「ジャミング転移による硬さおよび形状の提示が可能な食感提示システムの提案」

2019年度論文賞受賞者の紹介

ジャミング転移による硬さおよび形状の提示が可能な食感提示システムの提案

[情報処理学会論文誌 Vol.60 No.2, pp.376-384]
[論文概要]

 本論文では,ジャミング転移を活用し,口内に様々な硬さおよび形状を提示することで食感を表現するシステムを提案する.
ジャミング転移とは,密度によって粉粒体が異なる振る舞いをする物理現象のことである.
本研究ではまず,空気圧によりジャミング転移を発生させるプロトタイプを実装し,ユーザ実験を行った.
ユーザ実験では,プロトタイプを用いて提示可能な硬さの範囲および分解能について調査した.
結果,範囲としては,マシュマロ程度の柔らかさからシャーベット程度の硬さまで,
分解能としては,最大4種類の異なる硬さを口内に提示が可能ということが確認できた.

[受賞理由]

 本論文では,ジャミング転移を活用した,食感を表現するシステムを提案している.食はヒトにとって欠かせない行為であるものの,実装上の困難さも相まって研究例は多くはない.そのような中で,本論文はチャレンジングな課題に取り組んでいる.ユーザスタディを通じて,4種類の異なる硬さを口内に提示できることを示したことは,提案手法の有効性を示しており,今後の食に関する研究分野が活性化することも期待できる.
独創的かつ新規性に優れた論文であり,論文賞に価する.

笹川 真奈 君

2017年お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科博士前期課程修了. 同年,日本電信電話株式会社入社. 主に,ユビキタスコンピューティングに関する研究に従事. 現在NTTサービスエボリューション研究所研究員.

新島 有信 君

2012年日本電信電話株式会社入社. 2017年東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了. 主に,VRにおける触覚提示技術やウェアラブルセンサを用いた身体動作推定技術に関する研究に従事. 現在NTTサービスエボリューション研究所研究員. 博士(工学).

青木 良輔 君

2007年日本電信電話株式会社入社. 2014年東北大学大学院情報科学研究科システム情報科学専攻博士過程終了. 主に,複数動作を組み合わせた操作インタフェース,インタラクションデザイン,着衣型ウェアラブルセンシング,生体情報処理,運動学習に関する研究開発に従事. 現在NTTサービスエボリューション研究所研究主任. 博士(情報科学).

渡部 智樹 君

1992年横浜国立大学工学部卒業. 同年,日本電信電話株式会社入社. 主に,家電制御技術,生体状態計測・推定技術の研究開発に従事. 現在NTTサービスエボリューション研究所主任研究員. 博士(工学). 情報処理学会,電子情報通信学会,各会員.

山田 智広 君

1992年新潟大学大学院修士課程修了. 同年,日本電信電話株式会社入社. 主に,ディジタルコンテンツ配信,アプライアンス,ロボティクス技術に関する研究開発に従事. 2019年NTTエレクトロニクス株式会社入社. 主に,映像コンポーネント,LSIの開発に従事. 現在NTTエレクトロニクス株式会社映像コンポーネント事業本部長. 電子情報通信学会LOIS研究会委員長,IEEE会員.