「ウェアラブルコンピューティングにおける周波数操作による聴力自在化技術の提案」

2021年度論文賞受賞者の紹介

ウェアラブルコンピューティングにおける周波数操作による聴力自在化技術の提案

[情報処理学会論文誌 Vol.62 No.2, pp.617-630]
[論文概要]

 人の聴力は自分で制御することが難しく,必要のない情報まで取得したり,重要な情報を逸失したりすることがある.本研究では,マイクとスピーカを搭載したイヤホン型のウェアラブルデバイスに着目し,ユーザが自在に自身の聴力を操作するための聴力自在化技術のフレームワークを提案した.具体的には,マイクで取得した外界音の周波数を操作し,変換後の音をスピーカでユーザに提示することで,従来の聴力では聞こえなかった音の取得や,不必要な音の削除が可能となる.本稿では,5種類の周波数操作方法,7種類の想定アプリケーションを提案した.

[受賞理由]

 本論文では, ユーザの耳元のマイクで取得した外界音の周波数を操作し, 変換した音をリアルタイムでユーザに提示するフレームワークを, 「聴力自在化」というコンセプトとともに提案している. 新たな研究領域を開拓する新規性の高い論文である. 実装・評価実験も様々な角度から実施されており学術的にも価値が高く, また, コンセプトを具現化する7種類のアプリケーションも説得力があり, 応用性にも優れた論文である. 以上の理由により論文賞に値するものと考える.

渡邉 拓貴 君

2012年神戸大学工学部電気電子工学科卒業.2014年同大学大学院工学研究科博士前期課程修了.2017年同大学大学院工学研究科博士後期課程修了.同年より北海道大学大学院情報科学研究院助教,現在に至る.2021年よりJSTさきがけ研究員を兼務.博士(工学).ウェアラブル・ユビキタスコンピューティングの研究に従事.

寺田 努 君

1997年大阪大学工学部情報システム工学科卒業.1999年同大学大学院工学研究科博士前期課程修了.2000年同大学院工学研究科博士後期課程退学.同年大阪大学サイバーメディアセンター助手.2005年同講師.2007年神戸大学大学院工学研究科准教授.2018年同大学院工学研究科教授,現在に至る.博士(工学).ウェアラブル・ユビキタスコンピューティングの研究に従事.