トランザクションの概要について
トランザクションの概要について
新しい論文誌(トランザクション)の概要
「情報処理」Vol.39、No.4 (1998.4) 会告掲載より抜粋
※1998年4月現在の情報につきその後変更が生じることもあります。
- 名称は、「情報処理学会論文誌:サブタイトル (Information Processing Society of Japan Transactions on サブタイトル)」とします。
- 論文誌(トランザクション)ごとに論文誌編集委員会を設置します。複数の研究会が合同で論文誌編集委員会を構成する場合もあります。
- 論文誌(トランザクション)ごとに論文誌編集委員会委員名簿、編集方針 (研究分野、論文の形式、査読基準、査読方法、投稿方法等)、 具体的な編集方法等を公表します。
- 情報処理学会の会員以外の投稿の可否については、各論文誌編集委員会で定めることとする。
- 論文誌(トランザクション)は著者が用意した原稿から直接写真製版して掲載します。論文誌編集委員会が指定する書式にしたがって原稿を作成してください。
- 掲載された論文の著者は、その掲載料を支払わなければなりません。
- 論文誌(トランザクション)の購読を希望する場合には、研究会登録申込書により、 当該論文誌を編集する論文誌編集委員会の母体研究会にご登録ください。論文誌編集委員会を構成する母体研究会が複数の場合には その内のいずれかの研究会にご登録ください。
- 掲載された論文は、情報処理学会論文賞の対象となります。 論文の著作権は本学会に帰属します。
新しい論文誌(研究会論文誌)の発行について
会長 戸田 巌
「情報処理」Vol.39、No.2 (1998.2) 会告掲載
社会の情報化が急速に進展するなか、本学会は情報処理の学術、技術に関わる専門分野から学際分野までの研究・開発・調査を支援する重要な役割を担っていま す。今日の情報学術、技術の急速な進歩や分野の拡大に対処するため、迅速に新しい分野をカバーする研究会や研究グループ活動の強化、新しい多様な価値観の 導入など、本学会に対する期待も急速に変化・拡大しており、速やかな対応が求められています。
このような状況に対処するため、本学会では、新しい論文採録規定の創成に向けてまず論文誌に次のような改革を行ってきました。
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- メタレビューア制度(学会誌Vol.38、No.5、No.6参照)
- ゲストエディタ制度(学会誌Vol.38、No.8参照
- 研究会推薦論文制度(学会誌Vol.38、No.8参照)
さらに、急速に拡大、多様化する各種研究分野での価値ある研究をタイムリーに公表す るため、従来の論文誌に加えて、研究・開発・調査の最前線において活動を展開している 研究会、研究グループを主体とする複数の新たな論文誌(研究会論文誌)を発行することにいたしました。会員の皆様には各論文誌に明記されている研究分野、査読方針等をご参照のうえ適切な論文誌にご投稿いただくことになります。発行の概要は次のとおりです。会員各位のご理解とご協力をお願いいたします。なお、投稿要領は個々の研究会からのご案内が順次、学会誌会告欄に掲載されます。
[研究会論文誌の発行概要]
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1. 名称・刊行形態
- (1) 和名は「情報処理学会論文誌:サブタイトル」とします。
- 英名は「Information Processing Society of Japan(略称:IPSJ) Transactions on サブタイトル」とします。
- (2) 平成10年度5月目途で、体制の整った研究会から順次、発行予定です。
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2. 編集方針と責任母体
- (1) 研究会毎に編集方針(研究分野、論文の形式、査読基準、査読方法、投稿方法等)、および責任母体(編集委員)を研究会の責任において決定し、これを公表します。
- (2) 複数の研究会が合同で編集する場合もあります。
- (3) 非会員の投稿も認めます。
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3. 研究会論文誌の購読方法
- (1) 研究会論文誌の購読を希望する場合には、研究会登録申込書(本号会告欄)により、論文誌を編集する当該研究会にご登録ください。
- (2) 当該研究会登録者以外の研究会論文誌の購読希望については、詳細が確定次第、学会誌上にてご案内いたします。
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4. 従来の論文誌との関係
- 研究会論文誌は従来の論文誌がカバーしきれない研究分野を扱うことになります。
また、従来の論文誌の和名、英名、投稿要領等に変更はありません。
「創造組織」への自己改革を目指して
安西祐一郎(本会調査研究運営委員長 慶應義塾大学理工学部)
「情報処理」Vol.39、No.2 (1998.2) 巻頭言掲載
我が国最初の専門学会は東京数学会社(1877年創立; 後の日本数学会と日本物理学会の母体)で、当初の会員数は50数名であった。その後現在まで120年の間に、時代の変遷をバックに多くの学会が生まれた。 たとえば工学関連の学会(日本工学会が1879年、専門学会としては日本鉱業会が1885年創立)の多くは、技術革新と歩調を合わせて設立され、発展する 産業社会の横断的組織として産・官・学協調体制の一翼を担うようになった。
こうした学会のあり方、特に工学系学会のあり方が、他の多くの組織と同じように、冷戦構造の消滅、戦後55年体制の崩壊、産業構造の転換という時代の荒波にもまれ、構造疲労を起こしている。
多くの学会、特に工学系学会で行われている改革の意義をこうした文脈の中で捉えたとき、これからの学会組織は、(1)できるだけ自由でオリジナルな活動を 認め、(2)そうした活動の中から新たな芽を起こし、(3)多様な価値を生み出し、(4)認めさせ、(5)保護し、(6)蓄積するような(7)「創造組 織」を目指すべきである、と私は思う。これは、さまざまな組織が構造疲労から脱皮するために目指している方向に沿った考え方であって、単なる飾り言葉では ない。
しかしながら、こうした創造組織を、長い歴史を持つ学会のような既成の民主組織が「自己改革」によって創ることは、 実際には容易でない。サローのいうように民主主義は保守的である。ところが情報処理学会は、情報学ともいうべき、人文、社会、理学、工学、生命、医学、芸 術、教育、その他多くの方面に急速な発展を続けている創造的分野をカバーし、しかも組織としての力を発揮できるだけの大規模性を備えた学会として、これを 実践することが可能な力を秘めている、と私は思う。情報処理学会の改革は、情報学の広まりとともにこの学会が21世紀の新しい組織に脱皮するために必要な のである。
会員にとっては学会が具体的に何をしてくれるかが問題であって、抽象的、外向きのビジョンはお題目にすぎないと いわれるかもしれない。しかし実際には、上のような創造組織としての学会は、さまざまな具体的情報の創造力・求心力・保護力を持つようになるだろう。そし て、創造組織のメンバになることで「得をする」ときが早晩やってくるだろう。なぜなら、世の中は(学会に限らず)上の(1)〜(7)を満たすような組織を 求めて動いており、未来の社会インフラは相当部分そうした組織のネットワークに支えられる可能性が高いからである。
情報処 理学会には、29(内2つは平成10年度新設)の研究会、1つの研究グループ、2つの調査委員会がある。そのうち研究会のテーマをとってみても、アルゴリ ズム、プログラミング言語、アーキテクチャのようなコンピュータサイエンスの分野から、メディア、ネットワーク、ヒューマンコンピュータインタラクション のような情報環境分野、そして知的情報処理、芸術、人文、教育、知的財産権のような分野に至るまで、膨大な範囲にわたっている。こうした広範な分野をカ バーする「学会」は、さきに述べたように、各分野の人達が自由でオリジナルな活動を行って多様な価値を創造し、相互に発展していくような場であってほし い。成果公表の方法1つとっても、たとえばアルゴリズム、データベース、グラフィクス、音楽情報処理、知的財産権の分野の成果を統一的な形で表現すること は困難である。むしろ各分野に適した多様な方法を創造し、認めさせていくことが、学会の発展にも寄与することになるだろう。
今般行われることになった「研究会論文誌」(「情報処理」Vol.39,No.2 会告17ページまたは174ページ参照)の発行は、論文誌編集委員会と調査研究運営委員会の合同委員会の議論に基づいて12月の理事会で承認されたもので あり、将来にわたる学会のあり方に照らしていえば、多様な価値を生む「創造組織への自己改革」の1ステップとみなすことができよう。
調査研究関係の改革は、研究会活動の自由度の大幅な増大、領域制の施行、研究会論文誌の発行を含めて、会員のできるかぎり自由で相互発展的な活動が可能な 環境を創るという姿勢で一貫している。この改革は、多くの方々の長期にわたる献身的な努力に支えられて、「創造組織への自己改革」の1つのモデルになりう る形で進んでいる、と私は思う。今後、調査研究関係の改革は次のステップに進むことになる。私は、そうした改革が「創造組織への自己改革」をさらに進め、 メンバであることが喜びであるような、21世紀の組織の先駆的なモデルを生み出すことを願っている。
(平成10年1月24日)