「“矢印タグ” を利用したテレビ用ウェブブラウザ・リンク選択方式」

2010年度論文賞受賞者の紹介

「“矢印タグ” を利用したテレビ用ウェブブラウザ・リンク選択方式」

[情報処理学会論文誌 Vol.51, No.2, pp.346-355]
[論文概要]

 近年,テレビ用ウェブブラウザでもウェブページを閲覧することが可能になった.しかし,既存の操作方式は使いにくいのが現状である.本論文では,テレビ用ウェブブラウザのための新しいリンク選択方式として,「矢印タグ方式」を提案する.提案方式では,矢印タグと呼ばれる矢印記号列を画面上の各々のリンクに割り当てる.ユーザは,テレビ画面に目を向けたまま,方向キーを数回押下するだけで所望のリンクを選択できる.実験の結果,矢印タグ方式では従来のフォーカス移動方式や数字タグ方式よりも速く操作でき,多くの被験者が従来の方式より好むことが明らかになった.



[推薦理由]

 本論文は「ウェブページ」を「テレビ画面で閲覧」する際の「ボタン式リモコンによる操作」という極めて日常的、かつ、急速に普及する利用シーンを取り扱ったものであり、ヒューマンインターフェース研究による発見、知見が多くの人々の生活に貢献する代表事例の一つとして挙げることができる。多くの読者が、本手法のインタフェースにて実際に操作してみたいと感じたものと想像する。画面内で数十個にも及びうるハイパーリンクを矢印ボタンの組み合わせで選択操作するという明快な着想の優位性を、堅実な課題設定、公正な実験設計、論理的な考察により丁寧に検証しており、研究・論文のスタイルとしても広く参考に資することができる。なお、本論文の基礎となる発表はシンポジウム「インタラクション2009」においてベストペーパー賞を受賞している。

前田 篤彦 君

 1998年武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業.2003年北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士後期課程修了.同年NTT入社.現在,NTTサイバーソリューション研究所にてヒューマンインタフェース関連の研究に従事.博士(知識科学).平成22年度山下記念研究賞.インタラクション2009,2011ベストペーパー賞.

稲垣 博人 君

 1984年慶応義塾大学工学部卒業.1986年同大学院工学専攻科修士課程修了.同年NTT入社.音声言語メディア処理,端末構成技術,アーキテクチャ・プロトコルの研究開発に従事.現在,NTTサイバースぺース研究所音声言語メディア処理プロジェクト・プロジェクトマネージャ(主席研究員)兼音声・言語基盤技術研究グループリーダ.

小林 稔 君

 1988年慶応義塾大学理工学部卒業.1990年同大学院修士課程修了.同年NTT入社,1996年マサチューセッツ工科大修士課程修了. CSCW, ヒューマンインタフェースの研究に従事. 現在, NTTサイバーソリューション研究所主幹研究員. 博士(工学).ACM, IEEE, 電子情報通信学会等の会員.

阿部 匡伸 君

  1982年早稲田大学理工学部卒業.1984年同大学院修士課程修了.同年日本電信電話公社(現NTT)入社.ATR自動翻訳電話研究所,MIT滞在研究員,NTTサイバーソリューション研究所プロジェクトマネージャを経て,2010年より岡山大学大学院自然科学研究科教授.この間,音声信号処理,音声合成,ライフログの研究に従事. 博士(工学). IEEE,日本音響学会,電子情報通信学会等の会員.