「直近移動能力を考慮した車椅子操作推定モデル」
2017年度論文賞受賞者の紹介
直近移動能力を考慮した車椅子操作推定モデル
[情報処理学会論文誌 Vol.57 No.10, pp.2316-2326]
[論文概要]
車椅子の移動を妨げるバリア情報を収集することが社会的に求められている.加速度・角速度を分析して車椅子操作内容を推定できれば,バリアの存在を検出できる可能性がある.しかし,車椅子操作時に発生する加速度・角速度は,同じ操作であってもユーザ・操作習熟度・状況によって大きく振る舞いが異なる.そこで我々は,ユーザの直近の移動能力を推定した後に,その移動能力に適した推定器で操作内容を推定するアプローチを提案する.ディープラーニングを用いて提案コンセプトを実装し,実際の車椅子移動データを用いて検証実験を行った結果,98.9%の精度で操作を推定できることが判明した.
[推薦理由]
本論文は、車椅子に搭載された加速度・角速度センサを用いて車椅子ユーザの操作を推定する際に、ユーザの直近の移動能力を推定することでユーザに適した推定器で操作内容を推定する2段階推定モデルを提案している。さらに、実走行データに基づいて構築した約25万件のデータセットを用いて検証実験を行い、本手法の高い推定精度と有効性を明らかにした。新規性が高く、大規模データセットを用いた評価は説得力がある。さらに社会的なニーズに合致しており高い実用性も期待できる。よって、論文賞にふさわしいと判断し、ここに推薦する。
宮田章裕 君
2005年慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了.同年日本電信電話株式会社入社.2008年慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了.2016年より日本大学文理学部情報科学科准教授.インタラクション,実世界指向インタフェース,バリアフリーの研究に従事.本会,ACM,日本VR学会,HI学会,日本DB学会各会員.博士(工学).
伊勢崎隆司 君
2013年筑波大学大学院システム情報工学研究科修了.同年日本電信電話株式会社入社.現在,NTTサービスエボリューション研究所研究員.知能機能システムの研究に従事.
中野将尚 君
2014年神戸大学システム情報学研究科修了.同年日本電信電話株式会社入社.現在,NTTサービスエボリューション研究所に所属.ヒューマンコンピュータインタラクションの研究に従事.
石原達也 君
2007年東京大学大学院情報理工学系研究科修了.同年日本電信電話株式会社入社.現在,NTTサービスエボリューション研究所研究主任.ヒューマンコンピュータインタラクションの研究に従事.ロボット学会,電子情報通信学会各会員.
有賀玲子 君
2010年慶應義塾大学大学院理工学研究科修了.同年日本電信電話株式会社入社.現在,NTTサービスエボリューション研究所研究員.ヒューマンインタフェースの研究に従事.
望月崇由 君
2001年早稲田大学大学院人間科学研究科修了.同年日本電信電話株式会社入社.2005~2014年NTTレゾナントにて,検索サービスを中心としたポータルサイト向けサービスの開発.現在,NTT研究企画部門担当課長.NTTグループのAI技術corevoに関する研究活動の推進業務を担当.
渡部智樹 君
1992年横浜国立大学工学部卒業.同年,日本電信電話株式会社入社.主に,家電制御技術,生体状態計測・推定技術の研究開発に従事.現在NTTサービスエボリューション研究所主任研究員.博士(工学).情報処理学会,電子情報通信学会,各会員.
水野 理 君
1994年早稲田大学理工電気工学科大学院修了.同年日本電信電話株式会社入社.現在,NTT知的財産センタ.日本音響学会,言語処理学会各会員.