「Kuiper Belt:VR における自然ではない視線角度を用いた視線入力手法の提案」

2023年度論文賞受賞者の紹介

Kuiper Belt:VR における自然ではない視線角度を用いた視線入力手法の提案

[情報処理学会論文誌 Vol.64 No.2, pp.400-416]

[論文概要]

目の水平方向の最大可動範囲は平均45度である.しかし目が限界まで動くことはほとんどなく,視線は基本的に視線と頭部方向がなす角度(視線角度)25度以内に分布している.我々はこの25度-45度の領域を“Kuiper Belt”と名付けた.当領域はユーザが意図的に目を動かさない限り視線が移動することはほとんどない.ゆえにKuiper Beltを活用することで,VRにおける視覚探索時の意図しない選択操作が減少すると考えられる.実験結果より,Kuiper Beltを活用することで視覚探索時の選択操作の誤入力の減少が可能であることが示された.

[受賞理由]

本論文は,眼球の可動範囲のうち,自然には使われない角度の領域のみを意図的な動作と判断し,この領域への眼球移動をHMDへの入力インタフェースに利用することで,VR における視覚探索時の意図しない選択操作であるMidas Touch問題を回避する手法を提案しており,学術的に高い新規性を備えている.また,提案手法は普段は使われない視線方向を操作に活用できることを見出しており,メタバース時代のVR/ARの操作性向上を極めて高い水準で達成できる技術となっている点で高い有用性もある.以上の理由により論文賞に値するものと判断し,ここに推薦する.

崔 明根 君

2024年北海道大学大学院情報科学院博士後期課程終了.博士(情報科学).現在,筑波大学情報システム系で日本学術振興会特別研究員PD.本会会員.

坂本 大介 君

2008年公立はこだて未来大学大学院システム情報科学研究科博士(後期)課程修了.博士(システム情報科学).東京大学で日本学術振興会特別研究員PD,JSTERATO五十嵐デザインインタフェースプロジェクト研究員,東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻助教,特任講師を経て現在,北海道大学大学院情報科学研究院准教授.本会会員.ACM,IEEE各会員.

小野 哲雄 君

1997年北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.同年(株)ATR知能映像通信研究所客員研究員.2001年公立はこだて未来大学助教授,教授を経て,2009年北海道大学大学院情報科学研究科教授,2023年同大学院情報科学研究院特任教授.博士(情報科学).HAI,HRI,ロボット情報学などの研究に従事.本学会フェロー.