「インタラクティブ遊具を用いた子どもの遊び行動と発達の分析」

2012年度論文賞受賞者の紹介

インタラクティブ遊具を用いた子どもの遊び行動と発達の分析

[情報処理学会論文誌 Vol.53, No.4, pp.1238-1250]
[論文概要]

 本研究では,遊具で遊ぶ小学生程度の子どもの行動を,センサを子どもに取り付けることなく計測できる機能と,インタラクティブな遊びを可能にする機能を備えたクライミングウォール型センサ遊具を開発した.開発した遊具の各ホールド部には,荷重センサとLED 表示装置が取り付けられており,すべての力センサの出力を同期させて記録することが可能である.本稿では,開発したインタラクティブ遊具のシステム構成と開発遊具を用いた1,226 人の子どもの行動計測について述べる.また,計測データを用いた登り行動の予測モデルの開発,登り行動の発達の分析,遊びの際の落下の要因の分析を述べる.


[推薦理由]

 子どもが利用する遊具自体をセンサ化することにより、子どもが楽しく遊びながら行動計測を行える遊具の開発と、その遊具を用いて計測したデータに基づく行動モデルの構築と分析について述べた、独創的かつ優れた論文である。子どもの遊び行動を計測する枠組みの独創性、行動モデルの構築、上達と安全に関わる要因の詳細な分析と、論文全体を通しての完成度が高く、将来を担う子ども達の遊びを通した学びにおける情報システムの可能性を期待させることから、情報処理学会の論文賞に相応しいと判断し、推薦する。

井上美喜子 君

 平成21 年カリフォルニア州立大学サンノゼ校公衆衛生大学院地域健康教育専攻修士課程修了.平成22 年産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター入所.平成25年神戸大学大学院人間発達環境学研究科人間環境学専攻博士課程修了,博士(学術),現在, 産業技術総合研究所特別研究員(ポスドク).

西田佳史 君

 平成10年東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了,博士(工学).平成10 年通産省工業技術院電子技術総合研究所入所.平成13年 改組により、産業技術総合研究所 デジタルヒューマン研究ラボ研究員.平成22 年~同研究所デジタルヒューマン工学研究センター生活・社会機能デザイン研究チーム長.平成25 年同センター首席研究員.

北村光司 君

 平成20年東京理科大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士課程修了,博士(工学).同年産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター研究員.平成22年より同研究所デジタルヒューマン工学研究センター研究員,平成25年3月より主任研究員.ドコモ・モバイルサイエンス賞等を受賞.日本ロボット学会などの各会員.

大内久和 君

 平成23 年東京理科大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程修了,同年株式会社Speee に入社.現在,株式会社Speee 所属.

金一雄 君

 平成21 年東京理科大学理工学部機械工学科卒業.同年株式会社サキコーポレーション入社.平成22 年産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター入所.平成24年株式会社サキコーポレーション入社.現在,株式会社サキコーポレーション所属.

本村陽一 君

 平成5 年電気通信大学大学院博士前期課程修了.同年電子技術総合研究所入所.平成15 年産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター主任研究員.平成23 年より同研究所サービス工学研究センター副研究センター長.統計数理研究所客員教授,東京工業大学連携准教授兼任.博士(工学).知能情報処理,機械学習,サービス工学等の研究に従事.

溝口博 君

 昭和55年東京大学工学部卒業.昭和60年同大学大学院工学系研究科博士課程修了,工学博士.同年株式会社東芝入社.東京大学先端科学技術センター,埼玉大学を経て,平成14年より東京理科大学理工学部機械工学科.実世界中で人間とやりとりする機械及びそのためのインタフェースの研究に従事.日本機械学会,日本ロボット学会,IEEE 各会員.

城仁士 君

 昭和56 年九州大学大学院教育学研究科博士課程単位修得退学.昭和56年より長崎大学教育学部講師.平成4年より神戸大学発達科学部助教授.平成9年カリフォルニア大アーバイン校にて災害ストレスについて長期在外研究.平成10年より神戸大学発達科学部教授.平成19年より神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授.教育学博士.学校心理士(第51381号).