「サイドチャネル攻撃へのウィンドウ法を用いた防御法に対する2階電力差分攻撃」（Vol.44,No.8）

［論文概要］
　ICカード等に暗号を実装する際、サイドチャネル攻撃が脅威となる。サイドチャネル攻撃は、実行時の電力消費量等を観測することにより、暗号装置内部に格納された秘密情報を特定する攻撃である。Moellerは、サイドチャネル攻撃への防御法として、事前計算テーブルを利用した防御法を提案した。本稿ではMoellerの防御法に対する耐性解析を行った。提案解析手法は、事前計算テーブルへの２回のアクセスが同じか否かを、電力消費量の統計解析により割り出し、秘密情報の候補を限定する。その後、アルゴリズム的解析手法により秘密情報を特定する。また、実験検証や防御法提案も行った。

［推薦理由］
　楕円曲線暗号の実装において、Mollerによるウィンドウ法を利用したサイドチャネル攻撃への防御法が提案されていたが、それに対して2階DPA攻撃法を提案している。すなわち、消費電力曲線の２階差分が与えられると実際に攻撃できることが理論的に示されている。スマートカードなど、現実に用いられているデバイスに適用可能な攻撃である。また、本提案攻撃法への対策として、ウィンドウサイズを大きく取る方法を挙げている。これらの攻撃法および対策法は、新しい有効な方法であり、論文賞にふさわしいものである。

桶屋　勝幸君 　1994年富山大学理学部数学科卒業．1996年九州大学大学院数理学研究科博士前期課程修了．1998年（株）日立製作所入社．現在，システム開発研究所 セキュリティ基盤技術研究センタ 研究員．暗号，情報セキュリティ技術の研究に従事．博士（工学）．情報処理学会、電子情報通信学会、日本数学会、応用数理学会各会員

櫻井　幸一君 　1988年 九州大学 工学研究科 応用物理専攻修士課程終了.同年三菱電機(株)入社.現在 九州大学大学院 システム情報科学研究院 情報工学部門 教授.1997年9月より一年間 コロンビア大学 計算機科学科 客員研究員.暗号理論・情報セキュリティの研究に従事.博士（工学）.2000年情報処理学会坂井特別記念賞授賞.