「ソフトウエアプロセスの持続的な改善を誘導するチェックリストの実装手順」(Vol.42,No.3)

平成13年度論文賞受賞者の紹介

「ソフトウエアプロセスの持続的な改善を誘導するチェックリストの実装手順」(Vol.42,No.3)

[論文概要]
 ソフトウエアプロセスの持続的な改善を促す方法論としてCMMが注目されてきている.このモデルを応用した改善活動の中核ツールであるチェックリストは,現場の今の成熟度を診断するためだけでなく,会社が期待する成熟度レベルに向けて現場を誘導するための手段ともなる.よって、その効果的な実装方法を追究する価値がある.筆者らは,過去10年近くCMMを参考にした改善活動を実践する過程でチェックリストの実装手順を確立し、多くの実プロジェクトに適用してその実用性を確認した.本稿では,現状の諸課題を入力として5段階の処理を経て目的とするチェックリストを生成する実装手順を提案した.
 Capability maturity model and CMM are registered trademarks in the U.S. Patent and Trademark Office.

[推薦理由]
 ソフトウェアプロセスの改善のための能力成熟度モデル (CMM: Capability Maturity Model) は,プロセス改善を行うにあたっての概念的共通理解を与える参照モデルとしては優れているが,実際の組織活動にこれを適用するには周到な実行方策を必要とする.本論文では,プロセス改善活動の要として,適切な構造と作業確認項目をもつプロセスのチェックリストを作成・運用し充実させる方法を述べている.長年の実践とコストを投入した一組織の成果が公表されたもので,他の組織にとって参照価値の高い論文である.人間の活動が主体となるプロセスには,その改善に向けての暗黙知の存在が認識されても,それを記録・整理・分析し体系化することは,それ自体が持続的で忍耐を要する作業であり,それを成果に導いたことにも敬意を表されるべきである.

福山 峻一君  1968年大阪大学基礎工学部制御工学科卒業.同年日本電信電話公社入社.同社電気通信研究所にて言語処理プログラムやネットワーク分散型ソフトウェア開発環境などの研究に従事.1994年NTTソフトウェア(株)入社.ソフトウェアの開発管理とプロセス改善に従事.2001年4月より鳥取環境大学環境情報学部・情報システム学科教授.博士(工学).電子情報通信学会,経営情報学会などの会員.

高木 英雄君  1977年東京工業大学修士課程情報科学専攻終了.同年メーカ系ソフトハウスに入社.科学技術計算アプリケーションの開発・運用に従事.1987年NTTソフトウェア(株)入社.開発合理化推進本部に所属し,品質保証やソフトウェア開発プロセスの改善に従事.現在,同社法務考査室勤務.

田中 僚史君  1983年神奈川工科大学電気工学科卒. ソフトウェアハウスを経て1985年NTTソフトウェア(株)入社.大規模システムの開発から先端技術ソフトの試作開発などに幅広く従事.1990年から全社開発合理化の推進およびCMMのモデルの社内導入に従事.2000年から,社内CMM導入の成功事例による社外へのソフトウェアプロセス改善サービスを提供するカスタマーソリューションコンサルティングセンター所長.現在,同社eプロセス推進部長.

渡辺 道広君  1986年茨城大学工学部情報工学科卒業.同年NTTソフトウェア(株)入社.コンパイラ開発,ソフ トウェア開発プロセスの改善,およびパッケージSI業務に従事.現在,インターネット・ソリューション事業部勤務.

中林 效君  1966年京都大学工学部修士課程数理工学修了.同年電信電話公社電気通信研究所入社.電子交換プログラムの開発に従事.1986年,NTTソフトウェア(株)入社.各種ソフトウェアの開発管理とプロセス改善に従事.2002年1月に定年退職し現在に至る.