対策で,4件すべてオンライン開催とした.昨年同様に,関連研究会や学会との共催や併催を積極的に進めたが,27件の発表にとどまった.昨年度41件と較べると,発表件数は減少した.オンライン開催の方式として,Zoomによる口頭発表とSLACKによる質疑応答を併用する方法を実施した.講演中にSLACKに質問等を書き込んでいただくことによって,質疑応答を効率的に行うことができた.講演者に資料等をSLACKにアップロードいただき,質疑応答が充実した.今後もオンライン開催の場合,ZoomとSlackの併用を継続する.
4.その他
2021年度は,年4回の研究発表会を計画している.「第 66 回バイオ情報学(SIGBIO)研究会」は,2021年6月28日~30日,「第 133 回数理モデル化と問題解決(MPS)研究会」と合同研究会とし,電子情報通信学会ニューロコンピューティング(NC)研究会,情報論的学習理論と機械学習(IBISML)研究会と連催する.琉球大工学部のオンサイトとオンラインを併用するハイブリッド型を予定している.
◆教育学習支援情報システム(CLE)研究会
[主査:緒方広明,幹事:久保田真一郎,島田敬士,関谷貴之,松浦健二]
1.定例の研究会活動報告
2020年度は,第31,32,33回の研究発表会を開催した.
- 第31回はコロナ禍のため,5月30日にオンラインで開催し,募集テーマ「学習支援とICT・情報基盤および一般」に関連する4件の発表と1件の招待講演,ならびに昨年度開催を中止した第30回の申し込みから1件の発表があった.
- 第32回は11月27~28日にオンラインで開催し,募集テーマ「教育学習支援情報システムの安定稼働および一般」に関連する11件の発表と1件の招待講演,ならびに昨年度開催を中止した第30回の申し込みから1件の発表があった.
- 第33回は3月25~26日に東京大学とオンラインのハイフレックスで開催し,募集テーマ「オンライン教育の実施における教育・学習基盤および一般」に関連する23件の発表と1件の招待講演,ならびに昨年度開催を中止した第30回の申し込みから1件の発表があった
2.シンポジウム・国際会議等の報告
2020年度の情報教育シンポジウムSSS2020は,12月19日から20にかけてオンライン開催された.本シンポジウムは「コンピュータと教育」研究会との共同開催である.初等教育から大学における情報教育を中心に,ICT に関する能力評価の方法やプログラミング学習環境など,各種の教育学習支援情報システムに関する研究,実践,開発の報告が行われた.また「初等中等教育における情報化政策の現状と課題」と「大学における完全オンライン授業に向けたラーニングアナリティクスの有効性と課題」というタイトルで,ICT 教育に関する2件の招待講演があった.
3.総括
本研究会では,教育学習活動を支援する情報システムに関する研究開発及び実践に関する発表が16年間に渡り行われてきた(平成17年度から始まった研究グループ時代を含む).その間,教育現場を支える各種のシステムが登場し,とりわけ学習支援システムLMS(Learning Management System)やコース管理システムCMS(Course Management System),ポートフォリオシステムがその中心となり,本研究会でも多数の発表が行われてきた.一方で,教育,学習に関する学生情報システムSIS(Student Information System)とのデータ連携や,教育・学習活動のプロセスのデータが日々蓄積されるスタディログに関する研究も近年活性化している.ラーニングアナリティクスは,学習のログに加えて,成績・アンケートなどの教育機関が保有する様々なデータを統合・利活用して,教育・学習活動の改善に資する情報を教育現場にフィードバックする目的を主なものとして,本研究会でも主要テーマとなりつつある.2020年度はコロナ禍もあり,教育学習活動を支援する情報システムの重要性があらためて強く認識されるとともに,GIGAスクール構想の前倒しもあり,初等中等教育にも広くICT教育環境が普及する1年となった.当研究会は,今後もシステムの実装,安定運用,教育データの利活用,教育・学習活動の改善のためのフィードバックなど幅広いテーマを時代の変遷に合わせて取り上げるとともに,研究と実践が密接に連携した議論・交流の場を提供できるよう取り組みを進めていきたい.
4.その他
今後の研究活動については,引き続きCLE研究分野の研究をさらに推進する.特に,遠隔授業や遠隔教育等を支える環境や情報システム,対面授業とのブレンド,ハイブリッド/ハイフレックス授業を実践するための技術開発は,実践的な取り組みを通して,ノウハウや知見が蓄積されるものであるため,データ分析や効果検証,その結果のフィードバック等の研究にも研究会として取り組んでいく予定である.また,コロナ禍で定着したオンライン研究会を,今後の研究会の開催方法を検討する契機と捉えて,遠隔からの参加も広く受け入れることができる研究会運営についても議論を進めていきたい.
◆アクセシビリティ(AAC)研究会
[主査:澤田秀之,幹事:大島千佳,小林正朋,杉原太郎]
1.定例の研究会活動報告
2020年8月28~29日,12月4~5日,2021年3月5~6日にそれぞれ第13回から第15回研究会を開催した.第15回研究会は,電子情報通信学会 福祉情報工学研究会WITとの連催であった.それぞれの回の参加人数は,33名,47名,78名であり,障がい者の参加人数については表1に示す通りである.本年度開催した3回の研究会は,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,全てZoomによるオンライン開催とした.事前参加申し込みを行うことで,障害の方を事前に把握し,オンライン開催研究会の情報保障として文字通訳を実施した.また,前年度に開催中止となった第12回に発表を予定していた中から,希望者2名が本年度の研究会で発表した.
表1 参加人数(延数) | |||
研究会 | 参加人数 | 聴覚障害者 (発表者) |
視覚障碍者 (発表者) |
13 | 33 | 3(1) | 2(1) |
14 | 47 | 5(1) | 5(1) |
15 | 78/td> | 4(2) | 6(2) |
2.シンポジウム・国際会議等の報告
2020年度は実施なし.
3.総括
コロナウイルス対策のため,本年度の研究会は全てオンラインにて実施した.オンライン参加者への情報保障として,文字通訳を実施した.また,これまで通りに研究会登録や会員増を狙いつつ,オンラインによる開催の利点を利用したワークショップ,ディスカッション,招待講演を企画し,好評を博した.次年度も,当面はオンライン開催を計画している.また,昨年度から継続している本研究会の大きな特色とする「当事者参加」と「実験の場としての研究会」に関する取り組みも継続して行い,下記のような取り組みと成果を得た.
- 当事者参加を促進する
- 各研究会で当事者参加があり,うちのべ8名が研究発表をおこなった - 研究会を研究の実験の場とする
- 全ての発表に文字通訳による情報保障を実施
- 第13回で「COVID-19下での学習・生活環境と障害」のタイトルで,ディスカッション・ワークショップの企画を実施した
- 第14回でオーガナイズドセッション「Assistive and Accessible Computing ~研究成果を世界に発信しよう~」を企画し,パネラーを中心としたチュートリアル,ディスカッションを実施した.また,2件の特別講演を実施した.
昨年度同様に,情報処理学会から字幕情報保障費用の支援を頂き,更に運営委員による音声認識システムを使った字幕情報保障を行った.聴覚障害,視覚障害を持つ方も積極的にセッションに参加して頂くことができ,参加者に対して研究に対する興味を喚起できたのではないかと考えている.
パネルディスカッション・ワークショップ企画では,COVID-19下での学習や生活環境について参加者が幅広い問題について議論,意見交換をおこなった.活発な議論や提案があり,AAC研究会ならではの成果が得られたと言える.
4.その他
2019年度に続き財政的なひっ迫があった.今後も,研究会そのものをより活発にして存在を多くの人に知ってもらい,登録員数増加は勿論,企業協賛,助成金獲得に継続して努める必要がある.情報処理学会や企業・大学からの補助や提供が続くことが約束されていない状況で,アクセシビリティ研究会の自助努力で情報保障をはじめとする障がい者支援を続けることには大きな不安がある.障がい者差別解消法は遍く浸透しているとは未だ言えない状況である.情報処理学会AAC研究会は,その意味を理解し,先んじた対応をしていくことで,情報処理技術によりアクセシビリティに貢献する研究を推進していると広く認めてもらえるように活動を続けていく.
http://ipsj-aac.org
◇ネットワーク生態学(NE)研究グループ
[主査:鳥海不二夫,幹事:今井哲郎,臼井翔平,小島一浩,田中 敦,伏見卓恭,松林達史,守田 智]
1.定例の研究会活動報告
第17回の研究発表会
日時:2021年3月1日(月)
場所: オンライン
計算社会科学研究会との連続開催とし,150人を超える参加申し込みがあった.
3件の招待講演,8件のポスター発表が行われた.
2.総括
コロナ禍で定例のシンポジウムがオンライン開催となったが,多くの参加者が集まり活発な議論が行われた.また,新たに東京大学と共催でネットワーク科学勉強会をオンラインにて定期的に開催した.毎回10名程度がオンラインにて参加しており,ネットワーク科学研究に一定の寄与が出来ていると考える.
3.その他
- 2021年度は新型コロナの感染状況を見極めながらシンポジウムの開催時期を決定する.
- ネットワーク科学勉強会は引き続き継続して共催する.
- 昨年度実現しなかったネットワーク科学セミナーと連携は,2021年度にコラボ企画を開催するべく議論を行っている.
◇会員の力を社会につなげる(SSR)研究グループ
[主査:筧 捷彦,幹事:寺田真敏,中山泰一]
1.定例の研究会活動報告
2011年12月27日に公開された『情報処理学会教育ビジョン2011』に記載されている,「教育に携わる諸部門とのさまざまな形での協働の推進に努めます」を実践する場として,2012年度より研究会グループとして活動を開始した.
2020年度は,次の会合を主催した.
- 会合名:第9回 情報科教員を目指す学生さんに向けてのガイダンス会
日時:2020(令和2)年10月04日(日)
場所:オンライン
2.シンポジウム・国際会議等の報告
2020年度は,実施しなかった.
3.総括
情報科教員を目指す学生さんに向けてのガイダンス会は,高校の先生と大学の先生のコミュニティを活用して,複数大学間にまたがって,情報科の先生になりたい学生さんを応援しようという思いを形にしたものである.2020年度はオンライン開催としたことにより、愛知教育大学、愛知県立大学、九州大学、上越教育大学大学院、静岡大学、島根大学、名古屋文理大学、広島大学、北海道情報大学など関東地区以外からも参加があり、学生50名,高校教員14名,大学職員等6名を含む計78名の参加となった.2021年は10月3日(日)を予定している.
研究グループの活動も9年目となり,主催イベントは定着化したことから,新たな取り組みへの着手や関東以外の地域とのコミュニケーションなどの協働の場の整備を、オンライン会合を併用していくことで普及発展に努めていく.引き続き,関係者の方々には積極的な参加をお願いしたい.今後も,様々な声を拾い上げながら,課題をひとつずつ解決していくことで,「教育に携わる諸部門とのさまざまな形での協働の推進に努めます」を実践していく.
◇情報処理に関する法的問題(LIP)研究グループ
[主査:高岡詠子,幹事:市毛由美子,中山泰一,登 大遊]
1.定例の研究会活動報告
2015年9月に立ち上げた「情報処理に関する新たなルール作り」に関する研究グループは,設立当初から新たなソフトウェア契約のモデル案を提案しようという方向で勉強会を続けてきた.2018年3月に情報処理学会第80回全国大会にて,「アジャイル開発の事例に則した契約の一例提案」を行うイベントセッションで第1案を提案した.会場からは非常に多くの意見が寄せられ,2019年度は,この意見を踏まえて,ユーザとベンダ双方がメリットを感じられる契約形態として準委任型をベースとした契約書の作成を試みた.当事者(発注者・受注者)双方が,開発に関わるプレイヤー(プロダクトオーナー,ステークホルダー,開発チーム,スクラムチーム,スクラムマスター)とともに,刻々と変化するビジネス・技術環境等に応じてどのような役割を担い,どのような善管注意義務や協力義務を尽くべきであるのか,という点について,実務家と法律家がそれぞれの立場から作成に携わることで,キメの細かい視点からの契約書が作成できた.
- 第1回(通算第33回)
日時:2020年4月7日(火) 18:00~20:00
場所:オンライン(Zoom) - 第2回(通算第34回)IPAさまとの合同MTG
日時:2020年5月11日(月) 18:00~20:00
場所:オンライン(Zoom) - 第3回(通算第35回)
日時:2020年8月31日(月) 15:00~17:00
場所:オンライン(Zoom) - 第4回(通算第36回)
日時:2020年10月2日(金) 18:30~20:30
場所:オンライン(Zoom) - 第5回(通算第37回)
日時:2021年1月13日(水) 18:00~20:00
場所:オンライン(Zoom) - 第6回(通算第38回)
日時:2021年2月15日(月) 18:00~20:00
場所:オンライン(Zoom) - 第7回(通算第39回)
日時:2021年3月8日(月) 18:00~20:00
場所:オンライン(Zoom)
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- Agile Japan 2020 プレイベントをIPA様と合同で開催
日時:2020年10月30日(金)16:00~17:30
場所:オンライン(Zoom)
タイトル:「アジャイル開発契約のあるべき姿とは?~IPSJ/LIPチームとIPA/経産省チームの試み~」 - 情報処理学会第83回全国大会にてイベントセッションを行った
日時:3月18日(木)12:40-15:10
場所:第3イベント会場
タイトル:「アジャイル開発のソフトウェアモデル契約」のその後
3.総括
2020年度は,Covit-19感染症の影響で活動はオンライン上で行われた.2019年度に完成した準委任型をベースとした契約書を公開し,2020年度はAgile JapanのプレイベントをIPA/IPSJの契約作成チームが合同で行う,第83回全国大会でこの契約モデルを紹介するという広報活動が主な活動となった.
調査研究運営委員会
◇ビッグデータ解析のビジネス実務利活用(PBD)研究グループ
[主査:石井一夫,幹事:里 洋平,高柳慎一,中野美由紀]
1.定例の研究会活動報告
ビッグデータ研究グループ運営委員会
- 第1回:日時:2020年12月23日 18:00~19:00ビッグデータ研究グループ運営委員会会議
- 第2回:日時:2021年1月5日 18:00~19:00ビッグデータ研究グループ運営委員会会議
出席者:石井 一夫,橋本 武彦,福中 公輔,江谷 典子,古徳 純一,飯尾 淳,高柳 慎一,里 洋平,吉永 尊洸,村田 賢太,木村 隆介,安部 晃生(順不動、記憶を頼りにリストしているため記載漏れの可能性有り)
内容:
(1)論文誌デジタルプラクティス 49号ビッグデータ 特集号に関する打ち合わせ
(2)幹事および運営委員メンバーによる活動に関する打ち合わせ.
2.シンポジウム・国際会議等の報告
2020年度は実施なし.
3.総括
新型コロナウィルス禍の影響などから,研究会ベースの活動ペースを落としている.一方で,研究グループ運営委員などの学会内委員会への派遣,雑誌編集・出版企画への協力など活動機会が増えている状況である.
4.その他
今後の活動予定:昨年と同様、新型コロナウィルス禍の収束が見えないために,研究会はオンラインベースで行っていく予定である.研究グループ運営委員などの学会活動への協力は積極的に行なっていく.
主査の抱負:研究会活動の本格化は,新型コロナウィルス禍の収束後になると思われるが,ビッグデータやデータサイエンスをめぐる状況の変動は続いており,今後盛況化することが予想されるので,これにうまく乗り活動活発化を図りたい.
◆オープンサイエンスと研究データマネジメント (RDM) 研究グループ
[主査:山地一禎,幹事:梶田将司,藤原一毅]
1.定例の研究会活動報告
第3回の研究発表会を開催した.
- 第3回研究会 2020年9月4日(金)14:00~15:50 オンライン開催
インターネットと運用技術 (IOT) 研究会とコロケーション開催し,4件の発表があった
2.シンポジウム・国際会議等の報告
- FIT2020イベント企画「研究機関でアジャイル開発しませんか」 2020年9月2日(水)15:30~17:30 オンライン開催
4件の講演とフリーディスカッションを行った. - デジタルプラクティス特集号「オープンサイエンスを支える研究データ基盤」 2021年4月15日発行
13件の投稿論文の中から8件を採録したほか,2件の招待論文と1件のDPレポートを掲載した.
3.総括
RDM研究グループは,オープンサイエンスに関わる国内の取り組みを広く集約する情報交換の場を設けるとともに,その人材の評価・育成に資することを目的として,2019年4月に発足した.2020年度は,通常の研究発表会に加えて,デジタルプラクティスの特集号とFIT2020のイベントを企画した.
デジタルプラクティス特集号では,多様な研究分野において学際的なデータ流通を促進するため,既存のデータ流通基盤を整備・運営するなかで培われた技術的・組織的なノウハウを共有し,基盤整備に携わる人材を広めていくことを意図して,2020年6月18日から8月25日まで論文を募集した.村山泰啓氏(NICT)と林和弘氏(NISTEP)をゲストエディタに迎え,本研究グループ運営委員とともに幅広い議論を交えて査読に当たった結果,最終的に13本の投稿論文から8本を採録,1本をDPレポートとして掲載した.加えて,青木学聡氏(名古屋大学)と高木利久氏(富山国際大学)から解説論文の寄稿を賜った.すべての論文はオープンアクセスとなっており,情報学広場およびデジタルプラクティスのウェブサイトにて無料で閲覧できる.
FIT2020のイベント企画では,研究データ管理に不可欠な情報基盤の開発に焦点を当て,学生や若手エンジニア(志望者)を主な対象として,オープンサイエンスに貢献するインフラ開発者としてのキャリア像を示すことを意図してセッションを構成した.研究機関でオープンサイエンスのための情報基盤を開発している込山悠介氏と林正治氏(ともにNII),民間企業でアジャイル開発を実践している長久勝氏(ライフマティックス株式会社)と中村洋氏(ギルドワークス株式会社)を講演者として招待し,▼最先端研究を支える情報システムをどう設計するか▼アジャイルな開発を大手ベンダーと一緒に進めるコツ▼全国800大学が使うSaaSを運用するためのCI/CDの勘所▼これからの大学に求められるエンジニアリング人材像といったトピックについて,ざっくばらんに語っていただいた.最終的に18名の聴講者があり,アンケートの結果「非常に有意義だった」「有意義だった」が合わせて13票,「意義がなかった」が0票という評価だった.
4.その他
2021年度は,引き続きIOT研究会との共催による研究発表会の開催とともに,他学会との連携強化・アウトリーチ拡大と,オープンサイエンスに関わる人材に業績獲得機会を安定的に提供する枠組みづくりに取り組んでいく予定である.