「一人称ライフログ映像からの顔検出に基づいた社会活動計測」
2021年度論文賞受賞者の紹介
一人称ライフログ映像からの顔検出に基づいた社会活動計測
[情報処理学会論文誌 Vol.62 No.2, pp.607-616]
[論文概要]
胸に装着したカメラによる一人称ライフログ映像に映り込んだ対面者の顔の数を数えることで,カメラ装着者の社会活動量を計測する方法を提案した.社会的な場への参与の深さを測るために,検出された顔ごとの近接性と時間継続性の重みづけをする工夫をした.提案手法が社会活動の計測に役立っているかを確認するために,当事者及びその知人たちに協力してもらい実際のライフログ映像を閲覧して複数シーンの社会活動量の多寡の評価をしてもらった.その結果,提案手法がその主観評価をよく再現できることが確認され,単純に顔の数を数えるだけの手法よりも適切な結果を提示できることが確認できた.
[受賞理由]
新型コロナウイルスの問題を契機に,人々の社会活動の変化が注目を集めている.本論文では,被験者の社会活動量の定量化を目的とし,被験者が胸に装着したカメラのみを用いる新たな手法を提案している.特に一人称映像中の対面者の顔から,間接的に被験者の社会活動量を測るという発想がユニークであり,新規性が高い.また,活動種別や被験者の役割を明らかにできるなど,有用性の高さも示唆されている.今後,収集した情報の活用方法や大規模な実験の実施等,さらなる議論の発展が期待される.加えて,論文の完成度も高く,査読過程では高評価を得ている.以上から論文賞にふさわしいものと判断し,ここに推薦する.
奥野 茜 君
2017年に公立はこだて未来大学卒業,2019年に同大学大学院博士前期課程修了,2022年に同大学大学院博士後期課程満期退学,現在,日立Astemo株式会社所属.2018年度IPA未踏IT人材発掘・育成事業に採択.
角 康之 君
1990年に早稲田大学卒業, 1995年に東京大学大学院修了後,ATR主任研究員,京都大学准教授を経て,2011年より公立はこだて未来大学教授.博士(工学).文部科学大臣表彰若手科学者賞,IPA未踏スーパークリエータ認定,本会長尾真記念特別賞など受賞.
専門は,知識工学,体験メディア,インタラクションの理解と支援.本会フェロー.