「電力ディスアグリゲーション技術の小規模店舗適用」

2016年度論文賞受賞者の紹介

電力ディスアグリゲーション技術の小規模店舗適用

[情報処理学会論文誌 コンシューマ・デバイス&システム Vol.6 No.2, pp.32-42]
[論文概要]

 近年,省エネへの意識の高まりから,Energy Management System (EMS) 市場が注目されている.EMSの主要な機能の一つとして電力見える化があり,低コストで電力見える化を実現する技術として,分電盤で計測する電流波形から機器の状態と消費電力を推定する電力ディスアグリゲーション技術がある.本研究では,小規模多店舗向けに電力ディスアグリゲーション技術を用いた電力見える化システムを開発し,コンビニエンスストアで実証実験を行った.その結果,代表的な機器に関して,機器状態推定は約90%以上,消費電力推定は平均絶対値誤差で約15%以下の精度を実現した.

[推薦理由]

 分電盤で計測する電流波形から動作中の機器識別と消費電力推定を行う電力ディスアグリゲーション技術は、EMS (Energy Management System)の主要な機能である電力見える化を簡便かつ低コストで実現する技術として重要視されている。本論文は、電力ディスアグリゲーション技術を用いた電力見える化システムを開発するとともに、小規模店舗の典型であるコンビニエンスストアにおいて実証実験を行い、多店舗展開時の機器情報の再利用や未登録機器対応を考慮した提案方式の有効性を確認した点が、要素技術に留まらずシステムとしての完成度や新規性、市場への影響度を評価する本トランザクションの編集方針から高く評価される。以上より、情報処理学会論文誌の論文賞に相応しいと判断し、推薦する。

尾崎 友哉 君

 1990年名古屋大学大学院工学研究科修士課程修了.同年(株)日立製作所入社.組み込みシステム,ヒューマンマシンインタフェース,EMS(Energy Management System)に関する研究開発に従事.

内田 尚和 君

 2005年法政大学大学院工学研究科修士課程終了.同年(株)日立製作所入社.以後,組み込みシステム,ディスアグリゲーション技術,ヒューマンマシンインタフェースに関する研究開発に従事.自動車技術会会員.

峰野 博史 君

 1999 年静岡大学大学院理工学研究科修士課程修了.同年日本電信電話(株)入社.2002 年 10 月より静岡大学情報学部助手.2011 年 4月より静岡大学情報学部准教授.モバイルコンピューティング,知的IoTシステムに関する研究に従事.2012 年長尾真記念特別賞.IEEE,ACM,電子情報通信学会各会員.JSTさきがけ研究者,博士(工学).