「教育用大規模計算機システムにおける管理の省力化手法」(Vol.41,No.12)

平成13年度論文賞受賞者の紹介

「教育用大規模計算機システムにおける管理の省力化手法」(Vol.41,No.12)

[論文概要]
 教育用の大規模計算機システムは、広範囲に分散配置されていること、平日昼間は常時使用されることなどから設定の更新や保守の担当者の負担が大きい。本論文で提案するパッチシステムでは、設定変更や更新すべきアプリケーションプログラムをパッチ・スクリプトの形でサーバが提供する。管理対象端末で自律的に動作する管理プログラムは利用者のログアウトを待つなど適切な時刻を見つ
けてパッチを適用する。スクリプト形式をとることにより、端末個別の設定も容易に記述することができる。また、初期状態からの差分がすべて蓄積されているので、 ハードディスク交換後の設定復旧も自動的に行なえる。
[推薦理由]
 多数の端末を有する大規模な教育用計算機システムを、常に最新の状態を維持し、かつ、正常にサービスを提供し続けさせるためのシステマティックな方法は用意されておらず、人手による多くの維持管理作業を必要としていた。本論文では、これらの作業を大幅に削減する方法を提案し、それを実装し実際に運用して有効性を確認している。システムの管理問題は多くの大学等の組織が抱えている問題であり、一つの解決策を明らかにした点は高く評価できる。また、今後、初等中等教育においても同様の管理問題が発生するのは自明であることから、これらの教育の場にも応用できるものと期待される。以上の点から、本論文を論文賞に推薦する。

齊藤 明紀君  平成3年 大阪大学大学院博士課程修了. 大阪大学基礎工学部助手、情報処理教育センター 講師、大学院基礎工学研究科 講師を経て、現在,大阪大学大学院情報科学研究所 助教授. 工学博士.分散システム運用技術, 教育工学, ユーザーインターフェースなどの研究に従事. 電子情報通信学会, 情報処理学会各会員.