「パブリックスペース設置型無線APにおけるダウンリンク帯域の不正占有対策」

2016年度論文賞受賞者の紹介

パブリックスペース設置型無線APにおけるダウンリンク帯域の不正占有対策

[情報処理学会論文誌 Vol.57 No.2, pp.426-437]
[論文概要]

 スマートフォン等の普及で急激に増加した携帯電話網のアクセストラフィックを無線APにオフロードすることが求められている.しかし,公共エリアの無線APを利用するユーザ間に社会的なつながりはなく,自端末の通信のみを優先する利己的な行為が問題となる.本論文は,無線APのダウンロード帯域の不正獲得対策として,既存端末との通信の互換性を維持しながら不正行為の影響を排除する手法を提案した.評価結果から,提案手法は1)端末間公平性を維持しながら不正行為の影響を軽減できること,ならびに,2)スループットを不正端末なしのネットワークより向上できることの2点を明らかにした.

[推薦理由]

 本論文は、無線LANにおいて、自己の通信のみを優先させる利己的なユーザが存在した場合に、その不正を排除する仕組みを提案している。具体的には、IEEE802.11MACのAPにおいてACKのNAV値を不正操作することにより送信機会を不正に得る端末をAP側で抑制することにより、通常端末のスループット低下を防ぎ公平性を担保している。本提案手法は、クライアント側を変更する必要がなく、AP側に抑制機能を付与するだけで,従来手法よりも高スループットを実現できる有用性の高い手法である。さらに、提案手法の実現可能性についても十分に考慮されており、信頼性と有効性も高い。以上の理由により、情報処理学会論文誌の論文賞に相応しいと判断し、推薦する。

新田翔平 君

 平成27年3月県立広島大学経営情報学科卒業.在学中は無線ネットワークに関する研究に従事.現在,(株)日立ソリューションズ西日本に勤務.

重安哲也 君

 平成10年徳山高専情報電子卒.山口大学理学部,同大大学院博士前期課程を修了し,大阪大学大学院博士後期課程修了.博士(工学).広島国際大学助手を経て,現在,県立広島大学准教授.主に,無線通信プロトコルに関する研究に従事.DPSWS2007最優秀論文賞,平成20年度山下記念研究賞,CISIS2011 Best Paper Award.