「気圧センサを用いたステップ認識手法」

2021年度論文賞受賞者の紹介

気圧センサを用いたステップ認識手法

[情報処理学会論文誌 Vol.62 No.1, pp.235-245]
[論文概要]

 歩行者のステップ認識は,屋内位置推定の一手法である歩行者自立航法(PDR)の構成要素として利用されている.ステップ認識には,歩行の際にセンサ信号が顕著に周期的な変化を示す加速度センサを用いるのが一般的であるが,それに対し本稿では気圧センサを利用したステップの認識を行う手法について提案する.我々はスマートフォンを手持ちし意識的に腕振りをした場合やズボンのポケットに装着した場合などについて,気圧センサの値が歩行に伴って周期的に変化する現象を発見した.この周期的な変化を,デジタルフィルタ・極値発見・閾値処理といった単純なアルゴリズムで捉えてステップ認識を行う.


[受賞理由]

 本論文では,スマートフォンに搭載されている気圧センサで得られるデータを用いて,人のステップを検出する新たな手法を提案している.人のステップの検出は,通常,加速度センサを利用することが一般的であり,気圧センサを用いるという発想は新規性が高い.さらに,評価実験はモバイル分野をはじめとして様々な分野における活用の可能性を示しており,今後の発展性も期待できる.論文の到達点および完成度は高く,論文賞にふさわしいものと判断してここに推薦する.

梶 克彦 君

2002年名古屋大学工学部電気電子工学科卒業.2007年同大学大学院情報科学研究科博士課程修了.博士(情報科学).NTTコミュニケーション科学基礎研究所リサーチアソシエイト,名古屋大学大学院工学研究科助教を経て,2015年より愛知工業大学情報科学部准教授.位置情報システム,コミュニケーション支援の研究に従事.

磯村 奎介 君

2017年愛知工業大学情報科学部卒業,2019年同大学大学院経営情報科学研究科修士課程修了.行動センシング・屋内位置推定の研究に従事.

高井 飛翔 君

2016年愛知工業大学情報科学部入学.行動センシング・屋内位置推定の研究に従事.