「大規模ユーザの滞在情報に基づくエリアの特徴付けとCOVID-19による影響分析」
2022年度論文賞受賞者の紹介
大規模ユーザの滞在情報に基づくエリアの特徴付けとCOVID-19による影響分析
[情報処理学会論文誌 Vol.62 No.10, pp.1644-1657]
[論文概要]
都市や地域の各エリアがどのように利用されているかを知ることは,マーケティングや都市設計の分野で有用であり,これまでは大規模なアンケート調査などで実現されてきた.しかし,時間経過に伴う様々な事象 (都市の発展,季節の変化,パンデミックの発生) によるエリア利用形態の変化を検知するには多大なコストが必要となり,その定常的な利用は現実的ではない.本論文では,大規模ユーザの滞在情報からエリアを特徴付ける手法 (Area2Vec) を提案する.またこの手法を用い,人々の行動が COVID-19 の影響によりどのような変化があったかも明らかにする.
[受賞理由]
本論文は、スマートフォンによって収集される多数のユーザの位置情報から生成される滞在情報を利用し、都市や地域の各エリアをベクトル分散表現として生成するArea2Vecと称する手法を提案している。Word2Vecを参考にエリアをベクトル化するArea2Vecという着想が、まずもって興味深く斬新である。Word2Vecが自然言語分野に大きな影響を与えたことを鑑みるに、提案手法であるArea2Vecは新しい研究分野を切り開く可能性を秘めていると言って過言ではない。COVID-19の中で、本トピックは重要な取り組みであり、大規模(17,897人)かつ長期間に渡る実データを用いた詳細な評価と考察を通じ、その有効性を示している。COVID-19の影響により人々の行動が変化していることを、提案手法を使って観測できている点が多くの読者の興味を惹くだろう。人流解析は今後さらに重要性が増すと考えられ、Area2vecはそのキー技術になりうるものである。
庄子 和之 君
2019年名古屋大学工学部電気電子・情報工学科卒業を経て,同大学博士後期課程学生.
青木 俊介 君
2020年カーネギーメロン大学計算機工学科 (Electrical & Computer Engineering) PhD取得.船井情報科学振興財団奨学生.2020年11月より名古屋大学未来社会創造機構特任助教.自動運転システム,サイバーフィジカルシステムに関する研究に従事.
米澤 拓郎 君
2010年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期課程博士号取得後,同大学院特任助教,特任講師,特任准教授を経て,2019年より名古屋大学大学院工学研究科准教授.主に,ユビキタスコンピューティングシステム,ヒューマンコンピュータインタラクション,センサネットワーク等の研究に従事.本会会員. ACM,IEEE,電子情報通信学会各会員.
河口 信夫 君
1990年名古屋大学工学部電気電子工学科卒業.1995年同大学大学院工学研究科情報工学専攻博士課程満了.同年同大学工学部助手,同大学講師,准教授を経て,2009年より同大学大学院工学研究科教授.NPO位置推定サービス研究機構Lisra代表理事.モバイルコミュニケーション,ユビキタスコンピューティング,行動センシングの研究に従事.博士(工学).ACM,IEEE,人工知能学会,日本ソフトウェア科学会,電子情報通信学会,日本音響学会各会員.本会シニア会員.