「OmniRPC: グリッド環境での並列プログラミングのためのGrid RPCシステム」(Vol.44,No.SIG11(ACS3))

平成15年度論文賞受賞者の紹介

「OmniRPC: グリッド環境での並列プログラミングのためのGrid RPCシステム」(Vol.44,No.SIG11(ACS3))

[論文概要]
 グリッド環境での並列プログラミングのためのGrid RPCシステム OmniRPCを設計、実装した。パラメータ検索などのmaster-workerのグリッドアプリケーションを効率的に実行するために、一度起動したリモート実行プログラムとのコネクションを維持して、同じ手続への呼び出しを効率化し、初期化データを再利用する再初期化可能リモート実行モジュール機能を提供する。グリッド環境として複数のクラスタを想定し、プライベートネットワークのクラスタに対しては、リモート実行プログラムとクライアントとの通信を中継すると同時に、通信を多重化することができる。APIをスレッドセーフにすることにより、OpenMP を用いることができ、簡便な並列プログラミングを提供している。

[推薦理由]
 グリッドコンピューティングは広域のネットワークに接続された膨大な計算資源を活用する広域分散処理技術として注目されている。本論文は、遠隔手続き呼び出し(RPC)を並列に行うことにより、グリッド環境での並列プログラミングを可能にする、Grid RPCシステムOmniRPCについて述べたものである。OpenMPを用いた簡便な並列プログラミングのためのAPI、パラメータ検索などのグリッド向きのアプリケーションを効率的に実行するためにリモートで実行されるプログラムの状態を維持するなど工夫や、計算資源としてクラスタを利用するための仕組み、様々なグリッド環境への対応などが提案されている。このシステムを用いて実際のアプリケーションが開発されていることより実用性が高く、グリッドコンピューティングの発展、普及に寄与するものと期待される。

佐藤 三久君  昭和57年東京大学理学部情報科学科卒業。昭和61年同大学院理学系研究科博士課程中退。同年新技術事業団研究員。平成3年、電子技術総合研究所入所。平成8年、新情報処理開発機構 出向。平成13年より、筑波大学 電子情報工学系 教授。同大学計算科学研究センター勤務。理学博士。並列処理、性能評価技術、グリッドコンピューティング等の研究に従事。

朴 泰祐君  昭和59年慶應義塾大学工学部電気工学科卒業.平成2年同大学大学院理工学研究科電気工学専攻後期博士課程修了.工学博士.昭和63年慶應義塾大学理工学部物理学科助手.平成4年筑波大学電子・情報工学系講師,平成7年同助教授,現在に至る.並列処理、ネットワーク,計算機アーキテクチャ,ハイパフォーマンスコンピューティングの研究に従事.

高橋 大介君  平成5年豊橋技術科学大学工学部情報工学課程卒業.平成7年同大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.平成9年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻博士課程中退.同年同大学大型計算機センター助手.平成12年埼玉大学大学院理工学研究科助手.平成13年筑波大学電子・情報工学系講師.博士(理学).並列数値計算アルゴリズムに関する研究に従事.