「PR-SCTPを用いた分割ダウンロード方式における所要時間とブロック到達順序を考慮した要求方式」

2019年度論文賞受賞者の紹介

PR-SCTPを用いた分割ダウンロード方式における所要時間とブロック到達順序を考慮した要求方式

[情報処理学会論文誌 Vol.60 No.2, pp.469-478]
[論文概要]

 パケット損失が頻発する劣悪なネットワーク環境において,われわれはバックオフによる待ち時間を低減するPR-SCTPによるTTL制限つき再送機構と順不同配送を組み合わせたダウンロード方式を提案してきた.本稿では,HTTPストリーミング再生など順序を重視するアプリケーションでの利用も考え,再送する順序を全く考慮しない再要求遅延方式と確率的に考慮する確率的再要求遅延方式を,ダウンロード時間と到達順序について評価した.その結果,再要求遅延方式では短時間でのダウンロードの実現,また確率的再要求遅延方式では順序逆転の度合いの調節効果を確認できた.

[受賞理由]

 無線通信向けの映像ストリーミング再生等に利用することを主たる目的として,ファイルを分割・ダウンロードする場合に,所要時間とブロック到達順序を考慮して確率的に転送要求を出す方式を提案している.本論文は,3名の査読者全員が満点の評点かつ論文賞への推薦をしており,新規性・有用性共に高い.特に,従来研究と実験的に比較し,有効性をしっかりと示しており,実際の無線での環境での利用が期待できる.商用化が始まろうとしている第5世代携帯電話網への応用が期待される技術であり,論文賞に価する.

武田 和也 君

2015年広島市立大学情報科学部卒. 2017年同大大学院情報科学研究科博士前期課程了. PR-SCTPを用いた分割ダウンロード方式に関する研究に興味をもつ.

舟阪 淳一 君

1993年東北大理学部卒. 1995年同大大学院理学研究科博士前期課程了. 1997年奈良先端科技大学院大情報科学研究科博士前期課程了. 1999年同後期課程了. 同年広島市大情報科学部助手. 2007年同大大学院情報科学研究科講師. 2009年より同准教授.博士(工学). インターネットにおける効率的なデータ交換方式の研究に従事.