「アウトオブオーダ型クエリ実行に基づくプラグイン可能なデータベースエンジン加速機構」
2014年度論文賞受賞者の紹介
アウトオブオーダ型クエリ実行に基づくプラグイン可能なデータベースエンジン加速機構
[情報処理学会論文誌 データベース Vol.7, No.2, pp.104-116]
[論文概要]
アウトオブオーダ型クエリ実行とは,動的タスク分解と非同期入出力に基づく実行方式であり,同期入出力・逐次処理を基本とする従前の実行方式と比べ,特に大規模データの選択的クエリ実行において高い性能を発揮する.本論文では,既存DBエンジンに対してアウトオブオーダ型DBエンジンを加速機構としてプラグインし,処理性能をアウトオブオーダ型と同水準まで向上させる手法を提案した.PostgreSQLを対象とする試作実装PgBoosterを開発し,160ドライブ・24コアサーバからなる環境で性能評価を行い,最大で350倍,複数のクエリで100倍超の性能向上を確認した.
[推薦理由]
本論文は,アウトオブオーダー型クエリ実行という新しいアイデアを一般のRDBMSにも導入するための加速機構を提案している。アウトオブオーダ型クエリ実行方式は、選択性を有するアドホックな分析クエリ実行において高速性を発揮するとされているが、システム全体を再設計するなどのために、その実現は必ずしも容易ではない。本論文では、データベースエンジンにおけるクエリ実行方式を従来のインオーダ型から変更することなく、アウトオブオーダ型クエリ実行機能をプラグイン可能なデータベースエンジン加速機構として組み込む手法を提案している。実際にPostgreSQL上の加速機構を実装、大規模データに対する評価実験を行い、高い性能を実証している。技術的な内容の高さに加えて、オープンソースSQLDBMSでの実装により、今後有用な応用が期待される。また,詳細な議論・実験が行われており,論文の質という面でも論文賞に相応しいと考える.
早水悠登 君
平成21年東京大学工学部電子情報工学科卒業.平成23年同大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻修士課程修了.平成26年同大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程単位取得退学.同年,博士(情報理工学).日本学術振興会特別研究員DC2を経て,現在,東京大学生産技術研究所特任研究員.データベースシステムに関する研究に従事.本会会員.
合田和生 君
平成12年東京大学工学部電気工学科卒業,平成17年同大学院同専攻博士課程単位取得退学.同年,博士(情報理工学).日本学術振興会特別研究員等を経て,現在,東京大学生産技術研究所特任准教授.データベースシステム,ストレージシステムの研究に従事.本会,日本データベース学会,ACM,IEEE,USENIX各会員.
喜連川優 君
昭和58年東京大学工学系研究科博士課程修了,工学博士.同生産技術研究所教授,平成25年4月より国立情報学研究所所長,平成25年6月より本会会長.データベース工学の研究に従事.ACM SIGMOD E.F. Codd Innovations Award.紫綬褒章.本会,電子情報通信学会,ACM,IEEE,フェロー.