「SmartMusicKIOSK:サビ出し機能付き音楽試聴機」(Vol.44,No.11)
平成16年度論文賞受賞者の紹介
「SmartMusicKIOSK:サビ出し機能付き音楽試聴機」(Vol.44,No.11)
[論文概要]
本論文では,試聴のための新たな音楽再生インタフェースSmartMusicKIOSKを提案した.店頭で音楽CDを短時間試聴する場合,通常の受動的な音楽鑑賞と異なり,試聴者は早送りを繰り返して能動的にサビを探すことが多い.しかし,こうした聴き方に対する支援は従来なかった.本研究では,サビの区間や楽曲中で繰り返される区間の先頭へジャンプする機能と,それらの区間の配置を視覚化する機能を実現し,試聴者が能動的に聴きたい場所を探す作業を容易にした.上記を可能にする自動サビ区間検出手法を提案し,試聴機として実装・運用した結果,検出手法と試聴機の両者の有効性を確認した.
[推薦理由]
本論文では,音楽のサビを音響信号解析に基づいて自動検出し,視覚化することにより,ボタンひと押しでサビを試聴できるシステムを提案している.サビ検出は従来困難と考えられていたが,本論文は独創的で洗練された発想によって解決し,さらに,実用性の高い音楽再生インタフェースも実現した.音楽情報処理の分野は,学術面,産業面でその重要性が年々高まってきているが,本研究はその両面に大きく貢献する重要な成果と言える.また,ヒューマンインタフェースの分野においても,本論文はインタラクション2003プログラム委員会で新規性,有用性が極めて高く評価され,インタラクション2003ベストペーパー賞に選ばれた後に,推薦論文として掲載されている.このように,本論文は両分野の発展に資するものとして高く評価でき,論文賞に値する.
後藤 真孝君 1998年早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).同年,電子技術総合研究所(2001年に産業技術総合研究所に改組)に入所し,現在に至る.2000年から2003年まで科学技術振興事業団さきがけ研究21「情報と知」領域研究員,2005年から筑波大学連携大学院客員助教授を兼任.音楽情報処理,音声言語情報処理などに興味をもつ.