「エラー検出可能な軽量3パーティ秘匿関数計算の提案と実装評価」

2011年度論文賞受賞者の紹介

「エラー検出可能な軽量3パーティ秘匿関数計算の提案と実装評価」

[情報処理学会論文誌 Vol.52, No.9, pp.2674-2685]
[論文概要]

 本論文では3主体の協調計算により入力値を秘匿しつつ算術演算や論理演算を実行できる3パーティ秘匿関数計算プロトコルを提案し,その実装評価を行なった結果を示す.提案プロトコルは,主体間の結託が無ければ,semi-honest モデルで入力値の秘匿性が保証され,malicious モデルで演算結果の改竄(エラー)を従来より効率良く検出できる.実装評価は CPU: Intel Core2 Quad 3.0GHz, RAM: 4GB の1台マシン環境で測定し,32ビット乗算1回を約 1.6μ秒で処理できた.また3パーティ秘匿関数計算プロトコルの応用として,個人に関する情報を安全に利活用できる技術として注目されているプライバシ保護データマイニングへの適用について考察を行う.




[推薦理由]

 情報理論的安全性の観点でデータの機密性を確保したままでデータの利用を,比較的少ない処理時間で実現した本論文は,多くの研究者から高い評価を受けている.ある一定の条件のもとでの成果であるとはいえ,今後の社会的な波及効果のある手法であると考えられ,ここに情報処理学会論文誌の論文賞に相応しいと判断し,論文賞として推薦する.

千田浩司 君

 2000年早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻修士課程修了.同年日本電信電話(株)入社.博士(工学).暗号応用技術の研究開発に従事.2001年電子情報通信学会SCIS論文賞.電子情報通信学会会員.

五十嵐大 君

 2008年東京大学大学院情報理工学修士課程修了.同年日本電信電話(株)入社.プライバシ保護データ活用技術の研究開発に従事.2008年ソフトウェア科学会PPL論文奨励賞.2009年本会CSS論文賞.2012年電子情報通信学会SCIS論文賞.ソフトウェア科学会会員.

濱田浩気 君

 2009年京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻博士前期課程修了.同年日本電信電話(株)入社.プライバシ保護技術,暗号応用技術の研究に従事.2012年電子情報通信学会SCIS論文賞.電子情報通信学会会員.

高橋克巳 君

 1988年東京工業大学理学部数学科卒.2006 年東京大学情報理工学博士課程修了.博士(情報理工学).1988年日本電信電話(株)入社.情報検索,データマイニング,情報セキュリティの研究開発に従事.2000年度本会論文賞.電子情報通信学会会員.