「An Adaptive Route Selection Mechanism Per Connection Based on Multipath DNS Round Trip Time on Multihomed Networks」

2012年度論文賞受賞者の紹介

An Adaptive Route Selection Mechanism Per Connection Based on Multipath DNS Round Trip Time on Multihomed Networks
[Journal of Information Processing Vol.20 No.2 pp.386-395]

[論文概要]

 インターネットの迅速な普及に伴い、WWWや電子メールを初めとするインターネットサービスは最早人間の社会活動を支える通信手段として必要不可欠になっている。これらのサービスを安定かつ効率的に提供する一つの手法としてマルチホームネットワークが活用されている。本論文では、従来手法での適切な経路選択や動的トラフィック分散問題を解決するために、通信の際に行う名前解決の段階で、DNS(Domain Name System)を使用した往復時間測定による最適な動的経路選択手法を提案する。本研究ではこのようなシステムを設計及び実装し、実験ネットワークを構築し実験を行い、提案手法が期待した通りに機能することを確認した。


[推薦理由]

 本論文は、マルチホーム環境下のインターネットサービスにおいてコネクション毎に適切な経路選択をクライアントに行わせるための新しい手法を提案している。経路選択は負荷分散や耐故障性の向上のために重要なので、この課題に対する手法は種々提案され一部は実用にも供されているが、本論文の提案方式はDNSサーバの配置及びCNAMEレコード解決時の動作を巧妙に利用したもので、実際に利用される可能性のある複数の経路における遅延を実測した上で適切な経路選択を可能にする。論文では、WWW及び電子メールサービスにおいて負荷分散及び耐故障性に関して想定通りに動作することが実装実験によって示されている。実用上有意義な課題を、DNSという一般的な技術の巧妙な利用によりサーバ側の変更のみで解決しうることを示した点において、本論文は当該分野の研究・開発に対して新鮮な刺激となるものであり、論文賞に値する。

金勇 君

 2009年岡山大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了。2012年同大学大学院博士後期課程修了。2012年情報通信研究機構光ネットワーク研究所研究員、現在に至る。博士(工学)。ネットワークアーキテクチャ、トラフィックエンジニアリング、インターネット連携等の研究に従事。

山井成良 君

 1986年大阪大学大学院博士前期課程修了.1988年同大学院基礎工学研究科博士後期課程退学. 奈良工業高等専門学校,大阪大学,岡山大学勤務を経て,2006年より岡山大学総合情報基盤センター(現情報統括センター)教授.分散システム,ネットワーク運用管理,ネットワークセキュリティの研究に従事.IEEE,電子情報通信学会各会員.博士(工学).

岡山聖彦 君

 1992年大阪大学院基礎工学研究科博士前期課程修了.同年同大学工学部助手.奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助手,岡山大学工学部助手などを経て,2010年同大学情報統括センター助教.2011年同准教授.博士(工学).インタネットアーキテクチャ,ネットワーク管理,ネットワークセキュリティの研究に従事.

中村素典 君

 1994年京都大学大学院工学研究科博士後期課程単位取得退学. 立命館大学理工学部助手,京都大学学術情報メディアセンター助教授などを経て,2007年より国立情報学研究所特任教授, 現在に至る.博士(工学).IEEE,電子情報通信学会,日本ソフトウェア科学会各会員.コンピュータネットワーク,ネットワークコミュニケーション,認証連携等の研究に従事.