「Chord#における経路表の維持管理コスト削減手法の提案とその評価」
2013年度論文賞受賞者の紹介
Chord#における経路表の維持管理コスト削減手法の提案とその評価
[情報処理学会論文誌 Vol.53, No.12, pp.2752-2761]
[論文概要]
Chord#は範囲検索が可能な構造化P2Pネットワークの一種であり,ノード数nに対してO(log n)ホップで検索が可能である.Chord#の経路表はノードの挿入や削除,障害に対応するために定期的に更新する必要があるが,本稿ではこの更新処理のコストを削減する方式を提案する.提案手法では,経路表を2次元配列に拡張した上で,隣接するノードの経路表が類似していることを利用して更新処理に必要なメッセージ数を数分の一に削減する.さらに,リモートノード離脱時の経路表更新処理の高速化,およびネットワーク近接性を利用したルーティングも実現した.
[推薦理由]
携帯電話網、Wifiサービスなどを通じて、ネットワークに接続される端末は増加の一途をたどっている。このような端末の増加に対して、構造化P2Pネットワークについて、ノードの更新、削除、検索といった観点でコストを削減することは重要な課題である。本論文は、こういった更新、削除のたびに発生する経路表の維持管理コストの削減手法を提案し、シミュレーションにより評価し、有効性を示している。論文としての完成度も高く、優れた論文であることから、情報処理学会の論文賞に相応しいと判断し、推薦する。
呉承彦 君
平成22年大阪工業大学情報システム学科卒業.平成24年大阪市立大学大学院創造都市研究科修士課程修了.同年同研究科博士(後期)課程入学.現在に至る.修士(都市情報学).分散システム,P2Pシステムの研究に従事.
安倍広多 君
平成6年大阪大学大学院基礎工学研究科情報工学分野博士前期課程修了.同年NTT入社.平成8年大阪市立大学学術情報総合センター助手.平成12年同講師.平成15年同大学院創造都市研究科講師.平成17年同助教授.平成24年より同教授.博士(工学).基盤ソフトウェア,分散ネットワーク等に興味を持つ.電子情報通信学会,IEEE各会員.
石橋勇人 君
昭和62年京都大学大学院工学研究科修士課程情報工学専攻修了.平成元年同博士後期課程退学後,京都大学大型計算機センター助手等を経て,平成19年より大阪市立大学大学院創造都市研究科教授.博士(情報学).高速ネットワーク,ネットワーク管理システム等に関する研究に従事.電子情報通信学会,人工知能学会,IEEE,ACM各会員.
松浦敏雄 君
昭和50年大阪大学基礎工学部情報工学科卒.昭和54年同大学院基礎工学研究科博士後期課程退学.同年同大情報工学科助手.平成4年同大学情報処理教育センター助教授.平成7年大阪市立大学教授.平成15年同大学院創造都市研究科教授.博士(工学).分散システム運用技術,情報教育等に興味を持つ.電子情報通信学会,ACM,IEEE各会員,本会フェロー.