「手に保持されたセンサを用いた歩行者向けデッドレコニング手法の提案」

2011年度論文賞受賞者の紹介

「手に保持されたセンサを用いた歩行者向けデッドレコニング手法の提案」

[情報処理学会論文誌 Vol.52, No.2, pp.558-570]
[論文概要]

 歩行者向けデッドレコニングは,加速度センサや地磁気センサを用いて累積的に現在位置を求める手法であり,屋内環境における歩行者ナビゲーション実現のための技術として期待されている.しかし従来手法の多くは,センサを人体に固定することを前提としているため,昨今普及しつつあるセンサ内蔵携帯電話を用いる場合,利便性の低下が問題となる.そこで本論文では,携帯電話を手に持ち腕を振って歩いている場合でも歩行者の位置を特定できる手法を提案する.実証実験で得た延べ100km 以上の歩行データによって,提案手法の実環境における有効性を示した.




[推薦理由]

 本論文は加速度センサと地磁気センサを用いて測位を行う既存手法を改良し,GPSからの情報が不確かな場合でも精度よく測位できる手法を提案している.この手法は,多くの研究者から,シンプルなモデルで実用性が高いと評価を受けている.よって,ここに情報処理学会論文誌の論文賞に相応しいと判断し,論文賞として推薦する.

上坂大輔 君

 2005年和歌山大学大学院システム工学研究科修了.同年KDDI(株)入社.現在,(株)KDDI研究所研究主査.コンテキストアウェアネス,位置推定等の研究に従事.2009年UCS'09にてBest Paper Award受賞.

村松茂樹 君

 1999年東京大学大学院工学系研究科電子情報工学専攻修士課程修了.同年KDD(株)(現,KDDI(株))入社.(株)KDDI研究所にて,位置推定,行動認識,ウェブマッピング,ITS等の研究に従事.本会第73回全国大会大会優秀賞受賞.情報処理学会会員.

岩本健嗣 君

 2000年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了.2005年慶應義塾大学より博士(政策・メディア).現在,富山県立大学工学部 情報システム工学科講師.ユビキタスコンピューティング,AR(拡張現実),センサ応用アプリケーション等の研究に従事.

横山浩之 君

 1992年京都大学大学院修士課程修了.同年国際電信電話(株)(現,KDDI(株))入社.以来,研究所にて,通信網の性能評価・設計,携帯端末における状況推定の研究に従事.2000年電子通信学会学術奨励賞受賞.博士(工学).