「論文用語の特許用語への自動変換」
2010年度論文賞受賞者の紹介
「論文用語の特許用語への自動変換」
[情報処理学会論文誌 データベース Vol.2, No.1, pp.81-92]
[論文概要]
論文中で使われる用語(論文用語)を特許中で使われる用語(特許用語)に自動変換する手法を提案する.これは,例えば「ワードプロセッサ」という論文用語を入力すると,「文書編集装置」や「文書作成支援装置」といった特許用語に自動的に変換する技術のことである.ユーザがある分野の特許と論文を同時に検索する際にこの技術を用いれば,その作業を支援することが可能になる.本研究では, 論文用語を特許用語に変換するための手法として,「引用手法」と「シソーラス手法」,およびこれらの2手法と既存手法の「Mase手法」を組み合わせた用語変換手法を考案し,実験によりその有効性を確認した.
[推薦理由]
本論文では,学術論文で使われる用語を特許で使われる用語に自動変換する手法を提案している.具体的には,特許と論文間の引用関係を利用した「引用手法」,自動構築した上位/下位シソーラスを利用した「シソーラス手法」,およびこれらの2手法と既存手法(Maseらの手法)を組み合わせた三つの手法を比較検討し,統合手法が最も優れていることを実験的に示している.本研究は,論文用語を特許用語に自動変換するという問題設定に新規性があるだけでなく,論文と特許を横断したジャンル横断情報アクセスを実現しているという点において,現実の応用課題に基づいた高い有用性有していると言える.また,論文自体の完成度も高いことから論文賞に推薦する.
難波 英嗣 君
1996年東京理科大学理工学部電気工学科卒業.2001年北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.同年日本学術振興会特別研究員.2002年東京工業大学精密工学研究所助手.同年広島市立大学情報科学部講師.2010年同大学院情報科学研究科准教授.現在に至る.博士(情報科学).テキストマイニング,情報検索,自動要約,特許情報処理に関する研究に従事.言語処理学会,人工知能学会,ACL,ACM各会員.
釜屋 英昭 君
2006年広島市立大学情報科学部知能情報システム工学科卒業.2008年広島市立大学大学院情報科学研究科博士前期課程修了.同年株式会社日立システムアンドサービス(現:株式会社日立ソリューションズ)入社.現在に至る.修士(情報科学)
竹澤 寿幸 君
1984年早稲田大学理工学部電気工学科卒業.1989年同大大学院博士後期課程修了.同年(株)国際電気通信基礎技術研究所入社.2007年広島市立大学大学院情報科学研究科教授.現在に至る.工学博士.音声対話翻訳の研究開発に従事.平18電子情報通信学会ISS論文賞受賞.電子情報通信学会,人工知能学会,日本音響学会,言語処理学会各会員.
奥村 学 君
1984年東京工業大学工学部情報工学科卒業.1989年同大学院博士課程修了.同年東京工業大学工学部情報工学科助手.1992年北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教授.2000年東京工業大学精密工学研究所助教授.2009年東京工業大学精密工学研究所教授.現在に至る.工学博士.自然言語処理,知的情報提示技術,語学学習支援,テキスト評価分析,テキストマイニングに関する研究に従事.人工知能学会, AAAI,言語処理学会,ACL, 認知科学会,計量国語学会各会員.
新森 昭宏 君
1983年京都大学理学部卒業.1990年コロラド大学コンピュータサイエンス科修士課程修了.2005年東京工業大学総合理工学研究科博士課程修了.1983年(株)インテック入社.現在(株)インテック 先端技術研究所 研究開発部長.博士(工学).技術士(情報工学部門).
谷川 英和 君
1986年神戸大学工学部システム工学科卒業.同年松下電器産業(株)入社.データベースシステムの研究開発に従事.1999年弁理士試験合格.2002年よりIRD国際特許事務所,現在に至る.博士(情報学).弁理士,特許工学に関する研究に従事.情報処理学会、日本知財学会各会員.